
ドリコム<3793>は、AIを前提とした組織への転換を進めている。コーディングAI「Claude Code」を中心に全社員がAIを利用できる環境を整備し、開発業務や品質管理、カスタマーサポート、ローカライズ、データ分析など幅広い業務への活用を推進する。定型業務の効率化によって開発スピードと生産性を高めるとともに、外部費用の圧縮を目指す考えだ。
同社は中期的な成長に向けた取り組みの一つとして、「AIを前提とした組織への転換」を掲げている。AIによって業務プロセスそのものを見直し、従来は人手や外部委託に頼っていた作業を効率化することで、収益性や開発スピード、投資効率の改善につなげる。
具体的な活用領域として、開発業務のほか、品質管理(QA)、カスタマーサポート、ローカライズ(翻訳)、データ分析・集計、マーケティング、管理事務などを挙げている。単に一部の業務で生成AIを利用するのではなく、組織全体の業務フローにAIを組み込んでいく方針だ。
特にローカライズ(翻訳)については、ゲームの海外展開に加え、パートナー企業が開発したインディーゲームや、マンガ・ライトノベルといった出版コンテンツを海外に届けていくうえでも重要な工程となる。人間が最終チェックを行っているものの、AIによって翻訳や関連業務の効率化が進めば、同社が取り組むIPのグローバル展開を支えることにもつながりそうだ。
決算説明会では、上期の取り組みとして、コーディングAIを全社員が利用できるようにしたことを説明した。中心となるのは「Claude Code」で、同社と一緒に業務を行う非正規のメンバーにもアカウントを発行しているという。
下期は、開発業務の自動化などをさらに進める。開発工程の効率化によって外部費用の削減を図るとともに、開発スピードを引き上げ、ユーザーから寄せられた要望やフィードバックをより早くアップデートに反映できる体制を目指す。例えば『Wizardry Variants Daphne』では、ユーザーから次の「奈落」の実装時期を問う声も寄せられており、開発の効率化を通じて、こうした期待に応えていきたい考えだ。
また、データ分析・集計の領域でも、AI活用による業務の変化を見込む。従来は分析担当者に依頼していたデータの抽出や集計を、各担当者が自ら行い、仮説検証を進められるようにすることで、施策の検証・改善サイクル(PDCA)を速める。AIによって個々の担当者がデータにアクセスしやすくなれば、施策を試す回数そのものを増やせるという。
コスト面では、外部費用や原材料仕入高などを対象に、今後1~2年で25%の圧縮を目指す。2026年3月期の年間実績を基準とした固定費の内訳では、外部費用・原材料仕入高が約40億円を占めており、AIによる業務効率化を通じて削減を進める。一方で、AIを使いこなせる人材の採用や既存社員の処遇改善も進める方針で、人件費については約20%の増加を見込む。単純に人員や人件費を削減するのではなく、AIによって一人ひとりの生産性を高め、より付加価値の高い業務に人材を振り向ける考えといえる。
なお、AIの活用は、クリエイティブ領域の作品づくりを直ちに置き換えるものではない。会社側は、作品づくりのクリエイティブな部分は人が担うとの考えを示しており、まずは定型業務や管理業務など、AIによる効率化の効果が見込める領域から活用を進める。
一方で、AIをクリエイティブ領域に直接活用する可能性についても、研究開発を続けているという。生成AIによる制作物に対する社会的な受容や評価も見極めながら、利用が一般的になった段階で一から取り組むのでは遅いとして、技術的な検証はすでに進めている。今後、社会的な受容が進んだ領域から段階的に導入していく考えだ。
ゲームの品質や市場性をAIエージェントに評価させる取り組みについては、現時点では効果を見極めている段階にある。まずは実際のユーザーによるクローズドベータテスト(CBT)などで得られた意見を、AIを活用して開発に迅速に反映することを優先する。AIエージェントによるテストは、その先の取り組みとして検討している。
AIの利用そのものが珍しいものではなくなるなか、ドリコムが目指すのは、AIを個別の作業を補助するツールとして導入するだけでなく、業務プロセス全体を見直すことによる生産性の向上だ。外部費用の圧縮と開発スピードの向上を両立させながら、人材をより付加価値の高い業務や作品づくりに振り向けられるかが、今後の取り組みのポイントとなりそうだ。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高175億4700万円、営業利益4億800万円、経常利益3億1800万円、最終利益2億1300万円(2026年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793