【App Annieセミナー】マーケティングデータを有効に使うには? 海外展開における注意点についても解説
App Annieは、2月17日、都内にてゲームアプリ業界向けセミナー「DECODE Games Tokyo Q1 2016」を開催した。
今回で8回目の開催となる「DECODE」は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、ソウルなど、日本以外の世界各都市でApp Annieが主催して行っているイベントだ。毎回、テーマに沿ったゲストが講演を行い、アプリ業界の交流や発展に貢献している。
当日は、App Annieの滝澤琢人氏が登壇して「モバイルゲーム市場の現状とトレンド」について話したほか、エイチームの柴田健介氏、KDDIの千葉好信氏、CROOZの須藤英樹氏を招いて、それぞれの視点から「マーケティングデータの活用方法と組織作り」についての講演を行った。
本セミナーでは、App Annieで扱っているデータを始め、どのようなデータをどう使用して商品戦略や事業戦略を立てているのかや、データを使用するにあたっての組織体制、今後の事業計画や海外戦略などについての話が展開された。本稿では、その様子を前後編の2回に分けてレポートしていく。
■これからどうなるモバイル市場!? 過去から推測する未来の形
まずはオープニングセッションとして、App Annie カントリーディレクターの滝澤琢人氏が登壇。これまで公開したレポートをもとに、昨年の総括や新興市場最新動向についての講演を行った。
▲App Annie カントリーディレクターの滝澤琢人氏。
始めに題材として挙がったのは「市場予測レポート」について。滝澤氏曰く、「昨年は410億ドル(約4.66兆円)だったモバイル収益が、今年は500億ドル(約5.69兆円)、さらに5年後には1000億ドル(約11.3兆円)を突破するのではないか」という。これは、年平均の成長率を約20%で予測してとのこと。
また、アプリストア別の収益については、最もコンテンツに消費している額が多いiOSが伸び続けるだろうとしながらも、これをあくまでも現状の流れを見ての予測とし、ダウンロード数では、今後、デバイスが普及していくとの予想からAndroidがiOSを上回ったり、その他のサードパーティがダークホースになり得る可能性もあるとの指摘も忘れなかった。
そのほか、アプリのカテゴリー収益を見たとき、現状では売り上げの8割をゲームが占めているが、5年後にはその比率が7割5分ほどにまで下がるだろうとしている。
▲非ゲームとゲームで、アプリに直接課金した収益を表すグラフ(※青色部分がゲーム、紺色部分が非ゲームの売り上げ)。真ん中の円が2015年の比率、外側の円が5年後の比率を予測したものとなっている。
これは、市場の成長に従って予測したもので、「モバイルを通じて派生していく外部決済など、捕捉しきれていない部分を含むと非ゲームの売り上げ効果は計り知れない」と滝澤氏はコメントした。
「市場予測:モバイルアプリ市場、2020年に1000億ドル突破」の無料ダウンロードはこちらのURLから:
https://www.appannie.com/jp/landing/forecast
続いて表示されたのは「モバイルゲーム市場 マクロトレンド」と書かれた資料。こちらは、2013年以降のiOSとAndroidのダウンロード数と収益の推移や、新興市場のゲームダウンロード数、収益などを調査したレポートとなっている。
▲資料内のグラフからは、iOSの普及が進み、ダウンロード数が減少傾向にあること、逆に、Androidは新しい端末の利用者が増えていることなどが見てとれた。
▲カテゴリーを「ゲーム」に絞ったグラフについては、先述した通り、5年後には下がっていくと予想している。
また、滝澤氏は、新興市場の中でダウンロード数を見比べたときに最も成長しているのがインドのAndroid、収益では中国のiOSが牽引する形となっていることにも言及した。
特に、日本やアメリカ、韓国といった先進国市場に追いつく勢いでダウンロード数が伸びている「BRICs」(※ブラジル、ロシア、インド、中国を合わせた数値)には注目しているという。
▲数で言えばもちろん中国が原動力となっているが、成長率という部分では先ほども挙げたインドが急激に伸びていることが分かる。
さらに、「アジア新興市場各国のゲームトレンド」からは、ダウンロード数や収益、月間アクティブユーザー数の多いゲームの傾向から、中国でこれまであまりゲームに触れてこなかった新規ユーザーが開拓されていることや、タイでMMORPGから派生したゲームが収益をあげていることから、ユーザーのハードコア、ミッドコア化が進んでいることなどが見てとれた。
最後に、「ユーザーセグメント」では、タイトルは伏せるてあったが、日本でトップセールスを記録する2タイトルのMAU(※月に1回以上活動のあった利用者の数)を1年半前まで遡って比較し続けたグラフが表示された。
▲緑が『タイトルA』のAndroidでのMAU、黄色が『タイトルB』のAndroidでのMAU、青が『タイトルA』のiOSでのMAU、赤が『タイトルB』のiOSでのMAUの推移を示している。
この変化について滝澤氏は、Google Playが変化の激しいプラットフォームであることや、『タイトルA』はiOSユーザーをしっかりと掴んでいるということが分かると解説を行った。
また、ユーザーが使用しているアプリ間の行き来をデータとして見られる機能を紹介し、締めとした。
■マーケティングデータの分析で効率化に成功 海外展開にも効果大
