ソーシャルゲーム業界では、ネイティブアプリが主流となりつつある。これまでブラウザゲームで成長してきた会社も一転してネイティブアプリに経営資源のシフトを行っているが、今回、そうした中での「組織のあり方」の変化について、 デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)株式会社 戦略・オペレーションユニット アソシエイトマネジャーの美田 和成氏にインタビューを行った。今回は、山田氏の雇用動向に関するインタビューの後編にあたる。
―――: よろしくお願いいたします。まず、基本的なことを伺いたいのですが、お仕事について教えていただけますか。
美田氏: デロイトトーマツ コンサルティングというコンサルティング会社で、ゲーム業界を担当するコンサルタントをしており、ゲーム業界の市場調査や、ゲーム会社の組織づくりのお手伝いをしております。仕事柄、守秘義務がありますので、お話できることは限られているのですが、よろしくお願いいたします。
―――: 先ほど山田さんがおっしゃったような開発体制のコンサルティングをされているのですか。
美田氏: それも含まれます。例えば、あるゲーム会社がソーシャルゲーム事業に参入する、そして、なにもないところから組織をつくる、というお話があったとします。我々は、トップに配置する人や、各職種の人数、スキル要件といったものを決めて組織体制を作り上げ、人材の採用をクライアントに提案します。そして、組織ができたら、それを運用できる仕組みを作っていく。組織づくりをトータルでサポートする仕事です。
―――: なるほど。ゲームメーカーといいますと、いわゆる大手ゲームメーカーが中心なんでしょうか。
美田氏: いえ、ゲーム業界全般です。大手ゲームメーカーも担当させていただくことがありますし、ソーシャルゲームの会社や、他業界から新たにソーシャルゲームに参入する会社も担当しております。
―――: ずっと経営コンサルティングをされていたのですか?
美田氏: 以前はディー・エヌ・エーで勤務していました。それ以前はリクルートや他のコンサルティングファームで働いたこともあります。これまでの職務で得たノウハウを生かしたいと考えて、現在の職に就きました。
―――: まず、ソーシャルゲーム・ネイティブアプリ関連企業の組織の特徴というと、どういったことがあるでしょうか?
美田氏: 他の業種に比べて、会社の規模が小さいこともありますが、トップダウン型企業が多いように思います。他の業種のトップマネジメントの多くは、事業戦略や経営戦略にフォーカスし、現場との業務分担がなされているケースが多いのですが、この業界では、トップマネジメントクラスでも実際にゲームで遊んで、トレンドを把握して、企画・開発から事業運営まで全てをみたマネジメントスタイルが多いですし、それがうまく機能しているように見えます。自らプロデューサーだという社長さんも多いですしね。
―――: トップの役割が広く、そして深いのですね。こうなった要因としてどういったことがあるでしょうか。
美田氏: それは業界のスピードが非常に早いことがあげられます。トップがトレンドを把握して、一気に戦術レベルまで落とし込まないと、うまく組織が変化に対応できない、という状況なのです。この傾向は、最近になって顕著になっています。このため、トップと現場の距離が非常に近いことがもう一つの特徴です。
―――: 今後も変化のスピードがますます早くなるでしょうから、トップと現場の距離はさらに近くなるでしょうね。
美田氏: はい。これまで以上に、トップに力を持たせていく、という流れが強くなっていきますね。これは大手ゲームメーカーであろうと、中小SAPであろうと、ソーシャルゲーム事業に関わる限りは変わりません。トップが現場のある程度細かいところまでチェックして、それがうまくいくとスピード感が出て、良質なタイトルが作れるようになります。
―――: 逆にうまくいってない会社となると…。
美田氏: 一概には言えませんが、ボトムアップで企画をあげていくタイプで、実際に企画が通るまで膨大な時間をロスしてしまい、環境の変化に対応できないというケースが幾つか見受けられます。さらにトップがゲームで遊ばない場合、企画の良さが理解できないため、なかなか開発に入れないことも一因でしょう。
―――: 大手ゲームメーカーというと組織も大きいですよね。うまくいった事例のようなものはありますか。
美田氏: ある大手ゲームメーカーの例をあげますと、そこはもともとコンソールゲーム中心の開発組織だったわけですが、ボトムアップ型の組織だったため、変化の激しいモバイル市場に対応できていませんでした。そこで、早い段階でスマートフォンアプリをコンソールと切り離し別事業として取り組んだ会社は、意思決定のスピードが高速化し、大きな成功を収めました。市場の状況にあった組織を作れた会社は成功を収めていますし、逆もまた然りです。
―――: 適正な組織規模のようなものはあるのですか?
