
エイチームホールディングス<3662>は、2026年7月期 第1四半期(25年8~10月)の決算発表を行うとともに、決算説明動画を公開した。売上高・調整後EBITDAは微減ながらも、コスト削減効果により利益を確保し、業績予想に対して堅調な利益進捗でスタートを切った。
・売上高:55億2900万円(前年同期比2.6%減)
・調整後EBITDA:2億8700万円(同7.5%減)
・営業利益:2億7000万円(同20.5%増)
・経常利益:2億3400万円(同2.3%増)
・最終利益:2億9500万円(同128.2%増)
第1四半期の連結業績は、売上高55億2900万円、調整後EBITDA2億8700万円で着地し、前年同期比(YonY)、前四半期比(QonQ)ともに僅かながら減収減益となった。しかし、昨期から継続しているコスト削減効果により、営業利益と経常利益は増益を確保した。なお、最終利益の進捗率が高いのは、エイチームフィナジー社の株式売却による関係会社株式売却益が計上したことによるものだ。

■セグメント別動向:デジタルマーケティングは減収増益
1. デジタルマーケティング事業
・売上高:46億4000万円(同1.8%減)
・調整後EBITDA:4億9200万円(同11.9%増)
・営業利益:4億9300万円(同31.9%増)
利益確保を優先した事業運営の結果、YonY、QonQで減収増益となった。M&Aによる4社の売上高を計上した一方で、エイチームフィナジーの連結除外や既存メディアの一部減収により、全体では微減収。利益面では、自動車関連事業における広告費増加で減益となったものの、その他の事業で広告投資を抑制したことで増益を達成した。

2. エンターテインメント事業
・売上高:8億8800万円(同6.4%減)
・調整後EBITDA:3600万円(同30.9%減)
・営業利益:3600万円(同30.9%減)
既存タイトルの効率運用と協業案件により黒字を維持している。既存タイトルのダウントレンドは継続しているが、減少幅は抑えられている。説明動画ではこの減少を「かなり少ない減少」と捉えている点が強調されており、既存タイトルの安定運用が一定の成果を上げていることが示唆される。
今後は引き続き効率運用とコスト抑制、協業案件の強化で利益確保を目指す。外部要因による一部協業案件の契約終了に伴い、調整後EBITDAはYonYで減益となったが、全体黒字は維持している。これで6四半期連続の黒字となった。
■3つの主要トピックス:成長と最適化を両立
この四半期は、今後の成長戦略と事業ポートフォリオ最適化に向けた以下の3つの重要施策を実行した。
1. M&Aによる戦略投資:シグニティの取得
アプリ不要のWEBプッシュ通知サービス「PUSH ONE」を提供するシグニティを、株式取得価額10億5000万円(EV/EBITDAマルチプル約6倍)でM&Aにより取得した。


「PUSH ONE」を新たな取引先企業を開拓するための入口商材とし、「売上向上支援カンパニー」化に向けた成長戦略の要と位置づける。既存事業の取引先に対しても、デジタル集客強化ツールとして導入し、シナジーを生み出す見込み。



2. 事業ポートフォリオの最適化:エイチームフィナジー社の株式譲渡
中期経営計画で掲げる「リスク・ボラティリティの低減」の一環として、保険代理店事業「ナビナビ保険」を展開する子会社、エイチームフィナジーの株式をSasuke Financial Labへ譲渡した。これにより、事業ポートフォリオの最適化と、同事業の価値最大化を図る。

3. エンタメ事業のリスク低減:サンリオとの共同開発タイトル発表
サンリオとの協同開発中の新作ゲームタイトル「フラガリアメモリーズ Color of Wishes」を発表した。これはメディアミックスプロジェクト「フラガリアメモリーズ」初のスマートフォン向けゲームであり、協業案件の強化を通じたエンターテインメント事業のリスク・ボラティリティ低減に向けた方針を実行した形となる。

■2026年7月期業績・配当予想:増配で株主還元を充実化
通期業績予想として、売上高245億円、調整後EBITDA15億円、最終利益6億円を据え置いている。
・売上高:245億円(前期比2.4%増)
・調整後EBITDA:15億円(同12.8%減)
・営業利益:9億円(同6.4%増)
・経常利益:9億円(同43.2%減)
・最終利益:6億円(同42.1%減)

また、株主還元の充実化を図るため、配当を中間・期末の2回に分けて実施し、通年の配当予想を1株当たり28円(昨期22円から増配)とした。これにより、配当性向は86.6%となる見込み。

同社は中期経営計画の株主還元方針に基づき、累進配当を導入。「株主還元総額40-50億円」、「総還元性向平均100%」の達成に向けて取り組む姿勢を示している。さらに、株主優待制度(5単元以上保有株主に年間合計2万円分のQUOカード)も継続しており、投資魅力度の向上を図っている。


エイチームHDは、2026年7月期第1四半期の堅調なスタートを機に、M&Aによる成長投資と事業ポートフォリオの最適化を推進し、中期的な企業価値向上を目指す構え。
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイチームホールディングス
- 設立
- 2000年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 林 高生
- 決算期
- 7月
- 直近業績
- 売上高239億1700万円、営業利益8億4500万円、経常利益15億8500万円、最終利益10億3600万円(2025年7月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3662