『神撃のバハムート』をはじめ、『三国志パズル大戦』や『ナイツオブグローリー』など、数々のソーシャルゲームの企画・開発・運営を行うCygamesは、2014年3月10日に「Mobage」で新作ブラウザゲーム『グランブルーファンタジー』を配信開始した。
本作は「星の民」や「神々」を巡る物語や、「星晶獣」と呼ばれる獣の存在など、ファンタジックな世界観を基調としたソーシャルRPG。開発には、これまで数多くの大作RPGの制作に携わったCyDesignationのデザイナー・皆葉英夫氏と、サウンドコンポーザーとして様々なゲームに楽曲を提供する植松伸夫氏が参加している。
「ブラウザゲームの限界に挑戦」をテーマに掲げた本作は、早くも登録ユーザー数が200万人を突破(関連記事)、「Mobage」総合ランキングで首位を獲得(関連記事)するなどの大ヒットを記録。
今回本稿では、『グランブルーファンタジー』のデザイナーとして活躍するCygamesとCyDesignationの新卒スタッフ2名に、同社の魅力や志望動機、そしてデザイナーの現場の雰囲気を語ってもらった。
■『グランブルーファンタジー』の世界を彩る新卒デザイナーたちの活躍
株式会社Cygames 2013年度入社
『グランブルーファンタジー』デザイナー
ユウタ (写真左)
株式会社CyDesignation 2014年度入社
『グランブルーファンタジー』デザイナー
リョウジ (写真右)
――:よろしくお願いします。一言に“デザイナー”といっても様々な業務があるかと思いますので、まずは『グランブルーファンタジー』におけるおふたりの担当業務を詳しく教えていただけますか。
ユウタ:おもに我々は、皆葉さん監修のもと『グランブルーファンタジー』のキャラクターデザインを原画兼線画から担当しています。皆葉さんが主人公をはじめとするメインキャラクターを担当して、我々はほかの一部NPCやモンスターなどをデザインしている形です。
――:おふたりとも新卒スタッフですが、そもそもCygamesを選んだ志望動機は何だったのでしょうか。
リョウジ:Cygamesのデザインのレベルの高さに惹かれたのが、最初のきっかけでした。またCygamesでは新卒採用でもデザイナーを募集していたので、ここでなら自身のスキルを発揮できると思い応募しました。
そして社内見学やデザイナーとの面談を行い、充実した設備と素晴らしい人材に囲まれた制作環境に感動して、志望を固めました。その後は、2013年8月に内定者アルバイトとしてCyDesignationで『グランブルーファンタジー』に携わり、研修が終わった2014年6月から正式配属となりました。
ユウタ:私も、きっかけはCygamesのレベルのすさまじさに魅了されたことです。制作環境も大きかったです。社内見学でデザイナーの仕事現場を見た際に、設備などをはじめとする社内環境に心奪われました。たとえば広いL字机や座り心地のよい椅子、希望すれば液晶ペンタブレットもすぐに支給してくれるのはかなり魅力的でした。
――:実際に入社されてみていかがでしたか。
リョウジ:皆葉さんをはじめとした、優れた先輩方の仕事ぶりを直に見られることに感激しました。貴重な経験を積める場所であると感じました。また我々が作業しているデザイナーの現場は、光がパソコン画面に反射しないように、フロア全体で電気が消えています。
社内見学で見たときは、その中でみなさん黙々と作業されていてとても衝撃的でした。しかし実際入社してみると、仕事の合間に談笑するなど想像していたよりも明るい職場で、とてもリラックスして仕事ができています。
ユウタ:私は当初『神撃のバハムート』チームにジョインしました。そこのデザイナーの先輩方がみなさんフリーや中途で活躍してきた人たちが多かったため、入社から非常に刺激的な体験をすることができました。
さらに皆葉さんからイラストの監修を受けるなど、かなり成長できる環境であることをすぐに実感しました。しかし社内の雰囲気は固くなく、とても和気あいあいとした環境で本当に恵まれていると感じます。
――:それでは、おふたりが担当している業務の制作フローについて教えてください。
