【インタビュー】「Lobi」が提案する新たなイベントの形…『ブレフロ』の事例からLobiとゲーム会社がバックアップするユーザー主催型オフ会に迫る
カヤック<3904>が提供する、スマートフォンゲームコミュニティサービス「Lobi -チャット&ゲームコミュニティ-」(以下「Lobi」)。
その中で、2016年11月26日、Lobiと『ブレイブ フロンティア』(以下『ブレフロ』)の公認管理人による新しいタイプのユーザー主催型オフ会が開催された。
そこで本稿では、面白法人カヤック 企画部・人事部の浜岡範光氏と、Lobi『ブレフロ』公式グループ管理人であるアッシュ氏に、如何にして当日のオフ会を実現したか、その経緯や当日の様子についてお話を伺ってきた。
■始まりは公式コミュニティをユーザーが管理する体制の実現
▲面白法人カヤック 企画部・人事部の浜岡範光氏(写真左)と、Lobi『ブレフロ』公式グループ管理人であるアッシュ氏(写真右)。
――:まず始めに、浜岡さんとアッシュさんの自己紹介と、今回の主題である「Lobi」における役割についてお聞かせください。
浜岡範光氏(以下、浜岡):ゲーム会社様向けのコミュニティサービス「Lobi」のディレクターを務めている、面白法人カヤックの浜岡です。クライアント様向け企画が主な活動で、本サービスもその一環となります。
アッシュ氏(以下、アッシュ):Lobiの『ブレフロ』公式グループ管理人のアッシュです。元々は『ブレフロ』の一般ユーザーだったのですが、ユーザー選挙を経て公式管理人になりました。
浜岡:『ブレフロ』の開発を行われているエイリム様から「管理人権限をユーザーに渡すことはできないか」とご提案をいただき、ユーザーの皆さんが納得できる選び方をしようということで “管理人総選挙”形式を採用したわけです。管理人総選挙は現在まで2回行われていますが、アッシュさんはその2回ともトップ2以内で通過され、現在の公式管理人として活動されています。
■ユーザー主導だからこそ開けたオフ会イベントとは
――:今回、開催されたオフ会については、そうしたLobiコミュニティを中心に開催されたのでしょうか。
浜岡:参加者は、Lobiのコミュニティ内部に限らず、ユーザー全体から募りました。Lobiでは、アッシュさん主導によるオフ会の告知と、企画の補助などを行った形になります。
――:オフ会を開催することになった経緯をお聞かせください。
浜岡:エイリムさんとの会話の中で、運営が実施する大規模イベントよりも、もっとライトにユーザーが繋がれる機会を創る事が重要なのではないかという話になったことがきっかけです。そこで、せっかくアッシュさんがユーザーコミュニティを統括されているのだから、それを活かした新しい取り組みをやってみようという話になったんです。
――:アッシュさんとしては、最初にイベントの提案を受けた時はどのように感じられましたか?
アッシュ:オフ会自体は普段から開催しているのですが、やはり個人規模では限界があります。結局は食事を楽しんで終わり、ということが多いので、こうして「ゲームを一緒に遊んで楽しめるオフ会を開ける!」と聞いたときは本当に嬉しかったです。
――:オフ会当日には何人くらい集まったのですか?
浜岡:当日お越しいただけたのは60人ほどです。約半数の方がレベル900~999の超コアユーザーという奇跡のイベントでした(笑)。
――:それだけの大規模イベントとなると、会場費などの準備代を含め金銭面でもかなりの工面が必要になりそうですが、その辺りはどのような座組が組まれているのでしょうか。
浜岡:会場の手配や設備のセッティングなどはLobiが行っています。あとは、企画設計とゲーム会社の間を繋ぐ部分については、全て弊社が受け持っております。アッシュさんは公認管理人であると同時にいちユーザーでもあるので、細かな繋ぎや実作業までやらせるわけにはいきません。運営資金については、参加費という形でユーザーの方々にも一部負担していただきました。 大型オフ会というイメージをしていただければよいかと。
――:イベントの内容には関しては、アッシュさんとLobiが協力して完成させたということですね。
浜岡:はい、あくまでユーザーの自主的な楽しみをゲーム会社が支援している格好です。
――:オフ会の中では、どのようなイベントを実施したのですか?
