【ロングインタビュー】ゲーム業界が抱える問題に対する一つの回答を示す「VESTA」は、様々なポジションで経験を積んだメンバーと、その価値を最大限に活かし提供するプロ集団

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ゲームビジネスに関連した業務に従事しているのであれば、業界構造を理解する上での必須ワードである「デベロッパー」、「パブリッシャー」という単語。例外もあるが、デベロッパーは主に開発に努め、パブリッシャーは運営やマネタイズ、マーケティングを担当する事が多い。

モバイルゲームビジネスの市場拡大に伴い一般化してきたこの「分業」は、ゲームのクオリティ向上や大規模展開において効果的なケースもある一方で、開発と運営が別であるが故の構造的な問題を指摘する声も少なくない。

今回、新規タイトルの立ち上げを含めた約20年のプロデューサー業務や、数々の大規模タイトルの移管・運営を経験してきたVESTA株式会社 代表取締役社長の仲川航一氏に、ある意味では業界に必然的に起きた「分業」の構造的なボトルネックについてお話を伺った。

――まずは自己紹介をお願いいたします。

制作現場でデザイナー、コンセプトデザイナーを経て商品企画から関わらせていただき、ディレクター、プロデューサーを経験した後、事業長として「運営特化型」のセカンダリと呼ばれる業態での事業継承、運営移管を複数経験してきました。その際、事業継承の中でPMIと呼ばれるプロセスに触れることで、構造上の見直し、PJの方針の再策定などに多く携わってまいりました。

――VESTAとはどのような会社なのでしょうか?

私のキャリアの中で出会って仕事を一緒にした仲間との縁を大切にと心がけていたら、一緒に仕事がしたいと望んでくれるメンバーが持っている実績が手前味噌ながらとても大きく育っていましたので、そのメンバーの出来る事を編み上げたら初めに価値が生まれ、それを提供しようという会社になりました。この価値をさらに大きく育てていく事を使命と考えています。

企画、開発、運営、移管、そしてサービスの終了まで、メンバーによって経験した範囲に多少の違いはありますが、主に最も苦しい、開発、移管後のサービス終了までを如何に完遂するか、という点に特に厚い経験を持っております。計画の立案と完遂、状況に応じた方針の変更、初期計画からの変更などさまざまな状況を乗り越えてまいりました。

フェーズフェーズでの知見を他のフェーズ、例えば運営移管時に発現し、対処した問題についての知見を開発のゼロ地点に適用するなどの応用も踏まえた上で、先を見通した計画の形でご提案をする事ができる会社、と評価いただけるようになっていきたいと考えております。

――ゲーム事業における様々な状況に対応したり問題を解決するために、メンバーの経験や知見といった価値を提供する会社ということでしょうか。なぜそういった会社を作ろうと思ったのでしょうか?

ソシャゲ全盛期に、ゲーム会社ではない会社が参入してきましたが、世の中の流れもあり多くが撤退を始めています。その状況を見て、「日本のオンラインゲームって、何かものすごく疲弊してないか?」と感じました。海外と比べて資本の差もあると思いますが、開発の練度が上がっていかないという状況が何年も続いたからです。

ゲーム部門が会社の一部として膨れ上がったけど、うまくいかなくなるとゲーム部門がなくなってしまう、という事が起き続けた。その結果、老舗で昔からゲームを作っている人によって後進育成が上手くいっていて「ここはブランディングが強い」と言われる所は、任天堂以外にはあまりない状況だと感じています。

――そこに危機感を抱いていると。

私の知人は、外資系の日本スタジオで世界を相手に活躍していましたが、そのスタジオが数年後にはなくなってしまった。じゃあ彼らはその後どうなるの?と思うわけです。もちろん海外に渡って世界のゲーム業界の中で活躍される方も当然います。ハリウッドで3Dモデルを作ったりするケースもあると思いますが、ゲームを作る一つひとつの専門性をバラバラにした時、オールマイティーに必要とされる人はそう多くはない。

じゃあ、そういった人達の受け皿が必要なのではないか?サッカーで例えると、地元クラブのように根ざしていないと、日本のゲーム作りの将来が閉ざされてしまうのではないか?今真面目に取り組んでおかないと、周りを見渡したらゲームを作る人が全くいない、という状況にもなりかねないので、なんとかしたいと足掻いています。

