【インタビュー】2023年を駆け抜けたAimingのTeamCARAVAN…今年1年の振り返りと2024年に向けて描く展望についてキーマンに訊く

スマートフォンで本格的なRPGが楽しめる『CARAVAN STORIES』や10周年と長期運営を続ける『剣と魔法のログレス いにしえの女神』(以下、ログレス)、さらに『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』(以下、カゲマス)、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル』(以下、ダンクロ)といった人気アニメを題材にしたタイトルを開発・運営するAiming<3911>の第二事業部。

通称「Team CARAVAN(チーム・キャラバン)」と呼ばれる同スタジオの規模は2021年より事業部制を導入して以降、拡大し続けている。

今回は、そんなTeam CARAVANの2023年の軌跡を振り返ってもらいつつ、2024年に向けた展望についてお話を伺った。

◆Team CARAVANキーマン

Aiming 第二事業部/事業部長/高屋敷氏(写真右)

Aiming 第二事業部/副事業部長/久保氏(写真左)

Aiming 第二事業部/副事業部長/竹内氏(写真中央)

――まずは2023年のゲーム市場全体の動向について、市場的な観点やクリエイターとしてゲーム開発の立場からどんな1年でしたか?

竹内:コロナ禍があけて、リアルイベントが大いに盛り上がっていたという印象です。その中で精力的に頑張っているメーカーさんは華やかに見えましたね。

タイトルについては、特にモバイル市場のヒット率がどんどん下がっているなと感じていて、戦い方をよく考えていかなければいけないとより強く感じました。また、コンシューマー市場については、Steamなどがどんどん盛り上がっているという印象でした。

高屋敷:グローバルの市場動向にはなりますが、2023年のスマホ市場は明らかに右肩上がりのグラフなので、まだまだチャンスはあるとは思うものの、売上の構成を見るとかなりのパーセントが既存タイトルで占められています。

その中で新しいタイトルでヒットさせる事の難易度は本当に高くなっていて、2023年に入ってから明確にヒットしたタイトルは片手で数えるくらいしかないと思います。ヒットの定義も昔は月に2~3億の売上を作れれば大ヒットみたいなイメージでしたが、今は桁が1つ増えているので、その部分の意識の変化は起きているような気がします。

TeamCARAVANはこの1年、色々な事を考えているとインタビューでお話しさせていただきましたが、その流れの中であまり戦略や方針をブレブレにするべきではないとは思いつつ、ここに来て改めて1年スパンぐらいでは進んでいくべき道筋の見直しはかけなければいけないんだろうなと、強く感じさせられた年だったような気がします。

――Aiming、TeamCARAVANとしてのこの1年振り返っていただければと思うのですが、まずは運営している各タイトルについてお聞かせください。

高屋敷:常に全てのプロジェクトが成長するように努力はしますが、とはいえやはり運営タイトルはどんなに努力しても少しずつ下がっていくものだとは思っています。

10周年と長期運営タイトルになった『ログレス』や、6年前にリリースした『CARAVAN STORIES』など、従来のゲームは古くなってきてゲームの世代交代が起きたりとビジネス的な面でもなかなかチャンスを見つけにくくなるので、想定以上に苦戦してしまった1年だったとは思っています。ただ、その状況のなかでも10周年を謳った『ログレス』については、良い結果を残せたかなとは思います。

竹内:『カゲマス』に関しては、リリース直後に急落下するアプリが多い中で、今年1月~3月まで原作アニメが放送され、ゲーム側もアニメと連動したアップデートを行ったので、多くのユーザーさんが長い期間遊んでくれたのは良かったと思っています。

ただ、原作アニメが放送終了した後は、ユーザーさんからの気持ちというのがやはり若干離れてしまい、そこに対するケアの試行錯誤という所は苦労しましたが、今年10月から原作アニメの2期が始まり、そのタイミングに向けてまた盛り上がるような試作を試行錯誤しつつ取り入れていきました。その結果もあって、『カゲマス』1周年はすごくきれいな形で展開でき、ユーザーさんからの反響も大きかったです。タイトルの鮮度という意味で『カゲマス』は熱量がかなり高かったなと感じています。施策の良し悪しに関わらずすぐに反応が返ってくるので、関心を寄せてくれるユーザーさんが多いタイトルと言えます。

――もう1つの新作『ダンクロ』については?

