【CEDEC 2018】マーケティング改革の成功例を公開…ROAS倍増の実例も! 事業を伸ばすデジタルマーケティング


一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、8月22日~8月24日の期間、パシフィコ横浜にて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2018」(CEDEC 2018)を開催した。

本稿では、開催2日目の8月23日に実施された講演「ROAS倍増の実例も!事業を伸ばすデジタルマーケティング」についてのレポートをお届けする。

本講演は、広告運用体制の抜本的な変革の実例やROASの改善事例、それを実現するための業務フローやシステムなど、具体的なマーケティング改善をテーマとした、マーケティング関係者向けのセッションである。


▲アプリボット、PHQ(生産性本部)プロジェクトマネージャーの三浦慶介氏。

まずは、三浦氏が所属している部署「PHQ(生産性本部)」についての説明があった。PHQは売上・利益を上げるためにさまざまな策を講じる組織であるとのこと。今は主に、マーケティングとデータ分析を行っている。


▲複数のタイトルを横に見るチーム構成となっている。


▲本日のアジェンダ。

マーケティングで成果を出すとは、具体的にはどういうことなのか。まずは下記の、三浦氏が携わった某タイトルの事例が挙げられた。


▲ROASからマージンを引いた後のものをROIという。当月ROIがぐっと2倍になっている。


▲本講演でこれから話す内容を用いて、低リスクで生み出すことができた効果。

これらの話は、ベストなマーケティング事例とは考えていないと三浦氏。ただ、どれも非常に汎用的な実績であり、企業のマーケティング活動を進化させていくうえでのエッセンスが詰まっていると考えているとのこと。


▲改革開始前の状況。どんなタイトルでも3年やっていれば、ユーザーの獲得効率はどうしても低下していく。

また、当時は下記のような課題を抱えていたことを発表した。

・数字が出るのが遅い
・数字が不正確(ミス、定義漏れが多い)
・情報不足(なぜ良い/悪い?が不明)


そして、これらの問題を解消するため以下のような改革に取り組んだのだと三浦氏は話を続ける。


▲上記課題に対しての改革の方針。

上記の課題は当たり前のことであるようにも思えるが、この当たり前ができていなかったと三浦氏は語った。また、これらの課題を抱えている会社は多いのではないか感じているとも。


▲三浦氏が考える、マーケティングの定義。


▲当時、実際に三浦氏が遭遇した出来事。プロモーションに対して無理解であったと振り返った。

上記の問題に対して、行った対策は下記の3つ。

・担当チームの立ち上げ
・一部媒体の直運用を開始
・クリエイティブの一部内製化に着手


当時の課題をまとめると一言で「広告のことがよくわかっていない」という状況だった。すると、連鎖して下記のような問題が起こる。


▲広告のことがわかっていないと、上記のようなこともわからなくなってしまう。特に3番目が最も重要であると三浦氏。


▲担当チームの立ち上げ。事業計画や中期戦略、最適な予算の検討に踏み込んで、一緒に議論できるチームを目指した。


▲一部媒体の直運用。これらの媒体を選んだ理由は、クリエイティブを作ってくれるからであった。

目的としては、実際に運用して触ってみて、そもそも広告はどういう構造になっていて、何をすれば数字が伸びる、または悪化するのか。どんなクリエイティブをどんなターゲットに当てると良いこと、または悪いことが起きるのか。これらの肌感を掴むため、直運用を始めたとのこと。


▲クリエイティブの一部内製化。

ゲームを作る会社が、広告を量産するのは難しいことである。そのため、やるのであれば質を徹底的に上げる必要があるとのこと。ここでの質とは、単純な見た目、グラフィックである。結果が良かった、または悪かったのは広告の質が理由だったのか。それとも、訴求軸に理由があったのか。それらを充分に検証する必要があるため、ゲーム会社のクオリティで広告クリエイティブを作ってみようということになったのだ。

また、ユーザーのことを最も理解しているのは、自分たちでなければならない。ユーザーが今、ゲームを開始してくれている理由から逆算すると、どういうクリエイティブが当たるだろうか……という仮説の検証をするための一部内製化であった。


▲施策のまとめ。


▲施策後の状況変化。

続いてシステムについての解説が行われた。マーケティングを支えるためには、システムとの連携が不可欠である。


▲当時の問題として「数字の闇」があり、議論をすることができなかったという。

上記問題に対して、行った対策は下記の通り。

・柔軟なデータ基盤の準備
・媒体データをAPIで取得またはCSVアップしてもらう仕組み
・レポートフォーマットの定義
・TableauやRedashでのレポート実装



▲従来のやりとり。大きな問題はレポートにあった。


▲解決のために、上記のような方向性を定めた。計測ツールは便利だがズレが生じるため、ゲーム内データと整合性をチェックする必要があった。


▲データ基盤の活用。


▲媒体別レポート。見たいKPIを簡単に見られる仕組みが作られた。これが朝イチで更新されている。


▲配信キャンペーン別にKPI確認できる仕組み。


▲ごちゃついていたレポートを見やすく改良。

レポートフォーマットが、業務を効率化するにあたって特に重要なところであると三浦氏。もし実践するのであれば、各社で独自に使いやすいものを作っていく必要があるだろうとした。


▲ここまでの施策で「データを武器にする」チームになったとのこと。

ここまでの結果として、ひとつの事例を挙げた三浦氏。スタートから3年経過しているタイトルで、どうしても広告の成果が得られずにいた。そこで、プロデューサーらと相談。3年経過しているタイトルを今からスタートしてもらうために、他のタイトルに負けていない部分を前面に打ち出すことになったのだという。魅力を理解してもらうには何日プレイしてもらえばいいか、そのためにはどのようなボーナスを用意すべきか。それらを検討してキャンペーンを打ち、クリエイティブを作成したところ、当月ROASが倍になるという効果が得られた。本講演のタイトルに嘘がないことが、ここで実証されたのだという。


▲改革が成功したと思われるポイント。

成功するかどうかのポイントとしては、行動が伴うかどうかにあるとし「評論家」ではなく「当事者」であるべきと三浦氏は語った。成果にコミットするから意味がある。マーケティングチームが、プロデューサー以上の熱量を持てなければ負けであると、常々チームメンバーに話しているという。


▲精神論ではなく、具体的に上記のような行動を取っていくべきであるとのこと。

最後に三浦氏は、マーケティングの改革を成功できるかは、プロジェクトにとって健全な議論ができるパートナーになれるかどうかということが一番のキモであるとまとめ、講演を締めくくった。

 
(取材・文 ライター:岩崎ヒロコ)


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設立
2010年7月
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代表取締役社長 浮田 光樹
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