――かつては、世界で評価されて授賞式などに呼ばれる名クリエイターの存在もあって、子どもがなりたい職業の上位にゲームクリエイターがランクインしていた時期もありましたが、その世代以降はあまり表立ったクリエイターが存在していない気もします。

そういう人がまた日本から生まれてこないと、この業界に夢を持てないですよね。必ずしも偉くなれと言うつもりはありませんが、若いうちは他業種と比較してまあまあ良くても、歳を重ねたとき、例えば家族を養うためにもっとお金が必要となっても、そのために上に行きたいと思えないような状態なのです。

特にディレクターをやりたいという人が現場にいない。ディレクターという肩書を命名する文化だけが残って、あまり権限がないのに何でも自分の責任にされる。だけど給料がそれに見合って高いわけではないので、おもしろくないんですよ。

結果を出した時に適切な評価を与えてくれるかわからない人達から「いいからこの金額でやって」という給料で働かされる。その後仮に結果を出して会社が儲かっても元々分配ルールが決まってないので、会社によってもらえる人もいれば、もらえない人もいる。それでうんざりしちゃった人が私の世代にも多くて、あれからどれだけの人が残ったんだろうと。

そういった悲しい現実をたくさん見てきたので、そこも何とかしたい。先ほどの世の中の流れからくる疲弊感と、会社の制度からくる人材の扱いで痩せ細っている部分の両方が迫ってきているので、業界に夢がないなと感じています。

――そういった業界に対する危機感も、会社を立ち上げた理由の1つということですね。では改めてVESTAという会社の強みはどういった部分でしょうか?

前提として、我々はスマホのソシャゲだけを作る会社ではありません。戦場を選ばず、家庭用ゲームでも何でもやります。私自身は元々フリーランスで企画をやっていて、家庭用ゲームからこの業界に入りました。任天堂のセカンドとして経験を積んで、その後PS3やニンテンドーDS向けの企画を出している中で、ソシャゲが流行り出しました。

当時在籍していた会社で、ソシャゲを作ったことがある人がまだ全然いない状態だった頃に、会社から「誰かやれる人いる?」と言われて、色々苦労しつつも作りましたが、その時家庭用ゲームとソシャゲの差は無いとつくづく思いました。

当時の家庭用ゲーム機はオンライン機能がまだまだ弱かったけど、任天堂やソニーが近くにいる友達とプレイできるゲームで大成功したのを機に、これからは通信機能が入らないとダメだとなったが、当時はまだハードが追い付いていませんでした。でも最近になってやっとゲーム全体がオンラインに寄ってきた。

では「オンラインゲームとは何か?」を考えてみます。通信環境やハードの性能がクリアされている、という前提で技術面以外の要件をスポーツで例えると、ルール、審判、大会主催者等の「環境」だと考えます。それらがいないとスポーツは面白くない。そして「環境」をひっくるめて「ゲーム」と呼ぶのであれば、ゲームの肝は「運営」であり、その「運営」によってゲームの楽しさが大きく変わってきますよね。「運営」の経験をしっかりと持っているところが、我々の強みの1つです。

――運営面において、事業承継や移管等のさまざまな経験をされてきた中で、分業化や先鋭化が進んだ故に直面した問題はありましたか?

まず、制作から携わっていてそのまま継続している状況を俯瞰したときによく起きていた事は、『期締めの事業計画』という会社のビジネス事情に支配されてしまい、コンテンツ毎の全期間で見た利益と(お客様への)還元の考え方が失われてしまいやすい事でしょうか。

もともと、ソシャゲが勃興したときにビジネスとしてどのように捉えられていたかというと、2年以上続くと考えていない会社がほとんどだった。PCでのネトゲという前例があったはずなのですが、焼き畑の自覚が彼らにはあった。それくらい今までと違う課金形態にこだわっていたのです。

それがいいとか悪いとかではないのですが、結果として短期短命で想定されて始まっていたので、一年単位の収支計画との親和性が高すぎたように思います。ただ、これはどちらも持っておかないと、ファンコミュニティーを形成しているようなコンテンツにおいて重要視されるべき考え方のひとつが、上手く扱われていない状態であると考えます。そこをまるで考えず先のことだけ考えていては、お客様を蔑ろにしてしまっている事になるわけですね。

こういった理由もあってリリース後ここまで来られて今があるのは、お客様の支援の賜物という認識を持つのが運営の基礎だと思います。ただし、ビジネスの基本として利益は創出されないと立ち行かない。

