「結婚や出産をしたい、だけど引き続き仕事もしたい」という女性は、スマートフォンゲーム業界でも少なくないだろう。しかし、仕事で成果を残しつつ、子供を育てるのは、決して簡単なことではない。今回、サムザップの人気タイトル『戦国炎舞-KIZNA-』のマーケティング部門のリーダーとして活躍する船木綾子氏にインタビューを行った。
船木氏は、一児の母として子育てを行いつつ、マーケティングディビジョンのリーダーとしてゲームの躍進を支えている。ほぼ定時で帰宅しているという船木氏だが、限られた時間で最大限の成果を出すために、どういった働き方をしているのか。また、サムザップの出産・育児と仕事を両立するための取り組みについても話を聞いた。
スマートフォンゲーム業界では、長時間労働が多いといわれるが、船木氏の働き方は労働時間短縮を考える場合にも何らかの参考になるのではないか。
―――:本日はよろしくお願い致します。まず、お仕事の内容を教えていただけますか。
サムザップでは、プロモーションとデータマイニングを担当するマーケティングディビジョンに所属しています。私は、マーケティングディビジョンのリーダーとして、プロモーションとデータマイニングの両方をみています。自分で手を動かしつつ、チームの人の配分や育成を含めたマネジメントも行っています。いわゆるプレイングマネージャーですね。もともと別グループ会社でプロジェクトマネージャーとして働いていましたが、産休・育休から復帰する際、より人を必要としていて成長しているサムザップに復帰することにしました。
―――: 勤務時間はどのくらいでしょうか?
9時から18時まで働いています。会社の定時は10時~19時なのですが、子どもの送迎などがありますから、変則的な時間で働かせてもらっています。サムザップを含むサイバーエージェントグループでは、産休・育休からの復帰時にどういった形式で働きたいか、そして働けるかといった要望を聞いてもらえます。その話し合いで合意したうえで勤務時間を含めた働き方を決めます。
―――:ほぼ定時で帰宅しているとはえ、子どもを育てながら働くのは相当しんどいかと思います。それでも働き続けようとお考えになったのは?
もともと仕事が好きで、復帰する・しないは選択できましたが、私自身、辞めようと思ったことがありませんでした。産休・育休から復帰した時に働きづらくなる環境ではないということもわかっていましたし。
サイバーエージェントグループでは、職場に復帰する際、人事とのすり合わせの上、リーダーやマネージャー、役員など休みに入る前のポジションに戻ることもできますし従来と同じように働くことが難しいようであれば、アシスタント的な立場でも可能です。実際、グループ内には、アシスタントとして復帰する人も沢山います。私はどちらかというと成果を出したい、貢献したいと考えていましたので、現場に近いところで復帰しました。辛くなったらあとで変えればいいかなと思いまして(笑)
―――:アシスタントとして復帰した人もお子さんが大きくなってきたら働き方も変えることも可能なのですか?
可能ですが、あくまでお子さん次第です。元気で健康なお子さんですと、フルタイムで働けますし、そうでない場合、例えば病気の際には早めに帰ったり、休暇をとったり、その時々の状況に合わせて対応できればいいと思っています。
■目的から逆算して仕事内容を選別
―――:仕事時間が限られている中で成果を出すには相当な工夫が必要かと思います。どういった取り組みをされていますか?
勤務時間が本当に限られてしまうので、やるべきことをしっかり選ぶことと、周りを活かすことに気をつけています。仕事を選ぶとは、例えばデータマイニングですと、気になって知りたいことが多く、見たいデータも山ほどあります。しかし、それが次の施策につながって、成果につながらなければ、データをとってもあまり意味がありません。プランナーやプロジェクトマネージャーとのやりとりの中で、そのデータの優先順位が高いのか低いのかを見定めた上で、緊急度が高ければすぐにやりますし、低ければ期限を長めに取ります。施策につながらないなら意味がないので、やらないこともあります。
―――:優先順位を付けて必要な仕事を選んでいるわけですね。データマイニングはとにかく色々なデータをとりたくなりますよね。
何かを知るためにデータを一度出すと、どんどん知りたくなってしまい、際限なくデータを取ることになります。しかし、あくまでゲームの成果を出すためのデータマイニングであるべきです。色々なデータを取ることで知見は貯まるかもしれませんが、アクションにつながらなければやる必要はないですよね。目的と手段を明確にし、必ず目的から逆算するようにしています。
―――:以前からそういった仕事のスタイルはとっていたのですか?
