【TpGS16】『Deemo』『Cytus』を手掛けた台湾・Rayarkの開発現場に潜入取材 『VOEZ』を含む新作4本の初出し情報も独占公開


2016年1月28日~2月2日、台湾は台北世界貿易センターにおいて、「台北ゲームショウ2016」が開催。台湾と言えば、人口2300万人ほどにも関わらず、Google Playの世界売上で、中国・日本・アメリカに次ぐTOP5にランクインするほど、成長著しい市場だ。今年は、台湾・香港を中心に世界各国から300社以上のゲーム企業が出展した。

本稿では、日本のユーザーからも高い評価を得ている台湾のゲーム企業・Rayarkを取材。同社と言えば、世界中で大ヒットを飛ばしている幻想的な音楽ゲームアプリ『Cytus』や『Deemo』を手掛けたほか、コンシューマゲームに匹敵するほどのハイクオリティを実現したモバイルアクションゲーム『Implosion(インプロージョン)』でも話題を呼んだ。それぞれ2~3年前にリリースされた買い切り制アプリにも関わらず、いまなお有料ランキングの上位にランクインする根強い人気を得ている。

今回「台北ゲームショウ2016」には出展していないものの、特別に会社へ訪問させていただき、代表の游(ゆう)名揚(ミン・ヤン)氏にインタビューを実施。新作4本の初出し情報をはじめ、数々のモバイルゲームが生み出された開発現場の取材など、Rayarkの現在と今後について迫ってみた。

 

■日本でもヒット連発 Rayarkが見据えるゲームアプリ市場とは



Rayark
CEO / Executive Producer
游 名揚

ゲームアプリ市場が賑わう昨今、日本ユーザーにおいて、最も知名度のある台湾ゲーム企業といっても過言ではないRayark。2011年9月に会社を設立し、当初16名ほどだったスタッフ数も現在では100名規模となった。

前述しているように、同社は大ヒット音楽ゲームアプリ『Cytus』や『Deemo』を手掛けたほか、コンシューマゲームに匹敵するほどのハイクオリティを実現したモバイルアクションゲーム『Implosion(インプロージョン)』、引っこ抜く快感を主題としたゆるキャラ癒し系ゲーム『Mandora(マンドラー)』と、これまで4本のモバイルゲームをリリースしてきた。全世界累計ダウンロード数は3500万を超えている。

同社のゲームアプリで特徴的なのは、4本中3本が買い切り制アプリであること。これについて游氏は「ユーザーに最後までゲームを楽しんでもらいたいからこそ」と語ってくれた。ただ、2016年リリース予定の新作4本に関しては、Free to Playを検討しているとのことだ。

また、同社は『Cytus』『Deemo』、新作の『VOEZ』といった音楽ゲームアプリを中心に手掛けていることも特徴。「設立メンバーのほとんどが、アーケードの音楽ゲームを開発していた経歴を持っている。そのため音楽ゲームの開発に精通しており、クオリティの高い作品が生み出せる」と游氏。
 
【Cytus】

 

【Deemo】

 
▲『Deemo』は、音楽ゲームには珍しく物語性を持たせているのが魅力。游氏いわく「当初はピアノの白と黒の世界だけを考えていた。しかし、それだとあまりにも孤独を感じたので、女の子を取り入れて物語を紡いでいった」と開発秘話を語ってくれた。


続いて、日本のゲームアプリ市場の印象を聞いてみると、「ランキングを見ても上位があまり変動しない。日本独自の文化が紐づいたゲームばかりで、なかなか海外企業が参入するのは難しい市場。しかし、日本のユーザーは課金する習慣があるため、きちんと好みを理解していれば、非常に豊かな市場だと思う」と持論を展開した。

では、日本ユーザーにおける“好み”とは一体何なのか。Rayarkのタイトルは多くの日本人ユーザーから親しまれているため、游氏も少なからず理解していることだろう。

日本人はストーリー性より絵柄(デザイン性)のインパクトを好む。とにかく日本の絵は独特。我々台湾の場合は、様々な文化が入ってきているため、多彩なデザインを生み出せる環境があると考えている」と説明してくれた。

とはいえ、ゲームを開発するときは、日本を含むアジアではなく、全世界を意識しながら開発に臨んでいるという。ここからは、気になる新作ゲームアプリ4本の初出し情報に迫っていく。

 

