【インタビュー】スタッフとファンの魂まで受け継ぐ―マイネットゲームスでポケラボのゲームはいかに成長していくのか、両社社長に展望を聞く


 
4月21日、マイネット<3928>は、2016年5月にポケラボが行う吸収分割後の分割会社「マイネットゲームス」の全株式を取得して子会社化、そこで現在ポケラボが提供しているスマートフォンゲーム『戦乱のサムライキングダム』および『三国 INFINITY』の配信権等を取得すると発表した(関連記事)。ポケラボの全従業員・開発中プロダクトは承継会社が引継ぎ、新生「ポケラボ」の商号で経営を継続していくことも明らかになった。
 
マイネットといえばこれまでにもスクエア・エニックスの『三国志乱舞』などの運営移管を行い、成功を収めてきたが、それに2タイトルが加わる形になる。しかし、ここまで大きな取り組みとなると前例がない。一方のポケラボとしても、スマートフォンアプリのシーンをリードしてきた同社にとって大きな転機を迎えることは間違いないだろう。
 
一体このような取り組みは、どうやって決まったのか。そして今後の両社、そしてゲームタイトルはどんな展開を見せるのか。気になることをマイネットの代表取締役社長・上原仁氏(写真左)と、ポケラボの代表取締役社長・前田悠太氏(写真右)に伺ってきた。
 

■新たな挑戦のため運営移管に踏み切った

 
――本日はよろしくお願いします。突然の発表で驚きましたが、今回の取り組みがどんな内容なのか、改めて教えてもらってもいいですか。
 
上原氏(以下、上原):よろしくお願いします。まず、今回の発表はポケラボさんが吸収分割する分割会社「マイネット ゲームス」の全株式を取得し、子会社化するというものです。子会社化により、元々のポケラボさんで運営していた2ゲームの配信権などを引き継ぐ形になります。
 

▲戦乱のサムライキングダム

▲三国INFINITY

 
――子会社化に踏み切った、そもそもの経緯を教えてください。
 
前田氏(以下、前田):まず大前提ですが、ポケラボとして新規開発しているゲームに集中したいという思いがありました。しかしこれまで大切に運営してきた『戦乱のサムライキングダム』および『三国INFINITY』を引き続き大切に運営継続しながら、どのように新規開発ゲームに集中するのがよいのか、という悩みがありました。
 
そんなときに、マイネットさんへの運営移管の話が出てきたのです。TVCM後でアプリとしてもコンディションの良い『戦乱のサムライキングダム』に強い関心を持って頂きました。マイネットさんには従前より『三国INIFINITY』の運用をお願いしていて、非常に大切に扱っていただいた経緯があります。なので『戦乱のサムライキングダム』も含めて全体的な運営をお願いさせていただき、私たちとしては新規開発へ本格的に踏み切ろうと考えました。
 
上原:前田さんとは『三国INIFINITY』を通して、約1年前からお付き合いをさせていただいております。両社のスタッフ間での交流も盛んですし、作品の実績という意味でも、当初設定していた期待値を超える状態をキープできています。また弊社は、この1年の間に業界屈指のM&Aチームを作ることができ、本件のような課題解決もスムーズに実行できました。

 
――ポケラボさんとしては、新たな挑戦のための運営移管ということですね。
 
前田:そうなります。新規タイトルに関しても、『三国INIFINITY』『戦乱のサムライキングダム』で得たノウハウを充分に使ったタイトルを予定しています。それだけに、これまでこのタイトルを作ってきた仲間の力を借り、ポケラボとして、これ以上できないと言えるレベルの新規ゲーム開発という挑戦をしたかったのです。

 
――とはいえどちらも人気タイトルですし、決断をするにも苦労があったのではないでしょうか。
 
前田:お客さまからの支持も高いタイトルですからね。『戦乱のサムライキングダム』で言えば2年以上に渡り運営していて、お客さまの熱量も非常に高いです。ファン感謝祭などのリアルイベントも盛況ですし、「ポケラボチャンネル」という動画番組では、ファンの方々と一緒に改善案を考えたり、独自のコミュニティが築けたりしています。我々もその熱量、思いの強さは重々承知していますので、変な形での運営移管は絶対できないと決めていました。
 
