【インタビュー】アニメ展開や海外進出、新作発表と積極採用中!…f4samuraiに聞く昨年の振り返りと今後の展望とは

達川能孝 gamebizプロデューサー/TeeL合同会社代表
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『オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-』(『オルサガ』)をはじめ、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(『マギレコ』)などを手掛けてきたf4samurai。

昨年では『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』や『アンジュ・ヴィエルジュ ~ガールズバトル~』の後継作となる『アンジュ・リリンク』も開発中であることを発表し、『オルサガ』シリーズに関しては中国進出など様々な展開を行なっている。

本稿では、ゲームビズではおなじみの同社CMOの佐藤允紀氏にインタビューを実施。既存タイトルや新作タイトルの動向、f4samiuraiの今後についてなど、様々な話をうかがってきた。
(写真は年末の大掃除の最中であった同社CTOの松野氏とエフフォーくん)


 

アニメや海外進出に新作発表…様々な取り組みの中でf4samuraiが見ているもの

 ――:まず率直に昨年振り返ってみていかがでしたでしょうか。

なにより『マギレコ』『オルサガ』のアニメ放送があり、弊社運営タイトルにおける課題と改善に向き合いつつ、新作も2タイトル発表と盛りだくさんの一年でした。

2021年は、当社が手掛けたオリジナルRPGの『オルサガ』のリメイク版である『オルタンシア・サーガR』を日本と中国でリリースして、海外で開発するパートナー企業と一緒に展開することもできました。

この取り組みでは、f4samuraiは基本的には版元・パブリッシャーとしての役割で動いているのですが、オルサガの現行版も弊社パブリッシングとなり、昨年だけで、アニメ放送、コミック発売、コラボカフェ開催、オルサガ展に各種商品化、音楽出版(f4music)といろんな取り組みをおこないました。

つい先月もf4music出版でオルサガの新曲も発表しまして、弊社オリジナルのIPづくりは今後も続けていきたいと思っています。

――:『マギレコ』は2021年がTVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の放送10周年の年でもありましたよね。

 f4samuraiでは当初、ゲームの設計や運営面で競争力をつけていこうと考えていた会社だったのですが、『マギレコ』をきっかけにアートワークやシナリオにおいても力を入れていこう、と考えるようになり、開発期間も含めてだと、もう7年目になるのかと感慨深いです。

『マギレコ』は2期のTVアニメ放送に併せたマギア演出の改善や、ゲーム内でもバトルミュージアムやパトロールの実装など、さまざまな取り組みをおこないました。

まだまだ至らぬ点も多いかと思うのですが、昨年末に行なった“f4ファンフェスティバル”でのコメントが非常に暖かく、運営してきて本当に良かったと思いました。


――:『マギレコ』では塗り絵コンテストもされていましたよね?

「CLIP STUDIO PAINT」さんとは、昨年CEDECに参加し講演させていただいたり、CLIP STUDIO PAINT検定の問題を監修させていただいたり、と弊社イラストレーターチームでの活用にとどまらず、先方のプロモーションと、弊社にイラストレーターとして将来参加していただく方へのアピールをご一緒させていただきました。

デジタル塗り絵コンテスト「塗りマス!」では作品のプロモーションとしても、かなり反響よく楽しんでもらえたので、引き続き盛り上げていけるようにしていきたいです。

――:昨年では『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』の開発をf4samuraiさんが担当していることが発表されました。こちらはどういった経緯で担当することになったのでしょうか。

本作は、2年ほど前から開発を始めていました。もともとファンの方がたくさんいるIPであり、自分たちのクリエイティブと設計でさらに広げて喜んでもらおう、という形でのスタートでしたので、取り組みとしては『マギレコ』に近いのかもしれません。

ディレクターが「コードギアス」をすごく好きな人間で、彼にとっての青春そのものだったらしいです(笑)。

僕自身、彼の本気度を試す意味合いでも、クオリティの面では厳しくダメ出しをしていたのですが、めげずにがんばってくれたこともあり、いい仕上がりになってきました。それに関係者にも恵まれていて、いい作品になっていると思います。

――:ファンもかなり多くいる作品ですからね。ファンの熱量も並々ならぬものがあると思います。

本当にすごいです。関係者の方々も、思い入れが強い作品になっており、発表時のコメントについても、演者の方々には簡単な台本を渡しただけで、それ以上に熱のこもった言葉を話してくれました。