浜岡:当日は大きく分けて3種類のイベントを実施しました。1つ目は、全員参加型のスパーク対決(スコアアタック)です。参加者の中から2名をピックアップして対戦をしてもらい、それ以外の方には勝敗を予想してもらうという形式を取りました。
――:なるほど、トッププレイヤーの方々でなくとも予想を立てることで楽しめると。
浜岡:そうです。今回、特別にエイリム様が制作されたグッズをご提供いただけたので、対戦に勝利したプレイヤーだけでなく、全3戦の勝敗を当てた人にはそれらのグッズをプレゼントしました。2つ目は、レベルがカンスト状態のユーザー同士による公開レイドバトルです。チーム分けをしてタイムアタックをしてもらい、先のスコアアタックと同様に勝敗予想を行いました。各プレイヤーはデッキ構成なども公開していましたので、こちらのコーナーも予想するだけで楽しめるような仕組みになっていたと思います。最後の3つ目は大抽選会です。先の2つのイベントで残ったグッズを、くじ引きで来場者の方々にプレゼントしました。
――:オフ会内で開かれた企画の意図について教えてください。
アッシュ:こういった形式でイベントを開催したのは初めてでしたので、細かい部分は手探りでした。ただ、可能な限り来場者全員が楽しめるようにと思い企画を組んでいます。
浜岡:アッシュさんは、最初の頃から「みんなが楽しめるように」という部分に特に強くこだわっておられましたよね。今回のオフ会で実施したイベントは、あくまでもユーザー主催のイベントという建付けだったのでほぼ全ての企画をアッシュさんが考案されたのですが、それが良い結果に結びついた要因のひとつだと思います。というのも、最初にアッシュさんが「レイドバトルをやるべきだ」と言った時、我々のリアクションは薄かったんです。ほかのユーザーさんが遊ぶ様子自体に強いコンテンツ性があることについて、こちらとしてはピンと来ていませんでした。
――:あえてその意見を通した理由についてもお聞かせください。
浜岡:そこはユーザーオフ会の主催経験も多く、自身もトップランカーであるアッシュさんに信頼を置くべきだと考えました。
――:アッシュさんとしては、企画の際に意識されていた点などございますか?
アッシュ:参加にレベル制限を付けたり、上級者しか楽しめない大会を開催したり、年齢を理由に来場を躊躇わせるような条件を作らないように気をつけました。開催時間を土日の日中にしたのも、夜に自由が利かない未成年のユーザー、社会人ユーザーの双方に配慮した結果です。さらに、本オフ会のゴールは、ユーザー同士による“自主的な2次会”が発生する流れを作ることでした。終了があまり遅い時間になってしまうと、それを阻害してしまいます。
――:先ほどお伺いしたイベント内容についても、ユーザー同士の繋がりを作るという同様の意図が見て取れますよね。
浜岡:参加者全員が楽しめて、かつゲームの知識やノウハウを持ち帰れる内容である事を大前提として、イベントを作っていただきました。
――:参加者の年齢層や男女比はいかがだったのでしょうか?
アッシュ:20代後半~30代半ばくらいが多かったです。そもそも『ブレフロ』ユーザーはその辺りの層が一番多い印象なので、自然な流れだったと思います。
浜岡:10歳の女の子が親御さんと一緒に参加されていたんですが、スパーク対決で対戦相手のレベルカンストのランカーに真剣勝負で勝っていたので本当に驚きました。
■第一に考えたのは”ユーザー同士のコミュニケーション”
――:そのほか、運営面で工夫された点などがあれば教えてください。
浜岡:ユーザー同士で会話をするきっかけ作りが一番大事だと思っておりましたので、その点には最大限配慮しました。入場時の導線はもちろんのこと、こちらで用意したコンテンツ以外の部分での過ごし方も気にかけています。全員で画面を見て楽しむ流れと同時に、ユーザーとの交流を求めて来場している方に対して個別のユーザーさん同士で会話できる場を提供する必要があるんです。
アッシュ:あとは、当日に1人で来られる方への対応ですね。こういった場では、どうしても顔見知り同士のグループが固まってしまうので、1人で来場された方が孤立してしまうケースは珍しくありません。
浜岡:何を置いてもユーザーさんを優先することについては、アッシュさんとお話して、とても勉強させてもらった点です。ゲームの公式が開催するイベントだと「ゲームをどう楽しんでもらうか」を最優先に考えますからね。
――:来場者の反応はいかがでしたか?
アッシュ:とても楽しんでくれているように見えました。イベントも非常に盛り上がったように思います。
浜岡:オフ会後のアンケートでは、97%の方が大満足・満足の項目にチェックを入れてくださいました。特に良かったのは、満足の理由です。「企画の数が多かった」、「いろいろなユーザーさんと出会えた」という回答が多かったんです。公式イベントでは賄えなかった部分を、正しく補完できたのではないかと思います。来場された理由を聞いてみても、「ほかのユーザーさんと遊びたかった」、「生でアッシュさんを見てみたかった」と凄くピュアな意見が多くて嬉しかったです。
――:開催にあたって苦労した部分などはありましたか?
アッシュ:Lobiさんのサポートが大きかった事もあり、意外とスムーズに話が進んだ印象があります。イベントの内容決定において特に負担を抱える要素はありませんでした。
――:告知を開始したのはどれくらい前からだったのでしょうか。
アッシュ:だいたい2ヶ月前くらいですかね。仕込み自体も、本格的に動き始めたのもその頃です。
浜岡:大規模なイベントを実施するとなると会場を抑えるのが本当に大変なのですが、今回の規模であれば2ヶ月くらい前の段階で計画を進めていれば問題なく間に合います。あまり早くに告知しても参加者側が仕事の都合が分からないし、直前過ぎてもスケジュールが調整できない。なので、2ヶ月前くらいが丁度よいのではないかという話になりました。
■コミュニティの扱いから考える今後の展望
――:Lobiとしては、今後こういった取り組みを他の作品で行うことは考えられていますか?