だからこそ、『三国INIFINITY』で運営の実力を知っているマイネットさんに、『戦乱のサムライキングダム』のコンディションが良い状態のこのタイミングでお願いしたのです。実際に運営移管の話を進めてから現在までも、非常に作業がスピーディで驚かされました。

 
――マイネットさんからすると、これまでの取り組みとはまた少し違いますよね。
 
上原:ユーザーさんに対する接し方という意味ではこれまでと変わらず、しっかりと対応していきたいと考えています。これまで当社は運営移管を18件行いまして、ノウハウ、バッドノウハウの両方を蓄積してきました。今回もそれを存分に活かせると考えています。『三国INIFINITY』を通して、双方の関係性が以前から作られていたのも大きかったです。
 
反面、株式譲渡という方式でゲームを移管していただくというのは初めてのことであり、難度の高い進行であったことも事実です。しかし、そこは先ほどもお話したM&Aチームが活躍してくれたので、私たちから見てもかなりスムーズに作業を進めることができました。

 
――今回の運営移管によって、ゲームにはどのような影響があるのでしょうか。
 
上原:当社の胸を張れる部分として、コラボレーションの強さと、データに基づいた新たなキャラクターの創出があります。これはぜひ両タイトルに付加価値として与えていきたいです。そして、今の『三国INIFINITY』『戦乱のサムライキングダム』のスタッフが培ってきたものを、魂ごと引き継ぐことを使命ととらえています。ですから、ある意味では何も変わらないことが魅力と言えるかもしれません。つい最近まで新機能が追加されたりと、安定した成長を見せてきたタイトル群ですし、その流れは今後も同じです。
 
前田:マイネットさんはこれまでにも、GvG(Guild vs. Guild)エンジンを搭載したタイトルを運営して、成功を納めています。GvGの運用は特殊なノウハウが必要ですが、その知見を持っているスタッフさんがマイネットさんに揃っているのも、我々としては心強いところです。そしてポケラボとして大切にしているのが、開発者自身が圧倒的なファンであることです。例えば『戦乱のサムライキングダム』であれば、メンバー全員にものすごく愛に溢れているので、お客さまともインタラクティブなコミュニケーションが取れています。

 
――スタッフの作品に対する愛という意味でもしっかりと受け継がれているのですか?
 
前田:この話が始まったときからマイネットさんのスタッフの皆さんがゲームをプレイしてくださっているみたいで、今ではかなりのレベルになっています(笑)。これもまた、上原さんの言った「魂ごと引き継ぐ」の一部分だと思います。私たちも魂ごと受け継いでくれると感じたのも、運営移管に踏み切ったポイントですね。
 
上原:以前両社のスタッフ間で話し合いをしたときに、「ゲームをどれだけプレイしているか」という話になったんですね。そこで当社側のスタッフがレベルを教えると、ポケラボのスタッフの方々が「おぉ!」と驚いておられました(笑)。
 
前田:あの瞬間は、全員が無言の握手を交わせた状態でしたね(笑)。
 

 
――マイネットさんがコラボレーションに強いことは有名ですが、前田さんとしても期待は大きいのではないでしょうか。
 
前田:もちろんです。数多くの運営移管をしてきた中で、コラボレーションは他にはない強みになっていると、我々から見ても感じていました。コラボレーションのやり方、種類にも幅があり、今から大いに期待しています。また、元々のお客さまが本当に求めているものを提供してくれると思います。
 
上原:過去には、当社が運営しているタイトルと、『戦乱のサムライキングダム』がコラボレーションした実績もあります。その経験も十分に生かせると考えています。

 
――一方の上原さんとしても、今回の2作品に強い魅力を感じたからこその取り組みだと思います。
 
上原:『戦乱のサムライキングダム』については、先ほど前田さんもお話していたGvGの盛り上がりが大きな魅力ですね。ポケラボさんがシステムを洗練させ続け、ギルドも非常に盛況です。また、ポケラボチャンネルなどのおかげで、ユーザーさんと運営チームの距離が近いのも、本作ならではだと思います。
 
『三国INIFINITY』に関しては約1年前から運営に携わっていますが、コアユーザーの方々が熱心にプレイしているタイトルだと常々思いながら見ていました。最近はキャラクターの魅力を押し出すことで、新しいユーザーさんの獲得にも成功しています。コアユーザーと新規ユーザーの二層構造が完成しており、私たちとしても運営のしがいのあるタイトルと認識しています。

 
――これまではポケラボチャンネルがスタッフとユーザーを繋ぐ場として活躍していましたが、今後も動画番組は続けていくのですか?
 

