【インタビュー】KLabの注力する「運営型カジュアルゲーム」とは何か? ミッドコアやカジュアルゲームとの違いと共通点、その将来性を森本氏と佐藤氏に聞いた

木村英彦 編集長
/

「ハイパーカジュアルは死んだ」
 
ハイパーカジュアルゲームのトップパブリッシャーの2023年年初の発言が注目を集めた。ハイパーカジュアルが「ドードー」(モーリシャス島に生息し絶滅した鳥類)と同じ運命をたどる可能性があるとし、ゲーム内容やシステムをミッドコアに寄せた「ハイブリッドカジュアル」と呼ばれるゲームをリリースするようになった。

そんななか、ハイパーカジュアルゲームのグローバルギア社をグループに迎え入れ、その領域に進出を進めていたKLab<3656>がハイブリッドカジュアルとほぼ同義とみられる「運営型カジュアルゲーム」にも注力するとのアナウンスを決算発表会などで行い注目を集めた。

「運営型カジュアルゲーム」とは何なのか。ゲームとしての特徴や既存ゲームとの違い、市場としての可能性のほか、KLabグループとしての目下の取り組みについて、同社の森本隼氏(写真左)と佐藤百福氏(写真右)にインタビューを行った。

 

■「運営型カジュアルゲーム」はミッドコアやハイカジとどう違うのか

――:よろしくお願いいたします。まずお二人の自己紹介をお願い致します。

佐藤:2020年に新卒でKLabに入社しました。入社後からハイパーカジュアルゲームの事業に携わっておりました。そのままカジュアルゲームを扱っていたこともあり、現在は弊社で運営型カジュアルゲーム、世界的にはハイブリッドカジュアルゲームと呼ばれるジャンルのプロデュースを担当しております。

森本:KLabに入社してから17年になりますが、スマホゲームに関しては『BLEACH Brave Souls(略称、ブレソル)』の運営プロデューサーを何年か担当しました。その後は、新規タイトルの開発に関わりつつ、カジュアルゲーム関連のプロジェクトも支援しています。

――:早速本題に入りますが、運営型カジュアルゲームは、ハイブリッド型カジュアルゲームとも呼ばれていますが、ミッドコアゲームやハイパーカジュアルゲームとの違いはどういったところにあるのでしょうか?

佐藤:「運営型カジュアルゲーム」と両者では、ビジネス目線として大きく2つの違いがあります。一つが目指すターゲットの幅です。ミッドコアゲームと比較をしていきますと、ターゲットとする層が大きくなりますが、ハイパーカジュアルほど広くはありません。やはり一定の年齢層、もしくは嗜好の方に向けて広めにターゲットを設定しています。

もう一つが目指すLTV(ライフタイムバリュー)が異なることです。これもターゲットの幅と同様で、ハイパーカジュアルほど短いものではなく、ミッドコアに近い姿を目指していくことになります。例えば、ハイパーカジュアルゲームが1週間ぐらい遊んでいただければ、十分合格とした時、運営型カジュアルゲームは1ヶ月ぐらいを想定します。

――:収益は主に広告といわゆる課金になるのですか。

佐藤:運営型カジュアルゲームの成功事例はまだまだ少ないのが現状ですが、広告6に対して課金が4、または広告4に対して課金が6ということが多いようです。だいたい半々くらいになるイメージです。バランスとしてはいいのではないかと考えています。 

――:収益の成長イメージはどういった形になるのでしょうか。

佐藤:開発費用がリリースまではかかるので、先行してコストが発生して、その後、売上とともに利益が伸びる、「Jカーブ」のような動きをするという点では、既存のゲームビジネスとは大きく変わるところはありません。

ただ、事前にテストを行ってからのリリースとなります。つまり、運営会社としては収益が出せる可能性が高いことを確認してからのリリースとなりますので、本リリースの時点から本格的な広告出稿を行っていきます。これも特徴と言えるかと思います。

――:収益規模ですが、これも中間的なイメージと捉えると良いのでしょうか。

佐藤:ミッドコアなどと比べると小さい傾向にありますが、世界的なメガヒットと呼ばれるタイトルになると、中規模のミッドコアを超える規模があるといわれています。その意味で、夢のあるビジネスと感じています。

――:事前のテストを…とのことですが、リリースまでの手法に関しては、ハイパーカジュアルに近いのでしょうか。

佐藤:ハイパーカジュアルとほとんど同じです。いくつかのチェックポイントになるようなテストを行い、目標を突破することができれば、次のフェーズに進んでいく、という流れとなります。ただ、他社様より、権利をお借りして作っていく場合だと異なります。IPを使うと、違ったものになると思います。

 

――:IPを借りてゲームを作ったものの、テストして駄目でしたというわけにはいかないでしょうからね。そういうのは例外としても、開発手法からプロモーションまでハイパーカジュアルとミッドコアの中間的な性格が強いですね。

佐藤:リリース前のテストドリブン的な開発手法で事前にLTVの精度をすごく上げた状態でリリースし、一気にプロモーションをかけるところはハイパーカジュアル的といえます。そしてそこからユーザーに長く遊んでもらうための継続率を高めていく展開はとてもミッドコア的です。