美田氏: ソーシャルゲーム系ですと、300人が上限という印象ですが、1000人規模でも成功している企業ももちろんあります。トップからボトムへの伝達のスピード感が担保できていれば、人数は正直、関係ないと考えています。市場の変化に対応した組織にしなくてはならないことは頭ではわかっているのですが、実際に行動に移せない会社は少なくありませんから。SAPでも意思決定のスピードや情報伝達の速度を上げるための組織変更を行ったり、権限の移譲を行ったりする会社が増えてきましたので、レポートラインのあり方は、競争を勝ち抜くための肝になるのかもしれませんね。
―――: トップダウン型の組織は必須であると。
美田氏: もちろん、トップダウンでなくても実績を上げている会社はあります。トップはほとんどゲームを見ない代わりに、プロデューサーを信用して強い権限を与えて実績を上げている会社などです。トップ/ボトムという切り分けよりも、戦略がきちんと企画からひもづいているかどうか、スピーディな組織がつくれているか、そこに肝があるかと思います。
―――: しかし、全てを見るとなると、経営者の方も大変ですね。
美田氏: そうですね。プロデューサーと同じ目線で話す経営者でないと厳しいのではないかと思います。ソーシャルゲーム会社(もしくは事業部)のトップは、30代~40代が多いですが、国内外の様々なゲームにさわってトレンドを把握し、海外展開も含めた戦略を立案して戦術に落としこんでいきます。仕事量が膨大であり、またモバイルデバイスとのフィット感を考えると若い方の方がフィットできているようです。この業界でも最近有名な経営者が出てきていますが、彼らは有能なビジネスリーダーでありながら、優秀なゲームプロデューサーでもあるのです。
―――: 経営トップの開発者出身という方が多いのですか?
美田氏: そうとも限らないですね。ビジネス系で社長になった方もいます。会社によっては、ビジネス系役員と開発者系の役員がそれぞれ自分の強い領域を見て、カバーしあっているところもあります。どの形態であっても開発系の方でもビジネスをわかっていますし、逆にビジネス系の方でもゲームによく触れており豊富な知見を持っています。方向性を描こうとすると、ゲームのことを知らないといけませんので。
―――: 経営コンサルタントへのニーズはやはりネイティブアプリでうまくいくための組織づくりが多いのでしょうか。
美田氏: そうですね。ブラウザゲームとネイティブアプリではまた必要要件が異なりますので、ネイティブアプリで成功を収めるために組織を見直したいので手伝ってほしい、というニーズが増えてきております。ブラウザゲームで求められる組織とはまた違いがありますから。
―――: ブラウザゲームとネイティブアプリで求められる組織の違いとは何でしょうか?
美田氏: まず、プランナーの資質に関して言いますと、ブラウザゲームを知っている人だけでなく、コンソールゲームの視点(感覚的に楽しいゲーム作り)も持っていることが求められます。そして、開発者の構成も、ブラウザゲームの開発者と、コンソールゲームの開発者を組み合わせた融合部隊になっていることが重要です。ゲーム会社の規模にかぎらず、ブラウザゲームとコンソールゲームの開発部隊を持ち、そしてビジネスに詳しい人が課金構造を決めていくという形が強いですね。
―――: 混成部隊ですか。
美田氏: ええ。ブラウザゲームの開発者とコンソールゲーム開発者の双方の良さが相乗効果を生み出している会社が非常に伸びていますね。そして、ゲームによって最適な組み合わせのできる会社が好調です。ある大手ゲーム会社では、ライトなゲームではブラウザゲームの開発者を増やしたり、重めのゲームではコンソールゲーム部隊の比重を高めたり、といったプロジェクトの組み方をしています。そして、プロデューサーが課金構造を見ていく。非常にヒットが出やすい組織になっています。
―――: 最近、ネイティブアプリが主流になってゲームとしての面白さを重視する流れが強くなっていますが、この辺りが背景にあるのでしょうか。
美田氏: はい。最近のトレンドでは、お金を使おうが使うまいが、ゲームとして面白いものが求められています。そのうえで、課金構造を考えてマネタイズの仕組みを入れていく、という形になっています。かつてのブラウザゲームが伸び盛りだった頃、課金構造がしっかりしていれば、多少面白くなくてもプラットフォーマーがユーザーを集めてくれたので収益は出せたのですが、いまは何より面白いゲームでないとユーザーが遊んでくれません。
―――: 素朴な疑問なのですが、御社でコンサルティングされる場合、望ましい組織のモデルのようなものがあるかと思うのですが、これはどうやってつくられるのでしょうか?
