■第四十四回「体験する重要性」
山本さんとの対談を2回へて、今回は、久々の原稿です(笑)。
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の主催されている日本ゲーム大賞アマチュア部門のエントリーも6月末に締め切られ、今年も数多くの夢に向かい、情熱溢れるタイトルが全国から集まってきていることと思います。
ちなみに、毎年審査をされている「プロのクリエイター」の皆さんは、300以上に及ぶタイトルを真剣に、映像を見(一次審査)、プレイして(二次、最終審査)チェックして、議論をして選考されています。
また、運営にかかわっていただいている皆さんも、未来のクリエイターの卵たちのために、仕事ではあるものの、それ以上の誠意と努力で、チャンスの一助になればと頑張っていただいています。
業界やコンテストは、来年もおそらくあるでしょうが、学生さんたちのチャレンジは、(今年という機会は)1回しかなく、その機会をできる限りベストな状態で臨ませ、且つ、真剣に議論することで、ポテンシャルある作品を見逃さないようにするために尽力いただいています。
もちろん、エントリーされている学生さんも、それらを支援してこられている学校の皆さんも同様に頑張っておられると思います。全員が真剣にこの取り組みに向かって全力を尽くしている…と思います
ただ、プロたちの全力に比して、アマチュアの全力は、まだまだ課題があるようにも思います。
まず…
①ギリギリにならないと出さない
→これは、わからなくはありません。
ゲームなんて、あと少し頑張れたらよくなるのに!というものは、山ほどありますからね。
であるならば、先生方に迷惑をかけないためにも、プレのバージョンを事前に用意しておき、最悪でもそれを送れるように1週間前に準備をしておくとよいかと思います。
それ以前に、書類くらいは、先に準備できるはずです。
そこも含めて、「計画的」に行動できるようになりましょう!プロになれば、パッケージゲームであろうが、ダウンロード型のゲームであろうが、今後、幾度となくリリースに立ち会うことになるでしょう。でも、自身たちの責任のみで、リリース経験ができるのは、今のうちしかありません。
②動作確認をちゃんとしていない…
→これは、ゲーム大賞に限ったことではありません。
就活のポートフォリオ作品で提出されてきたものの中にも、動作しないものとかがあったりすると聞きます。危機感が足りないのか?緊張からなのか?やらされている感からなのか?自身の人生がかかっていることだと思うのですが、どうもそこまでではないようです…
ゲームをつくってさえいれば、なんとかなるわけではありません。漫画家の卵さんたちも、必死に描いて、持ち込みや賞へのエントリーをされているわけです。それで、持ち込み対応担当の編集者さんたちが、いろんなアドバイスをして戻してくれるわけですね。でも、そんなときに、落丁だらけ、とかページの順番むちゃくちゃだったりしたら、相手は見る気を失いますよね?
大事なのは、ゲームをつくったら、ユーザに受け入れられないといけないのと同じく、コンテストにせよ、就職のエントリーにせよ、それらを受け止めてくださる方がいらっしゃるわけです。
その方々が、
・わかりづらい
・いらつく
・困る
といったことをして、なにかプラスのことが生まれるか?といったら、そんなことありえないわけです…意図的に、わかりにくいゲームを作る人や、バグだらけのゲームを作る人なんて、いないわけじゃないですか?できるだけ、滞りなく遊んでほしい、面白いと思えるように作り手が設定してるところまでたどり着き経験してほしい、と思うわけです。
だったら、ゲームをつくって遊んでいただく以上に、人生のかかった、エントリーなんかはもっと慎重に、真摯にやる必要がありますよね?