社会人になりたての頃はなかなかできなかったです。別グループ会社でプロジェクトマネージャーをやっていた時も同じでした。何でもかんでもやって自分が大変になる、といった状況で(笑) プロジェクトマネージャーになった時、成果に責任を持たなくてはならない立場になったとき、限られたメンバーで全てをやるのは無理だし、もったいないことだと気づきました。その時から優先順位をつけて仕事をしていました。ですから復帰した時も、しばらく慣れませんでしたが、勘を取り戻してようやくここまできました。
―――:お子さんのいる場合、他の人が働いているのに18時では帰りづらい・帰れないと考える方は少なくないと思いますが、そのへんの工夫はどうしていますか?
私が早く帰ることができるのは、無理のないスケジュールを組むようにしていることと、本当に「今日、必要なタスクなのか」と再度話をするようにしていることがあると思います。話し合って、明日の午前中で大丈夫ということであれば、期日までに出すように調整しています。もちろん、どうしても今日中に分析結果を反映した結果を実装したい、という話になった場合、私が残るときもありますし、メンバーに仕事をお願いして帰らせてもらうこともあります。
―――:無理のないスケジュールを組むために気をつけていることは何でしょうか。
業務の多くは、当初見込んでいた時間を超過しがちです。これは仕事を進めている途中、様々な仕事がイレギュラーで発生して対応するからです。このため、依頼が来た段階で、相手が必要なタイミング、デッドラインを見定めたうえで、イレギュラーな仕事が入ることを織り込んでスケジュールを立てています。つまり、依頼された日時よりは早く、そして自分の作業見込みよりは少し遅めに、ですね。
―――:スケジュールはギリギリに組んでしまいがちですよね。
はい。立てこんでくるとそういうこともありますが、スケジュールの組み方を工夫しないと相手にも迷惑がかかります。この時間にこのデータが上がってくると思っていたけど上がらなかった、そのため実装が遅れてしまった、というのではまずいですからね。
―――:お子さんが病気になってしまうということはありますよね。その場合はどうされるのですか?
両親が近くに住んでいるわけではないので、出勤できなくなります。1週間、出勤できなかったり、虫食いのような勤務になったりすることもありました。スケジュールに余裕を持っているとはいえ、さすがに1週間も休むと遅れますので、他のメンバーに代理で対応してもらうこともあります。そのメンバーももちろん仕事をしていますので、優先順位を付けてもらい、すぐやってもらうのか、後でやってもらうのかは、その時の状況次第になります。
―――:業務の内容はメンバーの方とは日頃から共有するようにしているのですか?
はい。毎日、朝会を行っています。メンバーの仕事とタスク状況は全て把握するようにしています。ただ、細かい内容までは把握していないですし、特に私の仕事をお願いする場合、相手が私の仕事を把握していないことが多いので、細かくオリエンする必要があります。
―――:オリエンで気をつけていることは何でしょうか。
アウトプットと目的を明確にすることですね。データマイニングやプロモーションの場合、アウトプットがわかりやすくて、仕事をお願いするときは、横軸はこれで縦軸にこの数字を入れてください、こっちの結果がこうならこういう結論になります、と伝えています。
また、仕事をするうえで、自分だけが頑張るのではなく、チームとしてうまく機能するようにしています。私だけでなく、他のメンバーも体調不良や家庭の事情などで休まざるをえない時がありますから、チーム全体でカバーできるようにマネジメントしています。
■いきなりうまくやろうとは考えないこと
―――:続いて、お休みから復帰後のことをお聞きします。仕事の勘を取り戻すのは大変だったのではないですか?