ユウタ:おもに運営チームからキャラクターの発注書をいただいて、キャラクターをデザインしていきます。そして逐一、皆葉さんをはじめとした先輩方に見てもらい方向修正していきながら完成させていきます。
リョウジ:皆葉さんのラフをもとに線画を描くこともあり、直にイラストに触れながら学ぶという貴重な体験をさせてもらっています。
――:ちなみに、おふたりはどのキャラクターを担当されたのですか。
リョウジ:最初に担当したのはSSレアの星晶獣・マキュラ・マリウスでした。同じ星晶獣ではグラニも担当しました。あとはキャラクターの(レベル)上限解放時に変わるイラストなどもデザインしています。
▲マキュラ・マリウス
▲グラニ
ユウタ:私はキャラクターとモンスター半々ぐらいで手掛けています。ティアマト・マグナとサジタリウスは私が担当しました。その他、敵キャラクターとして登場する帝国兵をはじめとする各種NPCを多数。周囲を支えるようなキャラクターたちをデザインしています。
▲ティアマト・マグナ
▲サジタリウス
――:まだ新卒スタッフとはいえ、かなり重要なデザインを担当されていることに驚いています……。では、なかでも苦労された難産のデザインなどは。
リョウジ:やはり最初に担当したマキュラ・マリウスが一番印象に残っています。右も左も分からない状態であったため、はじめはラフの描き方も分かりませんでしたが、先輩方にラフを見せてもらいながら、様々な種類のデザインを描いていきました。原画が通った後は、線画と着彩に移り、先輩方から学びながらなんとか完成させることができました。
また、星晶獣のゲーム中ムービーもFlashで0から作らせていただきました。Flashは大学で少し触っていただけで、製品に出せるクオリティは持っていませんでしたが、教わりながら無事手掛けることができました。全体で3ヵ月ほどかかってしまいましたが、多くの優秀な先輩方に教わることができ、非常に貴重な経験をさせてもらいました。
ユウタ:私は敵キャラクターとして登場するポンメルンの星晶獣化ですね。最終的には皆葉さんにデザインを大きく修正され、自分のデザインは採用されませんでした。悔しい思い出ですが、ポーズや表情など長時間修正されながら描いた印象的なキャラクターであり、皆葉さんの仕事を間近で見ることのできた貴重な体験になりました。
あとは帝国兵の基本デザインです。3種類の異なる武器を持ったデザインを複数おこすという業務を、期日を守りながら提出するのには苦労しました。メインの敵ではないのですが、格好いいデザインは妥協しないというオーダーのため、いろいろ試行錯誤をした結果いまのデザインに行き着きました。
▲帝国一般兵(槍)
▲帝国一般兵(ボウガン)
▲帝国一般兵(剣)
――:『グランブルーファンタジー』のキャラクターデザインで心がけていることはありますか。
リョウジ:そうですね。私も古い資料などを見つつも、いまの時代に適したデザインにリファインするように心がけています。本格的なファンタジーを踏襲しつつ、新しいデザインに挑戦することで魅力溢れるキャラクターが生まれてくると思っています。また、モバイルゲームのため、端末の画面上でも見栄えするようなキャラクターデザインになるようにと意識しています。そうした意識は皆葉さんや先輩方から学んだことで、日々心がけています。
――:デザイナーの視点として、『グランブルーファンタジー』で注目してほしいポイントを教えてください。
ユウタ:バトル画面では、デフォルメされたちびキャラが登場するのですが、そのちびキャラたちがぐりぐりと動いているアニメーションには注目してほしいですね。ちびキャラのデザインには、デフォルメ専門のチームが存在するのですが、たまにそこのチームの方々から「動かしたい演出のために、少しデザインを変えてほしい」という依頼が来ることもあります。言わば、ちびキャラのアニメーションの攻撃演出が逆輸入されて、メインのイラストにも小物などが加わるということです。これがキャラクターの個性がグッと引き立つなどの良いほうに転がることもありました。
