2018年の7~9月の決算発表シーズンも終了し、主要モバイルゲーム企業の7~9月期(一部5~7月期と6~8月期)決算が出そろった。そこですっかり恒例となったゲーム関連企業の決算状況のチェックを行いたい。
前回2018年の4~6月の決算をまとめた記事でも触れたとおり、今回発表分から7月4日付でゲームコンテンツ開発および運営に係るコンテンツ事業を譲渡し、オリジナルタイトルから撤退したシリコンスタジオ<3907>はデータを除外している。
その一方で、7月24日に東証マザーズへの上場を果たしたバンク・オブ・イノベーション<4393>の四半期推移のデータを今回より取り上げる。ただし、全体の集計データへの同社業績推移の反映は、さらにデータが蓄積が進んでから行うことになる予定だ。
なお、これまでと同様に決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字と2ヶ月前の数字となっているほか、ネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載している。また、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げる。
今回の決算では、32社中、21社が増収、11社が減収と増収企業が増加した。これはいわゆる夏休み商戦で売り上げを伸ばした企業が多く、特に大手ゲーム企業がそうした傾向が強く出ていることが大きいだろう。
ただし、利益面を見てみると、赤字計上企業が集計データ上、4~6月期に続き過去最大となる13社拡大しており、依然として収益化に苦戦している企業が目立っている。
ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。
増収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、アクセルマーク<3624>、コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、アカツキ<3932>、エディア<3935>、バンク・オブ・イノベーション(BOI)<4393>、セガサミーHD<6460>、バンダイナムコHD<7832>、マーベラス<7844>、スクエニHD<9684>、カプコン<9697>、コナミHD<9766>
増収減益…ミクシィ<2121>、ボルテージ<3639>、イグニス<3689>、アエリア<3758>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>
減収増益…グリー<3632>、enish<3667>、ドリコム<3793>、Aiming<3911>
減収減益…エイチーム<3662>、モブキャストHD<3664>、ケイブ<3760>、ガンホー<3765>、gumi<3903>、カヤック<3904>、モバイルファクトリー<3912>
まずは四半期売上高100億円以上の企業を抽出したグラフを見てみよう。今回は主力タイトル『白猫プロジェクト』(以下『白猫PJ』)の周年イベントで売り上げを伸ばしたコロプラが売上高100億円超に復帰したほか、アエリアが初の四半期売上高100億円台乗せを示現している。アエリアは、サイバードの子会社化などによるグループとしての売り上げ規模の拡大が目立っている。
次に四半期売上高100億円未満の企業を見ると、売上高50億円以上のグループと20億円未満のグループに二極化が進んでいる印象だ。特にKLabについては、四半期売上高が90億円に肉薄しており、100億円の大台乗せもいずれ視野に入ってくることになりそうだ。
なお、今回より集計に加えたBOIは、四半期売上高で10億円規模となっている。
営業利益の四半期推移に目を移したい。まずは四半期実績で営業利益20億円以上の企業については、ミクシィが四半期営業利益で100億円の大台を割り込んでいる。これは2014年7~9月期以来の大台割れであり、やや気掛かりなところだ。
一方、バンダイナムコHDが大幅に利益を伸ばしているほか、アカツキが四半期営業利益で40億円に肉薄する水準となっており、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』がこの四半期は世界的に好調だったことが数字面に表れていると言えそうだ。
営業利益20億円未満の企業については、コロプラが前述の『白猫PJ』の周年イベントの寄与で利益を回復している半面、エイチームやアエリアが大幅な減益となっているのが目立つ。
また、カヤックが赤字転落となったほか、イグニスとLINEが大幅な営業赤字を計上しているため、このグラフ上から除外する形となっている。
なお、前述の通り赤字計上企業は13社と集計データ上、過去最高の企業数になった。ちなみにこの数字は前回まで含まれていたシリコンスタジオが赤字で、今回から含んでいるBOIが黒字であることを踏まえると、実質前回の赤字企業数から2社増えた状態だ。前回赤字だった企業は、すべてこの7~9月期も赤字計上となっており、新たにLINEとカヤックが赤字転落した格好となっている。
次にモバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを見てみたい。売上高については、前年同期比では減少しているものの、前四半期比では増加に転じた。
ただ、依然として厳しいのは営業利益で、大きく落ち込んだ4~6月期の数字をさらに下回る格好となっている。さらに、この利益の集計データには、上場前の過去データがない関係でLINEが含まれていない。前述のとおり、LINEは大幅な営業赤字を計上しており、実態はさらに一段厳しい状況と考えられる。
