【インタビュー】『無職転生 ~ゲームになっても本気だす~』開発スタッフが語るIPタイトルの難しさとメリット 原作者監修の元、キャラクターを正しい方向で描けた



2021年3月に配信された『無職転生 ~ゲームになっても本気だす~』は、同時期に放送されたTVアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』を元にしたスマートフォン向けRPGだ。
 
本作では「ロキシー」「シルフィエット」「エリス」 等の無職転生のキャラクターたちがゲームだけの描き下ろしイラストで登場。自分だけのパーティーを組んで冒険を楽しめるのが特徴だ。また、原作の物語を追体験できるだけでなく、原作者・理不尽な孫の手が監修するオリジナルストーリーも展開している。アニメで『無職転生』を知った人はもちろん、原作小説のファンにとっても見逃せない内容になっている。
 
今回は本作のパブリッシャーを務めるビーグリー、開発・運営を担当するAiming、そしてアニメの製作委員会にも名を連ねるグリーのスタッフ陣にインタビューを実施。三社それぞれがどのように作品と向き合い、そしてゲームを生み出したのかを伺った。
 
株式会社ビーグリー
プロデュース部長 佐藤圭一
 
株式会社Aiming
ディレクター 中林信弥
運営ディレクター 赤岩孝宏
 
グリー株式会社
プロデューサー 大須賀翔
 

■製作委員会とともに、同じ方向へ歩みを進めたゲーム開発
 
――本日はよろしくおねがいします。まず、みなさんがゲームにどのような形で携わっているのか教えて下さい。
 
佐藤氏:ビーグリーの佐藤と申します。弊社はパブリッシャーの立ち位置で、私が全体を統括する立場にいます。そしてグリーの大須賀さんが製作委員会の1人として、ゲームに限らず『無職転生』全般をいろいろと見られています。
 
大須賀氏:グリーの大須賀です。私はアニメのプロデューサーの1人として『無職転生』にはクレジットされていまして、グリーも製作委員会の一員として加わっています。私としてはアニメのプロデューサーであると同時にゲームにも携わっていまして、アニメとゲーム間の調整をするのが主な役割です。
 
佐藤氏:そしてゲーム『無職転生』の開発・運営を担当しているのが、今お話にもあったAimingさんです。
 
中林氏:よろしくお願いします、Aimingの中林です。今回の立ち位置としては開発のディレクターで、全体のスケジュール管理であったり、ストーリーやシステムの仕様周りを担当しています。
 
赤岩氏:Aimingの赤岩です。私は運営ディレクターとして参加していまして、主な仕事としては中林や大須賀さん、佐藤さんとともにどんなイベントを展開していくのか、ユーザーさんからの声をどのようにゲームに落とし込んでいくのかを調整しています。

 
――グリーさんが製作委員会に入っているということは、初期の段階からゲーム化の企画は存在していたのですか?
 
大須賀氏:そうですね。声をかけていただいたタイミングから、グリーが製作委員会に入ることと、ゲーム化の案を同時に走らせていました。
 
佐藤氏:もともと『無職転生』はなろう系、異世界転生系ではレジェンドとも言える作品で、コンテンツパワーが強いと以前から思っていました。一方で、ゲーム化という観点では、いろいろな異世界転生作品がゲーム化されている中で、『無職転生』は手つかずの状態で、グリーさんからお話を頂いたときは非常に可能性がある展開だと感じました。

 
――開発・運営を担当するAimingさんにはどういった経緯で声をかけたのですか?
 
佐藤氏:グリーさんからお話をいただいた際、実際のところどういうゲームにするのがベストだろうとビーグリー側で考えているとき、相談をしたのがAimingさんだった、という経緯があります。Aimingさんもコンテンツ自体に興味を持ってもらえましたし、開発・運営を担当していただくことになりました。
 
赤岩氏:実は中林が原作の大ファンだったこともあって、社内でチームメンバーを集めるときには喜んで手を挙げました。
 
中林氏:やはり愛情を持って接することが大切ですからね。アニメとのコラボはあっても、IPをゲーム化するのは弊社としても稀ですし、私個人としても初めてのことでした。原作のイメージを守りながら作っていくのは特に意識したところです。

 
――IPという意味だと、グリーさんはこれまでもさまざまなアニメ原作のゲームを手掛けてきたと思います。そのノウハウが生きたケースはありましたか?
 
