【決算レポート】サイバーエージェント、22年9月期は『ウマ娘』反動減もネット広告とABEMAの成長で増収確保 次期は「手堅い成長」に向けた軟着陸の年に

木村英彦 編集長
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サイバーエージェント<4751>は、10月25日、2022年9月通期の連結決算を発表し、売上高7105億7500万円(前の期比6.6%増)、営業利益691億1400万円(同33.8%減)、経常利益694億6400万円(同33.6%減)、最終利益242億1900万円(同41.7%減)と増収・大幅減益となった。

オンラインで開催された2022年9月期の決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は、「ブームといえるほどヒットした『ウマ娘』の反動があるなかでも25期連続の増収を達成した。営業利益も691億円と高水準の利益を確保した。」と順調な内容だったことを強調した。

 

 

第4四半期の業績 反動減と先行投資を実施 

続いて、第4四半期(22年7月~9月)を中心に見ていくことにしよう。第4四半期の決算は、売上高1762億2600万円(前年同期比1.9%減)、営業利益132億1500万円(同50.8%減)、経常利益131億9900万円(同50.9%減)、最終利益35億1800万円(同58.6%減)だった。

【第4四半期の業績】
・売上高:1762億2600万円(同1.9%減)
・営業利益:132億1500万円(同50.8%減)
・経常利益:131億9900万円(同50.9%減)
・最終利益:35億1800万円(同58.6%減)

ゲーム事業が反動減で2ケタの減収となったことで営業利益も大幅な減益を余儀なくされたが、ABEMAを展開するメディア事業とネット広告事業が成長した。利益は前年同期には遠く及ばないものの、売上についてはわずかな減収に留めることに成功した。

大幅な減益となったのは、もちろん先述のゲーム事業における反動減が主因なのだが、それだけでなく、先行投資の影響もあるそうだ。ネット広告でも「広告費を踏んだ」ほか、この四半期だけでゲームで40人、ネット広告で59人増やすなど採用活動も強化した。

以下、各事業セグメントを見ていこう。


■メディア事業
・売上高:302億9900万円(同33.5%増)
・営業損失:26億4000万円(前年同期は35億6300万円の損失)

売上高が前年同期比で33.5%増の302億9900円、営業損失が26億4000万円(前年同期35億6300万円の損失計上)と増収・赤字幅縮小となった。「WINTICKET」などの収益貢献で採算性が大きく改善したという。

「ABEMA」の広告収入と課金収入が堅調に伸びたことに加えて、周辺事業である「WINTICKET」が大きく伸びた。藤田社長は、年間200億円の損失計上を続けていたが、ABEMAと周辺事業の収益が伸びてきたことで「損失改善のフェーズに入ってきた」とコメントした。

 とりわけ「WINTICKET」の伸びが目立つ。「かなり後発サービスでゼロから立ち上げたサービスだが、競輪のネット投票で36%とトップシェアとなった。「ABMEA」の映像コンテンツを持っていて、クオリティの高いサービスを作り、それを展開する強みが発揮できたとのこと。

 こうした収益の伸びの背景には、メディアとしての「ABEMA」の成長があげられる。重要指標と位置づけるWAU(週次アクティブユーザー数)は、那須川天心選手と尊選手の対戦をきっかけに再び伸び、メイウェザー選手と朝倉未来選手の対戦で過去最高のWAU1896万人を記録した。

 
■ネット広告事業
・売上高:923億9000万円(同12.4%増)
・営業利益:50億5500万円(同1.1%増)

売上高が前年同期比で16.3%増の923億9000万円、営業利益が同1.2%増の50億5500円と増収増益を達成した。広告営業やDX部門のスタッフを増やすなど先行投資を吸収しての増収増益となった。

 藤田社長は、「ネット広告は右肩上がりで成長が続く市場だが、当社はトップシェアでありながら市場成長を上回る増収を達成した。」とコメント。「長くネット広告を運用してきたノウハウと技術力をかけあわせて広告効果を最大化していることが強みだ」。

なお、ここ最近、注力しているDX事業に関しても説明があった。藤田社長によると、大手企業と提携して新しい広告事業として商品設計を行っている最中で、売上としては顕在化していないという。ネット広告事業における大きな収益源として成長させていく考え。

 

■ゲーム事業
・売上高:548億3500万円(同28.2%減)
・営業利益:121億0300万円(同56.9%減)

前年同期との比較では大幅な減収減益を余儀なくされたが、売上高が前四半期比(QonQ)で18.7%増の548億3500万円、営業利益が同22.3%増の121億0300万円と増収増益に転じた。藤田社長は、「高い水準の営業利益を維持できている」「(増収増益に転じたのは)良いニュースだ」とコメントした。

 『ウマ娘』が「ブームといえるほどヒット」した前年同期の反動減があったものの、主力タイトルでの夏季イベントや、『ウマ娘』における1.5周年の効果などもあって、QonQでは増収増益に転じたようだ。

『ウマ娘』については、目先の収益よりも「長く愛されるIPにするというコンセプトで大事に育てている最中」だが、運用強化とクロスメディア展開が奏功し、「(コンテンツへの)認知が着実に広がっており、広く愛されるIPになってきたと手応えを感じている」とした。

新作については、『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』と『呪術廻戦 ファントムパレード』『東京リベンジャーズ ぱずりべ!全国制覇への道』をリリースする予定だ。「人気IPタイトルのリリースを控えており、楽しみにしている」と期待を寄せた(※その後、『呪術廻戦』は23年春に延期との発表があった)。

 
なお、それ以外の事業の状況は以下のとおり。

■投資育成事業
・売上高:10億8500万円(同225.8%増)
・営業利益:4億0500万円(同1億9100万円の損失)

■その他事業
・売上高:63億9100万円(同5.7%増)
・営業損失:3億7300万円(同2000万円の損失)

 

■2023年9月通期の見通し 

続く2023年9月期については、売上高7200億円(前期比1.3%増)、営業利益400億円~500億円(同42.2%減~同27.7%減)、経常利益400億円~500億円(同42.4%減~同28.0%減)、最終利益150億円~200億円(同38.1%減~同17.4%減)と増収減益を計画している。

この期は、『ウマ娘』の反動減の影響を引き続き受ける見通しだが、ソフトランディングを行なう移行期と位置づけているという。2023年9月期以降は世界的な不況や別の新作ゲームが大きくヒットするなどがない限り、「手堅い成長軌道に乗せていく」ことを目指す。

10年がかりで育てていくと宣言した「ABEMA」はついに7年目に突入し、メディアとして大きく成長したが、周辺事業の成長もあって収益の改善が進んでいる。「全社で取り組んでいる」というサッカーワールドカップも成功すれば、利用者の拡大に大きなインパクトを持ちそうだ。

また、ネット広告で取り組んでいるDX事業についても、現在はまだ売上という形にはつながっていないものの、徐々に収益化につながってくるという。2023年9月期は、ネット広告とメディア事業にとっても新しい成長軌道に乗せるための1年と位置づけられそうだ。

 

株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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