ただ、繰りかえしになりますが、あくまでも学生のうちにやれる体験は「トライアル」です。
リスクが、まだまだ少ないです。と、いうことは、「体験すること」が大事なわけです。
本番の前に、練習で体験しておきたいですよね?最近、時期的なこともありますが、就職活動に関する話をさせていただくことも、ままあります。
が、就活の際に、
①受かっても、そんなに知らない会社なので、受けない
②ネットみたら社風が自分にあわないような気がするので、受けない
③まだ、準備ととのっていないから、受けない
などなど
いろいろ「受けないための理由付け」をする学生さんを多く見かけます。
①や②なんて、受けてみないとわからないと思うのです。その会社のことをほとんど知らないと思いますので。 また、③のようにいつまでたっても受けなければ、「絶対に受かりません」。
①や②も、実際にその会社の人に触れる、その会社の建物に入る、という経験をすることで、イメージできるものが増えると思います。勝手な負の妄想で決めつけなくて済むということです(笑)。
また、③もどの程度不十分なのか?わからないと、どこまで準備したらいいかもわかりません。さすがに、グラフィッカー志望の学生が、ポートフォリオ1枚では駄目ですけどね(笑)。
と、て、つ、も、なく上手ならば別かもしれませんが…
なので、①②③を測るためにも、企業の実施する、
ハッカソン
インターンシップ
勉強会
セミナー
など
にエントリーして体験してみることが大事かと思います。体験するのは、イベント自身のみではありません。エントリー、選考、企業とのやりとりなど、就職活動本番でも、通らないといけない道と同じものを実施されている企業さんも多いので、そこを勉強の場に使うべきだと思うのです。
もちろん、1つのイベントで、すべてを体験できるようなものは、多くないと思いますが、いくつかのものから、体験すればいいだけのことだと思います。
目的は、あくまでも「体験して情報を仕入れること」「対策を練ること」なのですから…
大学生にとっては、やや難しく映るかもしれませんが、昨今のゲーム業界の採用において、プランナー、プログラマに関しては、特に、ゲームの開発経験も問われるようになってきています。もちろん、プロのようなものすごい規模のものや、エポックメーキングになるような、センス光りまくるアイデアのゲームをつくることは、簡単ではありません。
ただ、京都で毎年行われている、「bitsummit」にも学生の開発したゲームが出展されるようになってきていますし、GameJamやハッカソンへの参加を熱心におこなう学生さんも増えてきています。
つまり、「機会」というのは、以前に比べたら飛躍的に増えているわけです。
また、UnityやUEといったゲームエンジンの登場にともない、つくることも比較的容易になってきています。もちろん、精緻なものをつくろうともったら、書籍を漁ったり、ネットでサンプルを探すなど、ちゃんとしっかり学ばないといけないとは思います。
ですが、とりあえず動くものや、1dayのハッカソンなどで「ゲーム開発って面白いな」を体験するだけの制作ならば、少ない機能でやれるのではないかと思います。
前回、前々回の山本さんとの対談でも、「まずは、やってみること」「サンプルの改造でもいい」「目コピーからでもいい」とにかく、ゲームをつくるという体験をしてみよう!という話をしました。そして、そのこと自体が、面白いこと、自分がそれにやりがいを感じ、好きであることを確認していただきたいと思います。
そのためにも、プロ目指す人たちは、中学高校のころから、スクラッチからゲームをバリバリ作っていた人たちを除いて(笑)。たいていが初心者のはずです。
そういう人たちは、まず、この「ゲームつくるのって、ほんとおもろいわ」という体験をしてほしいのです。そうすることで、このゲームをつくるということがどれだけ自分にとって重要なことなのか? 人生をかけるのに値することなのか?を自分の中にインプットしていただきたいのです。正確には「再認識」「再確認」ですけどね(笑)。
でも、専門学校や大学にすすむ、18歳くらいの時に、その事象が明確に好き!理由は、これこれこういう要素からなりたっているから…と自身を理論武装できる人は、それほどいないと思います。と、すると、この連載でも何度も言ってきていますが、
ゲームにふれてきた幼少期 → だから、ゲーム(を遊ぶの)が好き
