
アニメ制作大手のIGポート<3791>は、2026年5月期第2四半期(2025年6月1日~11月30日)の決算説明資料を公表した。上期は前年同期の大型ヒット作品の反動により減収減益となったものの、通期では過去最高益を見込む。特に商品販売事業の急成長が、同社の収益構造を大きく変えつつある。
■上期決算:版権事業の反動で減収減益
2026年5月期第2四半期の連結売上高は62億1000万円(前年同期比19.2%減)、経常利益は2億9600万円(同64.4%減)となった。営業利益は2億4800万円、親会社株主に帰属する中間純利益は2億5700万円と、いずれも前年同期を下回った。
・売上高:62億1000万円(前年同期比19.2%減)
・営業利益:2億4800万円(同70.0%減)
・経常利益:2億9600万円(同64.4%減)
・最終利益:2億5700万円(同45.6%減)
減収減益の主因は版権事業だ。前年同期には、自社100%出資作品のライセンス売上の一括計上や『ハイキュー!!』劇場版があり、今期はその反動が大きく出た。一方で、映像制作事業は増収となり、原価の減少や引当金の減少を背景に損失が改善している。
■セグメント別では明暗
セグメント別に見ると、映像制作事業は『THE ONE PIECE』をはじめ複数作品の制作が進行し、売上は増加した。出版事業は刊行点数や部数の伸び悩みにより減収減益。版権事業は大幅な減収減益となったが、商品販売事業は売上こそ減少したものの、利益面では増益を確保した。
期初計画対比では、映像制作事業は進行基準における原価未発生や契約妥結の後ろ倒しにより減収減益となった一方、版権事業は『ハイキュー!!』劇場版の国内商品化・配信・海外販売収入に加え、『進撃の巨人』シリーズの過去作品の上振れにより計画を上回る利益を確保している。
■通期は売上・利益ともに過去最高へ
同社は2026年5月期通期の業績について、売上高157億7200万円(前期比8.0%増)、経常利益16億5900万円(同16.9%増)と過去最高益を見込む。親会社株主に帰属する当期純利益は13億5800万円(同64.1%増)、配当金も前期の11円から17円へと大幅な増配予想だ。
・売上高:157億7200万円(同8.0%増)
・営業利益:17億9200万円(同25.7%増)
・経常利益:16億5900万円(同16.9%増)
・最終利益:13億5800万円(同64.1%増)
・EPS:67.55円
セグメント別では、映像制作事業は増収と原価低減により損失改善を見込む。出版事業は紙代や部材費の上昇を背景に減収減益を予想する。一方で、商品販売事業は売上28億9200万円、営業利益9億2900万円と、大幅な増収増益を計画しており、成長ドライバーとしての存在感を一段と高める。
■商品販売事業が成長エンジンに
IGポートが商品販売事業に注力する背景には、制作会社特有の課題がある。映像制作事業は規模拡大とともに人件費が増加し、将来的にコストが売上を上回るリスクを抱える。一方、商品販売事業は製造ロットの拡大によって原価が低下し、利益率が高まるビジネスモデルだ。
同社は制作会社としての強みを生かし、描き下ろしイラストや中間成果物を活用した独自商品を展開。『SPY×FAMILY』『進撃の巨人』『ハイキュー!!』などの人気作品で国内外のポップアップショップを展開し、アジアや北米への輸出も進めている。関西地区では常設棚の設置も予定しており、継続的な売上拡大を狙う。
■中国市場の影響:現時点では限定的も、規制動向を注視
決算説明資料でを、中国市場を巡るリスクについても言及した。IGポートは上海において「I.G & WIT Anime Studio Store」を展開しているが、現時点では日中関係の緊張が業績に与える顕著な影響は確認されていないとしている。
一方で同社は、アニメや映画を含むエンターテインメント分野において、中国当局によるコンテンツ審査や流通に関する基準が今後さらに厳格化する可能性があるとの認識を示した。特に、海外IPの取り扱い方針や表現規制の変化次第では、商品販売やライセンス展開に影響が及ぶリスクも否定できない。
同社としては、中国市場を重要な成長機会の一つと位置付けつつも、過度に依存することなく、アジア各国や北米などへの販路分散を進めることでリスクをコントロールする方針だ。実際、商品販売事業では上海に加え、台湾、韓国、東南アジア、北米でのポップアップ展開を積極的に進めており、地政学リスクを踏まえたポートフォリオ構築が進みつつある。
■版権・制作は中長期視点での投資も継続
版権事業では『ハイキュー!!』が売上構成比の約27%を占め、『怪獣8号』『進撃の巨人』『SPY×FAMILY』が続く。『YAIBA』の版権収入は下期以降に計上する見込みだ。
一方、映像制作事業では、自社企画や製作委員会幹事作品の増加に伴い、受注前に発生する「企画損」を短期的に損益を圧迫する可能性があることも説明した。これは版権リターンを高めるための戦略的投資であり、中長期的な成長を見据えた判断といえる。
■豊富な作品ラインアップが将来収益を下支え
今後の作品展開も充実している。『劇場版ハイキュー!! VS 小さな巨人』の公開決定をはじめ、『怪獣8号』完結編、『真・侍伝YAIBA』完結編、『THE ONE PIECE』やNetflix・Disney+向け作品など、国内外向けの大型タイトルが控える。出版子会社マッグガーデンの作品も以降のアニメ化が予定されている。
会社情報
- 会社名
- 株式会社IGポート
- 設立
- 1987年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 石川 光久
- 決算期
- 5月
- 直近業績
- 売上高145億9800万円、営業利益14億2600万円、経常利益14億2000万円、最終利益8億2800万円(2025年5月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3791