ドリコム<3793>は、去る2月3日、2017年3月期の第3四半期累計(4~12月)の連結決算を発表、売上高56億7600万円(前年同期比16.1%増)、営業利益5億1400万円(前年同期3億1900万円の赤字)、経常利益4億5000万円(同3億2200万円の赤字)、四半期純利益4億1700万円(同6億8900万円の赤字)と大幅な黒字転換となった(関連記事)。
また、同社は2018年3月までに7~8本のIP(知的財産権)タイトルをリリース予定だ。直近では、2016年11月にリリースした『ダービースタリオン マスターズ(以下、ダビマス)』の第3四半期の売上が7億4000万円と、垂直立ち上がりを見せ、年明け1月の月次売上速報は4億5000万円となり、好調に推移している。
その一方で、広告・メディア分野においても様々な新規事業を立ち上げており、「with entertainment」というキーワードの下に、「人々の期待を超える」もの作りを続けている注目の企業だ。
そこで本稿では、『ダビマス』の世界観を彩る2名のデザイナーから話を伺い、人気競馬ゲームをどのようにスマホゲームに落とし込んだのかをはじめ、UI(ユーザインターフェース)でこだわったところ、さらにはドリコムの開発環境、求めている人物像などについて聞いてきた。
株式会社ドリコム
プロダクト本部ゲームプロダクト部
冨田 篤 氏(写真左)
岩田 杏理 氏(写真右)
――:本日はよろしくお願いします。はじめに、おふたりがデザイナーとしてご担当されている分野や仕事内容について教えてください。
冨田:僕は『ダビマス』の開発初期からアートディレクターとしてプロジェクトに参加しました。主にUIの設計とデザインの部分を中心に、クリエイティブ全体を管理していました。『ダビマス』のリリース後はプロジェクトを離れていて、現在は別のプロジェクトを担当しています。
岩田:私は冨田より少し遅れてプロジェクトに参加しました。UIデザインがキャリアのメインですが、開発中は演出制作を重点的に取り組みました。UIパーツやレイアウトを作りつつ、これに加えて動くモノを中心に作りました。リリース後は、冨田からアートディレクターとしての役割を引き継いで、演出、UIデザインに加えて、デザイン全体の監修も担当しています。
――:演出制作というと、たとえば、ガチャの演出、レースシーンの演出などがありますが、ゼロベースで制作にあたられたのでしょうか。
岩田:はい。もともと、私がプロジェクトに参加した時点で、ガチャに関する情報は、種牡馬の種付権を獲得できる抽選会がどこかで開催されており、テレビ中継でユーザーがそのニュースを見ているというシーンがある、という設定だけでした。
なので、それをどうやって演出すべきか、仕上がりイメージを具体的にして手戻りを減らすべく、絵コンテを重ねて具体的なシーンを決めていくことになりました。画面のレイアウトを組んで、必要な絵素材を洗い出して、絵素材が出来上がったら、アニメーションまで組み上げる、ということをやりました。
――:UIデザインにおいて、一貫して大切にされているところはありますか。
冨田:全部の機能やデザインが揃ってこそゲームだと思っていますので、まずは機能同士の関連を踏まえた上で、ざっと作るということを意識しています。機能ごとにUIを制作していると、その機能のためだけの画面を作りがちです。操作性や拡張性を気にしながら、先に全体がわかるものを作り、早い段階でのフィードバックを得られるようにしています。
――:黙々と一人で作るというよりかは、余裕を持たせつつ、何度も繰り返し操作性を試すことが、最良のUIデザインの近道であると。
冨田:そうですね。最初から完璧なものをつくるのではなく、徐々に作っていくというやり方です。
あとは、エンジニアに実装してもらう前に、実機で確認・検証することも必ず行っています。最近は、プロトタイピングツールも揃ってきていて、ユーザーの目線や操作性を確認するだけなら、そういったツールを使えば、デザイナー側だけでチェックできます。アニメーションであれば、動的に動かせるツールでまずは作ってみるなどもできます。その時点で満たしておいてほしいことを整理して、次のタスクに落とし込んでいくのが大事です。
岩田:ええ。フィードバックといっても、レイアウトやUIを画像だけで出しても、なかなか意見を言えない、もらえないっていうことも少なからずあると思います。そういうときプロトタイピングツールがあると、静止画であっても、他職種の方へもひとつの流れとしてわかりやすく共有できるので、とても役立っています。仕上がりの差異を小さくしていくということが、デザイナーの腕の見せ所でもありますね。
あと特に演出部分では、ゲームの雰囲気を伝えるという重要な役割を担っているので、気を遣います。ゲームの世界観として違和感のないように、でも、ユーザーに一目瞭然でわかってもらえるように……って。
――:あまりにも世界観に溶け込みすぎると、そのパーツが何を伝えたいものなのか、わからなくなってしまいますよね。
岩田:そうなんです。世界観を重視しすぎて、部分的なデザインだけが優れていてもしょうがないです。ここは押せるボタンだということがひと目でわかるように、意識して作っています。
――:本作は『ダービースタリオン』という他社のIPに基づく作品ですよね。オリジナルのタイトルと比べて、変えたところ、こだわったところはあるのでしょうか。それとも、他のタイトル同様に押さえるべきポイントは同じだったんでしょうか。
