【「これからこうなる!」は毎週火曜日12時頃に更新】
メディアやコンサルが予想するのとは大きく異なり、ふたりは開発者であるがゆえ、仮説を立てたあとに実際現場のなかでゲームを手掛け、その「是非」にも触れることができる。ゲーム開発現場の最前線に立つふたりは、果たして今後どのような未来を予想して、そして歩むのか。
今回の担当:岩野弘明氏
■第24回「サバゲー人気の謎に迫る」
まだまだ夏真っ盛りでクソ暑い日々が続いておりますが、そんな時だからこそあえてお勧めしたいのがサバゲーであります。
以前の記事でも軽くサバゲーについて触れましたが、実数でどのくらいいるかというデータはないものの、ここ数年でサバゲーのフィールド数や人口は増えてきているようで、私も最近毎週末サバゲーをしていますが、どのフィールドでも誰でも大体100人前後、多い時では200人以上が1日に集まります。
また、ここ数年サバゲーをテーマにした漫画やアニメも増えてきていますよね。「特例措置団体ステラ女学院高等科C3部」「これからコンバット」「さばげぶっ!」、そして現在アニメ放映中の「青春×機関銃」など。
特に「さばげぶっ!」はサバゲーをテーマにしたギャグで、ヒロインが(いい意味で)ゲスの極みのようなキャラで容赦なく相手を撃滅していく様は本当に笑えます。また、「青春×機関銃」なんかは、作中で結構サバゲーのルールや銃の説明をしてくれるので、そこで「軽くて初心者や女性でも扱いやすい」と紹介されていた「G3 SAS」を思わず買ってしまいました(笑)。
ちょっと話はずれましたが、今回はそんなサバゲーがなぜ人気になってきているのか、そしてサバゲー体験をゲーム作りに活かせることについて書いていきたいと思います。
■サバゲーの魅力って?
「サバゲーは実に最近のオンラインゲームっぽい!」
ということです。
そもそもサバゲーをやったことない方が思い描いているサバゲーのイメージって「痛そう」「初期投資が高そう」「怖そう(あるいは怖い人が多そう)」「面倒くさそう」みたいなところかと思います。総じて「敷居がとても高い」ということが言えるかと思います。サバゲーをやる前の私もそう思ってました。
敷居が高い、という点については実際そうなんですが、ただここ数年で結構サバゲー人口は増えてきているようです。サバゲー関連の記事にも「女性や初心者が増えた」と書かれていたり、自分の周りでもfacebookにサバゲーの参加報告をしている方が最近増えています。実際、私もサバゲーに参加する際にはいつも初心者が1~2割りくらい混じっていて「毎度こんなに初心者がいるんだ」と驚いています。
人口が増えている背景には、サバゲーフィールドが増えてきた、FPSのゲームやサバゲー漫画に影響されて、ダイエットに効く、銃や装備品の貸し出しをしているフィールドが増え手ぶらで行っても遊べる、などなど色々理由があると思います。特に手ぶらでも遊べるというのは初心者には嬉しいところですね。
そんな感じで新しい層が増えてくると、ミリタリーマニアだけで完結していた広がりが違う層にも伝わっていきさらに人口が増えていっているのかな、と思います。ただ、その広がりを強めている要因はやはりサバゲー自体のおもしろさや魅力にあると思います。
前置きが長くなりましたが、サバゲーの魅力について説明します。
・銃を撃つのが楽しい(ストレス解消)
・戦略性が問われる頭を使ったスポーツ
・体を動かせて健康的
・コスプレ的なおもしろさ
・装備のカスタマイズが楽しい
一般的には大体こんなところでしょうか。
しかし! 実は参加してみて感じた意外な魅力が他にもあります。
それは、
・コミュニケーションなしでも楽しめる
・なのに共闘してる感がある
という点です。
実はサバゲーには、大体土日に開催されている誰でも当日に参加できる「定例会」というものがありまして、私もこの定例会に参加しています。(数日前に予約が必要なものもあります)
で、この定例会ですが、フリー参加ということで初心者にはさらに敷居が高い……かと思いきやむしろその逆。主催者による最初の挨拶で基本的なルールを知らされチーム分けをされてからは基本的に自由。どのくらい自由かというと「他の参加者と一切コミュニケーションをとらずに遊べる」くらい自由です。各々自由に戦場を駆け巡り撃って撃たれて、疲れたら自由に休憩し、回復したらまた参加する、みたいな感じです。
しかも、そんな自由にやっているのに、周りの経験者たちが「正面の壁クリア!」「左側空いてます! Go!Go!」みたいな感じで声を出したり指示出ししてくれたりするので、あたかも彼らと共闘しているような感じで楽しめます。これがまたとても楽しい!
これ、まさに最近のオンラインゲームに通ずるところだと思いませんか?