高屋敷:『ダンクロ』は当初5月リリース予定でしたが、リリース数週間前に韓国産の大型タイトルが同日サービス開始という発表があったので、広告費をできるだけ効果的に使いたいという理由でリリース時期をズラしました。結果的に『ダンクロ』の初動はすごく良かったと思いますし、アクションゲームがこの市場でも十分楽しんでもらえるジャンルになっているのかなと感じました。

ただ一方で、継続率に関しては『カゲマス』には及びませんでした。おそらくそれはジャンルの問題で、やはりアクションだと常に画面に張り付いて意識をしなければいけないようなゲーム性なので、どうしても疲れてしまうユーザーさんもいると思います。

あとは作品そのものの鮮度の見定めや市場における価値、Googleでのトレンド評価を鑑みて、予算や人的リソースの使い方やタイミングをどうすべきか考える必要があると思います。

ただ、TeamCARAVANとして半年のスパンで大きな作品を2タイトル出せた事で、たくさんの経験値を獲得することができました。これまで積み上げてきた我々の知識を活かし、より確実に売上を組み立てられるものづくりができていく下地が、2022年末~2023年にかけて作れたのかなとは思っています。

久保:開発側の話になるんですが、Aimingを外から見て「アニメIPならAiming」と言ってもらえるくらいに今年はアニメIPのタイトルを出しましたし、製品としてのクオリティも支持されている会社という位置づけができた1年だと思います。アニメIPに着手したのは本当にこの2~3年でして、これだけの期間で成果が得られたのは大きいですし、技術力も進歩したなと感じています。

――アニメ作品を題材にしたゲームを立て続けにリリースした中で、『ストリームヒーロー!』という完全オリジナル新規作品を発表しました。発表時の反響はいかがでしたか?

高屋敷:正直に言うと、制作サイドが思っていたほどの反響はありませんでした。まだ初報で情報がほとんどなかったことや、継続的に情報を出していなかったので、ファンがつくような情報深度ではなく、想定の範囲かなと個人的には思って見ていました。

2022年、2023年でAimingはアニメや漫画の作品の高品質なゲーム化を成し遂げてきました。その中でオリジナルタイトルに対しての葛藤というものはあって、『ストリームヒーロー!』はその中間というニュアンスのものづくりなのかなと思っています。見た目はアニメっぽいですし、表現方法は『カゲマス』『ダンクロ』からの系譜を残した作り方をしています。

久保:いまのAimingはアニメIPのゲームを作る会社として外から見られているというところで、『ストリームヒーロー!』でオリジナル作品も作れるというところをアピールできればと考えています。

高屋敷:ちなみに来年、第一事業部が『銀河英雄伝説』のゲームを出す予定ですが、それもやはりアニメ作品のゲーム化で連続することになります。アニメ作品をゲーム化すること自体、それは我々の強みになったと思います。とはいえ人気作品のゲーム化を行う会社という固定されたイメージはできるだけ作らないようにこれから努力していかなければいけないです。

竹内:定期的にその話題は出ますよね。同業会社からは出版社と深い交流があり、今後どんな原作のゲームを出すのかと聞かれることもありますが、我々としては本当はオリジナルタイトルも作りたいし、それを生み出せる組織だと思っているので、ジレンマは感じ続けていますね。

高屋敷:だからこそ『ストリームヒーロー!』はオリジナルとして、TeamCARAVANにとって次の大きなターニングポイントにあたる作品になります。来年になったら色々情報を出していけるように準備も進めていますので、ご期待ください。

――続いてTeamCARAVANという組織として2023年を振り返っていただきたいのですが、この1年で成長できた所、伸びしろが見えた部分があれば教えてください。

久保:ちょうど1年前にTeamCARAVANの足りないところについてマネージャーで集まって話をした時に、ブランディングが足りないという課題が挙がりました。ですので、チームのメンバーもこの1年間、ブランディングを意識したゲーム作りや活動ができたと感じています。