上場SAPの売上高推移と営業利益推移は、モバイルゲーム大手と比べるといくぶん状況が明るい。特に売上高推移については、ネクソンやアカツキ、アエリア、KLabなど売り上げ規模の大きい企業の増収が目立っている。
営業利益については、こちらは大幅な赤字を計上したイグニスの数字も合算したデータとなっており、それらをこなして前四半期比微増となっているのは、評価に値するだろう。ちなみにイグニスの営業赤字は約16億円で、同社を除くと営業利益の合算値は40億円規模とほぼV字型に回復している計算になる。
さて、ここまで市場全体の状況を見てきたが、特にモバイルゲーム大手が引き続き進んでいる市場のグローバル化の影響で厳しい競争にさらされている状況だ。こうした市場のグローバル化は、中国のアプリ市場でゲームの認可が下りず、中国メーカーの目が日本市場に向かいやすくなっていることも、さらに状況に拍車をかけることが予想される。
そうした流れの中で注目されるのが、前回も取り上げたコーエーテクモのIP許諾タイトルのような例で、この7~9月はそれらのタイトルが日本市場に逆輸入される格好で成功を収めるケースも見受けられた。また、エクストリーム<6033>の『ラングリッサー』がIP許諾による中国展開であらためて脚光を浴びるなど、今後も様々な動きが出てくることになりそうだ。
続いて、各社の個別の状況を見てみたい。なお、大手ゲーム各社については、下記の記事を参照していただきたい。
▼大手ゲーム各社まとめ(参照)
家庭用ゲーム大手の中間、6社中4社が増益 カプコンとコーエーテクモが大幅増益 セガサミーとスクエニは60%超の減益
・DeNA<2432>
第2四半期期間(7~9月)は、売上収益が前四半期比1%増、営業利益が同19%増となったが、これは横浜DeNAベイスターズを中心とするスポーツ事業が好調に推移したことが大きい。主力のゲーム事業は、売上収益が同1%減、セグメント利益が同11%減とやや苦戦した。テンセントとの提携による『伝説対決-Arena of Valor-』など、中国の大型タイトルの日本での配信がうまく軌道に乗るかどうかは、今後の成長に向けた1つの試金石となりそうだ。
・アクセルマーク<3624>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比58.4%増と大幅な増収を達成した。その最大のけん引役は、8月にリリースされたKLabとの共同開発タイトル『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』(以下『マジバト』)で、約1ヶ月分の売り上げが寄与した。その一方で、自社パブリッシングタイトル『ワールドクロスサーガ』が運営移管となるなど、ゲーム関連事業は大きな転換点を迎えていると言えよう。
・KLab<3656>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比11.0%増、営業利益は同11.9%増と2ケタ超の増収増益を達成した。主力タイトルの1つ『BLEACH Brave Souls』が国内外で好調だったほか、新作『マジバト』も好調な滑り出しとなった。また、『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』も海外売上高を着実に伸ばしており、第4四半期以降も引き続きグローバルでの収益拡大が期待されるところ。
・コロプラ<3668>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比34.1%増、営業利益は同116.3%増と大幅な増収増益を達成した。これは主力タイトルである『白猫PJ』の4周年イベントが大きく寄与したことによるもの。なお、足元の2019年9月期の第1四半期は、10月17日に新作『バクレツモンスター』をリリースしているが、その『白猫PJ』の周年イベントの反動減が影響するものと思われる。
・オルトプラス<3672>
第4四半期期間(7~9月)は、6月にリリースした『シンエンレジスト』と、フォワードワークスとの協業タイトル『アークザラッド R』の寄与により、売上高が前四半期比20.3%増と3四半期連続で創業以来の最高売上高を更新した。また、営業損益についても前四半期比で赤字幅が大きく縮小している。8月23日の『アークザラッド R』のリリース以降は大幅に収支が改善したもようで、次の四半期はさらなる収益性の改善が期待される。
・アカツキ<3932>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比57.0%増、営業利益は同167.9%増と大幅な増収増益となった。バンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』において、8月から実施した2.5億ダウンロードイベントが国内外で好調に推移し、収益を大きくけん引した。ただ、現状において『ドッカンバトル』への依存度が高まっており、次の柱の育成が大きな課題となってこよう。
・エディア<3935>
第2四半期期間(6~8月)の売上高は前四半期比52.7%増の5億1200万円となった。6月より運営移管した『アイオライトリンク』が寄与したことと、8月から新作『WarLocksZ』と『温泉むすめ ゆのはなこれくしょん』を配信開始したことが増収につながった。新作の開発費や人材費用などへの投資は先行しているものの、増収効果でそれを今後どの程度吸収することができるのかが次の四半期は注目される。
