『神撃のバハムート』をはじめ、『グランブルーファンタジー』や『三国志パズル大戦』など、数々のヒットゲームの企画・開発・運営を行うCygamesは、去る10月20日に新子会社・GameJeans(ゲームジーンズ)を設立した。
同社の代表を務める飯野氏は、ポリゴンマジック株式会社にてコンシューマゲームやアーケードゲームの開発を担当し、その後2011年5月にCygamesを立ち上げ、取締役に就任。2011年9月の『神撃のバハムート』のリリースや、2012年2月の同作の英語版である『Rage of Bahamut』リリースに携わった。
そこで本稿では、GameJeansの代表を務める飯野晃広氏に、設立経緯や事業内容、そして今後の取り組みついて伺ってきた。
■Jeans(ジーンズ)に込めた開拓者精神
――:本日はよろしくお願いします。簡単で構わないのですが、はじめに飯野さんの経歴について教えていただけますか。
もともと私は証券会社の出身でしたが、子供の頃からのゲーム好きが高じて一念発起し、中途でゲーム開発会社のポリゴンマジックに入社しました。Cygames代表の渡邊(渡邊耕一氏)とはポリゴンマジックからの付き合いで、当時は一緒にコンシューマやアーケードゲームを中心に開発を行っていました。
そして、ソーシャル(モバイル)ゲームの波が来てからは『戦国キングダム』の開発・運用やサイバーエージェントの子会社・サムザップからの依頼でソーシャル(モバイル)ゲームを開発していましたが、その後に別会社に移った渡邊に「人気RPGの続編作るからディレクターをやってほしい」と誘われて、再び彼と合流しました。しかし、結局その話が突然無くなってしまい、もうそれならば“ふたりで会社を作ろう”と立ち上げたのがこのCygamesになります。
――:なるほど。ちなみにCygamesでは取締役ではありますが、具体的にどのようなことを担当されていたのでしょうか。
――:そして、今回新たにGameJeansを設立されたのですね。では、そもそもの設立経緯についても伺ってよろしいでしょうか。
Cygamesは渡邊と立ち上げた会社ですが、やはりいずれかは自分のカラーを強く出した会社をやりたいという思いがあったのが、今回の新会社を立ち上げた経緯です。Cygamesも数本のヒットタイトルが生まれて、そう簡単に傾く会社ではなくなったこともあり、タイミングとしても「そろそろいいのでは」と渡邊に話をして、GameJeansを設立しました。
――:ちなみにGameJeans(ゲームジーンズ)という社名には、どのような想いがあるのでしょうか。
Jeans(ジーンズ)は、誰もが履いている言わば定番商品というカジュアルな印象を持ち合わせつつも、細かいしわの形や色落ちの具合といった“こだわり”があるものだと思っています。
そうして我々も“誰もが楽しめて、かつこだわり抜いたクオリティの高いゲームを作る”という意味で、このJeans(ジーンズ)という言葉を社名に取り入れました。また、アメリカのゴールドラッシュ時代の開拓者が履いていたこともあり、開拓者精神を忘れないという意味合いもこめています。
――:社内体制についてもお伺いできればと思います。現在オフィスはCygamesと同じ場所ですよね。
じつは、GameJeansだけオフィスを引っ越そうと思っています。
Cygamesと一緒の場所でも構わないのですが、新しく始める我々ベンチャー企業としては豪華なオフィスですし、優良企業にいるような勘違いもしてしまうのではないかなと考えています。それに、スタッフとしても少しずつ備品が増えたり、フロアが広くなったりと、段階を経て企業が成長しているような感覚を持ってほしいという思いもあります。
(※編集部注釈:すでにプレスリリースでオフィス移転を発表 - 関連記事)
――:現在スタッフの人数はどれくらいでしょうか。
現在は7、8人ぐらいですね。職種としてはデザイナーやプログラマー、企画、総務など振り分けているため、ゲーム開発を行う最低限のチーム体制は整っています。
――:具体的な事業内容はゲーム開発だと思いますが、すでに開発は行われているのでしょうか。