までは、そんなに問題なく、誰しも認められることだと思います。5年、10年といった体験をしてきた果ての自身の評価ですからね(笑)。ただ、ゲームを「つくるのが」好きかどうか?」は、未体験であることが多いわけです。昨今の、e-Sportsプレイヤーにでもならない限りは、ゲームを遊ぶのが好き!を仕事にすることは難しいわけです。もちろん、そんな中にも、
・ゲームを遊ぶ面白さを伝える仕事(ゲームメディアの編集、ライター)
→伝えるためにも、ゲームにふれる
・ゲームのクオリティを担保する仕事(ゲームのデバッガ、チェッカー、QA)
→ゲームの品質保証のためにも、とにかくゲームをプレイすることが仕事になる
といったような仕事もありますので、「ゲームを遊びまくるぞ!仕事で!!」というのも、まだまだないわけではありません。特に、QA関連の仕事は、これからゲームだけでなく、自動運転やロボティクスの領域でも広く、必要とされるものとなっていくでしょう。
ゲームをつくる体験
をしてみた結果、「あれ?自分は案外、ゲーム作っていても楽しくないぞ、やりがい感じないぞ」「でも、ゲームは好きだぞ、やっぱ」という人は、ゲームクリエイターの道を無理に歩まなくても、その周辺領域にまだまだ、皆さんの能力を必要としている仕事はあるということです。
また、同じくつくる、という経験をしても、スマホや、家庭用ゲーム機という「決められた箱に対しての発想」でゲームを開発するだけだと、楽しいのは、楽しいんだけど、思っていた以上ではないな…と思う人もいるかもしれません。
現在であれば、VR、AR、MRなどでもっともっと、遊ぶことの可能性を拡張したい人たちもいるかもしれません。でも、なかなかゲーム業界でこれらに大量の資金をついやして、チャレンジしている会社は、まだまだ多くありません。技術的な挑戦はあることはわかっていても、どうビジネスを成立させるか?の発明がまだ追いついていないからですね。
限られた箱にあわせてゲームを作る以外の選択肢となると、アーケードゲームや、パチンコ・パチスロといった遊技機などが、可能性があるかもしれません。お客さんにさわっていただくための「場」のイメージや設計からはいることができますし、いまどきは、ハード部分がガンガン動くものも多くなりました。より「体験」を強めてきている業界だといえるかもしれません。
たしかに、その場にいかないと面白さ、楽しさを体験いただけない弱さはありますが、いったん、そこに来てさえくれたら、大きな喜びを与えるための仕掛けづくりを必死にやられている業界だとも言えます。
このように、「ゲームをつくることが楽しい」「ゲームを遊ぶことが楽しい」「ゲームを作るの好きだけど、もっと、大きな枠組みで喜ばせることが楽しい」など、いろんな価値観があると思います。
これも「体験する」からこそ、わかることです
これを、入社してから実感しているようでは、かなり不幸です。たまたま嗜好とあっていたら、良いですけどね(笑)。 そうならないためにも、学生のうちに、ハッカソンでもいいですし、1週間の短期制作でもいいので、とにかくゲームを作ってみることだと思います。そうすることで、わかる、えられる体験は非常に大きな意味を持つからです。
ただ、以前、「ハッカソンの功罪」で書いたように、何度も何度も、ハッカソンやゲームジャムだけをやっているのでは、大きな成長は望めません。アマチュアの内は、ですよ(笑)。 プロは、仕事の上で確立した自己の知見を仕事以外の場所で、リスク少なく試すことができますからね。ですが、学生は、アマチュアでいられる期間に限界があるわけですから、その期間内により効果的に時間をつかって体験を積み重ねていく必要があるわけです。
前回の対談でも、ゲームをつくるうえでは、もっと人間を見ることに立ち返らないといけないと山本さんはおっしゃっていました。いろいろなことを体験してもしても、まだし足りることはないわけです。で、あるならば、何度も何度も、思い出作り、楽しかった体験をしてる時間はないわけです(同じことを2度やるな!とまでは言いません。振り返って、再度やることでより体験から得た知見が昇華されることはありますので)
なので、最後に、
・体験することは非常に大事! まさに、百聞は一見に如かず!
・だけど、限られたアマチュアでいられる時間を有効に使うことも忘れずに!
ということをあらためて述べて、今回は終わりとしたします。
以上!