そうですね。当たり前のようにできたことができなくなっている自分に気づきました。例えば、「ホウレンソウ」や結論から話す、といったことですね。1年近く赤ちゃんとボケーッと生活していましたから。復帰したばかりの時、「結論からいってよ」と上司や先輩から注意され、「そんなことで注意された、私」と落ち込みました。でもやるしかないので、言葉が足りなくても、とにかく結論から話すことを1週間やってみるなど、テーマを設けてトライの繰り返しで徐々に勘を取り戻していきました。
―――:お仕事の内容をお聞きしたいのですが、お休みに入る前のプロデューサーと、復帰後のマーケティング業務では違いますよね。
はい。ただ、復帰してすぐはプロモーションのみを担当しました。サイバーエージェント本体で、広告代理事業の営業経験がありましたので、仕事にはすぐに対応できました。強いて言えば、市況やメディア状況の把握、指標関係の把握に少し手間取りましたね。
データマイニングの仕事については、1年になりますが、事実上、初めて携わる業務でしたので、とにかく自分で考えつつ、人に聞く・真似をする、自分で調べる、練習してみるといったことで対応していきました。新卒と同じような感じでやっており、いまも続けています。
―――:仕事と家庭の両立をうまくこなすための秘訣はあるんでしょうか。
いまでもうまくやれているわけではないと思いますが、そもそも初めからうまくやるのは難しいです。復帰して1年数ヶ月になりますが、当初はなかなかうまくいきませんでした。二足のわらじは実際、大変なので、すぐに完璧にやろうとは思っていませんでした。
ですが、1か月、3ヶ月、1年後にはよりチームをうまく回せている、より多くの成果を出せている、若手も成長してアウトプットのクオリティが高くなっている状況になればいいと思っています。あまり難しく考えず、なぜできないのか、何をできるようになるべきなのか、その都度考えて1つずつ解決しようとしています。
―――:育児と仕事を両立させていく上で、サイバーエージェントグループあるいはサムザップの制度の特徴を教えてもらえますか?
育児休暇や時短勤務、育児サポートなど、一般的な制度はもちろんあります。サイバーエージェントグループ独自の制度として、子どもの誕生日や授業参観などの日に半休がとれるキッズデイ休暇などの制度があります。
ただ、制度よりも制度の運用や、文化・土壌の側面が大きいですね。もともと率直に話ができる、風通しのいい会社ですので、自分はこう働きたいという希望を伝えることができます。
例えば、「無理は承知だけど、こういうキャリアを目指しているのでこのくらい働きたい」といえば認めてもらえますし、いまは子育てしたいけれど、10年後、20年後にキャリアを目指したいので時短勤務をしたいといった働き方も認められます。自分の働き方に関しては1カ月単位で変えることができます。子どもの調子が悪いとなったら、翌月は勤務時間を変えることもできます。相談したらどうにかなるところですね。
こういうことができるのは、サイバーエージェントグループ全体として、優秀な人が長く働けるようにするために取り組んでいるからです。もちろん、成果が優先なのですが、困っている人がいたらサポートするのは人として当たり前です。会社としても色々と制約はありますが、相談をすれば色々と聞いてもらえます。
サムザップでは、育児休暇から復帰した人はまだ少ないですが、グループ全体では増えています。ですからグループを横断して相談することもできます。自分の状況を共有・共感でき、一緒に考えてくれる人が多くいるのは助かります。このあたりが働きやすさの要因かもしれません。
―――:相談できる人が多いのは助かりますね。
はい。産休や育児休暇を取得した人はグループ内に多いので困ったことがあれば相談してもらえればサポートしてもらえます。もちろん、私に相談してくれたら全力でサポートします! 相談を受けるだけでなく、私としては困っている状況を気づいてあげられるようにしたいですね。
育児をしながら働いていると、早く帰っているからと引け目を感じて相談をしづらいことが多くあります。そういうことは同じ立場でないとわからないので、都度声をかけるようにしたいと思います。成果意識、貢献意欲の低い方は厳しいですが、制約がある中でも一生懸命働いて結果を出したいという人には惜しみなくバックアップしてくれる環境です。
―――:今後のキャリアやこういうことをやりたいというお考えを教えて下さい。
限られた時間しか働けないという現実はあるのですが、できるかぎり、経営に近い立場で働きたいです。仕事のサイズも大きくしたいという思いもあります。いまマーケティングを極めたいというよりは、会社の運営・経営に近い視点で何か役割を担えるものがあればやりたいです。プロジェクトマネージャーとして働いて、事業をまわすことの楽しさを実感しました。ですから今働ける時間の範囲で、そういう仕事にできるもので、かつ一番成果貢献ができることであればやりたいです。
―――:最後にサムザップへの入社を考える方にメッセージをお願いします。
育児をするから何ができないじゃなく、その中で何が貢献できるのだろうと考えた上で入ってくださるのであれば歓迎です。子どもがいるからできないと考えるのではなく、自分の経験や経歴を活かして何ができるのかと考えてもらえればいいと思います。
また、お子さんのいない方や独身の方も、会社と率直に話せる環境にありますので、実際に入ってきてから妊娠した、子どもが生まれるとなった時、どういった形で働きたいのか、都度相談できます。前向きな相談は皆受けてくれます。悩みすぎないでやりたいことをもって入っていただきたいですね。
船木氏は、一児の母として子育てを行いつつ、マーケティングディビジョンのリーダーとしてゲームの躍進を支えている。ほぼ定時で帰宅しているという船木氏だが、限られた時間で最大限の成果を出すために、どういった働き方をしているのか。また、サムザップの出産・育児と仕事を両立するための取り組みについても話を聞いた。
スマートフォンゲーム業界では、長時間労働が多いといわれるが、船木氏の働き方は労働時間短縮を考える場合にも何らかの参考になるのではないか。
―――:本日はよろしくお願い致します。まず、お仕事の内容を教えていただけますか。
サムザップでは、プロモーションとデータマイニングを担当するマーケティングディビジョンに所属しています。私は、マーケティングディビジョンのリーダーとして、プロモーションとデータマイニングの両方をみています。自分で手を動かしつつ、チームの人の配分や育成を含めたマネジメントも行っています。いわゆるプレイングマネージャーですね。もともと別グループ会社でプロジェクトマネージャーとして働いていましたが、産休・育休から復帰する際、より人を必要としていて成長しているサムザップに復帰することにしました。
―――: 勤務時間はどのくらいでしょうか?