▲2015年4月より社内スタジオから配信されている生放送番組

上原:まず、ポケラボチャンネルでの『戦乱のサムライキングダム』の番組配信に関してはこれからエンディングへ向けて動き始めます。両社がタッグを組んでシナリオを作り、ときには当社のスタッフが番組に出演しながら、今後について発表する機会をいただきます。そして、エンディングを迎えたあとはマイネット側から新たな番組を新しいメディアでスタートさせます。その開始の際には、ポケラボさんのスタッフの皆さんにもご出演いただき、一緒に番組を成功させていきたいと考えています。
 
ユーザーさんとのコミュニケーションという意味では、オフラインイベントも定期的に開催したいですね。他のタイトルでも積極的に実施していますが、その流れは新しい2タイトルでも変わらず、ユーザーさんの思いを直に聞ける場としていきたいです。

 
――運営移管のニュースで、これからどうなるか不安に思っているユーザーもいるかと思います。番組などを通してどんな説明をするかは、とても重要になってきますね。
 
上原:移管後の新たなスタートは5月31日を予定しているので、今後1ヶ月ですね。この1ヶ月は当社としても重要な期間と考えており、しっかりと誠意を持って、作品もユーザーさんも大切にしていきますというコミットを発信していきたいと思います。ユーザーさんにはぜひ番組を視聴して、これからの展開に期待してもらいたいです。

 
――では、今後の運営方針についても、ポケラボさんの意思を尊重すると考えていいのですか?
 
上原:当面はポケラボさんの方針を踏襲し、今までどおりの運営を心がけます。ゲームを成長させるためのロードマップがポケラボさんにはあり、ユーザーさんもロードマップに期待をかけている側面があります。ここにもさまざまな思いが詰まっているので、私たちは決して無駄にすることなく、最大限活用していきたいと考えています。

 
――前田さんをはじめ、ポケラボさんサイドから方針に要望を出したことはありますか?
 
前田:手前味噌ではありますが、長く運営してきたタイトルであり、誰よりもゲームのことを知っているという自負があります。当然ロードマップも、これまでの知識を活かして作成していますし、お客さまに楽しんでいただけるものと確信しているのです。なので、ここはぜひとも今後の運営に使ってほしいとお願いしました。それプラス、コラボレーションなどマイネットさんの強みを発揮していただけるのが、お客さまにとって一番だと考えています。
 
上原:ゲームのフェーズによって、運営のあるべき形も変わってきます。『戦乱のサムライキングダム』も『三国INIFINITY』も、それぞれ違ったフェーズに入っているので、しっかりと準備したうえで運営を進めていきたいです。

 
――ロードマップというお話も何度か出てきましたが、具体的にこれからどのように成長させていくのか、教えてもらえますか。
 
前田:『戦乱のサムライキングダム』の面白さは、やはりリアルタイムのGvGに尽きます。ですから今後は、GvGの参加率を上げ、よりいっそう盛り上げることを基本方針にしています。古くからのお客さまにとっては、ギルド内でのつながりを強く感じられるようにしたいですし、ライトなお客さまには参加したくなる導線をより多く作っていこうとしています。
 
上原:クエスト部分に関しては、ごく直近に大幅な修正をかけたところです。このクエストをベースにしたイベントもこれから積極的に仕掛けていきますので、楽しみにしてほしいです。そして『三国INIFINITY』は、私たちが運営する中でも熱量の高さをひしひしと感じるタイトルです。この熱量を削がないようなアップデート、改修を進めていきます。

 
――ファンの熱量もまた、受け継いでいくのですね。
 
上原:先ほど話した「魂ごと受け継ぐ」というのは、ユーザーさんの思いを無駄にしないという意味も込められていますね。

 