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の主催されている日本ゲーム大賞アマチュア部門のエントリーも6月末に締め切られ、今年も数多くの夢に向かい、情熱溢れるタイトルが全国から集まってきていることと思います。
ちなみに、毎年審査をされている「プロのクリエイター」の皆さんは、300以上に及ぶタイトルを真剣に、映像を見(一次審査)、プレイして(二次、最終審査)チェックして、議論をして選考されています。
また、運営にかかわっていただいている皆さんも、未来のクリエイターの卵たちのために、仕事ではあるものの、それ以上の誠意と努力で、チャンスの一助になればと頑張っていただいています。
業界やコンテストは、来年もおそらくあるでしょうが、学生さんたちのチャレンジは、(今年という機会は)1回しかなく、その機会をできる限りベストな状態で臨ませ、且つ、真剣に議論することで、ポテンシャルある作品を見逃さないようにするために尽力いただいています。
もちろん、エントリーされている学生さんも、それらを支援してこられている学校の皆さんも同様に頑張っておられると思います。全員が真剣にこの取り組みに向かって全力を尽くしている…と思います
■しっかり準備しましょう!
ただ、プロたちの全力に比して、アマチュアの全力は、まだまだ課題があるようにも思います。
まず…
①ギリギリにならないと出さない
→これは、わからなくはありません。
ゲームなんて、あと少し頑張れたらよくなるのに!というものは、山ほどありますからね。
であるならば、先生方に迷惑をかけないためにも、プレのバージョンを事前に用意しておき、最悪でもそれを送れるように1週間前に準備をしておくとよいかと思います。
それ以前に、書類くらいは、先に準備できるはずです。
そこも含めて、「計画的」に行動できるようになりましょう!プロになれば、パッケージゲームであろうが、ダウンロード型のゲームであろうが、今後、幾度となくリリースに立ち会うことになるでしょう。でも、自身たちの責任のみで、リリース経験ができるのは、今のうちしかありません。
②動作確認をちゃんとしていない…
→これは、ゲーム大賞に限ったことではありません。
就活のポートフォリオ作品で提出されてきたものの中にも、動作しないものとかがあったりすると聞きます。危機感が足りないのか?緊張からなのか?やらされている感からなのか?自身の人生がかかっていることだと思うのですが、どうもそこまでではないようです…
ゲームをつくってさえいれば、なんとかなるわけではありません。漫画家の卵さんたちも、必死に描いて、持ち込みや賞へのエントリーをされているわけです。それで、持ち込み対応担当の編集者さんたちが、いろんなアドバイスをして戻してくれるわけですね。でも、そんなときに、落丁だらけ、とかページの順番むちゃくちゃだったりしたら、相手は見る気を失いますよね?
大事なのは、ゲームをつくったら、ユーザに受け入れられないといけないのと同じく、コンテストにせよ、就職のエントリーにせよ、それらを受け止めてくださる方がいらっしゃるわけです。
その方々が、
・わかりづらい
・いらつく
・困る
といったことをして、なにかプラスのことが生まれるか?といったら、そんなことありえないわけです…意図的に、わかりにくいゲームを作る人や、バグだらけのゲームを作る人なんて、いないわけじゃないですか?できるだけ、滞りなく遊んでほしい、面白いと思えるように作り手が設定してるところまでたどり着き経験してほしい、と思うわけです。
だったら、ゲームをつくって遊んでいただく以上に、人生のかかった、エントリーなんかはもっと慎重に、真摯にやる必要がありますよね?
