【決算レポート】『トレクル』絶好調で大幅増益のドリコム、高進捗も通期予想据え置き 『GGGGG』や『ウィザードリィ』など下期投入の新作がカギ

木村英彦 編集長
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ドリコム<3793>が10月27日に発表した第2四半期累計(22年7月~9月)の連結決算は、売上高28億7300万円(前年同期比13.9%増)、営業利益7億9000万円(同70.7%増)、経常利益7億3700万円(同64.6%増)、最終利益5億3400万円(同71.8%増)と大幅な増益を達成した。前四半期に続く利益規模だ。

 

 

リリース8年を経過した『ONE PIECE』のゲームアプリが活躍

増益要因は、主力IPタイトル『ONE PIECEトレジャークルーズ』が好調だったことによる。映画「ONE PIECE FILM RED」が記録的なヒットとなったことを受けて、売上も大きく伸びたそうだ。

本作は、バンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトルとなるため、自社配信=グロス売上ではなく、パブリッシャーの取り分などを差し引いた金額=ネット計上となる。このため、自社タイトルより売上は下がるものの、利益率が高く売上の伸びが利益の伸びにつながりやすい。

運用中の11タイトルの売上は以下の通りだが、1タイトルが飛び抜けていることがわかる。リリースから8年が経過した同タイトルだが、「新規だけでなく、復帰ユーザーも増えている」(内藤裕紀社長)とのことで、引き続き好調な推移を期待したい。

 また、2タイトルが赤字となっており、早期の黒字転換を目指していく。運用体制の縮小や座組の変更など、売上が維持または漸減することを前提として、人員や広告宣伝費などコスト削減を行なうことで採算改善を図っていく。

同社は、スマートフォンゲームの収益についてボラティリティが高いこともあり、現在では社員だけでなく、業務委託や外部企業の協力を仰ぐことで、柔軟性を確保している。固定費を変動費化する取り組みといえよう。

 

新規事業にも新たな動き

また、新規事業である出版事業についても動きがあった。ドリコムメディアより、ライトノベル「DREノベルス」を10月にリリースした。新刊は今後、毎月リリースする。9作品のコミカライズ、そしてウェブトゥーン展開なども行っていく。

ちなみに、出版事業については、投資先行のフェーズであり、2024年3月期まで続く見通しだという。参加者からの質問に対して、内藤社長は、通年での利益貢献は2025年3月期からと見ていると回答した。

また、Web3領域については、NFTまたはFT、両方を使うゲームを中心に企画・開発を進めているとのこと。法務や税務、会計監査の対応を調査しながら、どういうゲームが作れるかの検討を進めている最中だという。

このほか、Twitterを活用したファンコミュニティ促進サービス『Rooot』は150サービスで導入されるなど拡大している。ゲーム業界だけでなく、アプリや流通、飲食、メーカーなど他業界からの引き合いが増えている。

  

■2023年3月通期の見通し

続く2023年3月通期の業績については、売上高130億円(前期比23.5%増)、営業利益20億円(同25.7%増)、経常利益19億円(同23.2%増)、最終利益12億円(同48.6%増)、EPS42.20円を見込む。

9月中間期までの進捗率は、売上高44.6%、営業利益80.4%、経常利益81.4%、最終利益88.0%と非常に高い水準。上ぶれ必至のようにみえるが、従来予想を据え置いた。

 内藤社長は、上期決算について「主力IPタイトルの上ブレ」と「順調な進ちょく」と想定より良かったことを認めつつも、「予想を修正するタイミングではない」と述べた。下期リリースの新規3タイトルの状況を見極めるためだ。

新作については、「総じて1四半期ほど後ろにずれている」ことに加え、「売上は市場に出してみないとわからない」ため、数字が読みづらい。リリースに前後して投下する予定だった広告宣伝費のずれ込みも、結果として上期の増益要因になったが、下期ではコストとなる。

 同社は下期に以下のタイトルをリリースする予定。

・『Wizardry Variants Daphne』
・『GGGGG』
・未発表タイトル(子会社スタジオレックス開発)

『GGGGG』については、キャラクタースキンにNFTを導入するなど意欲的な作品となる。また、『Wizardry』もリリース延期の発表があったが、Twitterのトレンドに入るなど、ゲームユーザーの関心の高さが伺えた。

 スマホゲームの市場環境を見ると、市場参加者が減り、新作タイトルが顕著に減少している。その一方、相対的に貴重になった新作への注目度が上がる傾向にあり、一時期に比べて「埋没」してしまうリスクが減っているようにみえる。

スマホゲームの新作がヒットするかどうかは、ゲームの内容やマーケティング施策に加えて、新作の多寡も大きな意味を持つ。なかば運の要素が大きいのだが、現在の市場環境は決して悪くない。これをつかむことができればドリコムの業績は一段と伸びていくはずだ。

株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高108億円、営業利益22億8100万円、経常利益21億9200万円、最終利益11億5900万円(2023年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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