また、同社は2018年3月までに7~8本のIP(知的財産権)タイトルをリリース予定だ。直近では、2016年11月にリリースした『ダービースタリオン マスターズ(以下、ダビマス)』の第3四半期の売上が7億4000万円と、垂直立ち上がりを見せ、年明け1月の月次売上速報は4億5000万円となり、好調に推移している。
その一方で、広告・メディア分野においても様々な新規事業を立ち上げており、「with entertainment」というキーワードの下に、「人々の期待を超える」もの作りを続けている注目の企業だ。
本稿では、これらのサービスを支える同社の二大凄腕サーバエンジニア、大仲能史氏(通称onk)、神谷健氏(通称カミケン)の対談企画を実施。ファシリテーターを務めるのは、技術担当役員の白石久彦氏。現場エンジニアから見た同社の社風、開発環境、スタッフの特徴、そして求める人物像など、赤裸々かつ深い内容が展開された。その内容を、前後編の2回に分けてお届けしていく。
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◼︎若手が活躍しまくっているので、中途で来た人の方が驚く
株式会社ドリコム
プロダクト本部 Webアーキテクト部
部長
神谷 健 氏(写真中央)
プロダクト本部 サービス推進部
スペシャリスト
大仲 能史 氏(写真左)
【聞き手】
株式会社ドリコム
執行役員テクノロジー担当
白石 久彦 氏(写真右)
白石:ウチって技術的に結構攻めているところもあるじゃない?ドリコムの若手エンジニアはプレッシャーを感じていたりするのかな。凄腕なエンジニアが多いから、焦りを感じるとか。
神谷:むしろ若手が活躍しまくっているので、中途で来た人の方が驚くと思います。もし、自分が今の年齢でドリコムに来て、若いエンジニアたちを見たら、ちょっと焦りますね(笑)。若い人でもリードエンジニアとしてバンバン活躍している。中途で入社した人にとっても良い刺激にもなると思います。
白石:確かに若手が活躍できる場所があるよね。入社2年目くらいでも、1つのプロダクトにエンジニアリーダーとして参加することが普通というか。
大仲:そういうアサインの仕方はソーシャルゲーム業界の傾向もあるのかもしれませんね。とにかくプロダクトのサイクルが早いじゃないですか。なので、新しいものを次々生み出さないとならない。
白石:確かに。
大仲:新しい開発プロジェクトを始めるときに、僕らは毎回「rails new」から始めて、その時の最新版で一から作り上げるということを経験していくんですね。その経験がエンジニアとしての成長に大きく寄与しているんだと思います。よく、既に作り上げられているプロダクトのカスタマイズはできるけど、一から自分で作れない人っているじゃないですか。そうはならないように育つ、育てる環境はありますね。
白石:業界が多産型だという背景があるから、組織も抜擢アサインをするし、つまりはチャレンジする場所は増え続けていくんだよね。
大仲:ライン数も多いですね。十何本あるんでしたっけ。
神谷:めっちゃあります。
◼︎課題を解決するエンジニアリング…「問題発見力はうちの大きな強みです」
白石:若手も含めてみんな勝手にツール作ってみたりとかしてるよね(笑)。
大仲:なーんか、妙なツールを作っているんですよね。昨日は、画像をドラッグ&ドロップすると良い感じに合成してくれるというツールが作られてて。「キャラクタ画像合成君」みたいな名前の日本語実行ファイルが置いてありましたよ(笑)。
神谷:そういうのも、必要に迫られて作ったんでしょうね(笑)。常に改善しなくちゃ、という意識が強い。「ツール作って、なんとかしてやろう」と若手は思っているんじゃないかな。
大仲:うちに来るとみんなそうなっていく(笑)
神谷:ちゃんとKPT(※)で、今の運用での問題点をみんなで認識できれば、すぐに改善行動に取り掛かれるので。
※KPTとは、Keep:良かったこと(続けたいこと)、Problem:問題点、Try:これから試したいことの略。プロジェクトの振り返りでよく用いられる手法。
大仲:そもそも、現状が理想と一致することって、まず無いじゃないですか。絶対どこかに改善点があるはずで、それを愚直に直し続けるだけですね。
白石:課題意識をしっかり持って、エンジニアリングしながら発見することができる人が多いよね。
大仲:問題発見力はうちの大きな強みですよね。見つけられれば解決できる。
神谷:何か困っていることを発信すると、誰かしら解決する人が出てきますね。
大仲:社内のチャットで質問すると、みんな問題が大好きなので(笑)、わらわらと集まってくるんですよねー。
神谷:自分も、みんながわからないって言っているような問題を意地でも解きたいタイプ(笑)。 エラーの内容を聞いて、「多分あれじゃねーか?」って言いながらコードを読み始める。
大仲:わからないっていう発言を見かけた瞬間に解きに行きますね(笑)。
白石:まさにゲーム感覚だね(笑)。
大仲:他人の“わからない”を解けた時って快感じゃないですか!