ただ、繰りかえしになりますが、あくまでも学生のうちにやれる体験は「トライアル」です。
リスクが、まだまだ少ないです。と、いうことは、「体験すること」が大事なわけです。
本番の前に、練習で体験しておきたいですよね?最近、時期的なこともありますが、就職活動に関する話をさせていただくことも、ままあります。
が、就活の際に、
①受かっても、そんなに知らない会社なので、受けない
②ネットみたら社風が自分にあわないような気がするので、受けない
③まだ、準備ととのっていないから、受けない
などなど
いろいろ「受けないための理由付け」をする学生さんを多く見かけます。
①や②なんて、受けてみないとわからないと思うのです。その会社のことをほとんど知らないと思いますので。 また、③のようにいつまでたっても受けなければ、「絶対に受かりません」。
①や②も、実際にその会社の人に触れる、その会社の建物に入る、という経験をすることで、イメージできるものが増えると思います。勝手な負の妄想で決めつけなくて済むということです(笑)。
また、③もどの程度不十分なのか?わからないと、どこまで準備したらいいかもわかりません。さすがに、グラフィッカー志望の学生が、ポートフォリオ1枚では駄目ですけどね(笑)。
と、て、つ、も、なく上手ならば別かもしれませんが…
なので、①②③を測るためにも、企業の実施する、
ハッカソン
インターンシップ
勉強会
セミナー
など
にエントリーして体験してみることが大事かと思います。体験するのは、イベント自身のみではありません。エントリー、選考、企業とのやりとりなど、就職活動本番でも、通らないといけない道と同じものを実施されている企業さんも多いので、そこを勉強の場に使うべきだと思うのです。
もちろん、1つのイベントで、すべてを体験できるようなものは、多くないと思いますが、いくつかのものから、体験すればいいだけのことだと思います。
目的は、あくまでも「体験して情報を仕入れること」「対策を練ること」なのですから…
■ゲーム開発の体験も、すごく重要
大学生にとっては、やや難しく映るかもしれませんが、昨今のゲーム業界の採用において、プランナー、プログラマに関しては、特に、ゲームの開発経験も問われるようになってきています。もちろん、プロのようなものすごい規模のものや、エポックメーキングになるような、センス光りまくるアイデアのゲームをつくることは、簡単ではありません。
ただ、京都で毎年行われている、「bitsummit」にも学生の開発したゲームが出展されるようになってきていますし、GameJamやハッカソンへの参加を熱心におこなう学生さんも増えてきています。
つまり、「機会」というのは、以前に比べたら飛躍的に増えているわけです。
また、UnityやUEといったゲームエンジンの登場にともない、つくることも比較的容易になってきています。もちろん、精緻なものをつくろうともったら、書籍を漁ったり、ネットでサンプルを探すなど、ちゃんとしっかり学ばないといけないとは思います。
ですが、とりあえず動くものや、1dayのハッカソンなどで「ゲーム開発って面白いな」を体験するだけの制作ならば、少ない機能でやれるのではないかと思います。
前回、前々回の山本さんとの対談でも、「まずは、やってみること」「サンプルの改造でもいい」「目コピーからでもいい」とにかく、ゲームをつくるという体験をしてみよう!という話をしました。そして、そのこと自体が、面白いこと、自分がそれにやりがいを感じ、好きであることを確認していただきたいと思います。
そのためにも、プロ目指す人たちは、中学高校のころから、スクラッチからゲームをバリバリ作っていた人たちを除いて(笑)。たいていが初心者のはずです。
そういう人たちは、まず、この「ゲームつくるのって、ほんとおもろいわ」という体験をしてほしいのです。そうすることで、このゲームをつくるということがどれだけ自分にとって重要なことなのか? 人生をかけるのに値することなのか?を自分の中にインプットしていただきたいのです。正確には「再認識」「再確認」ですけどね(笑)。
でも、専門学校や大学にすすむ、18歳くらいの時に、その事象が明確に好き!理由は、これこれこういう要素からなりたっているから…と自身を理論武装できる人は、それほどいないと思います。と、すると、この連載でも何度も言ってきていますが、
ゲームにふれてきた幼少期 → だから、ゲーム(を遊ぶの)が好き