■2016年リリース予定の新作4本の最新情報を独占公開


【新作①】『VOEZ』


『Cytus』、『Deemo』に続く、Rayarkが放つ新作音楽ゲームアプリ第3弾『VOEZ』。これまで手掛けてきた幻想的な音楽ゲームとは異なり、ティザーサイトには鍵盤の上に座っている若い6人の男女が、音楽を聴いていたり、ギターを弾いていたり、本を読んでいたりと思い思いの過ごし方をしているキャラクターが掲載されており、ポップでキャッチーな世界観が特徴だ。

本作について游氏は、「Rayarkが手掛けてきた音楽ゲームの4年間の集大成です」と意気込みを語った。なかでも本作は、操作方法の企画・開発だけで1年ぐらいを費やしたという。「上からノーツが落ちてくるのは定番。差別化を考えたときに、下のレールをずらしたりと、決まった軌道に乗らない現在の形に行き着きました」と游氏。

ストーリーは、高校生が架空の町でバンドを結成するところから始まる。ちなみに町のモチーフは、台湾に実在する自然豊かな海沿いの町・宜蘭(イーラン)。基本的なゲームサイクルは、従来の音楽ゲームと同様に楽曲を選んでステージクリアーを目指すのだが、進めていくと登場人物の日記が見られるなど、ストーリーが進行していく。






画期的なのが、『VOEZ』のキャラクターたちはリアルタイムで成長していくことだ。今は高校生の設定だが、この2年後には大学生になるなど、現実世界の時間軸と併せてアップデートをかけていくという、かなり斬新な運営方法を採用している。なお、アップデートは3ヵ月ないし半年のスパンで実施。

中国版以外はワンバイナリーで、言語の一斉配信は現在検討中とのこと。Free to Playでマネタイズは楽曲を購入する形を採用。リアルタイムで進行するゲームとのことで、新学期が始まる2016年4月末の配信を予定している。

なお、Rayark本社の1階には、『VOEZ』の世界観をイメージしたカフェをオープンする予定。「プレイヤーに親しまれる店舗を目指します。日本でいう聖地巡礼みたいな感じですかね(笑)。こちらも4月中のオープンを予定しています」。
 


■『VOEZ』
 


【新作②】『Soul of Eden』


『Soul of Eden』は、適切な操作や思考でモバイル向け対戦型ゲームを進化させたタイトル。游氏は「まだモバイルではe-sports向けのタイトルは少ないと思っています。本作は、e-sports向けのタイトルとして、モバイル上の操作性はもちろん、ゲームを知らない人でも観戦していた面白い、見やすいインターフェイスをこだわって開発しています」と語った。



随時補充されていくエネルギーを用いて、手持ちのユニット(カード)をフィールド上に出現させ、先に相手の拠点を攻め落としたほうが勝利となる。時間が進むにつれて、エネルギーの補充スピードも上がるため、後半には強いユニットを出せて一発逆転のチャンスにも恵まれる。操作はMOBAやRTSに比べると比較的簡単だが、戦略上ではタイミングと位置の選択がバトルの結果に大きな影響を与えるので、一工夫する必要がある。

登場ユニットには、英雄、兵士、建築物と魔法など個性豊かなものが含まれている。初期ユニット数は200体を予定。ガチガチのSFファンタジーかと思いきや、大砲に人間が入っていたり、爆弾抱えた豚がやられたら、そのまま豚の丸焼きとなり、自軍のユニットがそれを食べたらパワーアップするなど、一癖も二癖もあるユニークなユニットも登場する。

すでに『Soul of Eden』の開発期間は1年を超えている。先日送られてきたプレスリリースでは、ゲーム内容の発表を本来今夏に行う予定だったが、半年も早まった理由について、Supercellの新作『Clash Royale』(関連記事)のゲームプレイが、『Soul of Eden』のゲームプレイに似ていることを挙げていた。

プロジェクトのオリジナリティーにこだわってきたRayarkは、将来の不必要な誤解や憶測を避けるため、ゲーム内容を今の時点で明らかにすることにしたのだが、これについて改めて聞いてみたところ、「もう(『Clash Royale』のリリースを)見た瞬間、頭を抱えました(苦笑)」と切り返した。説明にある通り、『Soul of Eden』はすでに1年前から開発している。たしかに『Clash Royale』とはゲームプレイで類似点も見られるが、戦闘システム、戦術、操作及び陣営対抗の世界観の面では相違点がたくさん存在。