冨田:『ダービースタリオン』シリーズのなかでも、スーパーファミコン時代やプレイステーション時代のグラフィックや面白さを根底としています。スーパーファミコンやプレイステーションで『ダビスタ』を遊んでいた、現在は30代以上になっているであろう人たちに向けて、当時の面白さをそのままスマホで感じてもらうということに主眼が置かれています。
――:ターゲット層に合わせて、スーパーファミコン時代やプレイステーション時代のグラフィックにあえて合わせているところもあるのでしょうか。
冨田:それもありますが、まずは当時の楽しさをそのままに、ちゃんと快適に遊べるというところを重視しています。競馬場のグラフィックをどれだけ凝っても、重すぎたり、対応端末が限られていたりすると意味がないです。我々はそうではなく、「サクサク・軽量」をテーマとしています。
――:なるほど。
冨田:馬のグラフィックは全て3Dにはせずに、昔の作品を意識したところは2Dで、レース等のモーションやカメラワークの演出が求められるところは3Dで、というふうに、適宜選択していたりしますね。
岩田:『ダービースタリオン』というIPは、競馬ゲームの頂点とも言えるタイトルです。それを踏まえて、プロデューサーの金山はいつも「王道感」ということをずっと言っていました。
――:王道感、ですか。
岩田:言わんとしているのは何となく分かるのですが、当初は「なんだそれ?」って思いました(笑)。ただ、制作を進めているうちに感覚を掴んでいきました。
競馬ゲームというと、ギャンブルの側面を強調するようなビジュアルの既存タイトルが意外に多かったんですね。だけど、そういうギラついている感じを『ダビマス』では抑えています。むしろ、自然の美しさ、馬の美しさ、誰が見ても美しいという正に「王道」と言ってもらえるようなビジュアルになるよう、意識しました。
冨田:バナーを作っている時によく話していたんですが、ゲームっぽすぎることは控えようと。ありふれた、いかにもソシャゲっぽいものはやめようと、よく言っていました。
――:今、『ダビスタ』をスマホで、となったら、調教師が女の子になったりしがちだと思うのですが(笑)、あえて、キャラクター押しではなく、馬をメインに据えたところが、当然ながら世界観をすごく大切にされているなと感じました。
冨田:『ダビスタ』は、単にグラフィックが本物っぽいとか、とういうことではなく、馬主を体験するゲームとしてのリアリティを重視しているからです。ユーザーが本当に馬主になって、ゲームに没頭できるようなものである必要があるからです。もちろん、今までのターゲット層に向けつつも、きちんと新規ユーザーのためのシナリオもあって、おじさんだけでなく、魅力的なデザインの女性キャラクターも出てきます。
――:ヒロインがいて、ストーリーがあってということですね。
冨田:シナリオも、実際にちゃんとありそうな現実的なものになるようにしています。メインキャラクターのデザインをコザキユースケさんにお願いしましたし、キャラクターの個性を活かせるように、ゲーム内の機能に合わせて、女性の配役も作ったという感じですね。
――:細かいところですが、タイトルロゴもデザインチームのみなさんが制作されたのですか。
冨田:はい。チーム内で制作しました。パリティビットさん(ダービースタリオンの開発会社)の方に確認していただきつつ、デザインを決めました。一目で、競馬のゲームであること、『ダビスタ』であることがわかること、この2つがロゴの要件でした。また、『ダビスタ』は育成ゲームとしての要素もあり、競走馬になるまでの過程も重要です。そこで、競走馬をモチーフとしながら、親子の馬をデザインしました。他社の競馬ゲームは大抵、走っている馬なんですけどね。『ダビスタ』はレースを操作できるわけではなく、馬主を体験するというものなので、そういう思想からロゴを考えました。
――:『ダビマス』をプレイしてみて思ったのですが、僕はホーム画面がすごく好きなんです。横だけしかスクロールしない造りになっていて、片手でとても操作しやすいです。これが実現するまでに、開発現場ではどのような過程があったのでしょうか。
冨田:ホーム画面として必要だったのは、馬の育成に関わるゲームの各機能が、牧場にあっても自然な形で設置されていることです。なぜ、横スクロールなのかというと…、極力面倒くさい操作をさせたくなかったからです。もちろん、縦にスクロールできたり、ピンチアウトできたり、やろうと思えばできましたし、最初はそういうアイディアもありましたが、必要な要素がちゃんと入る最小構成になるよう試行錯誤して、最終的に削ぎ落とした結果、横スクロールのみになりました。
――:そうだったんですか(笑)。
冨田:表示できる面積が限られている分、設置できるものの数がなかなかシビアでしたが、ちゃんと詰め込めるように、でもボタンはタップしやすいよう配慮しています。別のアイディアでは、馬を直接タップせず、別に選択領域を設けるというものもありました。でも、プロトタイピングの段階で、馬をタップ出来た方がユーザーの自然な行動に基づいているなと思い、今の画面に落ち着いたという感じです。
――:たしかに施設や馬を直接タップできたほうが、ダイレクトにわかりやすくていいですよね。
冨田:ホーム画面のデザインは、まずデザイナーが細かく配置を調整できるような仕組みを開発序盤に作りました。配置の調整までデザイナー側でやってもらえるようにして、いろいろなパターンを検証して、修正を重ねていくという形で進めました。
