発売からわずか16日で全世界累計販売本数200万本を突破したカプコンの完全新規IP『プラグマタ』。TPSとハッキングパズルを融合させた独自のゲーム性や、主人公であるヒューとディアナの唯一無二の関係性は、多くのプレイヤーの心をつかんだ。
gamebizでは先日、父の日イベントのレポートとキャストインタビューを掲載したが、本稿ではイベント終了後に行われた『プラグマタ』プロデューサー・大山直人氏、ディレクター・趙容煕氏への囲みインタビューをお届けする。
▲『プラグマタ』プロデューサー・大山直人氏(写真左)と、ディレクター・趙容煕氏(写真右)。
一度は開発中止の危機にも直面したという本作は、どのような試行錯誤を経て現在の姿へとたどり着いたのか。そして、プレイヤーから愛されるヒューとディアナは、どのような思想のもと生み出されたのか。全世界累計販売本数200万本という大ヒットの裏側にある開発哲学を聞いた。
※本インタビューでは、ネタバレには十分配慮しているが、一部ゲーム内容に触れている箇所がある。未プレイの方はあらかじめご了承いただきたい。
■「このままでは完成しない」――開発中止の危機をどう乗り越えたのか
――今回のイベントでは、開発の軌跡を振り返る映像も披露されました。当時は開発にかなり難航している様子が描かれていましたが、社内でも酷評されていたところから約4ヶ月で絶賛されるまで完成度を高められた要因は何だったのでしょうか。
趙容煕氏(以下、趙):期間としては4ヶ月ですが、それまで積み重ねてきた失敗や試行錯誤、その全てがあったからこそ答えにたどり着けました。一度失敗したからといって作ってきたものを捨てるのではなく、資産として活用しながら改善を重ねたことが大きな要因で、最終的な成功につながったと思います。
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■「ヒューとディアナ」を作品の軸に据えた新規IPだからこその戦略
――完全新規IPで世界累計販売本数200万本を達成できた理由はどのように考えておられますか。
趙:新しい遊びを提供できたという部分もありますが、それ以上に、ヒューとディアナが持つ“キャラクターの魅力”が大きかったと思います。
ゲームシステムは、実際にゲームを遊んでみないと面白さが伝わりません。その最初の壁を越えてもらうためにも、プレイヤーにはまず「この2人が気になる」と思ってもらう必要がありました。その入り口として、2人の掛け合いが大きな役割を果たしてくれたと思います。
大山直人氏(以下、大山):そこから、体験版でゲームをプレイする面白さを知っていただき、口コミによって「買ってみよう」と思っていただける流れが自然にできたことが、大きかったと思います。
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■社内には"あざとディアナ警察"も存在 プレイヤーが愛せるキャラクターを追求
――ディアナのキャラクター性は開発初期から固まっていたのでしょうか。
趙:私はアーティスト出身なので、絵を描きながらディレクションを担当していました。その際、月面という何もない空間で、プレイヤーの視線を引き付ける存在が必要だったんです。宇宙飛行士だけでは物足りない。相棒として何を置けば人が惹かれるのかを考えながら描いていった結果、生まれたのがディアナでした。
大山:ディアナというキャラクターの軸はありましたが、その表現は開発を通じて何度も調整しています。
2020年の初期トレーラーを見返していただくと、今より少し物静かで上品な印象だったと思います。しかし、実際にゲームを通して遊ぶと、少し存在感が弱く感じられたため、全体の流れを見ながらキャラクター性をブラッシュアップしていきました。
――性格も少しずつ変わっていったということですか。
趙:そうですね。
――イベントでも話されていた「あざとディアナ警察」のようなチェックも行われていたのでしょうか。
大山:細かくチェックして「これはやり過ぎじゃないか」と行き過ぎた表現を削る役目の人たちがいました。
趙:女性キャラクターの"あざとさ"は、同じ女性のほうが敏感に感じ取れるんです。だから「あざとディアナ警察」は全員女性です。
大山:キャラクターを作るのは本当に難しくて、今でこそ「ディアナはこういう子だよね」という共通認識がありますが、開発中は常に変化していきます。だからこそ、ディアナというキャラクターの軸がぶれないようにチーム全員で少しずつ軌道修正をしながら、現在のディアナというキャラクターを作り上げていきました。
