【インタビュー】ドリコムが掲げるゲームづくりと文化に迫る ―― 誰もがチャレンジできる開発現場でユーザーに面白さや価値を届ける

ドリコム<3793>は、7月27日、第1四半期(2016年4~6月期)の連結決算を発表し、売上高17億5000万円(前年同期比7.1%増)、営業利益2億3300万円(前年同期2億0500万円の赤字)、経常利益2億2200万円(同2億1000万円の赤字)、最終利益1億1500万円(同1億5300万円の赤字)と、増収・黒字転換に成功(関連記事)。

また現在は、IPタイトル中心の戦略に転換し、人気競馬ゲーム「ダービースタリオン」(仮)の開発をはじめ、IPタイトルを4~5本計画中であることも明かされ、俄然注目をあつめるようになった。

本稿では、ドリコムでゲームプロデューサー兼ディレクター、そしてゲーム開発特別監督部長という立場からゲーム開発を見守る金山圭輔氏にインタビューを実施。金山氏が海外事業の立ち上げ、人気IPタイトルの立ち上げを経た経験から、現在同社が求めている人材、ゲームづくりやスタッフ育成に対するポリシーといった質問をぶつけてきた。

 

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■ゲームの品質を企画段階からチェックするゲーム開発特別監督部



株式会社ドリコム
ゲーム開発特別監督部長
金山圭輔


――:本日はよろしくお願いします。まずは、現在金山さんが担当している業務について教えてください。

ゲームプロデューサー兼ディレクター、そしてこの4月に生まれたゲーム開発特別監督部の部長です。IPタイトルを4~5本計画中だという発表の通り、現在弊社では多くの新規プロジェクトが同時進行で走っている状況です。実際、私も新規プロジェクトに携わっているのですが、ゼロから新しいプロジェクトに関われるのはワクワクしますね。


――:ちなみに、「開発特別監督部」ってあまり聞き慣れないのですが、こちらの具体的なお仕事の内容を教えてください。

「現場の開発陣と経営陣のズレを最小限にする、第三者の目」ですね。最良のプロダクトを生みだしゲームの成功率を高めるのが我々の役割です。中にはまだまだ走り出したばかりのプロジェクトもありますし、ゲーム開発特別監督部としては、これらすべての作品を包括的に見渡しています。

例えば、プロジェクトが半年以上走ったあと、蓋を開けてみたら意図しているプロダクトとはまったく違うものになっていた、などの不幸なズレを最小限にします。より、ゲーム開発の成功率を高めるためにこの部署が立ち上がりました。

具体的な業務内容としては、まず、各プロダクトのマイル(ストーン)成果と次のマイル計画を確認します。現在だと7月のマイル計画に対する成果が問題なかったか、また8月のマイル計画が妥当な内容か、達成できそうかを見ていくのです。ひとつひとつ、軸がぶれていないのか等をチェックし、会社としてのマイル承認をよりやりやすくしていきます。

そういう意味では開発進行中よりもさらに前、企画段階が最初のフェーズとなります。ターゲットユーザーと企画の内容が合致しているか、コンセプトに対してゲーム要素は過不足ないか、といった点がポイントです。



――:なるほど。仮にマイルストーンが達成できそうにないと判断した場合、金山さんはどんな対策を打つのですか。

例えば企画面や実装面の問題に関しては、我々が主導して問題の整理や課題化を補助します。人的リソースに問題がある場合にはスタッフを手配する社内のシステムを行使し対応します。あるいは技術的な部分に問題がある場合は、別途専門の技術系組織などに助けを求めます。全体的に、プロデューサー単体ではサポートしきれない部分を私たちが見て、動きをつくるイメージですね。


――:この部署が立ち上がった経緯は何でしょうか。

今年に入ってからはプロジェクトの数も増え、品質管理の難易度も高くなっていた背景があります。そこでこの部署を設置して、積極的に計画やチェックに参加しようと考えたのです。また、最近ですが、内藤自身がプロダクトのプロデューサーとなっているものもありますし、また社長の内藤直々にプロデューサーを育成するセミナーも始めています。それが成功してプロデューサー組織が充実すればいいですね。

