【連載】安藤・岩野の「これからこうなる!」 - 第44回「ガチャがなくなった場合のことを予想してみる」
【「これからこうなる!」は毎週火曜日12時頃に更新】
メディアやコンサルが予想するのとは大きく異なり、ふたりは開発者であるがゆえ、仮説を立てたあとに実際現場のなかでゲームを手掛け、その「是非」にも触れることができる。ゲーム開発現場の最前線に立つふたりは、果たして今後どのような未来を予想して、そして歩むのか。
今回の担当:岩野弘明氏
■第44回「ガチャがなくなった場合のことを予想してみる」
ちょっと前に世間を騒がせたソーシャルゲーム市場における騒動ですが、それに準じてガチャの確率表示に関する話題もいつかのコンプガチャ問題の時のように再燃しました。コンプガチャ禁止を経ての今回の騒動なので、いよいよガチャのあり方に関する議論が本格化するのかも、という声がちらほら上がったわけですが、仮にガチャがなくなったら、という事を想定し、その場合スマホゲームは、とりわけF2Pのゲームにどのような影響が出て、スマホゲーム市場はどうなっていくのか、ということについて今回は書きたいと思います。
■もしガチャがなくなったらどうなる?
結論から言うと、スマホゲーム市場自体が大きく変わるということはありません。もう少し具体的に言うと、今ほどの爆発力はなくなるかもしれませんが、今あるゲーム性が大きく変わったり、そもそもF2Pのゲームが立ち行かなくなるかというと、なりません。
理由は明確です。ガチャというのはそもそも強いキャラを手に入れるための時短システムで、ガチャがなくなったとしてもキャラ入手の時短を別の仕組みに置き換えればいいからです。
そもそも最近のガチャが世間で問題視されているのは、有料ガチャにしか入っていないキャラが存在し、それがどれくらいの確率で出るものなのか分かりづらいと指摘されている点です。
なので、例えば『艦これ』の建造や『クラッシュ・ロワイヤル』の宝箱の仕組みは本質的にはガチャと変わらないのですが、そもそもガチャで手に入るものはガチャをしなくてもゲーム内のクリア報酬などで入手できるものと同じため単純な時短となっていて、人によってはいわゆるガチャとは感じない人もいるかもしれません。
▲編集部注:『クラッシュ・ロワイヤル』のホーム画面。バトルに勝利することでカードなどが入った宝箱を取得できる。最大4個キープでき、そのレア度に応じて開封時間が決まっているが、エメラルド(有償通貨)を使用することで瞬時に開けられる。
とはいえ、上記の例もまたガチャといえばガチャ。だからこれもなくなる可能性もあります。ただ、『クラッシュ・オブ・クラン』などのように完全な時短課金のゲームも既にありますので、本質的には課金は時短であるという事を押さえていれば大丈夫です。
もちろん、よりゲーム性との連動やゲームサイクルを考慮した作りにする必要があるため、ちゃんと売上を上げられるゲームを作る難易度は今よりもあがるように思いますし、それにより淘汰されるゲームも出てくるかもしれません。
が、むしろそういった環境になった方がスマホゲームに対する印象が変わるかもしれませんし、より難しいことにチャレンジする方がおもしろい。以前『パズドラ』や(一応)『拡散性ミリオンアーサー』がそうできたように、新しい環境にいち早く適応することで一番をとれたりする。環境の変化はチャンスでもあります。だから個人的にはいっそさっさとガチャがなくなってくれていいとさえ思います。
今は周りがほとんど時短の究極系であるガチャを実装しているので、ガチャを使わない=周りのゲームに対して売上が低くなる可能性が高い=ランキングに乗らない=話題になりづらい=売れない、といったことになりかねないので、今すぐガチャを使わないという選択肢は取れないのですが、私としては今後出していくゲームは基本的にガチャがなくても成立する作りで考えています。
というわけで、今日はちょっと短めですがこの辺で! ではでは!
P.S.
「キングオブプリズム」という劇場アニメが最高におもしろいです。「プリティリズム・レインボーライブ」という女の子アイドルアニメのスピンオフ作品なのですが、「キンプリ」は男の子アイドルが活躍するアニメなんですね。つまり女子向けのコンテンツ。
ジャンル的には女の子向けのアイドルものだと思うのですが、実際はギャグアニメといって差し支えないくらい全力で笑わせにきます。登場人物はみんなまじめにアイドル活動に打ち込んでいるのですが、その真面目さが逆に笑えるというか、よく説明できないのですがとにかく笑えます。つっこみどころ満載なのにつっこみ不在でボケまくるので、それがまたおもしろくて最高です。
なので、男が見ても十分楽しめます。
ただ、悲しいかなこの笑いをどう表現していいのかわからずモヤモヤしています。とにかく見て欲しい! というわけで、気になる方は今すぐ劇場へ行っていただきたい! 今すぐ!