――感謝をするだけではゲームの運営として成り立たないと。

感謝を形にするところまでやらないと成立しない、という事になりますね。携わるメンバーができる限り「やってよかった」というゴールであるべきだと思うのです。携わるコンテンツが変わっても、皆未来のコンテンツを生み出す大切な人的資源なのです。皆が存在してくれないと、皆様が楽しむサービスがこれから先、生まれ続けてこなくなってしまうし、この仕事に就きたいという新しい人材も生まれてこない。

よって短期での利益も大切な指標として取り扱います。より、コンテンツ単体での全期間利益にもフォーカスすべき、ということになりますかね。

例えば一年単位の収支計画では、一年目以降、つまりその先のことはわからないという最初の計画時点でお客様からすると、納得いくものではないわけです。そのような状態からのスタートや、どのような場合であっても、まずコンテンツが成功するためのゴールを導き出さなければならないわけですが、そのために計画の振り返りを行うと、諸処の都合で方向性を模索した結果、「始点でゴールに何が設定されていたのか?」ということがわからなくなっている状態がとても多かったのです。

運営が開始されているということは、リリース時にお客様に期待していただけるよう開示した内容や期待値のようなものがあるわけです。運営そのものはお客様との対話であり、ライブ感が必要なものだと考えますので、少しずつゴールが変化していく事は往々にしてあります。しかし改めて運営移管が行われた地点からゴールを見定めようとした場合、それまでの延長線で物事を進めてもビジネスとして成立しない場合もあるのがセカンダリというお取り組みにおいて重要なポイントです。

着手時点では、まずどれだけ「初期の計画から変わったのか?」ということを数字から追ったり、内容についても「どのような理由でどれだけインフレをしてきたのか?」などは、できるだけ詳細に調べたりします。お客様のニーズによって変化すべき部分でもありますし、そこがうまく噛み合わずにお客様がゲームを離れたりもする部分でもありますので。そういった結果と、もともと想定されていた(ゲームデザインを含む)計画を照合させる事も可能であれば把握したいですね。

――もともとの想定計画を把握しておきたい理由は?

先程触れました、お客様に期待していただけるよう開示した内容や期待値のようなものが想定計画に含まれていたとして、移管によってそれが不可能になるならそのお詫びから始めるのが筋なわけです。それはお客様だけでなく、今までそのコンテンツに携わった方たちの仕事を知ろうとする行為でもあり、その方達を含めたコンテンツそのものに対して払うべき最低限の敬意だと考えるためです。

その上で移管を起点とした、そのことで発生したコストなどをリクープ出来る計画を立案出来なければ、コンテンツの承継が立ち行かなくなります。つまりできるだけ今まで提供されてきたサービスは維持し、新たな楽しみも提供できる計画を作れなければ、そのコンテンツは死んでしまうのです。

結果として、状況と条件が違うだけで求められるものは制作と違わない上、既にあるものに触らなければならないわけですから、ゼロからものを作るときよりもむしろ難しいというのが最初に受けた印象でした。

しかしビジネス的に考えると、既にサービスとして存在しているものを扱うわけなので、新規リリースに比べて初期投資に対するリスクが低いという見え感があり、ゼロからものを作るよりも容易いというご意見が多いような状況だったので、初手の時点で既に大きなギャップがありました。

当時は特に移管が行われる事をお客様がポジティブに受け取ってくださる状況ではなく、ビジネス要件を満たせないと移管したことでコンテンツの寿命が短くなってしまう可能性があるわけですから、致し方のないことかと思います。

――VESTAはそういった問題に対しての一つの回答となりうるような、プロ集団であると伺っています。これらの問題をどう捉えて、どう解決するべきだと考えていらっしゃいますか?

まず目指さねばならなかったのは、移管をしたことでサービスが安定したり向上する結果になり、コンテンツの寿命がより伸びなければならない、というハードルでした。

取り組むにあたって、知っていることや出来ることが、制作だけを担当していたときよりもずっと多いという認識でしたので、運営に特化する、運営のほうがやることが制限されていて少ないという考え方は最初に捨てました。

制作を手掛ける場合には先を見通して運営の計画を用意し、状況によってリリースする内容を選択し、より可変的にニーズに向き合えるよう、準備をしてある状況をできる限り用意する。足りなければ新たに用意する計画に整えていく。収益の状況によってコストをコントロールする事も必要で、場合によっては速やかにプランを移行する。意思決定を求めるには、状況をしっかり説明し、取れる選択肢も用意しなければならない。

――場合によってはサービスのクローズも選択肢に含まれる?