 

■プロデューサーもディレクターも一緒に「チームでつくりあげる」環境に


――:ドリコムはどんな方が多いのですか。
 

新しいサービスを産み出すことにチャレンジしたいという、前のめりな人たちが多く集まっていますね。会社としても常に新しいサービスを開発しています。そのため、早い段階からゼロイチでサービスを立ち上げることに関わること、さらには自分でゼロイチをやること、さらにはイチから次に伸ばしていくことに関わるチャンスが多いと思います。

ゲームの場合は、ユーザーにそのゲームの面白さや価値を届けるのがゴールだと思うのですが、その価値・体験をつくることに対して真っ直ぐな人が多いですね。これはプログラマーやプランナー、デザイナー全員に言えることで、暗黙の了解のように全員が何も言わなくても真っ直ぐ同じ方向を向いています。プロジェクトを進める過程で実現が難しい案件が出てきても、価値を届けるための別の方法をチームみんなで考えて、すぐに方向を修正できるのです。



――:ゲーム開発の現場はどんな雰囲気なんですか。

ドリコムでは、プロデューサーもディレクターも基本的に朝のミーティングから共に行動しています。現在、弊社では若手のプロデューサーも多く活躍しており、そのプロデューサーも緊張感を持って業務をこなしているんですけど、その緊張が私たちにまで伝わってきています(笑)。不安を抱えていたり、判断に迷っているプロデューサーがいればすぐに助けられるように体制も整っています。


 

■ユーザーに届ける価値が高まるのであれば、方法はなんでもいい


――:では、金山さんがドリコムに入社したきっかけを教えてください。

入社する前は、同じようにゲームづくりをしていたのですが、ユーザーに価値を届けるまでにいろいろなロスがあったり、プロジェクトが次のプロジェクトにつながらず、若いスタッフなどもひとつのプロジェクトが終わるとどんどん辞めてしまうようなことが多く、なかなかヒット作を生みにくい環境に悩んでいたときにドリコムから誘いを受けました。
 

――:ちなみに金山さんは現在のポジションに就くまで、どのように過ごしていたのですか。

前職ではテレビゲームや携帯ゲーム機……いわゆるコンシューマゲームの開発をしていました。10年近く働いていましたが、未経験の状態からスクリプト、仕様、デバッグ、新企画、ディレクション、プロジェクト管理と、いわゆるプランナー系の仕事は一通りやってきましたね。

ドリコムに入社したのは5年ほど前になります。当時弊社は、ちょうどネイティブアプリをつくり始めた時期で、プログラマーの知識も乏しかったので、最初の1、2年はディレクターとして、アプリのプロトタイプをつくりながら、チームの力を蓄えることが主な業務でした。

当初はチームも少人数で、様々な業務を兼任しながら乗り越えてきましたが、チーム力が充実してくると、自分も一歩引いたポジションからチームを見ることができるようになってきました。

現在の自分のポジションの仕事は、「人を活かす仕事」だと思っています。 自分の能力は、それぞれがおおむね他の誰かと比べて劣っています。だから、自分は行き先を掲げて、得意な人に前進してもらうほうがいい。自分の力で頑張って、100%の成果を150%にしたとしても、例えばチームのみんな10人にそれぞれ+10%してもらうのと比べたら、到底かないません。今みんなの力がなるべく100%に近いかたちで成果に結びつくように活かすのが、自分の仕事かなと。ユーザーに届ける価値が高まるのであれば、方法はなんでもいいんです。



――:実際にドリコムに入ってみて、働きやすさは感じますか。

組織づくりや評価、育成についてしっかりと考えていて、至らない箇所があっても、より良くしていこうという意志がありますね。開発側の自分としては、安心して背中を任せられるというか、ゲーム開発に打ち込むことができています。ここ数年、自分のチームはアジャイル開発をしています。スピーディで濃密ですが、楽しいですよ。
 
【ドリコム 社内風景】

 