――:ここからは少し話題を変えて、おふたりがドリコムに入社した経緯についてお伺いできますでしょうか。
冨田:僕は4~5年前に入社しました。前職はweb系の会社にいて、ゲームに関する仕事の経験はありませんでした。でも、当時はスマホでも遊べるブラウザゲームが主流で、僕の経験を活かすことができるのではと思い、ドリコムに来ました。
――:ゲームに携わりたいという思いが大きかったのでしょうか。
冨田:本音を言うと、特にそういう理由はありません(笑)。ただ、その時に技術が一番盛り上がっているところに身を置けば、自分も成長できるんじゃないかと思ったのです。ドリコムのことも、最初は名前すら知りませんでした。
――:入社してからはいかがですか。
冨田:戸惑いではないですが、入社して、ドリコムの印象はだいぶ変わりました。見た目は同業の会社と大差ないのですが、中はわりと泥臭いというか、人情味があるというか……。人を大事にする、という感じがありますね。そこにいるメンバーたちで、いかにプロダクトをよくしていくか、というミッションを強く共有していて、そこがドリコムの魅力だと感じています。
――:エンジニアの神谷さん、西村さんにも別件のインタビューでお話しを伺いましたが(関連リンク)、企画の段階からプランナーはもちろん、エンジニア、デザイナーの方も積極的に参加して、ゲーム性やコンセプトについて、しっかりキャッチボールをしていることに、とても驚きました。そういうところが、御社の“らしさ”なのかな、と思いました。
冨田:現在は、アジャイル型の開発で、スクラムの手法をベースとして開発を行っています。チームにかなりの権限を持たせる手法なので、チーム力がかなり求められています。ただ、最初からそういうやり方だったのではなく、色々なゲームを作ってきた中での経験が蓄積されて、やっと今のドリコムに至ったという感じです。
今は、提供したい価値を実現するために、どうチームで解決していくか、ということを大事にするようになっていて、それは、会社のトップからもメッセージが僕たちまで伝わってきていて、文化として根付いていると思います。
――:失敗や苦労を重ねて、今の御社があるんですね。
冨田:はい。スクラムでの開発って、雑にやっていると、責任の所在が行方不明になって、おざなりになってしまうという面もあると思っています。そこが難しいところではありますが、ひとり一人が裁量をもって行動して、それぞれが目標のために期待に応えるということを目指しています。
――:そういうところが、働きやすさにも繋がりそうですね。では、岩田さんはいかがですか。入社したタイミングまで遡っていただいて…。
岩田:ドリコムに入社したのは3年前なんですが、それまでは新卒入社した規模が大きめのコンシューマーゲーム開発会社にいました。ドリコムのことは、冨田と同じで、最初は社名も知らなくって(笑)。前の会社は大小様々な開発プロジェクトでUIを中心として働いていて、退職直前にはソーシャルゲームのアプリを作っていました。
――:大手企業を退職して、ドリコムにいらっしゃったのですね。
岩田:はい。大規模なゲームの開発に関わっていたのですが、上流にプランナーがいて、デザイナーはわりと下流の方にいて…という感じでした。上流から指示された素材を作っていたのですが、そのうちに何を作っているか、自分でわからなくなってしまったんですね。
――:やらされ感、作業感のような。
岩田:ええ。誰に向けて、何を作っているのか……。デザインはそこを理解していないと、全然意味がないと思うんです。それで、一度外の世界に出てみようと思って転職活動を始めました。
ドリコムでは、ユーザーさんに届けたい価値を満たすことができれば、わりと自由に作らせてくれます。もちろん、その価値を理解して、デザインに落とし込むってそんな簡単じゃないですけど、チームメンバーそれぞれ仕事の分量が均等で、フラットな組織だと思います。
――:チーム全体でひとつの目標に向かって、それぞれの役割やタスクに落とし込まれたとき、きちんと自分で責任をもって作れるということが、大きく違ったということですね。
岩田:はい。たとえば、画像に書かれたメッセージとかも最初は自分で考えたりしていました。前の会社だったら、「プランナーさんの方で決めてください」と言っていたと思います。
――:やったらやったで、「勝手にやらないでください」とか言われたり(笑)。
岩田:本当、そうなんです(笑)。こうしたら面白いんじゃないか、という提案が受け入れてもらえるので、ドリコムのチームは良いなと思うことがありますね。
――:そういう点でも『ダビマス』の開発は、一般的な開発の進め方とひと味違いますよね。一般的には、プランナーがゲームバランスを調整して、「このキャラはこういうパラメータで作ってください」と指示が降ってくるのに、キャラクターの個性やゲームの世界観から発進している。しかも、その段階でエンジニアもデザイナーも、みんな積極的に意見を交わしているという。
冨田:『ダビマス』に関しては、機能とキャラクターが結びついているところが多かったので、デザイン側から、その機能を開発しているエンジニアに仕様を聞いて参考にしてみたりとか、そういうやりとりはしていました。
――:なるほど。
冨田:一度決められた仕様に基づいて黙々と作っていくのも、ひとつのやり方ではあると思います。でも、一度作ってみて、評価して、てんでダメだった場合は、その時間がすごくムダになってしまうんですよね。それよりも、みんなに見てもらって、早い段階でフィードバックをもらってから詰めていくほうが、前向きになれるし、早いですよね。