そうですね。ですから厳しい判断から目を背けるのではなく、むしろしっかり可視化しなければなりません。

運営移管だけ、もしくは制作だけに特化するといった偏った考え方をするのではなく、すべてのフェーズに対する理解と対応能力が必要になると感じたのです。そのために制作の起点で多く経験を積ませていただいた私が、一定期間運営フェーズに集中できるセカンダリ事業を選んだのは大きな学びを得られる結果になったと感じています。

当時は制作→リリース→運営→サービスのクローズまでを初期に計画することは確かに難しい、不可能と言われればそうかもしれないと考えていましたし、今でも多くの方が同じ意見をお持ちだと思います。しかし、正確な規模、時期をすべて計画に落とし込むのではなく、「どのような状態になったらフェーズを切り替えるべきなのか?」ということを初期の計画に落とし込むことは可能だと考えるようになりました。

――なぜそう考えるようになったのでしょうか?

これは、私が事業を承継するという案件に実際に携わったとき、セカンダリ事業者に運営移管をする会社の経営側に立って考えた際に「もっと経済効率を上げる事も出来たはず」ということを数多く見られた事が大きな気付きになっていると思います。

確たるルールがあるわけではありません。しかし事業承継する際に価値を算定する必要があるわけですが、着手する前に、時期が適切であればもっと価値を高めた状態で手離れすることが出来たというタイミングがあったということです。

結果的に、コンテンツを売りたい理由が「このままだと運営を続けられない」というネガティブな理由であるべきではないんです。コンテンツの収支計画を全期間で見たときに、価値が最大化されるように運営がなされていて、たとえ会社の戦略的な都合でそのコンテンツを手放すとしても、その会社が調達したいはずの高い金額で売ることが出来る状態であるべきで。

ただし、その条件が見合わなければ、大抵は移管するべきではないという結論になってしまいます。これはかつて移管して欲しい側に身を置いていた立場としては矛盾してしまうのですが…。“コンテンツファースト”で考えるならばというか、“コンテンツファースト”であるべきという結論に行き着いたわけです。

もちろん、気付きの時点では事後であるからこそわかることではありますが、これを事前に察知できる計画にすることは可能だと考えます。規模、お客様の数、コンテンツの熱量はデータを追えばわかることです。それをリアルタイムで測り、現場と経営がコンテンツの状態を正確に把握し続けることがとても難しく、過去出来ていない状況はあったので、判断は経営に委ねるしかないとしても、現場がその問題について考えられる、正しく判断を仰ぐことが可能な状態を作れるのではないか、そこに取り組むべき価値があるポイントではないかと考えるようになりました。

――計画は立て尽くす、という事になると思うのですが、そこまで計画を詰めるのは何か理由があるのでしょうか?

後に変更するための起点となるからです。つまり、計画からどれだけ変更したかがわかるようにする必要があって、予定外の現象に対応できないガチガチの計画を立てる、ということではありません。そしてその目的は、お客様を含めた携わる人々が「やってよかった」という結果に向かうために必要な事だと思うからです。

本当の意味でのコンテンツファーストを実現させるためにも、計画を立てて取り扱うことも、ゲームの内容を取り扱うことも、すべてゲームに関連する「技術」として取り扱われるべきものではないかと思います。

――その考え方はVESTAの在り方に色濃く影響を与えているように思えます。仲川様はどのような思いを持って、会社・組織を組成されたのでしょうか?

まずは、さまざまなポジションで経験を積んだメンバーとのご縁がありまして、その価値を最大限に活かすことが出来る形を模索しました。上記で触れたことを実際に見て、経験した事があるメンバーであれば専門、職掌の違いに関係なく、全フェーズに対して理解と備えが出来ているかどうかが最も大切で、計画を正しく取り回せる状況が必要だと考えました。

コンテンツファーストで情報がきちんと取り扱われていて、参画している会社同士の壁は気にせず、きちんとそれぞれの都合がテーブルに乗せられる。これは現場主義ではありません。どちらかといえば経営上正しく取り扱われれば、現場が望まないことでも最大限努力できる状況を作る手順が存在しているだけです。大きな意思決定には時間が必要なこともあります。その時間を供出するための見える化が正しく行われている状況を、チームとして維持することが必要です。