浜岡:是非やりたいと思っています。公式がオフ会を直接開催しようとすると様々な問題が発生しますよね。例えば、ユーザーから直接意見をもらっても、それを開発に直接取り入れるのは難しいじゃないですか。その間の橋渡しをするのは、第三者のコミュニティ提供者である我々の役目なのかなと思います。そういったニーズを持つゲーム会社も少なくはありませんし、小規模なイベントであればコストもそれほど掛かりません。この形式が一般化して様々なゲームで開催できると嬉しいですね。。日本中でオフ会を開いている人たちが支援を受けて、いつもより豪華なオフ会を開ける。さらに、その支援によってユーザーさんのゲームへの愛情が深まる、という流れを作ることができればソーシャルゲームならではのイベントの形が作れるのではないかと思います。
――:今回の事例は、他作品のイベント展開に活かせそうでしょうか。
浜岡:もちろん、規模の大小やコミュニティの性質によって事情は異なりますので、今回の事例をそのまま当てはめることはできません。ただ、私たちもさまざまなゲームのコミュニティを管理しておりますので、その性質に合わせたプランのご提案はできます。新規獲得・顧客維持のコストは上がり続け、ユーザーたちのコミュニティ形成は、今後の重要な課題になっていくでしょう。ユーザー内のコミュニティに関してご相談のある会社様は、是非気軽にご相談いただければ幸いです。
――:これまで、どういった相談を受けられたことがありますか?
浜岡:時折「どうしたらユーザーのコミュニティを作ることができますか?」という質問を受けるのですが、運営側が出来るのは、コミュニティが自然発生する土壌を作っておくことだと考えています。それよりも大事なのは、発生したコミュニティとの関わり方なんですよね。ユーザーの新規獲得に目を取られて、発生・成長しているユーザーコミュニティの育成を蔑ろにしてはもったいない、という話です。ユーザーの間で生まれたコミュニティを放置せず、それらが連携しやすい環境を構築したり、活動を静かにサポートするのが運営の行える最大の支援活動です。そのためには、ユーザー側の協力者がいることは大きな強みになります。今回の企画で言えば、アッシュさんですね。
アッシュ:実際、僕の立場はかなり宙ぶらりんな状態で、ユーザーからすれば公式に近い人、公式からすればユーザーという、どっち付かずのポジションなんです。ただ、こういう立場の人間がいた方が、ユーザーコミュニティに接続するイベントの幅が出やすいのかな、と思います。
浜岡:ユーザーさんが自発的に作った繋がりを公式が紹介する、そのバランスが難しいので、中間に立つ人が必要になるというわけです。近頃では、コミュニティマネージャーという役職を作っているゲーム会社も増えてきたと聞きますし、コミュニティ設計は今後のソーシャルゲーム運営において重要な位置を担うことになると思います。
――:コミュニティが自然発生的に生まれた後、拡大する要因はどこにあるのでしょうか。
アッシュ:上位陣がある程度固まると、勝手に集まり始めるというのはあります。『ブレフロ』にはグループを組むシステムがないので、自分たちで強い人同士のグループを作り出すんです。その様子を見て、連鎖反応的に色々な人がグループを組むようになるという流れでした。
――:『ブレフロ』オフ会については、今回、大成功を収めましたが、次回の開催については考えておられますか?
アッシュ:今回のオフ会が終わってから、僕の方にも色々な反響が届きました。「次の機会があれば行きたい」と言って下さる方も多かったので、さらに楽しいコンテンツを用意して開催したい、という気持ちはあります。また、オフ会を開催して以降、ユーザー同士のオフ会が開かれるケースが目に見えて増えているんです。都内のみでなく、静岡や大阪でも開かれていて、僕が知っているだけでも月1回くらいのペースで『ブレフロ』オフ会が開かれています。それを見た時、このオフ会を「やってよかった」と思いました。
浜岡:今回のイベント内容がユーザーの間で広まるのは本当に早かったですよね。最初は「アッシュさん主催のイベントです」という告知しかしていなかったので、ひとつのイベントとしてここまで反響が広がるとは思っていませんでした。アンケートでも次回参加希望が100%でしたし、次を臨んでいるユーザーも少なくないと思いますので、今後にも繋げていきたいですね。
――:本日はありがとうございました。
また、今回の取り組みについて、エイリム 代表取締役社長で『ブレフロ』プロデューサーの高橋英士氏からもコメントをいただけたので、下記にてお伝えする。
高橋英士氏「ゲームの送り手として、ユーザーの皆様が集まってわいわいと盛りあがって下さるのは本当にありがたいことです。エンターテイメントは単に受け取るだけでなく、遊び方や取り組み方で、その魅力や楽しさが無限に拡がっていくものだと思います。そういう「楽しむスキル」を持ったユーザーの皆さんは我々にとって第二の開発者です」
(取材・文 編集部:山岡広樹)
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■『ブレイブ フロンティア』
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会社情報
- 会社名
- 株式会社カヤック
- 設立
- 2005年1月
- 代表者
- 代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3904
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイリム
- 設立
- 2013年3月
- 代表者
- 代表取締役社長 髙橋 英士
- 決算期
- 4月