――:意思決定も早くなりますし、軌道修正もすぐできます。
冨田:最終的には、それぞれの職種で役割の分だけ責任を担うわけなんですけど、そこに至るまでの過程は柔軟に対応していますし、いろんな意見を集約できれば、よくなる部分ももちろん多くなります。だから、職種間、メンバー感で理解や共有の隔たりが少なくなるように、いつも心掛けています。
――:御社の開発現場は、UIデザイナーだからUIしかやらないというわけではなく、制作を効率化させるための仕組みやツールを作るということも含め、幅広く取り組んでいるんですね。
冨田:そうですね。もちろん、分業したほうがいいところは分業しますが、作業範囲をこちらで厳密に制限するようなことはありません。アサインされているメンバーと相談しながら、チーム内での役割をこなしていく、みたいな感じです。
岩田:良いアイディアが浮かんだら、職種に関わらず、提案できていると思います。
――:そういった点は、おふたりにとって働きやすさとして感じますか。
冨田:はい、メリットは大きいです。ただ、みんなが意見を言い合ってばかりだと統制がとれなくなったり、宙に浮いてしまったりするので、決めるところは決めないといけません。そこは、各職種のリーダーが責任をもって統括しています。みんなの意見を上手く集約して、ちゃんと着地させるというスキルは必要だと思います。
――:では、ドリコムの開発環境、社内の雰囲気で、これはいいなというところや、ドリコムらしさを感じるところをお聞かせください。
岩田:冨田も言っていましたが、ドリコムも最初からずっと良い時代というわけではありませんでした。ツールが揃っていなかったり、非効率な進め方になっていたり、そういう時期もあったんですけど、それをステップアップして改善していくことが、ちゃんとできる会社だと思うんです。
――:環境を改善するために、組織全体で取り組みが成されているということですね。
岩田:そうです。ツールも、デザイナーとのやり取りのためにレイアウトツールを導入してみようとか、プロトタイピングツールを導入しようとか、より良い開発環境のための投資は、受け入れてくれる組織だと本当にそう思います。
それは、効率的で小さめで機敏なチームを、会社が作ろうとしていることの表れだと思います。そういう風にやりたいんだなって、会社の方針がちゃんと現場に伝わってくるんですよ。それぐらいのほうが、こちらも動きやすいし、意見も通りやすいし、すごくいいなって感じています。
冨田:意見を言うと、みんなちゃんと聞いてくれるというのは大きいですね。仮に、自分の意見がだめだったとしても、なぜ良くなかったのかを忌憚なく話してくれる。頭ごなしにダメ!なんてことはないですね。
――:では最後に、おふたりから一緒に働きたい人、求めている人物像について教えてください。
冨田:この業界は時代の変化が非常に早いので、その変化に柔軟に対応できる力があるかどうか、変化に対して前向きかどうかが重要なポイントになりますね。従来のやり方に固執せず、変わることに対して、恐れずにどう立ち向かっていくか。デザインの技量の話ではなく、心構えになってしまいますが、課題に直面しても周りを上手く巻き込んで解決出来る、そういう生きる力が強い人が来てくれたら、とても嬉しいです。
――:トレンドやユーザーの振る舞いにキャッチアップして、アウトプットを意識的に変えていけるというスキルが求められている、ということでしょうか。
冨田:そうですね。あとは、ドリコムはイケイケ、キラキラな感じではなくて、すごく泥臭いというか、ゲーム作りに実直な社風なので、そういうところに共感してもらえたらいいですね。岩田さんだって、最初は競馬のことなんて全く知らなかったのに、競馬場に遊びに行ったりしてて。
岩田:(笑)。
冨田:『ダビマス』のように、いわゆる、IPものを作るときは、たとえ今まで興味のなかったものでも、そのIPを好きになろうという努力や取り組みが重要なので、それが自然にできるといいですね。もともと知らなかったことでも、気がついたらすごく詳しくなってたり。
――:岩田さんはいかがですか。
岩田:デザイナーは、絵が好きで仕事にしている人が多いから、自分が作ったもので満足してしまう人が結構いるような気がしています。でも、ゲームの中で成立させてこそ、デザイナーとしての仕事ぶりかな、と思います。ドリコムは、最初の企画の段階でもどんどん参加させてくれますし、周りを巻き込んで、そういうことを楽しいと感じる人が向いているのではないでしょうか。
――:黙々と制作することに閉塞感を抱いていたり、もっと新しいことをやりたいという人には、ドリコムの働き方がバッチリはまりそうですね。
岩田:ゲーム制作で、効率化や社内調整ばかりやってると、何を生み出したかったのかが見えなくなってしまいます。そうやって見失われたものは、だんだんユーザーに伝わってしまうもので、レビューを見ても、手を抜いたところってバレちゃうんですよね。チームのテンションがゲームに滲み出るものだと思っていて、その点では、『ダビマス』のチームはテンションが本当に高くて、良いチームです。だから、良いゲームになったなと満足しています。
――:ゲーム制作に対して情熱を持った人たちがくれば、やり甲斐を感じながら最高のパフォーマンスを発揮できそうですね。
岩田:はい。やり甲斐はすごくあると思います!