美田氏: 我々の場合、業界にとらわれない知見が武器だと思っておりますので、こうして色々見聞きしているなかで成功モデルを組み立てているのもありますが、過去のメーカーさんの成功事例・失敗事例、欧米のゲーム企業の組織づくりなどを参考に、よりよいモデルが提供できるというところでバリューがあるかと思っております。特に海外展開などではまだ業界自体に知見がたまっていないので、こうした他業界の事例導入は非常に有効ですね。気をつけている点は、ブラウザゲームが中心だった会社ですと、どうしてもブラウザゲーム寄りになる傾向にあります。ですから、クライアントに足りない視点を提供するように心がけています。コンソールゲームの会社でも同様ですね。
―――: 経営コンサルタントという観点で、ネイティブアプリ以外になにか顕著な変化はあるでしょうか?
美田氏: 先ほど出てきたように大手ゲーム会社の海外進出に絡んだ経営コンサルタントの引き合いが増えてきました。海外のゲームトレンドの調査、そしてそれにマッチした開発会社や、日本から送り込む人材の選定、プロジェクトを回して進捗管理する、といった一連の業務に関連するものです。最近、SAP系は撤退するところがでてきましたが、大手ゲーム会社は、市場規模はまだ小さいけれども、潜在的な成長力のある市場に徐々に布石を打っている段階です。
―――: 最後に今後の展望についてはどうお考えでしょうか。
美田氏: デバイスやOS、ゲームのトレンドは、今後もますます変化していくでしょう。さらに海外のメーカーの日本進出や、日本メーカーの海外進出も強まっていくでしょう。カードバトルゲームだけでなく、国内・海外のゲームに触れている必要があります。経営トップの見るべき領域は、これまで以上に広くなり、そしてプロデューサー以上にゲームや業界のことをわかっていないと、方向性が示せないのです。経営トップの役割がますます重要になる時代になると見ています。
―――: よろしくお願いいたします。まず、基本的なことを伺いたいのですが、お仕事について教えていただけますか。
美田氏: デロイトトーマツ コンサルティングというコンサルティング会社で、ゲーム業界を担当するコンサルタントをしており、ゲーム業界の市場調査や、ゲーム会社の組織づくりのお手伝いをしております。仕事柄、守秘義務がありますので、お話できることは限られているのですが、よろしくお願いいたします。
―――: 先ほど山田さんがおっしゃったような開発体制のコンサルティングをされているのですか。
美田氏: それも含まれます。例えば、あるゲーム会社がソーシャルゲーム事業に参入する、そして、なにもないところから組織をつくる、というお話があったとします。我々は、トップに配置する人や、各職種の人数、スキル要件といったものを決めて組織体制を作り上げ、人材の採用をクライアントに提案します。そして、組織ができたら、それを運用できる仕組みを作っていく。組織づくりをトータルでサポートする仕事です。
―――: なるほど。ゲームメーカーといいますと、いわゆる大手ゲームメーカーが中心なんでしょうか。
美田氏: いえ、ゲーム業界全般です。大手ゲームメーカーも担当させていただくことがありますし、ソーシャルゲームの会社や、他業界から新たにソーシャルゲームに参入する会社も担当しております。
―――: ずっと経営コンサルティングをされていたのですか?
美田氏: 以前はディー・エヌ・エーで勤務していました。それ以前はリクルートや他のコンサルティングファームで働いたこともあります。これまでの職務で得たノウハウを生かしたいと考えて、現在の職に就きました。
■トップダウン型の組織が多い
―――: まず、ソーシャルゲーム・ネイティブアプリ関連企業の組織の特徴というと、どういったことがあるでしょうか?