リョウジ:私は、個人的におやじキャラに注目してほしいですね。『グランブルーファンタジー』をはじめ、ほかのゲームでもそうなのですが、やはり女性キャラクターが見栄えしてしまうものです。ただ、本作はおやじキャラもかなり力が入って描かれていますので、ぜひ、見てください。ちなみに私は、おやじキャラではアレーティアやソリッズの上限解放版を描かせていただきました。
――:おふたりは同じチームで業務されている先輩後輩だと思いますが、お互いの印象についていかがですか。
ユウタ:彼は入社したときからイラストが上手くて、とても優秀な後輩だと思っています。また、たくさんある彼の没イラストを一部共有してもらって、大切な資料としてフォルダに保管しています(笑)。
リョウジ:(笑)。先輩は資料研究などに余念がなく、なかでもファンタジーの衣装や小物を忠実に勉強し、そこから新しいデザインとしてアウトプットできる点がすごいと思います。デザインの方向性が異なるのも印象的に思うところです。
どちらかというと私は大味で、格好良く見せすぎようとして細部がおろそかになり、デザインが偏りがちなのですが、先輩は細部までこだわって、「変なもの書いて」と言われたら、きちんと“変なもの”を出せる引き出しがあるところですね。
発注書の段階で奇をてらった文章が書いてあれば、そのデザインに乗せていますし、頭の引き出しはかなり蓄えていると思います。
ユウタ:実際は女の子を描いているほうが楽しいですが(笑)。あとは、何かと密度のあるものを描くのも好きですし、よく頼まれます。
――:なるほど。そんなおふたりも入社してから“大きく成長できた”と感じる点も出てきたのではないでしょうか。
ユウタ:ニーズに応えられるデザインを徐々に手掛けられるようになったことは、一番の成長ポイントだと思っています。もともと私は、クリーチャー系のデザインを好んで描いていたのですが、綺麗や格好いい、そして大衆受けするキャッチーなキャラクターデザインなどを、きちんと切り替えてデザインできるようになったのは大きいです。
リョウジ:会社に入る前は、デザインの基礎的な描き方も決まっておらず、ただ無軌道で描いていくことがありました。けれど入社後は先輩方の制作フローやアイデアの出し方などを間近で見ることにより、段々と自分の制作フローを定めることができました。今は自分の実力をある程度安定して発揮できるようになったと思います。
――:おふたりの今後の目標について教えてください。
リョウジ:素晴らしい先輩方に囲まれ、日々刺激を受けています。そんな先輩方に1日でも早く肩を並べるために、実力をつけていきたいと思います。まだまだ描ける幅が少ないと感じていますので、うまくゲームの世界観に適したデザインを描けるように頑張ります。
ユウタ:よく「デザインが独りよがりになっている」と指摘されるため、客観的にデザインできる力を養っていきたいです。また自分自身も皆葉さんのように監修を行える人材になれるよう、今後も実力をつけて成長していきたいと思います。
――:それでは、最後にCygamesで働くことを目指している新卒者に向けて、メッセージまたはアドバイスをお願いします。
リョウジ:Cygamesは、スキルの習得には最高の環境です。しかし小手先の技術ばかりでは、それを得ることはできません。エンターテイメントの造詣を深めるために、多くの本やアニメ、ゲームなどに触れておくのが良いですね。
私も上司が見ていたアニメ作品にうまく話がついていけないこともありました。世代的には仕方のないことかもしれませんが、制作現場では他作品を例に挙げてディスカッションすることもあるので、センスを磨くためにも様々なエンタメ作品に触れていくことが大切ですね。
ユウタ:やはり基礎画力(デッサン)はきちんと身につけておいてください。大学生では作業する時間を作るのは難しいと思いますが、それでも時間を増やして絵を描く手を止めないことが何よりも重要です。筋肉が無いと運動できないのと同じで、基礎画力が無いと伸びしろがなくなります。あるだけ損するものではないため、ぜひ、基礎画力を怠らないでほしいですね。
――:ありがとうございました。
(取材・文:編集部 原孝則)
■『グランブルーファンタジー』
©Cygames, Inc.