今回はフルオーケストラ収録を行っているのですが、オーケストラの方々も「コードギアス」シリーズのファンだったんですよ。

さらに情報の初出PVを作ったクリエイターの方まで熱心なファンなので、そういう意味ではすごく恵まれたチームで制作することができていると思います。

――やはり扱うIPを好きであることはゲーム制作においても大事と言えると。

そうですね。好きな作品であればそれなりにやり切ることができますし、それを経てつぎのプロジェクトに進めばモチベーションも続きます。

みんながみんな好きな作品に関われるわけでもないとは思いますが、一回は自分の好きなIPに関わるという経験は、当社では大事にしています。

プロジェクトを続けるかどうかの話で、「まずはお客さんが」という観点も大事にしていますが、クリエイターとして仕事をする理由としては「作品が好きかどうか」というのも大きいと思うんです。

また、ゲームとして、そのIPを3年~5年かけて広げていこうと思うのであれば、好きな人のほうが、やはりモチベーションを持ちやすいですからね。

もちろん、自分のハマりかただけに固執しないことも大事です。リアルタイムでその作品を見てハマった人と、最近になって好きになった人とでは見ているポイントも違いますし、『コードギアス』においては様々な層がファンとしても多いので、その感覚も想像できないといけません。

どこで感動するのか、何を喜んでくれるのか、そういうポイントを押さえておくのが重要なので、僕も展示会やイベントでのお客さんの顔や反応はよく見るようにしています。

――:昨年では御社主催の“f4ファンフェスティバル”も開催していましたね。

“f4ファンフェスティバル”は当社で2年に1回開催していて、今年はオンラインでの開催でしたが、過去2回はお客さんを実際に招いたりもしていました。

皆さんの反応が直に見られることが良くて、以前に『オルサガ』のアニメ化を発表したときは、皆さんがさざ波のように涙を浮かべていらっしゃったのが忘れられません。

ユーザーさんも泣いて、舞台上の演者さんも泣いて、そしてステージ台本をつくった僕も泣いてしまいました(笑)。

スマホゲームを作っていると、どうしても数字的な部分を見てデジタルにものを考えがちですが、当社はむしろお客さんの体験や、どんな風に喜んでくれているのかを想像して企画するのが楽しいし、価値があると思って仕事をしています。そこは、一般的な”ソシャゲの会社”とは違う部分かもしれません。

――:作品を広げるというと、『アンジュ・ヴィエルジュ ~ガールズバトル~』のサービス終了とともに続編『アンジュ・リリンク』が発表されました。こちらはどういった経緯にて立ち上がったのでしょうか。

実は、『アンジュ・リリンク』プロジェクトを牽引しているのは新卒で入社したプランナーなんです。

「アンジュ」シリーズは、彼とずっと運営を続けてきたタイトルで、彼がどうしても先を作りたいという思いから本プロジェクトは始動し今もチャレンジが続いています。

8年間続いた『ガールズバトル』は終わってしまうわけですが、「アンジュ」は10年を目指し続けていくという、チームの覚悟になります。

『アンジュ・リリンク』では、これまでの「アンジュ」ファンに喜んでもらえるような内容にしたいと思います。

今年の春頃には新しい情報も出せると思いますが、声優の皆さんと一緒に盛り上がれるような取り組みもしていきたいと考えています。

――:ファンであるユーザーさんがいてこそ、なのですね。「アンジュ」シリーズとしてみると、8年以上の歴史となりますが、ここまで長く続けてこられた理由は何だと思いますか?

まず、ユーザーさんのおかげというのが大前提にあります。あと自分たちで工夫している点としては、3ヶ月のサイクルを意識しています。『ガールズバトル』で言えば、3ヵ月に一度頂上決戦というものを開催しているのですが、その3ヵ月のあいだに開催したイベントに関しては、つぎの3ヵ月で改善するというサイクルを続けてきました。

報酬や遊びやすさ、UI、育成の幅を広げる、といった何かしらを加えることを3ヵ月ごとにくり返していて、それを12人くらいのチーム規模で続けていると、運営側も楽しくて充実できるんです。