――:ドリコムには本当にアツい人がいることがわかりました。本日はお話しいただき、ありがとうございました。
■関連記事
【インタビュー】『ダビスタ』であることを全員で追い続けるチーム…知られざる『ダビマス』開発秘話をドリコムのエンジニアに訊く
また、同社は2018年3月までに7~8本のIP(知的財産権)タイトルをリリース予定だ。直近では、2016年11月にリリースした『ダービースタリオン マスターズ(以下、ダビマス)』の第3四半期の売上が7億4000万円と、垂直立ち上がりを見せ、年明け1月の月次売上速報は4億5000万円となり、好調に推移している。
その一方で、広告・メディア分野においても様々な新規事業を立ち上げており、「with entertainment」というキーワードの下に、「人々の期待を超える」もの作りを続けている注目の企業だ。
そこで本稿では、『ダビマス』の世界観を彩る2名のデザイナーから話を伺い、人気競馬ゲームをどのようにスマホゲームに落とし込んだのかをはじめ、UI(ユーザインターフェース)でこだわったところ、さらにはドリコムの開発環境、求めている人物像などについて聞いてきた。
株式会社ドリコム
プロダクト本部ゲームプロダクト部
冨田 篤 氏(写真左)
岩田 杏理 氏(写真右)
――:本日はよろしくお願いします。はじめに、おふたりがデザイナーとしてご担当されている分野や仕事内容について教えてください。
冨田:僕は『ダビマス』の開発初期からアートディレクターとしてプロジェクトに参加しました。主にUIの設計とデザインの部分を中心に、クリエイティブ全体を管理していました。『ダビマス』のリリース後はプロジェクトを離れていて、現在は別のプロジェクトを担当しています。
岩田:私は冨田より少し遅れてプロジェクトに参加しました。UIデザインがキャリアのメインですが、開発中は演出制作を重点的に取り組みました。UIパーツやレイアウトを作りつつ、これに加えて動くモノを中心に作りました。リリース後は、冨田からアートディレクターとしての役割を引き継いで、演出、UIデザインに加えて、デザイン全体の監修も担当しています。
――:演出制作というと、たとえば、ガチャの演出、レースシーンの演出などがありますが、ゼロベースで制作にあたられたのでしょうか。
岩田:はい。もともと、私がプロジェクトに参加した時点で、ガチャに関する情報は、種牡馬の種付権を獲得できる抽選会がどこかで開催されており、テレビ中継でユーザーがそのニュースを見ているというシーンがある、という設定だけでした。
なので、それをどうやって演出すべきか、仕上がりイメージを具体的にして手戻りを減らすべく、絵コンテを重ねて具体的なシーンを決めていくことになりました。画面のレイアウトを組んで、必要な絵素材を洗い出して、絵素材が出来上がったら、アニメーションまで組み上げる、ということをやりました。
――:UIデザインにおいて、一貫して大切にされているところはありますか。
冨田:全部の機能やデザインが揃ってこそゲームだと思っていますので、まずは機能同士の関連を踏まえた上で、ざっと作るということを意識しています。機能ごとにUIを制作していると、その機能のためだけの画面を作りがちです。操作性や拡張性を気にしながら、先に全体がわかるものを作り、早い段階でのフィードバックを得られるようにしています。
――:黙々と一人で作るというよりかは、余裕を持たせつつ、何度も繰り返し操作性を試すことが、最良のUIデザインの近道であると。
冨田:そうですね。最初から完璧なものをつくるのではなく、徐々に作っていくというやり方です。
あとは、エンジニアに実装してもらう前に、実機で確認・検証することも必ず行っています。最近は、プロトタイピングツールも揃ってきていて、ユーザーの目線や操作性を確認するだけなら、そういったツールを使えば、デザイナー側だけでチェックできます。アニメーションであれば、動的に動かせるツールでまずは作ってみるなどもできます。その時点で満たしておいてほしいことを整理して、次のタスクに落とし込んでいくのが大事です。
岩田:ええ。フィードバックといっても、レイアウトやUIを画像だけで出しても、なかなか意見を言えない、もらえないっていうことも少なからずあると思います。そういうときプロトタイピングツールがあると、静止画であっても、他職種の方へもひとつの流れとしてわかりやすく共有できるので、とても役立っています。仕上がりの差異を小さくしていくということが、デザイナーの腕の見せ所でもありますね。
あと特に演出部分では、ゲームの雰囲気を伝えるという重要な役割を担っているので、気を遣います。ゲームの世界観として違和感のないように、でも、ユーザーに一目瞭然でわかってもらえるように……って。
――:あまりにも世界観に溶け込みすぎると、そのパーツが何を伝えたいものなのか、わからなくなってしまいますよね。
岩田:そうなんです。世界観を重視しすぎて、部分的なデザインだけが優れていてもしょうがないです。ここは押せるボタンだということがひと目でわかるように、意識して作っています。
――:本作は『ダービースタリオン』という他社のIPに基づく作品ですよね。オリジナルのタイトルと比べて、変えたところ、こだわったところはあるのでしょうか。それとも、他のタイトル同様に押さえるべきポイントは同じだったんでしょうか。