そしてこの「チーム」という単位で動けるようにしないといけないのですが、一つの会社、組織にすべての要素を揃えるには専門分野が分かれて深くなりすぎてしまったので、映画製作のチームのように必要な要素を持つ専門家集団が繋がって動けるようにする必要がありました。我々はその中でも『オンラインゲームの専門家集団』でありたいと考えています。

我々がもっている知見を盛り込んだ見通し計画を、最初期から参画させて頂く形が最も効果があります。私がプレイヤーだった時には考えられなかったニーズでしたが、現在においては確実にあると感じております。「アウトソース」という言葉がもともと強くイメージとして持っていた、「外に頼む」という意味から、「外のリソースを使う」、「チームに組み込む」になってもいいのかもしれません。

現在、実際にお引き受けしているお取り組みから可能性を強く感じています。ただし、それはもちろん我々がリアルタイムで研鑽を重ね、実力をお示し出来てのこと。よくあるのは、問題が起きる前にそれを解消しても誰にも気付かれない、だからやらない。それだと後手に回るしかなく、手遅れになることのほうが多い。だから事前にアラートをしっかり出す必要がある。アラートが出たときに対応できなければ、アラートが出ただけになってしまいます。アラートに適切に対応するには、計画の変更が可能な状態を作り、コンテンツファーストが命題である上層部が選択肢を持てている状態を維持しなければならない。

さまざまなお取り組みの形がある中で、この状態が維持できるように工夫していけないか? そのために計画を都度都度作り切る(気軽に行えるという意味ではもちろんありませんが)ということに挑戦しています。

――外部に業務を依頼する際「安い金額で済ませよう」という腹積もりで、場当たり的に色々な会社を組み込みながらプロジェクトが進み、結果的に高額に膨れ上がった挙句にプレゼンスも芳しくない、といったエピソードを耳にする事もあります。総費用とその対価という視点で見た時、VESTAのロジックは価値の高い提案となる気がします。

そうですね、そのような結果を出せるよう全力で臨んでいますが、その時点では見たくない数字であることが多い、というのはとても良くわかりますし、比較するも何も現状すら把握できていない状態で何かと比べて高い低いとすることもとても難しい。あくまでも今までや、あのまま放置したらどうなるか?の試算と比べていただかないと本当の価値を算定いただくのはとても難しいので。

一度お取り組みをご一緒させていただいて、今までのご経験と比べていただいて初めて、深くご理解を賜われるのではないかと考えています。まずは機会を頂いたお仕事から、一つひとつしっかりと計画の実現をしていく事で形にしていけたらと考えています。

――先ほど、最初期から参画する形が最も効果的とありましたが、どのようにパフォーマンスが発揮されるのでしょう?

先程もご説明させていただきましたが、リアルタイムで状況が可視化され、定期的に計画を見直していただく選択肢を提供できるという形になりますので、「初期計画からどのように計画を変更すべきフェーズなのか?」「フェーズに対してどのようなプランが持てるのか?」という軌道修正が出来る状況が作られます。

結果、受注側が一般的に最も避けたいはずのペンディングや、サービス終了についてもマイルストーンごとに選択肢に入ることになります。

――誰も望まない結末に対しても、常に視界の中に入れておくということも重要ということですね。

特に資本元、パブリッシャー側にとってはとても大切なことになると考えています。全く計画が履行されていないような状況で、仕掛けたから最後までやめられない、○年後になるまで状況がわからない、というような形は望ましいことではありません。

――開発や運用の垣根を超えての価値の提供をする際に、具体的にどのような提案や業務が行われるのでしょう?

繰り返しになってしまいますが、まずコンテンツの全期間が計画として作られることでおわかりいただけると思いますが、遅延などが出た場合にはその原因と状況、全期間に与えるその影響が可視化出来るのです。

結果を出すのがクリエイターの仕事と言われつつも、人気商売なので当たるも八卦当たらぬも八卦と扱われがちに感じます。結果が良ければ経過がどうでもいいになってしまいがちなところは改善の余地が大きくあるのではないかと。

実際のところは、たくさん挑戦した上で成果が実ることがあるというもので、「そのために挑戦する回数をどう作るのか?」というのが成功を作るためのロジックであると考えています。まずは計画、実行において「頼んでよかった」と評価いただけるような結果をお示ししなければなりません。

――個人のキャリアにおいても、開発は開発、運営は運営の事だけしかわからないままキャリアを積んでしまう事に不安を抱えるという声を聞いたこともあります。その点、VESTAにおけるキャリア形成はどのような形になりますか?