ただ、ミッドコアほど開発費は高くはありませんし、テストを繰り返して微妙だと判断したらすぐに切り替えて、次のタイトルの開発に入るところは悪くないと思います。ミッドコアのゲームでは数年かけて開発することは珍しくありませんが、完成させて結果が悪いと財務的にはもちろん、精神的なダメージも大きくなります。そしてミッドコアとは違い短いスパンでチューニングが可能なので、トレンドの変化にも柔軟に対応できます。

――:それと開発体制に関してですが、どのくらいの規模でやるものなのでしょうか。

森本:プロジェクト立ち上げの序盤については、ハイパーカジュアルとほぼ同じです。エンジニアとデザイナーの組み合わせで2~3人でプロト開発のチームが組成できます。そこでどんどんアイデアを出してトライしていくのですが、KLabでも可能性を感じさせるプロジェクトが出てきました。本開発に入っているプロジェクトもあります。人員の増減も柔軟にできるため、2~3人のチームは意外と効率がいいと感じています。

――:お話を聞いてふと思い出したのですが、ハッカソンに行くと、5、6人と上限いっぱいにメンバーを揃えたチームより、かえって2、3人のチームが強いことが多いんです。コミュニケーションがスムーズにできて、役割分担が明確になるためだと思います。

森本:特に初期段階は短い期間でたくさんアイデアを試すことが非常に重要になってくるので、チームの人員が1人増えるか増えないかで開発スピードの差はかなり出てくると感じています。グローバルギアでも、エンジニアとデザイナーが組んで、どちらかが企画を兼ねることが多く、2~3人チームはとても生産性が高いですね。

――:マーケティングやプロモーション手法に関しては、ハイパーカジュアルやミッドコアとはまた違ったものなのでしょうか。

佐藤:ミッドコアよりも、ハイパーカジュアルのマーケティングに近いです。デジタル広告への出稿がメインですし、テストを通過して収益化の見込みが立っている状態でリリースをすることになるので、その段階では大規模な広告出稿を行っていきます。

――:最近、プライバシー規制等でCPIが上がるなど、ユーザー獲得が難しくなってきたっていう声も聞くのですが、現状ではいかがでしょうか。

佐藤:我々の目線で行くとテストの結果が見えにくくなっているといった課題が大きいですね。テストするプラットフォームを変えるなど対応はしているのですが、これまでのやり方でテストすると何が良くて何が良くなかったのかが把握しづらく、市場が求めているものを理解しにくいと感じます。

――:その点、もうちょっと詳しく教えていただけますか?

佐藤:一連のプライバシー規制によって、デジタル広告を出稿した時のデータの精度が落ちたため、インプレッションやコンバージョンなどの指標の精度が低下しています。取得した数字でCPIや、平均継続率、1人あたりの売上などを試算するのですが、それぞれの数字の精度が落ちていることもあり、スコアの信頼性を疑うような結果になったり、数字が以前よりも上下に振れやすくなったりしています。

以前ですと、iOS のデータが取りやすかったのですが、現在は規制が強化されて、データ精度が落ちている状況です。したがって、ハイパーカジュアルゲームや運営型カジュアルゲームを手掛ける会社ではAndroid でテストするケースが増えているようです。

ただ、ある程度成功を収めていて広告出稿の多い会社になると、数字の変動が多少あっても分母が大きいので、数字が大きく振れることはあまりないと思います。100インストール程度の小規模テストをしているときは、その時にかかったコストでCPIを算定しているので、分母が小さい分、振れが大きくなりやすいといえます。

――:トレンドの変化はだいぶ早いのでしょうか。

佐藤:ハイパーカジュアルゲームは、半月単位で流行が変わっているような変化の早い市場でしたが、運営型カジュアルゲームはそこまで早くはないです。それでもミッドコアよりも変化は早くて、3カ月単位で変わっている印象です。そのときのトレンドをすぐに取り入れていく必要があります。

――:流行を追うのも大変じゃないですか。流行を抑えて、その次を予測する必要があるわけですから…。

佐藤:はい。TikTokやYouTubeなどで流行をチェックすることが多いですね。新しくアプリを端末にインストールするきっかけが変化していて、SNSを見ているときの広告やYouTubeが増えている印象があります。以前ですと、ストアのランキングが使われていましたが、もうだいぶ減ったように思います。動画でゲームの内容を見せていかにお客様に魅力を感じていただけるかが大事になっています。

 

■市場としての可能性とKLabグループとしての取り組み

――:マーケットとしては国内で立ち上がるかどうかという感じかと思いますが、将来性についてはどうご覧になっていますか。

佐藤:最近のミッドコアゲームは、初期段階からアプリサイズも大きく、一度のプレイ時間も長時間必要になっています。それに対し、カジュアルゲームは、ダウンロード容量も比較的少なく、ちょっとしたスキマ時間や暇つぶしなどに手軽に遊んでいただけるところが特徴です。