・BOI<4393>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比1.1%増、営業利益は同44.8%増と大幅な増益を達成した。8月に実施した『ミトラスフィア』の1周年記念イベントなどが好調に推移した。なお、『ミトラスフィア』と『幻獣契約クリプトラクト』の中国本土での配信に向けた独占ライセンス契約を締結しており、これが次の2019年9月期の収益にどの程度貢献してくるのか、じっくりと見守りたい。
・マーベラス<7844>
コンシューマ事業の『Fate/EXTELLA LINK』の寄与や音楽映像事業の貢献で、第2四半期期間(7~9月)は売上高11.5%増、営業利益は同3.2倍となった。ただ、オンライン事業を見ると同期間の売上高が5.5%減となっており、やや苦戦している印象だ。Aimingと新作スマホゲームの共同開発契約を9月28日に締結するなど、今後のオンライン事業の立て直しの動きにも注目したい。
・ミクシィ<2121>
第2四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比5.6%増となったものの、営業利益は同12.1%減となった。これは、広告宣伝費が「XFLAG PARK 2018」の開催や『モンスターストライク』(以下『モンスト』)のアニメの配信開始などで、QonQで17億2400万円増と大きく膨らんだことが大きく影響している。なお、『モンスト』は、10月にサービス開始5周年の周年イベントを開催しており、それが次の第3四半期の収益をどう押し上げるのかが注目される。
・ボルテージ<3639>
第1四半期期間(7~9月)は、積極的な広告展開と機能改善により「日本語女性向け」「男性向け」の一部タイトルが好調に推移し、計画を上回った。その結果、売上高は前四半期比で0.3%増となっている。なお、第2四半期期末時点で新規アプリ5本、アプリ内新作20本を開発中であり、今後の収益回復に期待がかかる。
・イグニス<3689>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比6.2%増となったものの、新規事業領域などに係る債権の貸倒引当金繰入額15億900万円を計上したことで、営業赤字が15億8100万円と大きく膨らんだ。ネイティブゲームについては、女性ユーザーをターゲットとした新感覚スマホ向けRPG『でみめん』の開発を子会社ラップランドが進めており、『メガスマッシュ』の素早い撤退が功を奏すのかどうか注目される。
・アエリア<3758>
6月に完全子会社化したサイバードの寄与もあり、第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比52.8%増と急拡大した。一方で、営業利益は同88.2%減となっており、主力タイトル『A3!』の大型イベント「A3! SECOND Blooming FESTIVAL」の実施などで費用が大きく膨らんだもようだ。『A3!』中国版の配信が来期以降に延期となったことは、続く第4四半期の業績にも影響を及ぼすことになりそうだ。
・LINE<3938>
第3四半期期間(7~9月)は、売上収益は前四半期比2.4%増とQonQで増収を確保したものの、営業損益は35億円の赤字に転落した。LINE PayやLINE Financialなど戦略事業への先行投資を行っている影響が大きいが、それに加えて前四半期は、LINEモバイルの持分法適用関連会社への変更に伴う、一時収益を計上していた反動も出ている状況だ。一方で子会社LINE Digital Frontierが運営する『LINEマンガ』の順調な拡大は明るい材料だろう。
・サイバーエージェント<4751>
第4四半期期間(7~9月)は、全体業績が売上高で前四半期比3.0%増、営業利益で同47.2%減となり、ゲーム事業についても売上高が同3.6%増、営業利益が同36.0%減と増収減益となった。9月27日にリリースしたCygamesと任天堂の新作『ドラガリアロスト』が数日間寄与したものの、新作などの広告宣伝を強化したこともあり、利益率が低下した。次の四半期は『ドラガリアロスト』のフル寄与でどの程度収益が押し上げられるのかに注目したい。
・グリー<3632>
前四半期に『アナザーエデン』や『SINoALICE』など主力タイトルが軒並み周年イベントを開催した反動もあり、第1四半期期間(7~9月)の売上高は、前四半期比8.2%減となった。一方で、『SINoALICE』の初のテレビCM展開などを行いつつも、営業利益は同0.1%増と増益を確保した。また、『アナザーエデン』のガチャ問題は、業界に波紋を広げたが、現時点では業績面で深刻なダメージを与えるには至らなかったもようだ。
・enish<3667>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比で6.1%減となったものの、営業損益は前四半期の1億9400万円の赤字から1億6000万円の赤字に縮小した。ただ、営業赤字計上は16四半期連続となっており、慢性的な赤字体質からの脱却はまだ見えていない。10月18日に配信1周年を迎えた『欅のキセキ』が周年イベントで第4四半期にどの程度寄与してくるのかは関心が募る。
・ドリコム<3793>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.9%減となったものの、営業損益は前四半期の4億1700万円の赤字から1億6100万円の赤字に赤字幅が縮小した。ゲームアプリの運用効率化に加え、研究開発費が大幅に減ったことが赤字幅縮小の主な要因となる。その一方で、ブラウザゲームプラットフォーム「enza」への大規模な投資が継続的に続いており、当面は費用が先行する展開が続きそうだ。