キャリア形成における具体的な課題としてよく出るポイントは、持たせる責任を大きくしていく中で、中間管理職的な位置づけのポジションになったときにどうしても板挟みになってしまい、後手に回ってしまう事です。それをなんとかしなければ、誰も責任者をやりたがらないという構造欠陥になってしまうという危機感があります。

――誰も憧れない、誰も目指さないポジションになってしまうと。

責任に応じてギャランティーが上がっていくという法則がきちんと構築されていたとしても、です。お金だけの問題ではないのかと。

中間管理職と呼ばれる仕事が抱える一番の問題は、情報の制限と、それによる視点の欠如に起因すると考えています。よって、ある程度以上の裁量をお任せするメンバーには、必要な情報についての説明責任を果たせるよう努力しています。これは、会社を経営する側の責任だと考えています。 

――そうした業界の現状がある中で、VESTAのメンバーに対して求めることは?

弊社のメンバーにお願いしているのは、「3つの視点をもって情報を受け取っていただく」という事です。

タスクをこなすメンバーとしての視点、タスクを割り振るマネージャーとしての視点、そのタスクはどういう都合で出来上がっているかという、チーム全体を俯瞰した経営に近い視点です。

【メンバーに求める3つの視点】
①いつまでにそれを行うのか?(予算と期限と人手)
②なぜそれを行うのか?(成果物と結果の責任)
③なぜそれを始めたのか?(ゴールは何か)

この、③の部分が認識できていないと、要件を満たさないものが出来上がってしまう。可視化されていないと、それが活きた更新をされていないことにモヤっとしたまま予算が消化され続け、取り返しの付かないことになってしまう。

現場の都合と経営の都合に挟まれている状態の人というのは、できれば今話し合いたくないような状況が生まれた時に、いの一番に動かなければならない。先手を打つための起点となることが本来求められているのに、他の関係者の平穏な日常にそれを持ち込むことを遠慮してしまう。

可視化されていて、あきらかに問題があれば、先手でそれに対処しなければならない。攻めの保守を実現するために、マネージャーはそのように動くことを求めています。

結果として、そのために必要な裁量が預けられます。裁量のほうだけ見ても、何を求められているかわかっていただけないと思いますので、その使い方を噛み砕いてご説明してご理解をいただき、必要な相談を受け止める事が出来る関係を構築したいと考えています。本当の意味での信頼関係を築いていきたいですね。

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

他社が作って運営していたゲームを、如何に同じお客様に飽きさせずに楽しんでもらえるか?この事業承継が如何に難しいものかという話は、ゲーム業界に関わる人間として、本来なら普通に話ができるはずなんです。しかし制作した人達、運営だけしている人達、移管されたゲームを運用している人達の間にある垣根をなかなか越えられずに話がされてこなかった。

我々は分断されている全てのフェーズに対するノウハウを持っており、それらを提供できる、する必要があると考えています。

運営では苦しい場面は必ず来きます。私達はそれに備えられていないゲームを散々見てきました。我々のノウハウを元にやるべきことをもっと早い段階でやっていたら、あの会社はもっと利益を出せていた、ゲームを移管せずに済んだんじゃないか、というところまでわかるので、何とかできないか?という気持ちがあります。

実際、ゼロからの制作も手掛けさせていただいておりますし、その中で今までの知見をなるべく取り入れるということも既に行わせていただいています。これをリリースしたらどのような結果になるのか見守っていただければと思います。

――本日は、ありがとうございました。

【編集後記】

今回、ゲーム業界に起きた「分業」の構造的なボトルネックを解消する為にはどうすれば良いのか? という疑問を仲川氏に投げ掛けてみた。ゲーム業界の末席に身を置いていると、度々この構造に由来する困難について、両サイドからため息交じりの事例を聞くこともあったからだ。

「開発なら開発、運営なら運営という単一フェーズだけに焦点を合わせるのではなく、企画、開発、運営、移管、そしてサービスの終了までを見据え、全て計画に落とし込み、フェーズや迎えた環境によって計画を変更できる状態を作る。その状態さえ維持できれば、作業自体はそれぞれの専門家集団によって分業が可能」と、一つのアンサーを示してくれた仲川氏。お話を伺い、VESTA株式会社であればその状態を作り提供する事ができる、業界が抱えるボトルネックを解消できる、と思えた。

仲川氏のインタビューを読み、VESTA株式会社の考え方、実現させたい事に共感して、一緒に働きたいという方は、ぜひ下記の採用ページをご覧ください。

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