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■TPS×ハッキングパズルはどう生まれたのか 何度も遊びたくなるゲームデザイン
――『プラグマタ』最大の特徴であるTPS×ハッキングパズルは、どのような発想から生まれたのでしょうか。
趙:最初はSFの世界観でシューターゲームを企画するところから始まりました。ただ、新規IPでもあるので普通のシューターにはしたくなかったんです。
そこで、銃を撃ちながら同時に何か考えるゲームにできないか、と考えたことが出発点でした。
大山:コンセプトとしては、まず「アクション」と「ハッキング」が先にあったんです。ただ、当初は今のようなパズルではありませんでした。
趙:そこから相棒の存在が生まれ、「何を考えるのか」という答えとして、現在のハッキングパズルのシステムに行き着きました。
大山:ハッキングをゲームとしてどう表現するか、開発の軌跡の映像でも見られたように、さまざまな試作を繰り返して完成形に近づけていきました。
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■ディアナの髪も進化した RE ENGINEが可能にした表現
――『バイオハザード』シリーズや『モンスターハンター』シリーズでも使われているRE ENGINEを採用されていますが、このエンジンだからこそ実現できたことはありますか。
大山:RE ENGINEは、これまでのタイトルで培ってきたノウハウを蓄積しているエンジンです。社内製なので、各タイトルのニーズに合わせて必要な機能を追加し、それを次の作品へ引き継いでいけるのが大きな強みですね。
例えば、ディアナの髪に使われているストランドヘアの技術も、その一例です。もともとは別タイトルでショートヘア向けに研究されていた機能でしたが、『プラグマタ』では「ロングヘアでも実現してみよう」とチャレンジしました。
別タイトルで培った技術を『プラグマタ』でさらに発展させ、それがまた次の作品へ受け継がれていく。そうした積み重ねができることが、RE ENGINEの一番の強みだと思っています。
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■エンディングから逆算して作った物語 趙ディレクターの制作哲学
――イベントでは、声優のお二人はエンディングを重視して選んだとお話しされていました。『プラグマタ』のエンディングには、どのようなこだわりがあったのでしょうか?
趙:新規IPだからこそ、クリアした後も長く余韻が残り、プレイヤーの記憶に残る作品にしたいという思いがありました。
そのため、私の中では開発初期の段階からエンディングだけはすでに決まっていました。最終的に完成したエンディングも、その当初の構想をほぼそのまま形にしています。
なので、声優のお二人を選ぶ際も構想にあるエンディングを成り立たせることを軸に考えました。「このエンディングで、このセリフを語るなら、この声しかない」と考えながら選考を進めたんです。
エンディングで流れる楽曲についても、「音楽を聴くだけで『プラグマタ』を思い出してもらえる作品にしたい」という思いがあり、そうした方向性で制作をお願いしました。
私の中では、最後のエンディングこそが『プラグマタ』という作品の核だったと言えるかもしれません。
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■発売後に初めて知った反響 全世界累計販売本数200万本をどう受け止めたのか
――『プラグマタ』発売から半月で全世界累計の販売本数が200万本という大ヒットになりました。ここまでの反響は予想されていましたか。
大山:正直、予想以上でした。本当にありがたい限りです。
趙:私も、予想をはるかに超えました。
――発売後、開発チーム内ではどのようなやり取りがありましたか。
大山:みんなでユーザーの反応を見ています(笑)。エゴサーチをして、「こんな感想を書いてくれている」「こんなリアクションをしてくれている」と共有し合っているんです。
趙:時には「こんな有名人が遊んでくれている!」と話題になることもありますね(笑)。もちろん、厳しい意見も目に入るので反省することもあります。
大山:「もう少しこうしておけば良かったな」と思う部分はもちろんあります。ただ、その時のチームとしては本当に全力を尽くして作り上げた作品なので、全体としては誇らしい気持ちで皆さんの反応を見ています。
――リリースから2ヶ月が経った今、ユーザーからの反響で印象に残っているものはありますか?