・Aiming<3911>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比5.0%減となった一方で、赤字幅が大きく縮小した。ただ、これは2019年にリリース予定のタイトルがマーベラスとの共同事業となったため、開発費負担が減少するとともに、これまでの開発費用の負担分もこの四半期でまとめて計上したことが影響している。なお、7月配信開始の繁体字版『CARAVAN STORIES』が良好なスタートとなっており、中国本土向けや韓国向け展開にも期待がかかる。
・エイチーム<3662>
第4四半期期間(5~7月)の売上高は前四半期8.1%減、営業利益は同49.1%減となったが、これはライフスタイルサポート事業が第3四半期に繁忙期を迎えていた反動によるところが大きい。一方のエンターテインメント事業も『ヴァルキリーコネクト』や『ユニゾンリーグ』など既存タイトルの減少傾向が続いているが、10月下旬に配信開始した『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』が好発進したことは、次の四半期に向けた好材料となりそうだ。
・モブキャストHD<3664>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比9.5%減となり、営業損益は前四半期の1億7200万円の赤字から2億3800万円の赤字に拡大した。『キングダム乱-天下統一への道-』のGvGの実装が遅延したことに加え、モータースポーツ事業を展開するトムスが季節要因で減収となった。韓国ネプチューン社との共同タイトル2本など、アライアンスタイトルによる開発費の軽減が今後の収益性回復につながるかどうか注目したい。
・ケイブ<3760>
第1四半期(6~8月)の売上高は前四半期比7.4%減となり、営業損益も前四半期2600万円の赤字から2億4600万円の赤字に拡大した。『三極ジャスティス』の収益が想定を下回ったほか、そのリリースに伴う広告宣伝費が増加した。なお、『三極ジャスティス』については、12月5日に4億4000万円の減損損失計上も行っており、引き続き厳しい状況が続いているようだ。
・ガンホー<3765>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比8.4%減の190億円と200億円の大台を2012年10~12月期以来、23四半期ぶりに下回った。主力タイトル『パズル&ドラゴンズ』の漸減傾向は続いているが、連結子会社Gravityの『Ragnarok M』が足元は東南アジアに配信エリアを拡大し、好調な推移を見せており、続く第4四半期は全体業績も回復傾向を見せてくることが期待される。
・gumi<3903>
第1四半期(5~7月)は、売上高が前四半期比0.7%減となり、営業損益は前四半期の1億5800万円の赤字から2億5100万円の赤字に赤字幅が拡大した。主力タイトルの堅調な推移で売上高はほぼ横ばいの推移となっているが、新作の開発投資を強化したことで費用が拡大した。なお、9月28日に開発中の一部タイトルの開発中止を決定し、約6600万円の減損損失をて計上することを明らかにしたが、その詳細をまずはじっくりと見極めたい。
・カヤック<3904>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比3.8%減となり、営業損益は3億9100万円の営業赤字に転落した。7月26日にリリースした新作『東京プリズン』の低調な推移が響いた。なお、『東京プリズン』は2019年2月6日付でのサービス終了が決定している。また、今後のソーシャルゲームについては、大手パブリッシャーと組みクリエイティブに集中する方針で、まずはDeNAとの協業タイトル『進撃の巨人 TACTICS』の開発に取り組んでいる。
・モバイルファクトリー<3912>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比3.4%減、営業利益は同10.5%減と減収減益となった。これは、主力タイトルの『ステーションメモリーズ!』が6月に4周年キャンペーンを実施し、前四半期に好調だった反動が大きい。一方で注力分野のブロックチェーンを活用した新規サービスは、種まきと言える段階であり、まだまだ中期的な視点でとらえておく必要がありそうだ。
この7~9月期でリリースされ、ランキングで存在感を示している主なタイトルを見てみると、NetEase Gamesの『IdentityⅤ』、Netmarbleの『THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR』、サンボーンジャパンの『ドールズフロントライン』、Hero EntertainmentとTCI Entertainmentの『新三國志』、フォワードワークスの『アークザラッド R』、ネクソンの『真・三國無双 斬』、そして任天堂とCygamesの『ドラガリアロスト』といった感じになる。海外勢の日本市場展開とIP許諾タイトルの逆輸入という部分が強く感じれられる状況だ。
そうした中でオリジナルタイトルで成功を収めている『ドラガリアロスト』がサイバーエージェントの次の四半期決算にどう寄与してくるのかは大いに注目されるところだろう。
そして、『新三國志』と『真・三國無双 斬』のIP許諾元であるコーエーテクモHDがロイヤリティ収入の増加で大幅増益を達成しており、こうした動きは今後さらに広がっていくことも予想される。