■2,3年…いや、もっと早いタイミングでディレクターやプロデューサーに


――:プランナーやプロデューサー、あるいはディレクター職で、金山さんが求めている人物像を教えてください。

弊社は多様性をモットーにしており、新しく入るスタッフに対しても明確な基準は設けていません。先ほども話したとおり、私たちは「ユーザーに価値を届ける」が大きな目的となっていますが、逆に言えばこれ以外は自由です。ただし、ユーザーのことを第一に考えられること、新しい価値を生み出すために尽力できる人であって欲しいですね。あとは、困ったときにしっかりとSOSを出せる人です(笑)。助け合う文化が強いのですが、気づけなければ助けられない……というわけで。
 

あと、実際に面接すると、プランナー職の応募者に、「2、3年後にはディレクター、5年後など、ゆくゆくはプロデューサーになりたい!」と話す人が多いです。もちろんその意気込みは嬉しいのですが、むしろ弊社であればもっと早いタイミングでディレクターやプロデューサーになれる可能性もあります。責任の伴う職業ですが、こちらとしても、信頼できる人でしたらどんどんお任せしたいと考えています。

ちなみに、今までディレクターをやっていた人がプロデューサーになるケースもあります。また若手をディレクターに抜擢しても、近くにプロデューサーがいてくれるという安心感も生まれます。ゲーム内容はもちろん、スタッフの起用法でもチャレンジがしやすい環境ですね。


 

■さらに新しいことにチャレンジしていく体制を築いていきたい


――:その他、社内環境の面でドリコムならではと感じるものはありますか。

弊社は「with entertainment ~人々の期待を超える~」をmissionとしており、それはものづくりやサービスに限ったことではありません。期待を超えるような人と人のコミュニケーションを育もうとする取り組みについても、「期待を超えられる」よう、常に試行錯誤されています。

例えば、社員同士を褒め合い、チームの絆を強める役割を担っている「社長賞」です。ドリコムには「value(価値観)」、「style(行動指針)」があり、今年の社長賞のテーマになっています。テーマに添った行動をしている人のエピソードをカードに書き、社内に置かれているコルクボードに貼ります。それを社長の内藤が月に1度回収した全てのエピソードに目を通します。その数は、約250枚にも及びます。

その中から心に留まった 40~50枚程選んで、社長自らが直接ピザ券を配っています。ピザは一人で食べきれないので、みんなで囲むことで自然と交流も生まれ、コミュニケーションの活性化に役立っています。



――:周囲が評価してくれる風土があるのは嬉しいですね。

あとはチーム内でメンバーがどんな作業をしているのか、どんなことを考えて作業しているのかがかよくわかるスクラムミーティングやKPT(キープ・プロブレム・トライ)振り返りを採用するプロジェクトが多いです。この他にも、スタッフ全員の交流ができるよう常にサポートしています。

また、私の所属しているゲームの部署は、スペシャリストドクター制度が試験的に導入されています。これは開発タイトルが増えた際に、管理者の手が足りなくなることで社員の相談の機会やキャリアプラン設計が少し手薄になるのでは、という話が挙がったため、キャリアプランの手助けとして生まれたのがこの制度で、新しいスタッフに対して同じ分野のスペシャリストがキャリアのことについて相談に乗ってくれる制度です。忙しい中でもキャリアのことをしっかりと考えられるので、参加者からも好評です。



――:ゲーム会社は遅くまで働いているイメージを持っている人も多いと思いますが、勤務時間についてはどうですか。

実は、この質問、面接の際に意外と聞かれることが結構多いんですよね(笑)。年に数回、繁忙期になると遅くまで残っている姿も見かけますが、それが慢性的に続くことは少ないです。


――:今後金山さんが目標にしていることがあれば教えてください。
 

手堅さと勝負どころのバランスを見つめ直したいです。IPなど手堅いプロジェクトを走らせて常に余裕を持たせ、その状態を維持しつつ、さらに新しいことにチャレンジしていく体制を築いていきたいです。両方をバランスよく回すことを実現させた上で、次に新規タイトルでヒットを残したいです。「ドリコムといえばこのタイトル」といえる代表作を、形にしたいと思っています。


――:ありがとうございました。
 
(取材・構成:編集部  原孝則)
(文:ライター  ユマ)


■ドリコム
 

採用情報


 

株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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