実は私、以前はPCのオンラインゲームとかにすごい抵抗感がありました。時間は縛られるし、濃いコミュニケーションが必須なので。でも最近のPCやスマホのオンラインゲームは特にコミュニケーションを必要とせず、自由に遊べるものがトレンドになっています。
だから最近のオンラインゲームはむしろ大好きで、サバゲーもそれと全く同じ流れで好きになりました。冒頭で敷居が低くなってきたことを書きましたが、それと合わせてこういった意外なサバゲーの魅力に触れた初心者が徐々に広げていっているのかもしれませんね。
■サバゲーから学ぶこと
また、こういったオンラインゲームに近い感覚を感じられるということは、それをオンラインゲームの制作や運営に活かせるということです。どうすれば敷居を低くできるのか、魅力の本質をどう伝え広げていくのか、そして経験者と初心者がどう絡むとうまくゲームが回るのか、などなどヒントが散りばめられています。
特に先述の「経験者と初心者の関係性」などはオンラインゲームにおける一つの課題であり、新規流入や継続率を上げていくためのポイントになるのではないでしょうか。
まさかサバゲーをやることでこんなにゲーム制作に刺激を受けるとは思っていなかったので、楽しみながら仕事も捗り一石二鳥なのでした。なお、凝りすぎると装備にお金をかけまくったりすることになるので、程よく楽しまれることをお勧めします。 ではでは今日はこの辺で!
P.S.
最近のサバゲーフィールドの近くには結構温泉施設があります。なので、私はサバゲー後は必ず温泉につかってから帰るのですが、これがまた気持ちいい。ただ温泉に入るよりも格段に気持ち良く、湯船に浸かるとついつい「ぬは〜〜」と声が漏れてしまします。
どうも「サバゲー温泉ツアー」なるものも結構あるらしく、やはり「サバゲー×温泉」の組み合わせはストレス社会に生きる我々サラリーマンにとって癒しの嗜みとなりえるのではないでしょうか。特に日々胃を痛める機会の多いプロデューサーの方々には強くお勧めしたいところであります!
■著者 : 岩野弘明
スクウェア・エニックス第10ビジネス・ディビジョン(特モバイル二部) プロデューサー。『乖離性ミリオンアーサー』を筆頭に、同シリーズ全体のプロデュースを担う。
岩野氏のツイッター:https://twitter.com/Iwano_Hiroaki
■スクウェア・エニックス
企業サイト
■スクエニ 安藤・岩野の「これからこうなる!」 バックナンバー
■第23回「心が折れそうなときに読む話」 (安藤)
■第22回「「がっこうぐらし」のニコ動再生数が異常な件について」 (岩野)
■第21回「打ち合わせや会議が増えたときに読む話」 (安藤)
■第20回「「ラブライブ!」の魅力ってなんだと思う?」 (岩野)
■第19回「良い作品をつくるために必要な三つのこと」 (安藤)
■第18回「スマホゲームにおけるプロデューサーの重要性」 (岩野)
■第17回「私はなぜスクエニの部長をやめたのか?」 (安藤)
■第16回「日本のスマホゲーム業界が危うい」 (岩野)
■第15回「サラリーマンクリエイターの働き方はすでに限界を迎えている」 (安藤)
■第14回「ゲームを売る上で一番大事な人」 (岩野)
■第13回「市場のピンチを知らせるクリエイターからのSOS」 (安藤)
■第12回「F2Pゲームにおける最強の商品とは?」 (岩野)
■第11回「今後どんなゲームが売れるのか、全力で考えてみた」 (安藤)
■第10回「開発初期段階で必ず決めなくてはいけないこと」 (岩野)
■第9回「これからはプラットフォームの垣根が無くなると言ってきたけど、どうも違う。という話」 (安藤)
■第8回「打席に立つために必要なこと」 (岩野)
■第7回「ほとんどのターゲット設定は間違っている」 (安藤)
■第6回「売れるゲームには◯◯がある」 (岩野)
■第5回「ゲーム制作、これが無いとヤバイ。」 (安藤)
■第4回「IPを育てよう」 (岩野)
■第3回「制作費が二億円を超えそうなときに読む話」 (安藤)
■第2回「岩野はこう作ってます」 (岩野)
■第1回「ここに未来は予言される」 (安藤)
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■第23回「心が折れそうなときに読む話」 (安藤)
■第22回「「がっこうぐらし」のニコ動再生数が異常な件について」 (岩野)
■第21回「打ち合わせや会議が増えたときに読む話」 (安藤)
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■第19回「良い作品をつくるために必要な三つのこと」 (安藤)
■第18回「スマホゲームにおけるプロデューサーの重要性」 (岩野)
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■第16回「日本のスマホゲーム業界が危うい」 (岩野)
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■第11回「今後どんなゲームが売れるのか、全力で考えてみた」 (安藤)
■第10回「開発初期段階で必ず決めなくてはいけないこと」 (岩野)
■第9回「これからはプラットフォームの垣根が無くなると言ってきたけど、どうも違う。という話」 (安藤)
■第8回「打席に立つために必要なこと」 (岩野)
■第7回「ほとんどのターゲット設定は間違っている」 (安藤)
■第6回「売れるゲームには◯◯がある」 (岩野)
■第5回「ゲーム制作、これが無いとヤバイ。」 (安藤)
■第4回「IPを育てよう」 (岩野)
■第3回「制作費が二億円を超えそうなときに読む話」 (安藤)
■第2回「岩野はこう作ってます」 (岩野)
■第1回「ここに未来は予言される」 (安藤)
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)