続く10~12月期以降も国際的な枠組みでの合従連衡の動きが広がっていく可能性は高そうだ。
前回2018年の4~6月の決算をまとめた記事でも触れたとおり、今回発表分から7月4日付でゲームコンテンツ開発および運営に係るコンテンツ事業を譲渡し、オリジナルタイトルから撤退したシリコンスタジオ<3907>はデータを除外している。
その一方で、7月24日に東証マザーズへの上場を果たしたバンク・オブ・イノベーション<4393>の四半期推移のデータを今回より取り上げる。ただし、全体の集計データへの同社業績推移の反映は、さらにデータが蓄積が進んでから行うことになる予定だ。
なお、これまでと同様に決算期の都合で、gumi<3903>とエイチーム<3662>の数字と2ヶ月前の数字となっているほか、ネクソン<3659>のモバイル事業の売上高も掲載している。また、サイバーエージェント<4751>(表中はCA)は、ゲーム事業の数字のみを取り上げる。
今回の決算では、32社中、21社が増収、11社が減収と増収企業が増加した。これはいわゆる夏休み商戦で売り上げを伸ばした企業が多く、特に大手ゲーム企業がそうした傾向が強く出ていることが大きいだろう。
ただし、利益面を見てみると、赤字計上企業が集計データ上、4~6月期に続き過去最大となる13社拡大しており、依然として収益化に苦戦している企業が目立っている。
ちなみに、32社を売上高と営業利益の増減別に分けると、以下のようになる(並びはコード順)。
増収増益…ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>、アクセルマーク<3624>、コーエーテクモHD<3635>、KLab<3656>、コロプラ<3668>、オルトプラス<3672>、アカツキ<3932>、エディア<3935>、バンク・オブ・イノベーション(BOI)<4393>、セガサミーHD<6460>、バンダイナムコHD<7832>、マーベラス<7844>、スクエニHD<9684>、カプコン<9697>、コナミHD<9766>
増収減益…ミクシィ<2121>、ボルテージ<3639>、イグニス<3689>、アエリア<3758>、LINE<3938>、サイバーエージェント<4751>
減収増益…グリー<3632>、enish<3667>、ドリコム<3793>、Aiming<3911>
減収減益…エイチーム<3662>、モブキャストHD<3664>、ケイブ<3760>、ガンホー<3765>、gumi<3903>、カヤック<3904>、モバイルファクトリー<3912>
■アエリアが初の四半期売上高100億円台乗せ KLabも四半期売上高が90億円に肉薄
まずは四半期売上高100億円以上の企業を抽出したグラフを見てみよう。今回は主力タイトル『白猫プロジェクト』(以下『白猫PJ』)の周年イベントで売り上げを伸ばしたコロプラが売上高100億円超に復帰したほか、アエリアが初の四半期売上高100億円台乗せを示現している。アエリアは、サイバードの子会社化などによるグループとしての売り上げ規模の拡大が目立っている。
次に四半期売上高100億円未満の企業を見ると、売上高50億円以上のグループと20億円未満のグループに二極化が進んでいる印象だ。特にKLabについては、四半期売上高が90億円に肉薄しており、100億円の大台乗せもいずれ視野に入ってくることになりそうだ。
なお、今回より集計に加えたBOIは、四半期売上高で10億円規模となっている。
■『ドッカンバトル』でアカツキが躍進 イグニスとLINEが大幅な営業赤字を計上
営業利益の四半期推移に目を移したい。まずは四半期実績で営業利益20億円以上の企業については、ミクシィが四半期営業利益で100億円の大台を割り込んでいる。これは2014年7~9月期以来の大台割れであり、やや気掛かりなところだ。
一方、バンダイナムコHDが大幅に利益を伸ばしているほか、アカツキが四半期営業利益で40億円に肉薄する水準となっており、『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』がこの四半期は世界的に好調だったことが数字面に表れていると言えそうだ。
営業利益20億円未満の企業については、コロプラが前述の『白猫PJ』の周年イベントの寄与で利益を回復している半面、エイチームやアエリアが大幅な減益となっているのが目立つ。
また、カヤックが赤字転落となったほか、イグニスとLINEが大幅な営業赤字を計上しているため、このグラフ上から除外する形となっている。
なお、前述の通り赤字計上企業は13社と集計データ上、過去最高の企業数になった。ちなみにこの数字は前回まで含まれていたシリコンスタジオが赤字で、今回から含んでいるBOIが黒字であることを踏まえると、実質前回の赤字企業数から2社増えた状態だ。前回赤字だった企業は、すべてこの7~9月期も赤字計上となっており、新たにLINEとカヤックが赤字転落した格好となっている。
■モバイルゲーム大手の営業利益の落ち込み続く
次にモバイルゲーム大手の売上高推移と営業利益推移をまとめたグラフを見てみたい。売上高については、前年同期比では減少しているものの、前四半期比では増加に転じた。
ただ、依然として厳しいのは営業利益で、大きく落ち込んだ4~6月期の数字をさらに下回る格好となっている。さらに、この利益の集計データには、上場前の過去データがない関係でLINEが含まれていない。前述のとおり、LINEは大幅な営業赤字を計上しており、実態はさらに一段厳しい状況と考えられる。