そういう風に楽しみながら改善をくり返すという流れを作れたのは大きいかなと思います。十分なサービス提供ができなかったと悔しい思いをすることもありますが、運営の後半3年間はユーザーさんの熱にも支えていただいたなぁと感じます。

これまでにお話しているところと重なりますが、大事なのはやはりお客さんを想像できているかですね。

加えて、自分たちがどんな付加価値を出せているのかを運営のサイクルの中で意識することです。これは作品作りにおいて欠けてはいけないポイントだと思っているので、この二つを忘れずに今後も意識して頑張っていきたいと思います。

 

個のクオリティも高めつつ、チームとしても拡大をしていく一年に

 ――: f4samuraiとしての今後の展望や目標についてお聞かせください。

僕個人としては、それぞれの作品については、これからもクオリティを上げていけるよう引き続き頑張りたいと思っています。

手がけている作品の海外展開もチャレンジしていきたいと思っており、作品の価値を広げていける取り組みにもさらにトライしていきたいです。

『アンジュ・リリンク』についても春頃にまた色々と発表ができるので、楽しみにしていただきたいです。以降の新作についても現在、企画を進行していまして、今年か来年になんらかお話ができるかもしれません。

f4samuraiとしては、組織作りやチーム力の強化が課題であり目標となります。

これまでは人数が少ないぶん“個”で突破していく会社でしたが、人数を増やしていくならチームで戦えるようにしないといけないと考えています。

2年前から職種ごとにリーダーを立ててメンバーの育成をお願いするようにしていて、新卒も含めた人材育成にも力を入れていまして、そこをさらに伸ばしていきたいです。

ゲーム作りで言えば、最終的には個の力と組織力の両方が必要になるんですよね。ものすごい情熱を持っている人もいればそうでない人もいるので、後者であっても働いているうちに気づきが生まれるような会社にしたいと思っています。

――:メンバーそれぞれがチャレンジをしていく形でチームとしても大きくしていきたいと。

これまでは僕やCOOの田口が前に出ることが多かったのですが、今は他のメンバーに任せていくようにしています。

僕が『マギレコ』を作り始めたときも32歳くらいで、いま弊社でチャレンジしているディレクターたちと同じくらいだったんです。それもあって30代前半くらいでしっかりと責任を負う経験を積ませてあげたい、というのも彼らにプロジェクトを任せる動機のひとつになっている気はします。

僕も、いまは自分が動くより、彼らのサポートに徹する局面が増えてきました。

――:新しい世代の活躍も出てきているんですね。

『マギレコ』や『オルサガ』といったタイトルは僕と田口が引っ張ってきたのですが、「コードギアス」や「アンジュ」の新作に関しては、30代前半のディレクターをリーダーにしてプロジェクトを進めています。

そういった僕ら以外のリーダーを育てていく、ということもこの3年間でやってきた挑戦のひとつかもしれません。

――:今でも採用強化は行なっているのでしょうか。

はい、積極的に採用は行なっています。先ほどお話に出た『コードギアス』の新作に参加してくれる方であったり、どんどんチャレンジしていきたい人は大歓迎です。

僕からダメ出しを受けても「いや、僕は絶対に折れませんよ。これをやりたいんです!」と奮起してくれるようなプロデューサー、ディレクターも求めています(笑)。

プロデューサーやディレクター以外にも、Live2Dチームもいたりと、f4samuraiには様々な人がいます。

組織然としていなくて、各プロジェクトのプランナーやディレクターがプロモーションにも参加できたり、エンジニアが企画に意見を出せたり、幅広い経験を積める組織になっています。

採用サイトも昨年にリニューアルし、社員インタビューなども掲載しているので興味のある人は是非ご覧いただきたいです。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

当社は、会社としてはまだまだ成長フェイズにあると思っていますしここから数年、多くのチャレンジができる環境もあります。僕たちと一緒に挑戦をしてくださる仲間を募集しています!

仕事は人生の大半を過ごすものでもあるので、退屈な仕事に時間を費やさないほうがいいとは個人的に思っています。せっかく時間を使うのに何も先がなかったり、ただの作業になってしまったりするのはもったいないので、f4samuraiがそんな状況を変えるきっかけになりたいと考えています。

もし今が退屈なら、ぜひ当社に来て一緒に変えていきましょう。

――:ありがとうございました。