冨田:『ダービースタリオン』シリーズのなかでも、スーパーファミコン時代やプレイステーション時代のグラフィックや面白さを根底としています。スーパーファミコンやプレイステーションで『ダビスタ』を遊んでいた、現在は30代以上になっているであろう人たちに向けて、当時の面白さをそのままスマホで感じてもらうということに主眼が置かれています。
――:ターゲット層に合わせて、スーパーファミコン時代やプレイステーション時代のグラフィックにあえて合わせているところもあるのでしょうか。
冨田:それもありますが、まずは当時の楽しさをそのままに、ちゃんと快適に遊べるというところを重視しています。競馬場のグラフィックをどれだけ凝っても、重すぎたり、対応端末が限られていたりすると意味がないです。我々はそうではなく、「サクサク・軽量」をテーマとしています。
――:なるほど。
冨田:馬のグラフィックは全て3Dにはせずに、昔の作品を意識したところは2Dで、レース等のモーションやカメラワークの演出が求められるところは3Dで、というふうに、適宜選択していたりしますね。
岩田:『ダービースタリオン』というIPは、競馬ゲームの頂点とも言えるタイトルです。それを踏まえて、プロデューサーの金山はいつも「王道感」ということをずっと言っていました。
――:王道感、ですか。
岩田:言わんとしているのは何となく分かるのですが、当初は「なんだそれ?」って思いました(笑)。ただ、制作を進めているうちに感覚を掴んでいきました。
競馬ゲームというと、ギャンブルの側面を強調するようなビジュアルの既存タイトルが意外に多かったんですね。だけど、そういうギラついている感じを『ダビマス』では抑えています。むしろ、自然の美しさ、馬の美しさ、誰が見ても美しいという正に「王道」と言ってもらえるようなビジュアルになるよう、意識しました。
冨田:バナーを作っている時によく話していたんですが、ゲームっぽすぎることは控えようと。ありふれた、いかにもソシャゲっぽいものはやめようと、よく言っていました。
――:今、『ダビスタ』をスマホで、となったら、調教師が女の子になったりしがちだと思うのですが(笑)、あえて、キャラクター押しではなく、馬をメインに据えたところが、当然ながら世界観をすごく大切にされているなと感じました。
冨田:『ダビスタ』は、単にグラフィックが本物っぽいとか、とういうことではなく、馬主を体験するゲームとしてのリアリティを重視しているからです。ユーザーが本当に馬主になって、ゲームに没頭できるようなものである必要があるからです。もちろん、今までのターゲット層に向けつつも、きちんと新規ユーザーのためのシナリオもあって、おじさんだけでなく、魅力的なデザインの女性キャラクターも出てきます。
――:ヒロインがいて、ストーリーがあってということですね。
冨田:シナリオも、実際にちゃんとありそうな現実的なものになるようにしています。メインキャラクターのデザインをコザキユースケさんにお願いしましたし、キャラクターの個性を活かせるように、ゲーム内の機能に合わせて、女性の配役も作ったという感じですね。
――:細かいところですが、タイトルロゴもデザインチームのみなさんが制作されたのですか。
冨田:はい。チーム内で制作しました。パリティビットさん(ダービースタリオンの開発会社)の方に確認していただきつつ、デザインを決めました。一目で、競馬のゲームであること、『ダビスタ』であることがわかること、この2つがロゴの要件でした。また、『ダビスタ』は育成ゲームとしての要素もあり、競走馬になるまでの過程も重要です。そこで、競走馬をモチーフとしながら、親子の馬をデザインしました。他社の競馬ゲームは大抵、走っている馬なんですけどね。『ダビスタ』はレースを操作できるわけではなく、馬主を体験するというものなので、そういう思想からロゴを考えました。
――:『ダビマス』をプレイしてみて思ったのですが、僕はホーム画面がすごく好きなんです。横だけしかスクロールしない造りになっていて、片手でとても操作しやすいです。これが実現するまでに、開発現場ではどのような過程があったのでしょうか。
冨田:ホーム画面として必要だったのは、馬の育成に関わるゲームの各機能が、牧場にあっても自然な形で設置されていることです。なぜ、横スクロールなのかというと…、極力面倒くさい操作をさせたくなかったからです。もちろん、縦にスクロールできたり、ピンチアウトできたり、やろうと思えばできましたし、最初はそういうアイディアもありましたが、必要な要素がちゃんと入る最小構成になるよう試行錯誤して、最終的に削ぎ落とした結果、横スクロールのみになりました。
――:そうだったんですか(笑)。
冨田:表示できる面積が限られている分、設置できるものの数がなかなかシビアでしたが、ちゃんと詰め込めるように、でもボタンはタップしやすいよう配慮しています。別のアイディアでは、馬を直接タップせず、別に選択領域を設けるというものもありました。でも、プロトタイピングの段階で、馬をタップ出来た方がユーザーの自然な行動に基づいているなと思い、今の画面に落ち着いたという感じです。
――:たしかに施設や馬を直接タップできたほうが、ダイレクトにわかりやすくていいですよね。
冨田:ホーム画面のデザインは、まずデザイナーが細かく配置を調整できるような仕組みを開発序盤に作りました。配置の調整までデザイナー側でやってもらえるようにして、いろいろなパターンを検証して、修正を重ねていくという形で進めました。
――:ここからは少し話題を変えて、おふたりがドリコムに入社した経緯についてお伺いできますでしょうか。