上場SAPの売上高推移と営業利益推移は、モバイルゲーム大手と比べるといくぶん状況が明るい。特に売上高推移については、ネクソンやアカツキ、アエリア、KLabなど売り上げ規模の大きい企業の増収が目立っている。
営業利益については、こちらは大幅な赤字を計上したイグニスの数字も合算したデータとなっており、それらをこなして前四半期比微増となっているのは、評価に値するだろう。ちなみにイグニスの営業赤字は約16億円で、同社を除くと営業利益の合算値は40億円規模とほぼV字型に回復している計算になる。
■市場のグローバル化で厳しい競争が続く IP許諾の動きが広がる
さて、ここまで市場全体の状況を見てきたが、特にモバイルゲーム大手が引き続き進んでいる市場のグローバル化の影響で厳しい競争にさらされている状況だ。こうした市場のグローバル化は、中国のアプリ市場でゲームの認可が下りず、中国メーカーの目が日本市場に向かいやすくなっていることも、さらに状況に拍車をかけることが予想される。
そうした流れの中で注目されるのが、前回も取り上げたコーエーテクモのIP許諾タイトルのような例で、この7~9月はそれらのタイトルが日本市場に逆輸入される格好で成功を収めるケースも見受けられた。また、エクストリーム<6033>の『ラングリッサー』がIP許諾による中国展開であらためて脚光を浴びるなど、今後も様々な動きが出てくることになりそうだ。
続いて、各社の個別の状況を見てみたい。なお、大手ゲーム各社については、下記の記事を参照していただきたい。
▼大手ゲーム各社まとめ(参照)
家庭用ゲーム大手の中間、6社中4社が増益 カプコンとコーエーテクモが大幅増益 セガサミーとスクエニは60%超の減益
■増収増益組
・DeNA<2432>
第2四半期期間(7~9月)は、売上収益が前四半期比1%増、営業利益が同19%増となったが、これは横浜DeNAベイスターズを中心とするスポーツ事業が好調に推移したことが大きい。主力のゲーム事業は、売上収益が同1%減、セグメント利益が同11%減とやや苦戦した。テンセントとの提携による『伝説対決-Arena of Valor-』など、中国の大型タイトルの日本での配信がうまく軌道に乗るかどうかは、今後の成長に向けた1つの試金石となりそうだ。
・アクセルマーク<3624>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比58.4%増と大幅な増収を達成した。その最大のけん引役は、8月にリリースされたKLabとの共同開発タイトル『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』(以下『マジバト』)で、約1ヶ月分の売り上げが寄与した。その一方で、自社パブリッシングタイトル『ワールドクロスサーガ』が運営移管となるなど、ゲーム関連事業は大きな転換点を迎えていると言えよう。
・KLab<3656>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比11.0%増、営業利益は同11.9%増と2ケタ超の増収増益を達成した。主力タイトルの1つ『BLEACH Brave Souls』が国内外で好調だったほか、新作『マジバト』も好調な滑り出しとなった。また、『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』も海外売上高を着実に伸ばしており、第4四半期以降も引き続きグローバルでの収益拡大が期待されるところ。
・コロプラ<3668>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比34.1%増、営業利益は同116.3%増と大幅な増収増益を達成した。これは主力タイトルである『白猫PJ』の4周年イベントが大きく寄与したことによるもの。なお、足元の2019年9月期の第1四半期は、10月17日に新作『バクレツモンスター』をリリースしているが、その『白猫PJ』の周年イベントの反動減が影響するものと思われる。
・オルトプラス<3672>
第4四半期期間(7~9月)は、6月にリリースした『シンエンレジスト』と、フォワードワークスとの協業タイトル『アークザラッド R』の寄与により、売上高が前四半期比20.3%増と3四半期連続で創業以来の最高売上高を更新した。また、営業損益についても前四半期比で赤字幅が大きく縮小している。8月23日の『アークザラッド R』のリリース以降は大幅に収支が改善したもようで、次の四半期はさらなる収益性の改善が期待される。
・アカツキ<3932>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比57.0%増、営業利益は同167.9%増と大幅な増収増益となった。バンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』において、8月から実施した2.5億ダウンロードイベントが国内外で好調に推移し、収益を大きくけん引した。ただ、現状において『ドッカンバトル』への依存度が高まっており、次の柱の育成が大きな課題となってこよう。
・エディア<3935>
第2四半期期間(6~8月)の売上高は前四半期比52.7%増の5億1200万円となった。6月より運営移管した『アイオライトリンク』が寄与したことと、8月から新作『WarLocksZ』と『温泉むすめ ゆのはなこれくしょん』を配信開始したことが増収につながった。新作の開発費や人材費用などへの投資は先行しているものの、増収効果でそれを今後どの程度吸収することができるのかが次の四半期は注目される。
・BOI<4393>