■運営移管はスタッフにもメリットがある

 
――5月31日に新たなスタートをきるというお話でしたが、作業としてはゴールが見えてきているのでしょうか。
 
上原:これまでは入念な下準備、情報の精査をしていた段階で、いよいよ本格的な作業に入ろうかというところです。運営移管においては、タスクの細分化と可視化が必須要件だと考えています。これは本件に限らずすべてに言えることですが、運営がスムーズに行えているか、タスクやアクションに非効率な部分がないかを確かめる絶好の機会なのです。

 
――下準備や情報の精査では、作業のタスクもチェックしていたと。
 
上原:はい。そして新たな運営が始まるタイミングで、新たなワークフローに切り替えます。そうすることによって、現場オペレーションのBPRが実現し、運営移管の付加価値にもなります。長く運営すればするほど、実はもっと効率的に作業できる箇所が出てくるものです。しかし実際には、なかなか修正することはできません。

 
――それを修正できるということは、運営移管はスタッフにとってもメリットがあることになります。
 
上原:もちろん今回の2タイトルに非効率な部分があるかは、今後明らかになってくるところです。ただ、過去のタイトルでは8割ほどは効率化に成功していますし、両タイトルでスタッフの負担が軽減できる可能性は十分あります。
 
前田:例え必要な作業であっても、役割分担を変えたり、プロセスを見直したりすることによって効率化ができる可能性もあります。メンバーがよりプロフェッショナルな分野に挑戦できる運営移管になるのではと期待しています。

 
――分かりました。では、今後運営していくにあたって、注目してもらいたいポイントがあればお願いします。
 
前田:やはりマイネットさんだからできる味付けですね。コラボレーションはもちろん、キャラクターも今まで以上に魅力的になっていくはずですので、楽しんでもらいたいですね。「魂の運営移管」というお話は何度かさせていただきましたが、ユーザーさんへの理解もそのまま引き継いでもらえるよう、我々も努力を続けます。良い関係性を持続した状態で、適切な成長を感じていただけたらと思います。
 
上原:ユーザーさんが楽しみにしている部分、例えば『戦乱のサムライキングダム』でいえばGvGですね。ここを常に良い状態に維持することが大切だと考えています。一番のコアバリューを無駄にすることは許されませんし、スタッフ全員が共通の意思で取り組んでいきたいです。


 
――最後に、運営移管を通して会社をどのように成長させていきたいか、展望があれば教えてください。
 
前田:我々としては明確に、『戦乱のサムライキングダム』のノウハウを使って、ファンの皆さんにより楽しんでもらえる新規のゲームを作っていくことが第一の目標です。これまでのお客さまにも驚いてもらえるような作品に仕上げることが使命ととらえているので、ぜひ期待してください。
 
上原:マイネットとしては、セカンダリーマーケットで圧倒的な存在になることが基本的な方針であり、今回の取り組みもその一環です。当社のようなサービス運営に特化した会社は、これからなくてはならない存在になると思います。ポケラボさん然り、ゲーム開発を得意とする会社は多くいらっしゃいます。私たちはそんな方々が作り上げた作品を、1人でも多くの人に届けるプロフェッショナルでありたいと考えています。将来的には、ゲームサービスの運営に特化した会社を、ゲーム産業のひとつとして定着させたいです。

 
――ちなみに、ポケラボさんが開発する新タイトルと、マイネットさんのタイトルがコラボレーションする可能性は…。
 
前田:もちろんありますよ。
 
上原:絶対やりましょう!

 
――コラボレーションも含め、今後の展開にも期待しています。本日はありがとうございました。
 
(取材・文:ライター ユマ)


 




 


 
株式会社ポケラボ
http://pokelabo.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ポケラボ
設立
2007年11月
代表者
代表取締役社長 前田 悠太
企業データを見る
株式会社マイネット
http://mynet.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社マイネット
設立
2006年7月
代表者
代表取締役社長 岩城 農
決算期
12月
直近業績
売上高87億1700万円、営業利益1億6800万円、経常利益1億2500万円、最終利益1億4300万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
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