はい。あまり詳細は言えないのですが、現在は仕様書を書いたり、グラフィックのテイストを決めたりする段階です。ゲームとしては、従来のソーシャルゲーム寄りではなくて、より操作していて楽しいと思えるコンシューマに近いリッチな要素を取り入れようと考えています。そもそも私はコンシューマゲーム開発の出身ということもあり、いわゆる“ゲーム・ゲーム”した作品が好きなんです。端末のスペックや技術も上がってきていますし、今後はそうした作品を手掛けていきたいと思っています。
――:また刻一刻とユーザーのニーズも変化していくスマートフォンアプリ市場ですが、飯野さんはどのように市場を見られていますか。
まだ空いているポジションがあるマーケットだと思っています。コンシューマには様々なジャンルがありますが、もうそれらのジャンルは人気の続編に抑えられてしまって、新しい企画が作りづらい環境になっています。ただ、スマートフォンアプリ市場の場合は、まだまだオリジナルタイトルを作れる余地があり、そして度量の広いマーケットであるため、今後もスマートフォンの特性を活かした新機軸のジャンルが生まれては、大ヒットタイトルになっていくのだと思っています。
――:なるほど。そして飯野さんと言えば、『神撃のバハムート』の海外版『Rage of Bahamut』をヒットに導いた立役者だと思いますが、ぜひ海外展開についても伺えれば幸いです。そもそも『神撃のバハムート』の海外展開を行うきっかけは。
当時北米でも、ブラウザで遊ぶソーシャルゲームがストアランキングの上位にランクインしていたことがあり、市場的にも受け入れられるのではないかという感覚がありました。そのため、実際に海外展開する際には、海外用のゲーム性に特別チューニングは行わず、言語のみのローカライズで抑えて、日本の『神撃のバハムート』をそのままぶつけました。
――:海外と日本のユーザーによる遊び方には、やはり違いなどはあるのでしょうか。
そうですね。若干海外のほうが、ユーザー間での対人バトルが好きという傾向があるほか、キャラクターも日本の萌え系の美少女キャラクターよりかは、クリーチャー系や筋肉のあるおじさんキャラクターが人気など、国による絵柄の違いは出ています。
――:ちなみに現在手掛けられているタイトルは、世界展開も意識されていますか。
もちろん将来的には世界に向けて配信していきますが、まずは日本市場で勝てないことには世界展開も難しいと思っています。きちんと多くの日本のユーザーが楽しんでくれたことを前提に、今後の展開を考えていきます。
――:すでにCygamesの取締役は退任されていますが、改めてCygamesを通して得られたものを教えていただけますか。
やはり組織の作り方は勉強になりました。つねに代表の渡邊が、その時々に併せた最適な組織・人事を構成していく体制をとっており、どのような部署を作ったり、どういう役割を人に与えたりなど、スタッフ自身が成長して次のステージに行けるような組織体制は、非常に学べたところのひとつです。
――:GameJeansとしては、今後どのように展開されていくのでしょうか。
ゲーム会社は、最初の1本のヒットが重要になってきますので、まずは最初の1本をヒットさせることに注力します。その後は、私もディレクターとして次の作品を作りつつ、ヒット作に関わったスタッフが作りたいゲームをそれぞれ作り、その中からさらにヒットが生まれていく好循環を目指します。ヒット作の好循環で会社をうまく回しつつ、他社よりも若いゲームクリエイターが裁量を持って力を発揮できる環境を整えたいです。
――:それでは、最後に「Social Game Info」読者にメッセージをお願いします。
今回の新会社設立にも繋がりますが、Cygamesは好きなことができる許容範囲が広く、土壌の整ったゲーム会社だと思っています。GameJeansでも同じように、挑戦できる環境、そして実績を出した人が評価される環境を用意しています。現在、GameJeansでは積極的にスタッフを募集しています。チャレンジしたいことがある方、新しいものを作りたいという開拓者精神をお持ちの方、ご応募をお待ちしています。
――:ありがとうございました。
(取材・文:編集部 原孝則)
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