第4四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比1.1%増、営業利益は同44.8%増と大幅な増益を達成した。8月に実施した『ミトラスフィア』の1周年記念イベントなどが好調に推移した。なお、『ミトラスフィア』と『幻獣契約クリプトラクト』の中国本土での配信に向けた独占ライセンス契約を締結しており、これが次の2019年9月期の収益にどの程度貢献してくるのか、じっくりと見守りたい。
・マーベラス<7844>
コンシューマ事業の『Fate/EXTELLA LINK』の寄与や音楽映像事業の貢献で、第2四半期期間(7~9月)は売上高11.5%増、営業利益は同3.2倍となった。ただ、オンライン事業を見ると同期間の売上高が5.5%減となっており、やや苦戦している印象だ。Aimingと新作スマホゲームの共同開発契約を9月28日に締結するなど、今後のオンライン事業の立て直しの動きにも注目したい。
■増収減益組
・ミクシィ<2121>
第2四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比5.6%増となったものの、営業利益は同12.1%減となった。これは、広告宣伝費が「XFLAG PARK 2018」の開催や『モンスターストライク』(以下『モンスト』)のアニメの配信開始などで、QonQで17億2400万円増と大きく膨らんだことが大きく影響している。なお、『モンスト』は、10月にサービス開始5周年の周年イベントを開催しており、それが次の第3四半期の収益をどう押し上げるのかが注目される。
・ボルテージ<3639>
第1四半期期間(7~9月)は、積極的な広告展開と機能改善により「日本語女性向け」「男性向け」の一部タイトルが好調に推移し、計画を上回った。その結果、売上高は前四半期比で0.3%増となっている。なお、第2四半期期末時点で新規アプリ5本、アプリ内新作20本を開発中であり、今後の収益回復に期待がかかる。
・イグニス<3689>
第4四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比6.2%増となったものの、新規事業領域などに係る債権の貸倒引当金繰入額15億900万円を計上したことで、営業赤字が15億8100万円と大きく膨らんだ。ネイティブゲームについては、女性ユーザーをターゲットとした新感覚スマホ向けRPG『でみめん』の開発を子会社ラップランドが進めており、『メガスマッシュ』の素早い撤退が功を奏すのかどうか注目される。
・アエリア<3758>
6月に完全子会社化したサイバードの寄与もあり、第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比52.8%増と急拡大した。一方で、営業利益は同88.2%減となっており、主力タイトル『A3!』の大型イベント「A3! SECOND Blooming FESTIVAL」の実施などで費用が大きく膨らんだもようだ。『A3!』中国版の配信が来期以降に延期となったことは、続く第4四半期の業績にも影響を及ぼすことになりそうだ。
・LINE<3938>
第3四半期期間(7~9月)は、売上収益は前四半期比2.4%増とQonQで増収を確保したものの、営業損益は35億円の赤字に転落した。LINE PayやLINE Financialなど戦略事業への先行投資を行っている影響が大きいが、それに加えて前四半期は、LINEモバイルの持分法適用関連会社への変更に伴う、一時収益を計上していた反動も出ている状況だ。一方で子会社LINE Digital Frontierが運営する『LINEマンガ』の順調な拡大は明るい材料だろう。
・サイバーエージェント<4751>
第4四半期期間(7~9月)は、全体業績が売上高で前四半期比3.0%増、営業利益で同47.2%減となり、ゲーム事業についても売上高が同3.6%増、営業利益が同36.0%減と増収減益となった。9月27日にリリースしたCygamesと任天堂の新作『ドラガリアロスト』が数日間寄与したものの、新作などの広告宣伝を強化したこともあり、利益率が低下した。次の四半期は『ドラガリアロスト』のフル寄与でどの程度収益が押し上げられるのかに注目したい。
■減収増益組
・グリー<3632>
前四半期に『アナザーエデン』や『SINoALICE』など主力タイトルが軒並み周年イベントを開催した反動もあり、第1四半期期間(7~9月)の売上高は、前四半期比8.2%減となった。一方で、『SINoALICE』の初のテレビCM展開などを行いつつも、営業利益は同0.1%増と増益を確保した。また、『アナザーエデン』のガチャ問題は、業界に波紋を広げたが、現時点では業績面で深刻なダメージを与えるには至らなかったもようだ。
・enish<3667>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比で6.1%減となったものの、営業損益は前四半期の1億9400万円の赤字から1億6000万円の赤字に縮小した。ただ、営業赤字計上は16四半期連続となっており、慢性的な赤字体質からの脱却はまだ見えていない。10月18日に配信1周年を迎えた『欅のキセキ』が周年イベントで第4四半期にどの程度寄与してくるのかは関心が募る。
・ドリコム<3793>
第2四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比5.9%減となったものの、営業損益は前四半期の4億1700万円の赤字から1億6100万円の赤字に赤字幅が縮小した。ゲームアプリの運用効率化に加え、研究開発費が大幅に減ったことが赤字幅縮小の主な要因となる。その一方で、ブラウザゲームプラットフォーム「enza」への大規模な投資が継続的に続いており、当面は費用が先行する展開が続きそうだ。