白石:ゲーム感覚と、ホスピタリティだね。
神谷:自分なら直せるという自信というか、プライドというか。
大仲:たまに本当にわからなくてへこむんですよね。丸一日考えたけどわかんなかったー、みたいな。
白石:そういう問題に、若手が回答したら?
大仲:悔しいです!
神谷:めちゃめちゃ悔しいですね!
◼︎技術への継続的チャレンジ…「自分たちだったら何とかできる、という思いもある」
※Elixir(エリクサー)とは、Rubyに類似した並行処理に優れる新しい関数型言語。
大仲:Railsに関してはコードを読んできた、という自負があるので。
神谷:自分たちだったら何とかできる、という思いもあります。
大仲:RC版(※)も出ていないのに、「とりあえずRailsのmasterブランチを使って始めようか」みたいな(笑)。リリースまでに負荷テストも全部こなしているし、何とかなるだろうって。
※RC=Release Candidateの略。β版を経て、出荷候補としてのテスト段階に入ったプロダクトのこと。ドリコムではRailsのコードは絶対に読むようにし、使うgemのコードも読んでいる。自分でメンテできなさそうだったら、そのgemは入れないとしている。
神谷:自分がドリコムに来たときは、「あーそれがこの会社の“普通”なんだ」と思って、それからコードをしっかり読むようになりましたね。
大仲:Railsで最先端に乗り続けるためには絶対にやらなくてはいけないことですね。ある意味、継続力の問題でもあって、一気にバージョンアップしようとするからきついのであって、毎週やっていれば全然大したことはないです。
◼︎僕らのチームワーク…「職種間の信頼は大事」
白石:Railsのバージョンアップのサイクルとか技術的な取り組みって、他職種で理解がない人にから見ると単なるコストに感じてしまう事もあって。特にプロダクトを推進している側のエンジニアだと、他職種、特にプロデューサーの理解も重要だと思うんだけど。
大仲:Railsの3から4へのバージョンアップをいくつかのタイトルで実施して、それによってプロダクトへのメリットが出せたことが大きかったような気がしています。
神谷:そういう実績を通して、プロデューサーの人たちも、それが大事なことなんだってことを理解してもらえた、という経緯はあります。
白石:エンジニア側が、その重要さをちゃんと伝えれば、割とちゃんと理解してもらえる環境だよね。
大仲:信頼を勝ち取ってきたので、最近は楽になりましたね。あとエンジニアリングの大変さを理解してくれる人が増えてきたと思います。ゲームの施策的な無茶ぶりが全くないわけじゃないですけど(笑)。
神谷:まあ(笑)。そういうときは、こちらがきちんとリスクを提示して、やっていく。
大仲:反対にプランナーの人たちからも「この施策はゴールとしてここを狙っています、なので継続率が何%上がるはずです」というような、前提のある企画が出てくるようになりましたね。
神谷:なぜそうしたいのか、を聞いていけば、ユーザーが集まる、集まらないといったことは自ずと分かることなので、エンジニアとしても準備できるので大事なことだと思ってます。
白石:エンジニアにはそういう具体的なロジックを示されると数字を追って燃える人が多いよね。そういう会話の積み重ねが社内の信頼醸成に繋がっているよね。よくある職種間の溝みたいなものがないのもうちの良いところだね。
大仲:あとプロダクトごとの特性の理解は必要ですね。運用サイクルがプロダクトごとに違っていて、なんかほぼ毎日イベントをやっているプロダクトもあれば、『ダビマス』とかだと2週間サイクルでイベントを開催していたりする。でもイベントごとにキックオフをして、みんなが納得した上で運営していくというところは全部同じ。これをやったら上手くいったぜ!っていう、成功体験を社内全職種で共有しあっていますからね。
◼︎未来に向けた思い。「圧倒的な生産性とパフォーマンスを実現したい」
白石:最後に未来の話をして終わりたいな。ドリコムはこれから、ゲームを事業の一つの柱としながら、さらに新規タイトルや新規サービスにも投資をして、新しいものをどんどん生んでいこうとしているよね。それを実現する上で二人がエンジニアとして今後取り組みたいことってなんだろう?