冨田:僕は4~5年前に入社しました。前職はweb系の会社にいて、ゲームに関する仕事の経験はありませんでした。でも、当時はスマホでも遊べるブラウザゲームが主流で、僕の経験を活かすことができるのではと思い、ドリコムに来ました。
――:ゲームに携わりたいという思いが大きかったのでしょうか。
冨田:本音を言うと、特にそういう理由はありません(笑)。ただ、その時に技術が一番盛り上がっているところに身を置けば、自分も成長できるんじゃないかと思ったのです。ドリコムのことも、最初は名前すら知りませんでした。
――:入社してからはいかがですか。
冨田:戸惑いではないですが、入社して、ドリコムの印象はだいぶ変わりました。見た目は同業の会社と大差ないのですが、中はわりと泥臭いというか、人情味があるというか……。人を大事にする、という感じがありますね。そこにいるメンバーたちで、いかにプロダクトをよくしていくか、というミッションを強く共有していて、そこがドリコムの魅力だと感じています。
――:エンジニアの神谷さん、西村さんにも別件のインタビューでお話しを伺いましたが(関連リンク)、企画の段階からプランナーはもちろん、エンジニア、デザイナーの方も積極的に参加して、ゲーム性やコンセプトについて、しっかりキャッチボールをしていることに、とても驚きました。そういうところが、御社の“らしさ”なのかな、と思いました。
冨田:現在は、アジャイル型の開発で、スクラムの手法をベースとして開発を行っています。チームにかなりの権限を持たせる手法なので、チーム力がかなり求められています。ただ、最初からそういうやり方だったのではなく、色々なゲームを作ってきた中での経験が蓄積されて、やっと今のドリコムに至ったという感じです。
今は、提供したい価値を実現するために、どうチームで解決していくか、ということを大事にするようになっていて、それは、会社のトップからもメッセージが僕たちまで伝わってきていて、文化として根付いていると思います。
――:失敗や苦労を重ねて、今の御社があるんですね。
冨田:はい。スクラムでの開発って、雑にやっていると、責任の所在が行方不明になって、おざなりになってしまうという面もあると思っています。そこが難しいところではありますが、ひとり一人が裁量をもって行動して、それぞれが目標のために期待に応えるということを目指しています。
――:そういうところが、働きやすさにも繋がりそうですね。では、岩田さんはいかがですか。入社したタイミングまで遡っていただいて…。
岩田:ドリコムに入社したのは3年前なんですが、それまでは新卒入社した規模が大きめのコンシューマーゲーム開発会社にいました。ドリコムのことは、冨田と同じで、最初は社名も知らなくって(笑)。前の会社は大小様々な開発プロジェクトでUIを中心として働いていて、退職直前にはソーシャルゲームのアプリを作っていました。
――:大手企業を退職して、ドリコムにいらっしゃったのですね。
岩田:はい。大規模なゲームの開発に関わっていたのですが、上流にプランナーがいて、デザイナーはわりと下流の方にいて…という感じでした。上流から指示された素材を作っていたのですが、そのうちに何を作っているか、自分でわからなくなってしまったんですね。
――:やらされ感、作業感のような。
岩田:ええ。誰に向けて、何を作っているのか……。デザインはそこを理解していないと、全然意味がないと思うんです。それで、一度外の世界に出てみようと思って転職活動を始めました。
ドリコムでは、ユーザーさんに届けたい価値を満たすことができれば、わりと自由に作らせてくれます。もちろん、その価値を理解して、デザインに落とし込むってそんな簡単じゃないですけど、チームメンバーそれぞれ仕事の分量が均等で、フラットな組織だと思います。
――:チーム全体でひとつの目標に向かって、それぞれの役割やタスクに落とし込まれたとき、きちんと自分で責任をもって作れるということが、大きく違ったということですね。
岩田:はい。たとえば、画像に書かれたメッセージとかも最初は自分で考えたりしていました。前の会社だったら、「プランナーさんの方で決めてください」と言っていたと思います。
――:やったらやったで、「勝手にやらないでください」とか言われたり(笑)。
岩田:本当、そうなんです(笑)。こうしたら面白いんじゃないか、という提案が受け入れてもらえるので、ドリコムのチームは良いなと思うことがありますね。
――:そういう点でも『ダビマス』の開発は、一般的な開発の進め方とひと味違いますよね。一般的には、プランナーがゲームバランスを調整して、「このキャラはこういうパラメータで作ってください」と指示が降ってくるのに、キャラクターの個性やゲームの世界観から発進している。しかも、その段階でエンジニアもデザイナーも、みんな積極的に意見を交わしているという。
冨田:『ダビマス』に関しては、機能とキャラクターが結びついているところが多かったので、デザイン側から、その機能を開発しているエンジニアに仕様を聞いて参考にしてみたりとか、そういうやりとりはしていました。
――:なるほど。
冨田:一度決められた仕様に基づいて黙々と作っていくのも、ひとつのやり方ではあると思います。でも、一度作ってみて、評価して、てんでダメだった場合は、その時間がすごくムダになってしまうんですよね。それよりも、みんなに見てもらって、早い段階でフィードバックをもらってから詰めていくほうが、前向きになれるし、早いですよね。
――:意思決定も早くなりますし、軌道修正もすぐできます。