・Aiming<3911>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比5.0%減となった一方で、赤字幅が大きく縮小した。ただ、これは2019年にリリース予定のタイトルがマーベラスとの共同事業となったため、開発費負担が減少するとともに、これまでの開発費用の負担分もこの四半期でまとめて計上したことが影響している。なお、7月配信開始の繁体字版『CARAVAN STORIES』が良好なスタートとなっており、中国本土向けや韓国向け展開にも期待がかかる。
■減収減益
・エイチーム<3662>
第4四半期期間(5~7月)の売上高は前四半期8.1%減、営業利益は同49.1%減となったが、これはライフスタイルサポート事業が第3四半期に繁忙期を迎えていた反動によるところが大きい。一方のエンターテインメント事業も『ヴァルキリーコネクト』や『ユニゾンリーグ』など既存タイトルの減少傾向が続いているが、10月下旬に配信開始した『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』が好発進したことは、次の四半期に向けた好材料となりそうだ。
・モブキャストHD<3664>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比9.5%減となり、営業損益は前四半期の1億7200万円の赤字から2億3800万円の赤字に拡大した。『キングダム乱-天下統一への道-』のGvGの実装が遅延したことに加え、モータースポーツ事業を展開するトムスが季節要因で減収となった。韓国ネプチューン社との共同タイトル2本など、アライアンスタイトルによる開発費の軽減が今後の収益性回復につながるかどうか注目したい。
・ケイブ<3760>
第1四半期(6~8月)の売上高は前四半期比7.4%減となり、営業損益も前四半期2600万円の赤字から2億4600万円の赤字に拡大した。『三極ジャスティス』の収益が想定を下回ったほか、そのリリースに伴う広告宣伝費が増加した。なお、『三極ジャスティス』については、12月5日に4億4000万円の減損損失計上も行っており、引き続き厳しい状況が続いているようだ。
・ガンホー<3765>
第3四半期期間(7~9月)の売上高は前四半期比8.4%減の190億円と200億円の大台を2012年10~12月期以来、23四半期ぶりに下回った。主力タイトル『パズル&ドラゴンズ』の漸減傾向は続いているが、連結子会社Gravityの『Ragnarok M』が足元は東南アジアに配信エリアを拡大し、好調な推移を見せており、続く第4四半期は全体業績も回復傾向を見せてくることが期待される。
・gumi<3903>
第1四半期(5~7月)は、売上高が前四半期比0.7%減となり、営業損益は前四半期の1億5800万円の赤字から2億5100万円の赤字に赤字幅が拡大した。主力タイトルの堅調な推移で売上高はほぼ横ばいの推移となっているが、新作の開発投資を強化したことで費用が拡大した。なお、9月28日に開発中の一部タイトルの開発中止を決定し、約6600万円の減損損失をて計上することを明らかにしたが、その詳細をまずはじっくりと見極めたい。
・カヤック<3904>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比3.8%減となり、営業損益は3億9100万円の営業赤字に転落した。7月26日にリリースした新作『東京プリズン』の低調な推移が響いた。なお、『東京プリズン』は2019年2月6日付でのサービス終了が決定している。また、今後のソーシャルゲームについては、大手パブリッシャーと組みクリエイティブに集中する方針で、まずはDeNAとの協業タイトル『進撃の巨人 TACTICS』の開発に取り組んでいる。
・モバイルファクトリー<3912>
第3四半期期間(7~9月)は、売上高が前四半期比3.4%減、営業利益は同10.5%減と減収減益となった。これは、主力タイトルの『ステーションメモリーズ!』が6月に4周年キャンペーンを実施し、前四半期に好調だった反動が大きい。一方で注力分野のブロックチェーンを活用した新規サービスは、種まきと言える段階であり、まだまだ中期的な視点でとらえておく必要がありそうだ。
■まとめ
この7~9月期でリリースされ、ランキングで存在感を示している主なタイトルを見てみると、NetEase Gamesの『IdentityⅤ』、Netmarbleの『THE KING OF FIGHTERS ALLSTAR』、サンボーンジャパンの『ドールズフロントライン』、Hero EntertainmentとTCI Entertainmentの『新三國志』、フォワードワークスの『アークザラッド R』、ネクソンの『真・三國無双 斬』、そして任天堂とCygamesの『ドラガリアロスト』といった感じになる。海外勢の日本市場展開とIP許諾タイトルの逆輸入という部分が強く感じれられる状況だ。
そうした中でオリジナルタイトルで成功を収めている『ドラガリアロスト』がサイバーエージェントの次の四半期決算にどう寄与してくるのかは大いに注目されるところだろう。
そして、『新三國志』と『真・三國無双 斬』のIP許諾元であるコーエーテクモHDがロイヤリティ収入の増加で大幅増益を達成しており、こうした動きは今後さらに広がっていくことも予想される。
続く10~12月期以降も国際的な枠組みでの合従連衡の動きが広がっていく可能性は高そうだ。
(編集部:柴田正之)