大仲:僕の求めるところは、圧倒的な生産性を手に入れることですね。最近でも、アプリを作るときはサーバーサイドのエンジニアが3名くらいでも作ることができているじゃないですか。この生産性を更に高めて、一人でもなんとかなるところまで行きたいな、と。
白石:全員リードエンジニアというのは理想だよね。
大仲:そうですね。誰が入ってもプロジェクトを切り盛りできるぐらいの、生産性の高いメンバーが揃っているチームを作りたいなと思っています。
白石:それには、メンバーの成長の支援、採用の強化などあらゆるところに手を入れていかないとならないね。
大仲:ええ。僕らは事業にコミットしている。で、その結果、事業はお金を生んで組織に貢献してくれたじゃないですか。次は、組織が人を育てるフェーズだと思っていて、人をとにかく育てて、全員が高いレベルになる取り組みに携わることを、今、目標にしています。
神谷:僕は、その生産性に加えて、圧倒的なパフォーマンスを。エンジニアの力量によって、どうしてもアプリケーションのパフォーマンスに差が出てしまっているというのが現状です。スキルの底上げをして、パフォーマンスの高いものを全員が作れるという組織にしていきたい。
白石:どちらも僕らの成長に必要なことだね。二人は目指している大きな目標は一緒だけど、RouteとMethodが違うという感じだね。
大仲:そうですね。僕がリリースまでにかかる時間を早めて、カミケンがパフォーマンスを改善してくれるんじゃないですか(笑)。
神谷:そうですね。その感じで合っていると思います。ゲームタイトルで、自分が追求したいところは、まさにユーザーが快適に遊べるという点です。そこは『ダビマス』でも追求していて、その点を追い求めた結果、今回一番こだわったのが「レスポンスタイムの短縮」という命題。僕の仕事とユーザーさんとは、そこが紐付いているんです。快適に遊べるという価値をお客さんに届けたいと思っています。
白石:これから新しい仲間もどんどん入ってきてほしいなって思ってるんだけど、二人はどういう人と一緒に働きたいって考えてる?
大仲:タイトルを通して、僕らはユーザーとどこかで必ず繋がっているので、手懸けるものに対して「これは自分のプロダクトだ」という意識で関われる環境だと思うんですよ。なので、今までBtoBで受託をやっていた人にそういう楽しさを味わってほしいなって思います。
神谷:自分もBtoB出身ですが、そう思って入社してよかったと思っているのでよくわかります。
白石: B to Cのサービスならではのやり甲斐ってあるよね。
大仲:ゲームを作っていると、リリース時に200モデルは超えるし、数十万DAUの通信を処理しなくてはいけないので、複数DBを使わなきゃいけないような大規模なRailsアプリをリリースしていくことになります。そういうモノを作ったり、改善したりというダイナミックな経験ができる環境だと思います。
神谷:あと、Railsやりたい!という人に是非ジョインしてほしいです。Rubyは遅いとよく言われていて、代替手段に走る会社もあると思うんですけど、ドリコムは「Railsでもパフォーマンスが出せる」ということをちゃんと体現している会社だと思うんですよ。そういう、技術にこだわりを持ってやっている会社はなかなか無いと思うので、それに共感してくれる人と一緒に仕事ができたら嬉しいな、と思っています。
白石:なんかストイック過ぎてハードル上げる内容になってないか心配だな(笑)。とにかく、BtoBや全然違うWebサービスを経験しているエンジニアの方々にも、思い切ってドリコムに飛び込んできてほしいな。ふたりとも今日はありがとうございました。
(取材:Pick UPs! 原孝則<Twitter>)
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793