インタビュー記事だったりCEDECに参加したりと、色々な方に向けて発信する場に積極的に参加させていただき、他社様と仲良くなったり、TeamCARAVANのものづくりの考え方や技術力についてなどを伝えられたのではないかなと思います。

この一年、採用活動のおかげでスタッフが増えたんですけど、今まで人を育てたり発信するということにあまり積極的じゃなかったスタッフも、自分たちから率先して対応してくれるようになったのでそういった意味でも多くのスタッフが成長した一年だなと思います。

竹内:新規でタイトルを2本リリースすることで、現場の人間が育ったと思ってます。やはりゼロから開発をする中で、若いリーダーや未経験のリーダーが巨大プロジェクトでタイトルをリリースしたり、世間から注目されるような成果を得たことで、自信や評価、経験も含めて大きな成長ができたのではないかなと思います。

高屋敷:採用や組織強化のための取り組みについて、gamebizのインタビューで今年4月から連載していますが、いま竹内が言った通りしっかり結果は出せていると思います。

採用人数も予定以上でしたが、人が増えたことで、管理や業務の進め方などプロジェクト以外のところでの組織の成長が課題になりました。

自分の創作作業以外の仕事に対して意識の成長もしたし、それをどうこなしていかなければいけないのかっていう管理経験も積めたと思います。もちろん、まだまだこれからだとは思ってるんですけど、これからステップアップしていくための起爆剤の第2段階ぐらいのイメージにはなったという印象です。

開発スタッフのクオリティ意識について、TeamCARAVANが業界を先導しているような気持ちの組み立てができたのではないかと感じています。これは結果が出たからということも大きいとは思いますが、TeamCARAVANの中での競争心からも意識のアップデートみたいなものはできてるんじゃないかと思いますね。

あと、熊本オフィスを立ち上げて熊本エリア、九州エリアにフォーカスした採用を新しく取り組みましたが、採用実績としての数字も想定以上でした。ただ、人を入れれば済むという話ではないので、熊本オフィスとしてはこれからちゃんと結果を出せる組織に育てていかなければいけないという課題を残しつつも、サテライトオフィスの開設を通じて、目標を立ててそれを実現するという取り組みは十分できたのではないかと思います。

――ちなみにTeamCARAVANのキャリアや立場関係なく若い人や未経験者にもチャンスがあったり、もの作りの姿勢を重視しているという方針はどういう形で決められたんですか?

高屋敷:年初からずっと言っていたTeamCARAVANの風通しの話のキッカケについてお話したいと思います。

「会社や上司が何を考えているかわからない。情報が聞こえてこないから何すればいいのかわからない」よく聞こえてくる問題ではないでしょうか。ですから我々はできる限り管理職や、事業を造る立場のものしかもたない情報も全てのスタッフに伝えますし、やりたいことにやれるようにチャレンジできる環境を用意しています。

あと私の立場からみて会社そのものにチャレンジさせてくれる精神があるので、全体に受け継いでいく考えから、情報は伝える、壁はできるだけなくす。それが今のところはうまく回っていってるんじゃないかなという気がします。

――今後のゲーム業界はどういった動きになっていくとお考えですか?またそれに対してどういったところをTeamCARAVANとして意識していくのかお聞かせください。

竹内:リリースされるゲームの数が純粋に減ると思います。その中で小規模のゲーム開発や大規模なゲーム開発があり、当然両方やっていくのですが、どちらでも目立てるような戦略、戦術というのが課題かなと思います。ゲーム単体で勝負しても見てもらえない市場になっているので、アニメIPやオリジナル含め、ゲームをリリースするときに一番盛り上がる状態をどう作るかというところに強く意識して進めていきたいです。

高屋敷:ここ数年で特に日本市場だけではなくて、海外の市場を意識する傾向が強くなっている気がしています。売り上げの規模を伸ばしたりビジネスのスケールアップをすると考えたときに、日本市場だけでは難しい。日本のゲーム会社が真剣に取り組み始めたのがここ数年なんだろうと思っています。