リリースは「夏休み中には出したい…」と語った。なお、マネタイズはFree to Playでガチャを採用するとのこと。
 

▲当日は『Soul of Eden』のプロデューサーにも同席いただき、解説してもらった。
 






▲すでに社内では開発版でゲーム大会が行われている。賞金が出ることもあり、みなさんかなり真剣にゲームをプレイ。周囲ではほかのスタッフたちが歓声をあげていた。
 
■『Soul of Eden』
 

公式Facebook



【新作③】『Sdorica -sunset-』


『Sdorica -sunset-』は、昔懐かしい温かみある2Dコンソールゲームを、そのままゲームアプリに落とし込んだようなタイトルだ。游氏は、昨今のゲーム市場について、「たくさんのRPGが溢れている。だからこそ、徹底的にこだわったクリエイティブを実現し、埋もれないようにしなければならない」と語った。コンセプトは、「誰もが見た瞬間に驚くようなゲーム」とグラフィックのこだわりについて触れた。

ちなみにジャンルはアクションRPGなのかと聞いてみたところ、「うーん、なんとも言えないですが、新しい感覚のプレイの仕方だと思います。RPGですが、パズルでもあり、シミュレーションでもあり、難しいですね(苦笑)」と明言は避けたが、未曾有のゲーム性を築き上げていることを匂わせた。画面ではひとりのキャラクターしか映っていないが、何人も仲間を引き連れていくことも可能とのこと。

なお、開発期間は現在2年目。Free to Playとして日本でもリリース予定という。










【新作④】『Cytus II』


2015年12月5日に台湾で開催された大型リアルイベント「Rayark Con 2015」において、『Cytus II』が電撃発表。以前、ゲーム概要は明らかにされていないが、游氏に現在の状況を尋ねてみたところ、「遊び方は継承します。ただ、もっとアドベンチャー的な要素を取り入れていきます。さらに、色々なところに“行ける”要素も検討しています」と新情報を聞き出すことができた。

リリース予定は2016年12月とのことだが、「我々はよく延期するのであまり信用しないでください(苦笑)」と言葉を添えた。とはいえ、素晴らしいゲームに昇華されるのであれば、Rayarkファンなら延期もいとわないだろう。
 
 

ちなみに『Soul of Eden』に関しては、わずか10名のチームで開発しているという。「『Cytus』は4人、『Implosion』は10人ですね」とどのチームも少数精鋭で開発していることを明らかにした。人材採用に関して聞いてみると、「弊社のスタッフは非常にスペックが高いです」と游氏。

最後にRayarkとしての目標については、「我々も『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』のような国民的タイトルを作りたいです。今後も日本市場は意識しますし、何かしら大々的にプロモーションも行っていきます」と意気込みを語ってくれた。
 
 

■ここで数々の名作が生み出された…Rayark会社訪問

 
取材後、游氏の粋な計らいで、特別に会社を案内してくれた。
 

▲エントランスでは、Rayarkの関連グッズが並ぶ。
洒落たBGMも流れており、雰囲気はカフェそのもの。



▲『Deemo』の世界観を再現した会議室。


▲『マンドラー』の世界観を再現した会議室。









  


▲創業メンバーの写真。




▲なんと開発現場は土足禁止。



▲アイデアやゲームの仕様がホワイトボードにびっしり。




▲『DJMAX TECHNIKA』の筐体が設置。


▲黒光りな『Deemo』のフィギュア。日本で大人気の某ハンティングアクションゲームに登場するキャラクターの被り物がチャーミング。





 
▲日本のコンテンツが随所に置いてあった。開発スタッフ自身が日本のコンテンツに好意的だからこそ、おのずとゲームも日本人にも親しまれやすいクリエイティブになっているのだろう。






▲ここは、『Implosion』を原作とする長編アニメ映画『The Implosion: ZERO DAY』の制作現場(関連記事)。アニメーター・CGクリエイターなどを合わせて、制作メンバーはわずか10名とのことで、ここでも少数精鋭を貫く。





 
▲『Soul of Eden』の開発チームには、3Dプリンターが完備。

ちなみにRayarkの社内は、Googleマップでも見ることができるため、興味ある方は覗いてみてはいかがだろうか。
  
(取材・文:編集部  原孝則@ha_tatsu
(取材協力:スパイスマート


■Rayark
 
■『Cytus』
 

■『Mandora』
 

■『Deemo』
 

■『Implosion』
 

■「台北ゲームショウ2016」特集
 












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