■著者 : 岩野弘明
スクウェア・エニックス第10ビジネス・ディビジョン(特モバイル二部) プロデューサー。『乖離性ミリオンアーサー』を筆頭に、同シリーズ全体のプロデュースを担う。新作は超能力×ミリタリーRPG『ALICE ORDER /アリスオーダー』。
岩野氏のツイッター:https://twitter.com/Iwano_Hiroaki
■安藤・岩野の「これからこうなる!」 バックナンバー
■第43回「ゲームプロデューサーが本気で「実況生主」になってみたらどうだったか?を書いてみる」 (安藤)
■第42回「『アリスオーダー』リリースしてどうだった?」 (岩野)
■第41回「あなたのゲームがTOP3に定着しないのは「これ」のせいかも」 (安藤)
■第40回「VRのゲーム分野における可能性」 (岩野)
■『FFBE』キーマン達の座談会…ゲームアプリ市場の功罪とは (安藤)
■第39回「”犯人はヤス”理論」であなたのゲームはグッと目立つ (安藤)
■第38回「プロモーションの拡散力を高める秘訣」 (岩野)
■第37回「ヒット作に必ず入ってくる“三つの条件”」 (安藤)
■第36回「WEBアニメ「弱酸性ミリオンアーサー」を作ってみた結果」 (岩野)
■第35回「起業してわかった、おいしいサラリーマンの仕事の仕方」 (安藤)
■第34回「「物語シリーズ」に見る魅力的なキャラの作り方」 (岩野)
■第33回「ヒットしたければ半径10メートルから飛び出せ!」 (安藤)
■第32回「上司と真逆のプロデューサー論」 (岩野)
■第31回「プロデューサーとディレクターの違いについて良く聞かれるので明快に答えてみた」 (安藤)
■第30回「新規アイドルゲームに未来はあるのか?」 (岩野)
■第29回「続・エニックス創業者福嶋康博さんが教えてくれたエンタメの真髄」 (安藤)
■第28回「恋活アプリ体験談」 (岩野)
■第27回「エニックス創業者の福嶋康博さんが教えてくれたエンタメの神髄」 (安藤)
■DeNA執行役員・渡部氏による対談企画…後編「DeNAが目指す次のステップ」 (岩野)
■第26回「スクエニで最もプレゼンがうまいと言われたおれが極意を教えよう」 (安藤)
■DeNA執行役員・渡部氏による対談企画…前編『ミリオンアーサー』の誕生秘話とは (岩野)
■第25回「インディーズを軽視するものは敗れ去る」 (安藤)
■第24回「サバゲー人気の謎に迫る」 (岩野)
■第23回「心が折れそうなときに読む話」 (安藤)
■第22回「「がっこうぐらし」のニコ動再生数が異常な件について」 (岩野)
■第21回「打ち合わせや会議が増えたときに読む話」 (安藤)
■第20回「「ラブライブ!」の魅力ってなんだと思う?」 (岩野)
■第19回「良い作品をつくるために必要な三つのこと」 (安藤)
■第18回「スマホゲームにおけるプロデューサーの重要性」 (岩野)
■第17回「私はなぜスクエニの部長をやめたのか?」 (安藤)
■第16回「日本のスマホゲーム業界が危うい」 (岩野)
■第15回「サラリーマンクリエイターの働き方はすでに限界を迎えている」 (安藤)
■第14回「ゲームを売る上で一番大事な人」 (岩野)
■第13回「市場のピンチを知らせるクリエイターからのSOS」 (安藤)
■第12回「F2Pゲームにおける最強の商品とは?」 (岩野)
■第11回「今後どんなゲームが売れるのか、全力で考えてみた」 (安藤)
■第10回「開発初期段階で必ず決めなくてはいけないこと」 (岩野)
■第9回「これからはプラットフォームの垣根が無くなると言ってきたけど、どうも違う。という話」 (安藤)
■第8回「打席に立つために必要なこと」 (岩野)
■第7回「ほとんどのターゲット設定は間違っている」 (安藤)
■第6回「売れるゲームには◯◯がある」 (岩野)
■第5回「ゲーム制作、これが無いとヤバイ。」 (安藤)
■第4回「IPを育てよう」 (岩野)
■第3回「制作費が二億円を超えそうなときに読む話」 (安藤)
■第2回「岩野はこう作ってます」 (岩野)
■第1回「ここに未来は予言される」 (安藤)
■第43回「ゲームプロデューサーが本気で「実況生主」になってみたらどうだったか?を書いてみる」 (安藤)
■第42回「『アリスオーダー』リリースしてどうだった?」 (岩野)
■第41回「あなたのゲームがTOP3に定着しないのは「これ」のせいかも」 (安藤)
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