9時から18時まで働いています。会社の定時は10時~19時なのですが、子どもの送迎などがありますから、変則的な時間で働かせてもらっています。サムザップを含むサイバーエージェントグループでは、産休・育休からの復帰時にどういった形式で働きたいか、そして働けるかといった要望を聞いてもらえます。その話し合いで合意したうえで勤務時間を含めた働き方を決めます。
―――:ほぼ定時で帰宅しているとはえ、子どもを育てながら働くのは相当しんどいかと思います。それでも働き続けようとお考えになったのは?
もともと仕事が好きで、復帰する・しないは選択できましたが、私自身、辞めようと思ったことがありませんでした。産休・育休から復帰した時に働きづらくなる環境ではないということもわかっていましたし。
サイバーエージェントグループでは、職場に復帰する際、人事とのすり合わせの上、リーダーやマネージャー、役員など休みに入る前のポジションに戻ることもできますし従来と同じように働くことが難しいようであれば、アシスタント的な立場でも可能です。実際、グループ内には、アシスタントとして復帰する人も沢山います。私はどちらかというと成果を出したい、貢献したいと考えていましたので、現場に近いところで復帰しました。辛くなったらあとで変えればいいかなと思いまして(笑)
―――:アシスタントとして復帰した人もお子さんが大きくなってきたら働き方も変えることも可能なのですか?
可能ですが、あくまでお子さん次第です。元気で健康なお子さんですと、フルタイムで働けますし、そうでない場合、例えば病気の際には早めに帰ったり、休暇をとったり、その時々の状況に合わせて対応できればいいと思っています。
■目的から逆算して仕事内容を選別
―――:仕事時間が限られている中で成果を出すには相当な工夫が必要かと思います。どういった取り組みをされていますか?
勤務時間が本当に限られてしまうので、やるべきことをしっかり選ぶことと、周りを活かすことに気をつけています。仕事を選ぶとは、例えばデータマイニングですと、気になって知りたいことが多く、見たいデータも山ほどあります。しかし、それが次の施策につながって、成果につながらなければ、データをとってもあまり意味がありません。プランナーやプロジェクトマネージャーとのやりとりの中で、そのデータの優先順位が高いのか低いのかを見定めた上で、緊急度が高ければすぐにやりますし、低ければ期限を長めに取ります。施策につながらないなら意味がないので、やらないこともあります。
―――:優先順位を付けて必要な仕事を選んでいるわけですね。データマイニングはとにかく色々なデータをとりたくなりますよね。
何かを知るためにデータを一度出すと、どんどん知りたくなってしまい、際限なくデータを取ることになります。しかし、あくまでゲームの成果を出すためのデータマイニングであるべきです。色々なデータを取ることで知見は貯まるかもしれませんが、アクションにつながらなければやる必要はないですよね。目的と手段を明確にし、必ず目的から逆算するようにしています。
―――:以前からそういった仕事のスタイルはとっていたのですか?