までは、そんなに問題なく、誰しも認められることだと思います。5年、10年といった体験をしてきた果ての自身の評価ですからね(笑)。ただ、ゲームを「つくるのが」好きかどうか?」は、未体験であることが多いわけです。昨今の、e-Sportsプレイヤーにでもならない限りは、ゲームを遊ぶのが好き!を仕事にすることは難しいわけです。もちろん、そんな中にも、
・ゲームを遊ぶ面白さを伝える仕事(ゲームメディアの編集、ライター)
→伝えるためにも、ゲームにふれる
・ゲームのクオリティを担保する仕事(ゲームのデバッガ、チェッカー、QA)
→ゲームの品質保証のためにも、とにかくゲームをプレイすることが仕事になる
といったような仕事もありますので、「ゲームを遊びまくるぞ!仕事で!!」というのも、まだまだないわけではありません。特に、QA関連の仕事は、これからゲームだけでなく、自動運転やロボティクスの領域でも広く、必要とされるものとなっていくでしょう。
ゲームをつくる体験
をしてみた結果、「あれ?自分は案外、ゲーム作っていても楽しくないぞ、やりがい感じないぞ」「でも、ゲームは好きだぞ、やっぱ」という人は、ゲームクリエイターの道を無理に歩まなくても、その周辺領域にまだまだ、皆さんの能力を必要としている仕事はあるということです。
また、同じくつくる、という経験をしても、スマホや、家庭用ゲーム機という「決められた箱に対しての発想」でゲームを開発するだけだと、楽しいのは、楽しいんだけど、思っていた以上ではないな…と思う人もいるかもしれません。
現在であれば、VR、AR、MRなどでもっともっと、遊ぶことの可能性を拡張したい人たちもいるかもしれません。でも、なかなかゲーム業界でこれらに大量の資金をついやして、チャレンジしている会社は、まだまだ多くありません。技術的な挑戦はあることはわかっていても、どうビジネスを成立させるか?の発明がまだ追いついていないからですね。
限られた箱にあわせてゲームを作る以外の選択肢となると、アーケードゲームや、パチンコ・パチスロといった遊技機などが、可能性があるかもしれません。お客さんにさわっていただくための「場」のイメージや設計からはいることができますし、いまどきは、ハード部分がガンガン動くものも多くなりました。より「体験」を強めてきている業界だといえるかもしれません。
たしかに、その場にいかないと面白さ、楽しさを体験いただけない弱さはありますが、いったん、そこに来てさえくれたら、大きな喜びを与えるための仕掛けづくりを必死にやられている業界だとも言えます。
このように、「ゲームをつくることが楽しい」「ゲームを遊ぶことが楽しい」「ゲームを作るの好きだけど、もっと、大きな枠組みで喜ばせることが楽しい」など、いろんな価値観があると思います。
これも「体験する」からこそ、わかることです
これを、入社してから実感しているようでは、かなり不幸です。たまたま嗜好とあっていたら、良いですけどね(笑)。 そうならないためにも、学生のうちに、ハッカソンでもいいですし、1週間の短期制作でもいいので、とにかくゲームを作ってみることだと思います。そうすることで、わかる、えられる体験は非常に大きな意味を持つからです。
ただ、以前、「ハッカソンの功罪」で書いたように、何度も何度も、ハッカソンやゲームジャムだけをやっているのでは、大きな成長は望めません。アマチュアの内は、ですよ(笑)。 プロは、仕事の上で確立した自己の知見を仕事以外の場所で、リスク少なく試すことができますからね。ですが、学生は、アマチュアでいられる期間に限界があるわけですから、その期間内により効果的に時間をつかって体験を積み重ねていく必要があるわけです。
前回の対談でも、ゲームをつくるうえでは、もっと人間を見ることに立ち返らないといけないと山本さんはおっしゃっていました。いろいろなことを体験してもしても、まだし足りることはないわけです。で、あるならば、何度も何度も、思い出作り、楽しかった体験をしてる時間はないわけです(同じことを2度やるな!とまでは言いません。振り返って、再度やることでより体験から得た知見が昇華されることはありますので)
なので、最後に、
・体験することは非常に大事! まさに、百聞は一見に如かず!
・だけど、限られたアマチュアでいられる時間を有効に使うことも忘れずに!
ということをあらためて述べて、今回は終わりとしたします。
以上!
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■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
会社情報
- 会社名
- 株式会社ファリアー
- 設立
- 2016年7月
- 代表者
- 代表取締役社長 馬場 保仁