もともとミッドコアゲームに限らず、モバイルゲーム全体がスキマ時間で遊ぶような位置づけでしたが、コンテンツがどんどんリッチになっていき、隙間時間に遊ぶようなゲームではなくなってきた経緯があります。

カジュアルゲームでは内容的に少々物足りない、かといってミッドコアゲームは重すぎると感じる人は少なくないと考えています。海外では先行してこうした動きが出ていますが、国内でも中間的な存在である運営型カジュアルゲームに対するニーズは確実に増えていくと見ています。

休日などに電車で移動している時、周りを見渡すとゲームを遊んでいる方のうち、3割くらいはカジュアルゲームで遊んでいることが多いと感じています。日本でもシンプルなゲームで遊びたいというニーズはあるはずです。

また、日本にいると、ミッドコアゲームが主流ですが、海外に目を向けると決してそんなことはありません。とてもシンプル…”snackable(気軽に遊べる)”といわれるゲームがとても多いですし、そういったものを好む方が多いですね。日本よりも多くの方にカジュアルゲームで遊んでもらえる可能性がある、という意味で、とても魅力的な市場だと思います。

 

――:ところでKLab社が運営型カジュアルゲームに入ろうというのはどういう経緯だったんですか?

森本:スマホゲームの収益は、課金か、広告か、という議論は昔からありましたけど、そのなかでも年々、広告収益が拡大していることが背景としてあります。そんななか、Habbyがアーチャー伝説でハイブリッドカジュアルゲームをヒットさせたというニュースが広がりました。課金によるマネタイズと、広告収益の両方をうまく取り込む手法は、我々にとっても大きな気づきになりました。

その頃から当社でもハイパーカジュアルゲームだけでなく、既存のミッドコアゲームでも広告収益を取り込んでいました。その一方、カジュアルゲームについても開発に着手し、ノウハウを積み上げてきました。既存ゲームにおける広告の導入と、カジュアルゲーム開発での経験とノウハウを活かして運営型カジュアルゲームに取り組むことにしました。

――:KLabとグローバルギアの取り組みと役割分担はどうなるのでしょうか。

森本:まず、グローバルギアのこれまでの取り組みからご説明しますと、創業から国内向けに広告収益のみのカジュアルゲームでマネタイズするビジネスを続けてきました。毎月1本以上のペースでリリースしていて 100 本以上の実績があります。自社のアプリを介して新しいアプリを提案するという回遊をしてもらって、収益をあげています。

逆にKLabは、ミッドコアゲームを中心に課金型のゲームを作ってきた経緯があります。そのため、広告によるマネタイズについては試行錯誤をしている状況ですが、この分野で十分なノウハウを持つグローバルギアと一緒になったことによって、広告で収益を上げるノウハウを吸収させてもらっています。

一方でグローバルギアは、課金型のゲームについての経験が少ないので、我々が経験やノウハウがありますし、IP獲得といったところも強みですので、そういったところでもシナジーを出していけたらと考えています。グローバルギアからもIPを使ったカジュアルゲームをリリースしているところです。

最終的には、両社ともに運営型カジュアルゲームを展開していくようになれればと考えていますが、広告マネタイズのゲームに強いグローバルギアが広告の比重の大きいカジュアルゲームを作っていくでしょうし、逆に課金型に強いKLabは課金比重の大きいゲームを作っていくようになるのではないでしょうか。

――:グローバルギア社でも運営型カジュアルゲームを作っていると。

森本:はい。グローバルギアでは、人気IPを使った運営型カジュアルゲームを1本仕込んでいます。2024年リリースを目標に開発を行っており、ぜひご期待いただきたいです。

 

――:KLab社でもカジュアルゲームも徐々に増えてきましたね。

森本:こちらはグローバルギア社とは異なるラインで制作したタイトルになりますが、『カナヘイの小動物 ピスケ&うさぎの小旅行』の配信地域と言語を追加してリリースしました。実は今年2月に日本版をリリースしたときに、台湾の会社からこちらでも出さないのか、というお問い合わせをいただきました。「カナヘイ」は、LINEスタンプが現地で大ヒットしているだけでなく、作家さんの知名度も高く、とりわけ若年層の間で人気を集めています。先方の熱量の高さには驚かされました。

――:KLab社の取り組みについてですが…。

佐藤:ハイパーカジュアルゲームの開発は、1~2週間でプロト(試作版)を作り、テストをどんどん行っていい結果が出たアプリを育てていく、という方法が主流です。運営型のミッドコアゲームを開発してきた会社なので、新しい挑戦、取り組みですので、これから徐々に成果に繋げていきたいと考えています。

これまでハイパーカジュアルゲームも含めて何十本とテストを行ってきましたが、ようやくいま開発しているプロトタイプのなかに、テスト結果の良かったものがでてきました。「見込みあり」ということで鋭意開発を進めています。オリジナルタイトルでヒットを狙うのは難易度が高いですが、面白いプロダクトは作れているとは思いますのでぜひ楽しみにしていただければと思います。

――:楽しみにしています。ありがとうございました。

KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る