【サイバーエージェント決算説明会】手探りから手応えへ マスメディアに変貌する「AbemaTV」 来期は「数字(売上)も追い始める」(藤田社長)
サイバーエージェント<4751>は、7月27日、第3四半期累計(16年10月~17年6月)の連結決算を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高2694億円(前年同期比19.7%増)、営業利益208億円(同35.9%減)、経常利益194億円(同39.0%減)、最終利益30億円(同75.5%減)と増収減益となった。
藤田晋社長(写真)は「巡航で大きなトピックスは少ない」と振り返った。ネット広告とゲームで収益を稼ぎつつ、AbemaTVへの投資を行った。AbemaTVもダウンロード数や月間アクティブユーザー数(MAU)などが順調に拡大した。「世界に類を見ないサービスだったので手探りだったが、手応えになった」。来期には引き続き投資を行うが、同時に売上も増やしていく考えを示した。
なお、最終利益が大きく減っているが、これは株式の60%を保有するAbemaTVが連結納税の対象になっていないため、全て取り込んだことに加え、Cygamesの少数持ち分を差し引いたため。また、特別損失が発生したことも響いた。
セグメント別の状況に入る前に、第3四半期の決算の状況を見ていこう。前の四半期(1~3月)を振り返ると、売上高933億円(前四半期比7.8%増)、営業利益79億円(同25.2%増)と増収増益となった。ネット広告とゲームが好調で、売上高は過去最高を更新した。営業利益については、AbemaTVに58億円投資したものの、既存事業だけをみると過去最高益を更新した。
続く第3四半期会計期間(4~6月期)の数字をみると、売上高895億円(前四半期比QonQ4.0%減)、営業利益65億円(同17.2%減)と、QonQで減収減益となった。減収になったとはいえ、四半期ベースでは、過去2番目の売上規模となった。ネット広告とゲームが減収となった。また、AbemaTVへの先行投資を行っており、この四半期では52億円の投資を行ったことが響いた。
▲販管費の推移。大きなプロモーションがなかったため、販管費は減少した。
続いてセグメント別の状況を見ていこう。
■インターネット広告事業
売上高510億円(同2.8%減)、営業利益41億円(同22.2%減)と減収減益だった。例年、3月に需要期を迎えて、4月~6月は落ち込む傾向にあるが、今年も同様だった。とはいえ、過去2番目の売上規模を達成。スマートフォン広告が成長を支えているという。直近の成長を支えてきたインフォームド広告が横ばいになる一方で、動画広告が伸びているという。
「ネット広告は、プロダクトのトレンドが常に変わるのでそれに合わせて商品を選択していくことになる。強化分野である動画広告は大きな伸びが続いている」。動画広告については、代理店業務だけでなく、メディア、アドテク、動画撮影スタジオと網羅的に揃えており、ワンストップで全サービスが提供できる状況にある。
また、営業利益については減益となったが、これは季節要因による売上減の影響だけでなく、人件費の増加が影響したとのことだった。コレも例年のことだが、4月になり、新卒社員が125名配属されたとのこと。次の四半期以降、徐々に戦力化が進むため、今回の減益については「あくまで一時的なもの」だという。
■ゲーム事業
売上高3334億円(同6.7%減)、営業利益68億円(同12.9%減)と減収減益だった。子会社Craft Eggがブシロードと共同で配信している、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の売上がこの四半期決算からフルに寄与したものの、既存タイトルの売上が減少したため、全体としては減収、そして営業減益という着地となった。
これについて「既存タイトルが不調というわけではなく、あくまで一時的な下げ。トレンドとして下がっているとは見ていない」とコメント。実際、足元(7月)は「相当いい」ため、復調してきているという。「かといって、これからぐんぐん伸びそうかというとそうでもない」ため、ゲーム事業の成長については、今リリースが予定されている新作にかかっているとの見方を示した。
新作については、アプリボットの新作『神式一閃 カムライトライブ』と、WithEntertainment『セブンズストーリー』について、まもなくリリースすると明らかにした。8月1日と8月7日にリリースする予定とのこと。Cygamesの新作については、『プリンセスコネクト!ReDive』が9月末、『LOST ORDER』については12月末にリリースする予定であることを明かした。
※追記 新規タイトルのリリース予定については未定との訂正コメントを出した。
■メディア事業
(1)既存事業
売上高64億円(変わらず)、営業損益37億円の赤字(前四半期51億円の赤字)だった。AbameTVを含むセグメントだが、引き続き52億円の先行投資を行った。AbemaTVが目立つが、「タップル誕生」を中心とするマッチングサービスが拡大しているとのこと。会員数は230万人に伸び、アプリストアの売上ランキングでも2位となっている。
ブログサービス「Amebaアプリ」も再評価の動きが出ているという。Amebaブログの一部利用者の投稿がニュースで世間を賑わせているが、スマートフォンへの対応を強化したところ、「またぐんぐん伸びてきている」そうだ。「Amebaアプリ」は、6月には過去最高となる28億PVを記録したそうだ。
(2)AbemaTV
投資実行中の「AbemaTV」についても順調に拡大している。アプリについては1900万件ダウンロードを突破し、まもなく2000万ダウンロードに到達すること、そして、月間アクティブユーザー数(MAU)についても、5月に943万人と1000万人到達に近いことを明らかにした。さらに週間アクティブユーザー数6月には568万人を記録した。大きな波があるものの、上昇トレンドを生み出せている。
伸びている要因としては、ゴールデンウィーク最終日に放送し、視聴者数が1420万と過去最高視聴数を記録した亀田興毅さんを起用した番組や、将棋の藤井聡太四段を取り上げた将棋番組が好評だっただ。「話題となる番組を放送したとき、一気に伸びたものの、翌日には元にもどっているのが一番嫌だった」が、そういうことにはならず、アクティブユーザー数はベースアップしている。
また、他の動画サービスとの比較でも、MAUの規模は圧倒的で、独自のポジションを築くことができている。テレビ局の番組制作力と、ネットサービスの開発・運用力、そして多額の赤字を許容できる財務体質などの条件が必要なこともあり、競合サービスが出てこない要因となっていると藤田社長は分析している。
また、亀田さんの番組ではサーバーダウンするなど課題も浮き彫りとなったが、現在、同時接続数を現在の5倍から10倍までにするようなサーバーの強化を行っており、年内いっぱいには完了する見通し。「とがったコンテンツ」を作ろうという取り組みが亀田さんの番組という形で結実したが、年末にも特番として「相当力を入れたコンテンツ」を用意する。
藤田社長は、これまでAbemaTV関連で、2017年9月期は200億円の赤字を出すと公言していたが、来期(2018年9月期)については、大規模な投資は継続するものの、売上についても追求していく考えを示した。CMのメニューについてもスポットのみだったが、タイムの追加など充実させるとともに、Abemaビデオ(課金サービス)、放送外収入なども強化していく。
■2017年9月通期は変更なし
2017年9月通期は、売上高3600億円(前期比15.9%増)、営業利益280億円(同23.9%減)、経常利益267億円(同24.5%減)、最終利益100億円(同26.5%減)と増収減益を見込む。従来予想からは変更はない。
▲売上高、営業利益、経常利益は順調だが、最終利益のみ進捗が遅れている状況だ。特別利益が発生する見通しのため、最終利益の予想も変更しなかったという。
▲各セグメントの営業利益は順調に進捗している。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役 藤田 晋
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751