大須賀氏:おっしゃるとおり、私個人としても会社としても、IPを扱ったタイトルは多く手掛けてきました。ノウハウという意味では、仕様の不一致といいますか、開発会社と製作委員会の思い描くゲームデザインが異なる場面がよくあります。
例えば「デッキに同じキャラクターを入れてもいいのか」とかですね。ゲーム開発の立場だと、システム上入れてもいいという結論になる場合が多いですが、逆に製作委員会側は良しとしなかったりですね。
 
『無職転生』ではそのようなトラブルがないよう、Aimingさんにご協力いただきながら、最初のタイミングで開発側がやりたいことをすべて製作委員会にチェックしてもらう工程をはさみました。


 
――なるほど。ちなみにクレジットを見るとポケラボさんの名前もありますが、こちらはどういった形で関わっているのでしょう。
 
大須賀氏:ゲームシステム提供や、そこに関わるエンジニアリング支援といったところで協力してもらいました。もともと弊社の100%子会社であり、『シノアリス』などRPGタイトルを運営してきた実績もありますから。
 
――ジャンルのRPGというのは、原作がファンタジーの世界観だし、バトルの描写もあるし、自然な流れで決まっていったのですか?
 
佐藤氏:そうですね。コンテンツ自体がとても強力なので、ジャンルで奇をてらうより王道にして、細部を詰めていくほうがより良い作品になると考えました。
 
中林氏:弊社としてもRPGは度々開発してきたジャンルですからね。今までは多人数で遊ぶシステムが多かったものの、その中でも敵と戦うRPGという部分では、強みを活かせると思いました。もうひとつRPGというジャンルに落ち着いた理由としては、『無職転生』が主人公ルーデウスのサクセスストーリーである点も大きかったです。ルーデウスが徐々に成長していく様子を実感できるのも、RPGならではの魅力ですね。


 

――アニメの放送と同時進行というのも、大きな取り組みだったと思います。
 
佐藤氏:難しさもあれば、同時にメリットも大きいと感じました。パブリッシャーの目線だと、様々なところで連動したプロモーションができるのはありがたかったです。アニメの放送前からゲームの存在を打ち出すことでより多くの方に認知していただけましたし、アニメ本編の熱気の高まりをゲームにつなげることができました。
 
中林氏:難しさで言えば、放映されていない部分のネタバレをゲームでする訳にはいかないという部分です。その中で、アニメでいまだ描かれていない部分にも魅力的なキャラクターは大勢いて、それらをゲーム内で見せられないのは辛いところでもあります。

 
――スケジュール調整の難しさは感じませんでしたか?
 
佐藤氏:もちろんありましたが、「思ったより感じなかった」というのが正直な感想です。というのも、製作委員会の方々やAimingさん、協力していただいたポケラボさんと話をする中で、どこに注力するべきかが初期の段階からはっきり見えていたんです。具体的にはストーリーやアートの部分ですね。このはっきりとした方向性が最後まで崩れることがなかったので、大変ではあったものの必要以上の苦労もなかったと感じています。
 
■アニメのクオリティに負けたくない気持ちが強かった
 
――ゲーム内容についてもお聞かせください。メインストーリーは原作を追体験する内容になっていますが、すでにストーリーを知っているファンも多くいます。飽きさせないための工夫はなにか考えましたか?
 
中林氏:当然アニメを見てゲームに興味を持つ方が多くなることは予想しながらの開発でした。その中で、小説よりは簡略化を行いつつ、アニメより細かく描くことを意識しました。また、原作のストーリー1本をそのまま流し込むのではなく、キャラクターごとに分割したり、より読みやすくなる工夫もしました。
 
――一方で、オリジナルストーリーも多く存在しますが、こちらのこだわりはいかがでしたか?
 
中林氏:オリジナルストーリーを展開する上では、原作ファンはどんな内容なら注目してくれるかを第一に考えました。その結果生まれたのがパウロ外伝だったのです。自分自身も『無職転生』のファンとして、ルーデウスの父親であるパウロは愛すべきキャラクターであり、人物像をもっと知りたいと思っていました。
その一方で、原作だとあくまでも主人公のお父さんという位置づけで、メインで描かれることは多くありません。ファンであっても意外と知らないことがあり、スポットライトを当てるには格好の存在だったのです。
 

――確かパウロ外伝は、原作者の理不尽な孫の手さんが監修しているんですよね。
 
中林氏:そうですね。キャラクターの心理描写や世界観設定の面で協力していただきました。心理描写だと、原作ではあまり描かれなかった家族とのやり取りといった部分ですね。この辺りは私たちも原作を読み、調べながらの開発でしたが、それでも分からない部分は多々あります。そこを先生に「こんな設定もあるんだよ」と教えていただくことで、キャラクターを正しい方向で描けるようになりました。


 
――キャラクターという点では、グラフィックなどでどのように魅力を引き立てようと考えましたか?
 
中林氏:キャラクターの一枚絵に関しては、シチュエーションの設定にはかなりこだわりました。特に、原作でも印象的なシーンは可能な限り再現できるように心がけています。またモーションに関しては、例えばシルフィエットだとおどおどとした雰囲気を出しつつ、戦闘で勝ったら元気にはしゃいだり、ロキシーだったらドジっ子でちょっと照れたり、細かい動きで違いを生み出せるようにしています。

――キャラクターそれぞれで違ったこだわりを持っていたと。
 
中林氏:ゲームより先に放送されたアニメのクオリティがとても高く、それに負けたくない気持ちは強かったですね。


 
――アニメと連動した企画も当然考えているとは思いますが、逆にアニメ放送がないタイミングではどのように盛り上げていこうと考えていますか?
 