社会人になりたての頃はなかなかできなかったです。別グループ会社でプロジェクトマネージャーをやっていた時も同じでした。何でもかんでもやって自分が大変になる、といった状況で(笑) プロジェクトマネージャーになった時、成果に責任を持たなくてはならない立場になったとき、限られたメンバーで全てをやるのは無理だし、もったいないことだと気づきました。その時から優先順位をつけて仕事をしていました。ですから復帰した時も、しばらく慣れませんでしたが、勘を取り戻してようやくここまできました。
―――:お子さんのいる場合、他の人が働いているのに18時では帰りづらい・帰れないと考える方は少なくないと思いますが、そのへんの工夫はどうしていますか?
私が早く帰ることができるのは、無理のないスケジュールを組むようにしていることと、本当に「今日、必要なタスクなのか」と再度話をするようにしていることがあると思います。話し合って、明日の午前中で大丈夫ということであれば、期日までに出すように調整しています。もちろん、どうしても今日中に分析結果を反映した結果を実装したい、という話になった場合、私が残るときもありますし、メンバーに仕事をお願いして帰らせてもらうこともあります。
―――:無理のないスケジュールを組むために気をつけていることは何でしょうか。
業務の多くは、当初見込んでいた時間を超過しがちです。これは仕事を進めている途中、様々な仕事がイレギュラーで発生して対応するからです。このため、依頼が来た段階で、相手が必要なタイミング、デッドラインを見定めたうえで、イレギュラーな仕事が入ることを織り込んでスケジュールを立てています。つまり、依頼された日時よりは早く、そして自分の作業見込みよりは少し遅めに、ですね。
―――:スケジュールはギリギリに組んでしまいがちですよね。
はい。立てこんでくるとそういうこともありますが、スケジュールの組み方を工夫しないと相手にも迷惑がかかります。この時間にこのデータが上がってくると思っていたけど上がらなかった、そのため実装が遅れてしまった、というのではまずいですからね。
―――:お子さんが病気になってしまうということはありますよね。その場合はどうされるのですか?
両親が近くに住んでいるわけではないので、出勤できなくなります。1週間、出勤できなかったり、虫食いのような勤務になったりすることもありました。スケジュールに余裕を持っているとはいえ、さすがに1週間も休むと遅れますので、他のメンバーに代理で対応してもらうこともあります。そのメンバーももちろん仕事をしていますので、優先順位を付けてもらい、すぐやってもらうのか、後でやってもらうのかは、その時の状況次第になります。
―――:業務の内容はメンバーの方とは日頃から共有するようにしているのですか?
はい。毎日、朝会を行っています。メンバーの仕事とタスク状況は全て把握するようにしています。ただ、細かい内容までは把握していないですし、特に私の仕事をお願いする場合、相手が私の仕事を把握していないことが多いので、細かくオリエンする必要があります。
―――:オリエンで気をつけていることは何でしょうか。
アウトプットと目的を明確にすることですね。データマイニングやプロモーションの場合、アウトプットがわかりやすくて、仕事をお願いするときは、横軸はこれで縦軸にこの数字を入れてください、こっちの結果がこうならこういう結論になります、と伝えています。
また、仕事をするうえで、自分だけが頑張るのではなく、チームとしてうまく機能するようにしています。私だけでなく、他のメンバーも体調不良や家庭の事情などで休まざるをえない時がありますから、チーム全体でカバーできるようにマネジメントしています。
■いきなりうまくやろうとは考えないこと
―――:続いて、お休みから復帰後のことをお聞きします。仕事の勘を取り戻すのは大変だったのではないですか?
そうですね。当たり前のようにできたことができなくなっている自分に気づきました。例えば、「ホウレンソウ」や結論から話す、といったことですね。1年近く赤ちゃんとボケーッと生活していましたから。復帰したばかりの時、「結論からいってよ」と上司や先輩から注意され、「そんなことで注意された、私」と落ち込みました。でもやるしかないので、言葉が足りなくても、とにかく結論から話すことを1週間やってみるなど、テーマを設けてトライの繰り返しで徐々に勘を取り戻していきました。
―――:お仕事の内容をお聞きしたいのですが、お休みに入る前のプロデューサーと、復帰後のマーケティング業務では違いますよね。
はい。ただ、復帰してすぐはプロモーションのみを担当しました。サイバーエージェント本体で、広告代理事業の営業経験がありましたので、仕事にはすぐに対応できました。強いて言えば、市況やメディア状況の把握、指標関係の把握に少し手間取りましたね。
データマイニングの仕事については、1年になりますが、事実上、初めて携わる業務でしたので、とにかく自分で考えつつ、人に聞く・真似をする、自分で調べる、練習してみるといったことで対応していきました。新卒と同じような感じでやっており、いまも続けています。
―――:仕事と家庭の両立をうまくこなすための秘訣はあるんでしょうか。
いまでもうまくやれているわけではないと思いますが、そもそも初めからうまくやるのは難しいです。復帰して1年数ヶ月になりますが、当初はなかなかうまくいきませんでした。二足のわらじは実際、大変なので、すぐに完璧にやろうとは思っていませんでした。
ですが、1か月、3ヶ月、1年後にはよりチームをうまく回せている、より多くの成果を出せている、若手も成長してアウトプットのクオリティが高くなっている状況になればいいと思っています。あまり難しく考えず、なぜできないのか、何をできるようになるべきなのか、その都度考えて1つずつ解決しようとしています。
―――:育児と仕事を両立させていく上で、サイバーエージェントグループあるいはサムザップの制度の特徴を教えてもらえますか?