日本のアニメーションが他国の追随を許さずに一強状態でまだまだやれている状況なので、いまはその力を借りて海外市場での成功を獲得するための準備をつづけますし、結果を出さなければいけないと思います。もちろんオリジナルでやれれば何も言うことないんですけど、まだ力が足りないのでもう少し準備をする必要があります。

あとは、グローバル市場を見ると先進国のグラフもほぼ横ばいだと思うので後進国で勝負するとなるとカジュアルゲームなど、マニュアルテキストを読まなくても誰でも楽しめる分野へのチャレンジというところに、改めて真剣に取り組む必要があるのかなと感じています。

久保:TeamCARAVANのゲーム業界での立ち位置として、「アニメを題材にしたゲームを出したら間違いない」というお言葉をいただけるようになったので今後もその立ち位置は確保しつつ、新しいゲームを作っても「この会社の出すゲームは面白いね」と言ってもらえる会社の位置づけはしていきたいかなと思っています。それをできるクリエイターたちを育てるっていうのも、我々のやるべきことかなと思っているので、その部分は今後もやっていきたいと思っています。

――TeamCARAVANとして皆さんそれぞれ今後の展望とか、やってみたいことはありますか。

高屋敷:『2.5次元の誘惑(リリサ)』というアニメIP作品の完全新作スマートフォン向けゲーム『2.5次元の誘惑(リリサ)天使たちのステージ』(略称、『リリステ』)を先日開催されたジャンプフェスタ2024で発表しました。まだキービジュアルとゲームタイトルしか出していませんが、自信のある作品です。TeamCARAVANとしての展望はアニメや漫画作品、人気のある既存の作品性を持ったもののゲーム化という分野だったらAiming作品を遊んでおけば間違いないみたいなポジション取りはしていこうと強く考えています。

あとは、未発表のオリジナル作品の仕込みを始めています。しっかりとしたRPGの新作を作ろうと思って取り組んでいます。アニメ作品の確固たる地位とオリジナルの作品をしっかり作れる会社だという、2枚看板でやっていけるようにブランディングしていくことが2024年のTeamCARAVANの課題というか見せ方になるのかなと考えています。

竹内:IPを作るだけでなく、広げ方を頑張りたいと思っています。IPホルダーの一端となりモバイル中心の基本無料型でたくさんのファンの方に遊んでもらいつつも、コンソール市場にも積極的に進出していきたいと思っています。今この時代で我々TeamCARAVANだからできる、IPの広げ方を色々と試していきます。

久保:TeamCARAVANのアート方法や表現力は評価していただいていたんですけどまだまだだと思っていて、新作『2.5次元の誘惑(リリサ)天使たちのステージ』ではさらに表現力を上げていきたいと思っています。今後出すすべてのゲームのクオリティをどんどん上げていくつもりです。コンシューマーのクオリティをモバイルでも出していくというところで制限がある中で、無制限にポリゴン数を上げればいいというだけではない、という見せ方を追求していけたらいいなと思っています。

――では最後にメッセージをお願いします。

高屋敷:2024年もTeamCARAVANに注目して、期待していただけたら嬉しいなと思います。

竹内:更に、他社様に評価され頼られ、そしてユーザー様に愛される会社になるように頑張ります。

久保:今年はスタッフがとても当事者意識を持って成長した1年でした。新しくこの1年でたくさんの人に入ってもらいましたが、そこで終了ではなくてその人たちも一緒に育っていかなければいけないなと思っているので、来年も新しく入ってきてくれた人たちと一緒に組織を成長させたいなと思っています。

次回予告

次回は『ログレス』からスピンオフした新作『タップハンター~剣と魔法の放置RPG~』についてお届けする予定なので、お楽しみに!

株式会社Aiming
http://aiming-inc.com/
自分たちの面白いをカタチに変える
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会社情報

会社名
株式会社Aiming
設立
2011年5月
代表者
代表取締役社長 椎葉 忠志
決算期
12月
直近業績
売上高181億9900万円、営業損益13億900万円の赤字、経常損益11億円の赤字、最終損益22億2700万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3911
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