佐藤氏:アニメが放送されないタイミングはどうしても出てきますからね。今お話のあったオリジナルストーリーもアニメのない期間を盛り上げる施策の一つでしたし、今後もそこは強化していきたいと考えています。また季節ごとのイベントはもちろん、他IPのコラボも行っていきたいです。最終的な目標はアニメに縛られない形で、「アニメの合間を埋める」にとどまらない展開をしていくことです。
 
――10月からアニメの第2クールも放送予定ですが、ゲームとアニメの連動した施策も考えているのですか?
 
佐藤氏:そうですね。具体的にどんなことができるかはこれから詰めていくところですが、グリーさんとも相談しながらやっていきたいです。アニメと同時期にリリースできたことは間違いなくメリットですから、最大限活かしたいところですね。
 
大須賀氏:私たち製作委員会側から、「アニメではこんな展開がありますけど、ゲームでもなにかやりませんか」と提案するケースもあるかと思います。ゲームとアニメの連携は、従来の作品よりも踏み込んで実現できるのではと、私自身も期待しています。
 
――4月末には150万ダウンロード突破というニュースもありましたが、現時点での手応えはいかがですか?
 
佐藤氏:原作ファンの方を中心に、非常に期待されながらスタートできたと思います。一方で、やりたいことはとてもたくさんある状態です。また、ユーザーの方々からもいろいろなご意見をいただいています。なにから優先すべきかをしっかり見極めながら、アップデートを重ねていきたいです。
 

赤岩氏:Aimingとしてもたくさんの方にプレイしていただけているのは、とても嬉しく思っています。佐藤さんもおっしゃったとおり、みなさんが継続して楽しめるよう、改善すべきところはどんどん改善していきたいです。
 
大須賀氏:オリジナルストーリーやキャラクターイラストはファンの方々に喜んでいただけている実感があります。
 
――改善していきたい点もある、とのことですが、具体的にどの辺りに課題を感じていますか?
 
佐藤氏:本作はもともとアニメの放送直後にリリースすることを大きなミッションと掲げており、まずは達成できました。とはいえリリースの段階で実現できていないこともたくさんあって、ユーザーさんからの意見としてもいただいています。そこをいかにスピーディに対応していくかが今後の課題だと感じています。
 
中林氏:リリースしてから今まで、自分自身も一プレイヤーとして遊んでいると、キャラクターの数がまだまだ少ないと感じますね。属性という観点でも、レアリティという観点でも不足が目立つと思うので、引き続き魅力的なキャラクターを追加していきたいです。また現状は最高レアリティのキャラクターばかりが活躍するゲーム内容なので、低レアリティのキャラクターが活躍する場も作りたいです。
システム面では協力コンテンツがまだまだ薄いと思います。多くのユーザーさんが熱量高くプレイしていただいて、育成しきったキャラクターも出てきたように感じます。そういったキャラクターがしっかりと活かせるゲームを目指します。
 

――では、今後の展開に向けて、皆さんから一言いただければと思います。
 
佐藤氏:アップデートしたいアイディアは日々積み上がっているので、いち早くユーザーさんに届けられることが第一の目標です。アニメとの連動であったり、他IPとのコラボであったり、アップデート以外にも喜んでいただける取り組みはまだまだあると思います。これらをいいタイミング、いい形で届けていきたいです。
 
中林氏:リリースまで一生懸命駆け抜けてきて、まずはスタートを切ることができました。今後はユーザーさんの遊べる要素をもっと増やして、より楽しめるゲームにできるよう頑張っていきます。
 
赤岩氏:日々プレイヤーの皆さまから叱咤激励の言葉をいただいております。私自身もプレイヤーとして遊んでいて、不足に思う部分はあります。可能な限りスピーディに対応していくので、温かい目で見守っていただければと思います。
 
大須賀氏:ストーリーやアートは特に気合が入っていて、今後実装されるパウロ外伝のストーリーの続きも、自信を持ってお届けできるクオリティになっています。ゲームやアニメはもちろん、『無職転生』はいろいろな展開を見せていくので、ファンの方々にはたくさんの場面で作品に触れていただけると嬉しいです。

■『無職転生~ゲームになっても本気だす~』

 

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グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高626億円、営業利益31億円、経常利益42億円、最終利益27億円(2020年6月期)
上場区分
東証一部
証券コード
3632
企業データを見る
株式会社Aiming
http://aiming-inc.com/

会社情報

会社名
株式会社Aiming
設立
2011年5月
代表者
椎葉 忠志
決算期
12月
直近業績
売上高68億2900万円、営業損益29億4900万円の赤字、経常損益29億4700万円の赤字、最終損益29億7200万円の赤字(2017年12月期)
上場区分
東証マザーズ
証券コード
3911
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