大山:一番多いのは、「楽しんでプレイしている」という反応です。それと同じくらい、「泣いた」という感想が多く寄せられています。そこは開発チームとしても非常に印象に残っています。
一方で、フィードバックという意味では、トレーニングシミュレーションの最後のステージが「難しすぎる」という声をいただいています。この点に関しては、今回のタイトルアップデートで調整を行います。
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▲アップデートは6月19日より配信されており、ヒューの新たなアウトフィット「らくがきスーツ」も実装された(関連記事)。
――実際に遊んでいるプレイヤー層を見て、当初の想定との違いはありましたか?
大山:思っていた以上に若い世代の方が遊んでくださっている印象があります。
SNSだけでは見えない部分もありますが、チームメンバーのお子さんやイベントでお会いした方から「うちの子どもが夢中で遊んでいます」といった話を聞く機会が多くありました。最近の若い世代は、他のゲームでアクションやシューティングに慣れていることもあって、パズルも含めて非常にスムーズに攻略しているという話も耳にしています。
趙:本当に意外でした。
それと同じくらい驚いたのが、女性プレイヤーの多さです。SFというジャンルは、どちらかというと男性向けというイメージがありましたが、YouTubeや配信を見ても女性インフルエンサーの方が数多く取り上げてくださっていて、その反響は予想以上でした。
また、作中にはディアナがヒューに絵をプレゼントしてくれるシーンがあります。もちろん、ユーザーに喜んでもらいたいという思いで作ったイベントではありますが、感動して涙を流してくださる方が数多くいらっしゃるほどとは正直想像していませんでした。
大山:本当に「泣いた」というコメントがたくさん届いていますね。
――最後に、約7年間かけて開発した新規IPが大ヒット作となりました。今、どのような思いがありますか?
大山:開発中も発売後も、チームの気持ちは変わっていません。
「自分たちが作ったゲームで、誰かに楽しんでもらいたい」という思いだけでここまでやってきました。
開発が大変だった分、今こうして200万人もの方に楽しんでいただけていることが、本当に報われた気持ちですし、「頑張って良かった」とチーム全員が感じています。
趙:最初は、新規IPを成功させなければいけないというプレッシャーが非常に大きかったです。
私自身、ディレクターとしてのデビュー作でもありましたし、「何としても成功させなければ」という思いが強すぎて、逆にアイデアが出なくなってしまった時期もありました。
ですが、「自分が本当に作りたいゲームは何なのか」と改めて向き合った結果、今の『プラグマタ』という形にたどり着きました。
今回の経験を通じて、自分が面白いと信じられるものを最後まで信じて作り続けることの大切さを改めて実感しています。
――本日はありがとうございました。
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約7年に及ぶ開発期間の中で、幾度となく試行錯誤を重ねながら完成へとたどり着いた『プラグマタ』。
今回のインタビューでは、一度は開発中止の危機を経験しながらも、ゲームシステムやキャラクター、物語のすべてを見つめ直し、「プレイヤーに長く愛される作品」を目指して磨き上げてきた開発陣の姿勢をうかがうことができた。
発売からわずか16日で世界累計販売本数200万本という結果は、長年にわたる試行錯誤と積み重ねが、多くのプレイヤーへ届いた証と言えそうだ。
ヒューとディアナという唯一無二のバディが、この先どのようにユーザーの記憶に残り続けるのか。そして『プラグマタ』という新たなIPがどのような広がりを見せていくのか、今後の展開にも期待したい。
(取材・文 編集部:山岡広樹)
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