美田氏: 他の業種に比べて、会社の規模が小さいこともありますが、トップダウン型企業が多いように思います。他の業種のトップマネジメントの多くは、事業戦略や経営戦略にフォーカスし、現場との業務分担がなされているケースが多いのですが、この業界では、トップマネジメントクラスでも実際にゲームで遊んで、トレンドを把握して、企画・開発から事業運営まで全てをみたマネジメントスタイルが多いですし、それがうまく機能しているように見えます。自らプロデューサーだという社長さんも多いですしね。
―――: トップの役割が広く、そして深いのですね。こうなった要因としてどういったことがあるでしょうか。
美田氏: それは業界のスピードが非常に早いことがあげられます。トップがトレンドを把握して、一気に戦術レベルまで落とし込まないと、うまく組織が変化に対応できない、という状況なのです。この傾向は、最近になって顕著になっています。このため、トップと現場の距離が非常に近いことがもう一つの特徴です。
―――: 今後も変化のスピードがますます早くなるでしょうから、トップと現場の距離はさらに近くなるでしょうね。
美田氏: はい。これまで以上に、トップに力を持たせていく、という流れが強くなっていきますね。これは大手ゲームメーカーであろうと、中小SAPであろうと、ソーシャルゲーム事業に関わる限りは変わりません。トップが現場のある程度細かいところまでチェックして、それがうまくいくとスピード感が出て、良質なタイトルが作れるようになります。
―――: 逆にうまくいってない会社となると…。
美田氏: 一概には言えませんが、ボトムアップで企画をあげていくタイプで、実際に企画が通るまで膨大な時間をロスしてしまい、環境の変化に対応できないというケースが幾つか見受けられます。さらにトップがゲームで遊ばない場合、企画の良さが理解できないため、なかなか開発に入れないことも一因でしょう。
―――: 大手ゲームメーカーというと組織も大きいですよね。うまくいった事例のようなものはありますか。
美田氏: ある大手ゲームメーカーの例をあげますと、そこはもともとコンソールゲーム中心の開発組織だったわけですが、ボトムアップ型の組織だったため、変化の激しいモバイル市場に対応できていませんでした。そこで、早い段階でスマートフォンアプリをコンソールと切り離し別事業として取り組んだ会社は、意思決定のスピードが高速化し、大きな成功を収めました。市場の状況にあった組織を作れた会社は成功を収めていますし、逆もまた然りです。
―――: 適正な組織規模のようなものはあるのですか?
美田氏: ソーシャルゲーム系ですと、300人が上限という印象ですが、1000人規模でも成功している企業ももちろんあります。トップからボトムへの伝達のスピード感が担保できていれば、人数は正直、関係ないと考えています。市場の変化に対応した組織にしなくてはならないことは頭ではわかっているのですが、実際に行動に移せない会社は少なくありませんから。SAPでも意思決定のスピードや情報伝達の速度を上げるための組織変更を行ったり、権限の移譲を行ったりする会社が増えてきましたので、レポートラインのあり方は、競争を勝ち抜くための肝になるのかもしれませんね。
―――: トップダウン型の組織は必須であると。
美田氏: もちろん、トップダウンでなくても実績を上げている会社はあります。トップはほとんどゲームを見ない代わりに、プロデューサーを信用して強い権限を与えて実績を上げている会社などです。トップ/ボトムという切り分けよりも、戦略がきちんと企画からひもづいているかどうか、スピーディな組織がつくれているか、そこに肝があるかと思います。
■トップに求められる資質
―――: しかし、全てを見るとなると、経営者の方も大変ですね。
美田氏: そうですね。プロデューサーと同じ目線で話す経営者でないと厳しいのではないかと思います。ソーシャルゲーム会社(もしくは事業部)のトップは、30代~40代が多いですが、国内外の様々なゲームにさわってトレンドを把握し、海外展開も含めた戦略を立案して戦術に落としこんでいきます。仕事量が膨大であり、またモバイルデバイスとのフィット感を考えると若い方の方がフィットできているようです。この業界でも最近有名な経営者が出てきていますが、彼らは有能なビジネスリーダーでありながら、優秀なゲームプロデューサーでもあるのです。
―――: 経営トップの開発者出身という方が多いのですか?