続いて登壇したのは、エイチーム エンターテインメント事業本部 マーケティンググループ マネージャーの柴田健介氏。「App Annieの活用についてとゲームアプリの海外展開」をテーマに講演を行った。
▲エイチーム エンターテインメント事業本部 マーケティンググループ マネージャーの柴田健介氏。
なお、現在のエイチームの注力タイトルして『ユニゾンリーグ』や『三国大戦スマッシュ!』などが挙げられた。また、リリースから約3年経った今でも好調に推移している競馬ゲーム『ダービーインパクト』や、北米向けに展開しており今月で4年目に入る『ダークサマナー』など、息の長いタイトルも運営している。
まず始めに、柴田氏は「エイチームではアプリ事業戦略における意思決定のサポートのためにApp Annieを利用している」と語ってくれた。意思決定の際には、明確な数字のデータが重要な根拠や裏付けになるという。
具体的にどのようなときにApp Annieを使用しているかという点に関しては、「プロモーション計画立案の際の調査」や「新規企画立案の際の調査」をするときという話も。プロモーションやPR施策の戦略立案などを行う「マーケティンググループ」と、海外展開戦略立案や自社アプリのローカライズを行う「グローバルビジネスグループ」の2部門での使用頻度が高いとのこと。
マーケティンググループでは、プロモーションを行ううえで、競合調査の際にApp Annieのデータを活用している。その理由について、柴田氏は「競合アプリの過去の実績をApp Annieで見て、ダウンロード数や売り上げの推移から上がっているところで何が起こったのかを深堀りしていくのが基本になります」と説明。
各国のネイティブスタッフで構成されているというグローバルビジネスグループでは、App Annieで各国のアプリトレンド調査を行い、トレンドタイトルがヒットしている要因を分析するのに役立っていると話した。
また、開発や運営のメンバーもApp Annieのデータにアクセスできるようにしたことで、部門を問わず普段から市場動向を見る習慣付けができたと柴田氏は語る。以前は、簡単な調査でも運営メンバーからマーケティンググループに依頼していたが、今は運営メンバーがApp Annieで直接調べられるようになったので、かかる時間が減ってスピードアップに繋がっているとの話も。
ここからは海外展開についての話へ。
アジア圏に関しては、国によって特殊なプロモーションやゲームの内容変更などもあるため、現地のパブリッシャーに委託することもあるという。その際、パブリッシャーの選定にApp Annieのデータを参考にしているとのこと。
▲柴田氏は「上位にいるパブリッシャーの中でも、自分たちがやろうとしていることと、システムや運営方針が近く実績のあるところを選ぶことが大事」とコメント。
さらに、『ダークサマナー』と『ユニゾンリーグ』のUS展開を具体事例として紹介してくれた。
まず『ダークサマナー』では、「ダークファンタジーの世界観を崩さないように気を付けました」と話を展開。その対策として、下記の点を重視して調整を行ったと柴田氏は語る。
①言葉の表現
②コンセプトの打ち出し方
▲ゲームの世界観にあわせて表現を変更し、カルチャライズやローカライズを進めた。また、現地で対象となるユーザーを集めてグループテストを実施。フィードバックと修正の繰り返しを必ず行っていたとのこと。
一方、『ユニゾンリーグ』では、北米の人気ゲームが採用しているフォローシステム「フォーラム」を真っ先に導入。フォーラムでは、ゲーム内でユーザー同士が気軽に質問や相談を行える。これは、コメントを見るだけの人が多い日本に対して、アメリカでは発言する人が多いとの印象を受けたことが導入の決定打となった。
また、攻略やキャンペーンの情報はFacebookページで展開。日本では現在、Twitterが主流となっているが、アメリカではFacebookの反応が日本と比べて数十倍まで伸びることが大きな要因となったようだ。
デザインについては、バトルやモンスターを軸に訴求した方が良いのではという予想に反して、現地で行ったグループテストではアバターやコミュニケーションを訴求した方が反応が良いという結果に。柴田氏は「仮説を立てることは大事ですが、いろんな国の方にフィードバックをもらって検証し、データを活用して判断していくことが重要だと学んだ事例でした」と当時の様子を語ってくれた。
そのほか、広告についてもアメリカではYOUTUBERの影響力が強く、費用対効果が高いという貴重な情報も。『ユニゾンリーグ』では、現地で人気のYOUTUBERを活用してプレイ動画を公開している。
最後に、おさらいとしてこれまでの注意点をまとめ、講演を終えた。
記事の後編では、KDDIの千葉好信氏、CROOZの須藤英樹氏の講演内容をレポートしていく。こちらは後日掲載。
(取材・文:編集部 山岡広樹)
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイチーム
- 設立
- 2000年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 林 高生
- 決算期
- 7月
- 直近業績
- 売上高239億1700万円、営業利益5億6200万円、経常利益6億900万円、最終利益9億5300万円(2024年7月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3662
会社情報
- 会社名
- data.ai(旧App Annie)