冨田:最終的には、それぞれの職種で役割の分だけ責任を担うわけなんですけど、そこに至るまでの過程は柔軟に対応していますし、いろんな意見を集約できれば、よくなる部分ももちろん多くなります。だから、職種間、メンバー感で理解や共有の隔たりが少なくなるように、いつも心掛けています。
――:御社の開発現場は、UIデザイナーだからUIしかやらないというわけではなく、制作を効率化させるための仕組みやツールを作るということも含め、幅広く取り組んでいるんですね。
冨田:そうですね。もちろん、分業したほうがいいところは分業しますが、作業範囲をこちらで厳密に制限するようなことはありません。アサインされているメンバーと相談しながら、チーム内での役割をこなしていく、みたいな感じです。
岩田:良いアイディアが浮かんだら、職種に関わらず、提案できていると思います。
――:そういった点は、おふたりにとって働きやすさとして感じますか。
冨田:はい、メリットは大きいです。ただ、みんなが意見を言い合ってばかりだと統制がとれなくなったり、宙に浮いてしまったりするので、決めるところは決めないといけません。そこは、各職種のリーダーが責任をもって統括しています。みんなの意見を上手く集約して、ちゃんと着地させるというスキルは必要だと思います。
――:では、ドリコムの開発環境、社内の雰囲気で、これはいいなというところや、ドリコムらしさを感じるところをお聞かせください。
岩田:冨田も言っていましたが、ドリコムも最初からずっと良い時代というわけではありませんでした。ツールが揃っていなかったり、非効率な進め方になっていたり、そういう時期もあったんですけど、それをステップアップして改善していくことが、ちゃんとできる会社だと思うんです。
――:環境を改善するために、組織全体で取り組みが成されているということですね。
岩田:そうです。ツールも、デザイナーとのやり取りのためにレイアウトツールを導入してみようとか、プロトタイピングツールを導入しようとか、より良い開発環境のための投資は、受け入れてくれる組織だと本当にそう思います。
それは、効率的で小さめで機敏なチームを、会社が作ろうとしていることの表れだと思います。そういう風にやりたいんだなって、会社の方針がちゃんと現場に伝わってくるんですよ。それぐらいのほうが、こちらも動きやすいし、意見も通りやすいし、すごくいいなって感じています。
冨田:意見を言うと、みんなちゃんと聞いてくれるというのは大きいですね。仮に、自分の意見がだめだったとしても、なぜ良くなかったのかを忌憚なく話してくれる。頭ごなしにダメ!なんてことはないですね。
――:では最後に、おふたりから一緒に働きたい人、求めている人物像について教えてください。
冨田:この業界は時代の変化が非常に早いので、その変化に柔軟に対応できる力があるかどうか、変化に対して前向きかどうかが重要なポイントになりますね。従来のやり方に固執せず、変わることに対して、恐れずにどう立ち向かっていくか。デザインの技量の話ではなく、心構えになってしまいますが、課題に直面しても周りを上手く巻き込んで解決出来る、そういう生きる力が強い人が来てくれたら、とても嬉しいです。
――:トレンドやユーザーの振る舞いにキャッチアップして、アウトプットを意識的に変えていけるというスキルが求められている、ということでしょうか。
冨田:そうですね。あとは、ドリコムはイケイケ、キラキラな感じではなくて、すごく泥臭いというか、ゲーム作りに実直な社風なので、そういうところに共感してもらえたらいいですね。岩田さんだって、最初は競馬のことなんて全く知らなかったのに、競馬場に遊びに行ったりしてて。
岩田:(笑)。
冨田:『ダビマス』のように、いわゆる、IPものを作るときは、たとえ今まで興味のなかったものでも、そのIPを好きになろうという努力や取り組みが重要なので、それが自然にできるといいですね。もともと知らなかったことでも、気がついたらすごく詳しくなってたり。
――:岩田さんはいかがですか。
岩田:デザイナーは、絵が好きで仕事にしている人が多いから、自分が作ったもので満足してしまう人が結構いるような気がしています。でも、ゲームの中で成立させてこそ、デザイナーとしての仕事ぶりかな、と思います。ドリコムは、最初の企画の段階でもどんどん参加させてくれますし、周りを巻き込んで、そういうことを楽しいと感じる人が向いているのではないでしょうか。
――:黙々と制作することに閉塞感を抱いていたり、もっと新しいことをやりたいという人には、ドリコムの働き方がバッチリはまりそうですね。
岩田:ゲーム制作で、効率化や社内調整ばかりやってると、何を生み出したかったのかが見えなくなってしまいます。そうやって見失われたものは、だんだんユーザーに伝わってしまうもので、レビューを見ても、手を抜いたところってバレちゃうんですよね。チームのテンションがゲームに滲み出るものだと思っていて、その点では、『ダビマス』のチームはテンションが本当に高くて、良いチームです。だから、良いゲームになったなと満足しています。
――:ゲーム制作に対して情熱を持った人たちがくれば、やり甲斐を感じながら最高のパフォーマンスを発揮できそうですね。
岩田:はい。やり甲斐はすごくあると思います!
――:ドリコムには本当にアツい人がいることがわかりました。本日はお話しいただき、ありがとうございました。
(取材・文:Pick UPs! 原孝則<Twitter>)
(撮影:TAESOO KANG)
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793