美田氏: そうとも限らないですね。ビジネス系で社長になった方もいます。会社によっては、ビジネス系役員と開発者系の役員がそれぞれ自分の強い領域を見て、カバーしあっているところもあります。どの形態であっても開発系の方でもビジネスをわかっていますし、逆にビジネス系の方でもゲームによく触れており豊富な知見を持っています。方向性を描こうとすると、ゲームのことを知らないといけませんので。
■ネイティブアプリの組織の特徴
―――: 経営コンサルタントへのニーズはやはりネイティブアプリでうまくいくための組織づくりが多いのでしょうか。
美田氏: そうですね。ブラウザゲームとネイティブアプリではまた必要要件が異なりますので、ネイティブアプリで成功を収めるために組織を見直したいので手伝ってほしい、というニーズが増えてきております。ブラウザゲームで求められる組織とはまた違いがありますから。
―――: ブラウザゲームとネイティブアプリで求められる組織の違いとは何でしょうか?
美田氏: まず、プランナーの資質に関して言いますと、ブラウザゲームを知っている人だけでなく、コンソールゲームの視点(感覚的に楽しいゲーム作り)も持っていることが求められます。そして、開発者の構成も、ブラウザゲームの開発者と、コンソールゲームの開発者を組み合わせた融合部隊になっていることが重要です。ゲーム会社の規模にかぎらず、ブラウザゲームとコンソールゲームの開発部隊を持ち、そしてビジネスに詳しい人が課金構造を決めていくという形が強いですね。
―――: 混成部隊ですか。
美田氏: ええ。ブラウザゲームの開発者とコンソールゲーム開発者の双方の良さが相乗効果を生み出している会社が非常に伸びていますね。そして、ゲームによって最適な組み合わせのできる会社が好調です。ある大手ゲーム会社では、ライトなゲームではブラウザゲームの開発者を増やしたり、重めのゲームではコンソールゲーム部隊の比重を高めたり、といったプロジェクトの組み方をしています。そして、プロデューサーが課金構造を見ていく。非常にヒットが出やすい組織になっています。
―――: 最近、ネイティブアプリが主流になってゲームとしての面白さを重視する流れが強くなっていますが、この辺りが背景にあるのでしょうか。
美田氏: はい。最近のトレンドでは、お金を使おうが使うまいが、ゲームとして面白いものが求められています。そのうえで、課金構造を考えてマネタイズの仕組みを入れていく、という形になっています。かつてのブラウザゲームが伸び盛りだった頃、課金構造がしっかりしていれば、多少面白くなくてもプラットフォーマーがユーザーを集めてくれたので収益は出せたのですが、いまは何より面白いゲームでないとユーザーが遊んでくれません。
―――: 素朴な疑問なのですが、御社でコンサルティングされる場合、望ましい組織のモデルのようなものがあるかと思うのですが、これはどうやってつくられるのでしょうか?
美田氏: 我々の場合、業界にとらわれない知見が武器だと思っておりますので、こうして色々見聞きしているなかで成功モデルを組み立てているのもありますが、過去のメーカーさんの成功事例・失敗事例、欧米のゲーム企業の組織づくりなどを参考に、よりよいモデルが提供できるというところでバリューがあるかと思っております。特に海外展開などではまだ業界自体に知見がたまっていないので、こうした他業界の事例導入は非常に有効ですね。気をつけている点は、ブラウザゲームが中心だった会社ですと、どうしてもブラウザゲーム寄りになる傾向にあります。ですから、クライアントに足りない視点を提供するように心がけています。コンソールゲームの会社でも同様ですね。
―――: 経営コンサルタントという観点で、ネイティブアプリ以外になにか顕著な変化はあるでしょうか?
美田氏: 先ほど出てきたように大手ゲーム会社の海外進出に絡んだ経営コンサルタントの引き合いが増えてきました。海外のゲームトレンドの調査、そしてそれにマッチした開発会社や、日本から送り込む人材の選定、プロジェクトを回して進捗管理する、といった一連の業務に関連するものです。最近、SAP系は撤退するところがでてきましたが、大手ゲーム会社は、市場規模はまだ小さいけれども、潜在的な成長力のある市場に徐々に布石を打っている段階です。
―――: 最後に今後の展望についてはどうお考えでしょうか。
美田氏: デバイスやOS、ゲームのトレンドは、今後もますます変化していくでしょう。さらに海外のメーカーの日本進出や、日本メーカーの海外進出も強まっていくでしょう。カードバトルゲームだけでなく、国内・海外のゲームに触れている必要があります。経営トップの見るべき領域は、これまで以上に広くなり、そしてプロデューサー以上にゲームや業界のことをわかっていないと、方向性が示せないのです。経営トップの役割がますます重要になる時代になると見ています。
会社情報
- 会社名
- デロイト トーマツ