育児休暇や時短勤務、育児サポートなど、一般的な制度はもちろんあります。サイバーエージェントグループ独自の制度として、子どもの誕生日や授業参観などの日に半休がとれるキッズデイ休暇などの制度があります。
ただ、制度よりも制度の運用や、文化・土壌の側面が大きいですね。もともと率直に話ができる、風通しのいい会社ですので、自分はこう働きたいという希望を伝えることができます。
例えば、「無理は承知だけど、こういうキャリアを目指しているのでこのくらい働きたい」といえば認めてもらえますし、いまは子育てしたいけれど、10年後、20年後にキャリアを目指したいので時短勤務をしたいといった働き方も認められます。自分の働き方に関しては1カ月単位で変えることができます。子どもの調子が悪いとなったら、翌月は勤務時間を変えることもできます。相談したらどうにかなるところですね。
こういうことができるのは、サイバーエージェントグループ全体として、優秀な人が長く働けるようにするために取り組んでいるからです。もちろん、成果が優先なのですが、困っている人がいたらサポートするのは人として当たり前です。会社としても色々と制約はありますが、相談をすれば色々と聞いてもらえます。
サムザップでは、育児休暇から復帰した人はまだ少ないですが、グループ全体では増えています。ですからグループを横断して相談することもできます。自分の状況を共有・共感でき、一緒に考えてくれる人が多くいるのは助かります。このあたりが働きやすさの要因かもしれません。
―――:相談できる人が多いのは助かりますね。
はい。産休や育児休暇を取得した人はグループ内に多いので困ったことがあれば相談してもらえればサポートしてもらえます。もちろん、私に相談してくれたら全力でサポートします! 相談を受けるだけでなく、私としては困っている状況を気づいてあげられるようにしたいですね。
育児をしながら働いていると、早く帰っているからと引け目を感じて相談をしづらいことが多くあります。そういうことは同じ立場でないとわからないので、都度声をかけるようにしたいと思います。成果意識、貢献意欲の低い方は厳しいですが、制約がある中でも一生懸命働いて結果を出したいという人には惜しみなくバックアップしてくれる環境です。
―――:今後のキャリアやこういうことをやりたいというお考えを教えて下さい。
限られた時間しか働けないという現実はあるのですが、できるかぎり、経営に近い立場で働きたいです。仕事のサイズも大きくしたいという思いもあります。いまマーケティングを極めたいというよりは、会社の運営・経営に近い視点で何か役割を担えるものがあればやりたいです。プロジェクトマネージャーとして働いて、事業をまわすことの楽しさを実感しました。ですから今働ける時間の範囲で、そういう仕事にできるもので、かつ一番成果貢献ができることであればやりたいです。
―――:最後にサムザップへの入社を考える方にメッセージをお願いします。
育児をするから何ができないじゃなく、その中で何が貢献できるのだろうと考えた上で入ってくださるのであれば歓迎です。子どもがいるからできないと考えるのではなく、自分の経験や経歴を活かして何ができるのかと考えてもらえればいいと思います。
また、お子さんのいない方や独身の方も、会社と率直に話せる環境にありますので、実際に入ってきてから妊娠した、子どもが生まれるとなった時、どういった形で働きたいのか、都度相談できます。前向きな相談は皆受けてくれます。悩みすぎないでやりたいことをもって入っていただきたいですね。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社サムザップ
- 設立
- 2009年5月
- 代表者
- 代表取締役 日高 裕介
- 決算期
- 9月