エンタメ大手25年3月期決算、8社中6社が営業増益 大型新作がけん引 スマホゲームは明暗 グループ内連携を活用したIP戦略も業績左右

2025年3月通期のゲーム・アニメ・ホビーなどを展開するエンタメ大手各社の決算が出揃った(※)。本業の儲けを示す営業利益が増益だったのは8社中6社だった。コーエーテクモHDとソニーG、バンダイナムコHD、スクエニHD、カプコン、コナミGが増益を達成した一方、セガサミーHDと任天堂が減益だった。今回、バンダイナムコHDの売上高が任天堂の売上高を上回った。
※これまでゲーム大手としていたが、各社の事業内容が幅広くなっていることを鑑み、エンタメ大手と表現を変えてみた。今回、任天堂とソニーグループを入れている。

各社の家庭用ゲーム事業は、大型IPタイトルが国内外でヒットし、売上を伸ばす傾向が続いている。大型新作やDLCがヒットした例として、カプコンの『モンスターハンターワイルズ』(全世界1000万本突破)やバンダイナムコHDの『エルデンリング』DLC『Shadow of the Erdtree』『ドラゴンボール Sparking! ZERO』などが挙げられる。
AAAなど大型ゲームの開発力強化に注力する一方、グループ内連携を駆使してIPの価値を高める取り組みも強化している。バンダイナムコHDは、ゲームと玩具、アニメ、アミューズメントの各事業が連携するIP軸戦略を先駆的に始めたが、カプコンもeスポーツや自社タイトルの映像化で認知度を拡大させている。
エンタメ領域の強化に取り組むソニーGも主力タイトルの映像作品化やアニメ・映像作品のゲーム化を行っている。「事業間連携がもたらす価値や可能性は、この数年でより顕在化してきた」(十時裕樹社長)。当初はトップダウンで行っていたが、最近ではグループ会社同士で自発的に取り組むようになっているそうだ。
また、スマホゲームは明暗が分かれた。コナミGでは『eFootball』や『プロ野球スピリッツA』が安定して伸長し、バンダイナムコHDでも『ドラゴンボール』シリーズや『アイドルマスター』シリーズのタイトルが貢献し、次の期から収益形状となるが『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』も大ヒットした。一方、スクエニHDのスマホ・ブラウザ事業は既存タイトルの収益減少や前年の特殊収益の消失で減益となった。
アミューズメントは、各社ともコロナ後の回復基調やインバウンド需要などもあり、増収増益が続いている。カプコンやバンダイナムコHDは、自社IPと顧客のタッチポイントという位置づけを強化し、IP強化戦略の一翼を担う存在として重視している。スクエニHDも同様に、タイトーの施設を顧客とのタッチポイントとして活用していく方針を打ち出した。
全体としては、家庭用・モバイル分野で好不調がやや分かれるものの、グローバルに成長するプラットフォームビジネスやIP強化によって業界の拡大傾向が継続している。アニメ・映像や音楽、玩具、出版、店舗、イベントなどグループ内の総合力を駆使してIPの価値を高めていくことが業績を左右する要因となりつつある。マネジメントの手腕が問われる部分でもあるように見える。
各社の業績概要は以下のとおり。
■コーエーテクモHD
コーエーテクモホールディングス<3635>は、売上高831億円(前の期比1.7%減)、営業利益321億円(同12.7%増)となった。売上高は微減だったものの、自社パブリッシングタイトルの新作増加と既存タイトル(バックカタログ)のDL販売増で収益が拡大し、コスト管理も徹底して営業利益を2ケタ増に押し上げた。主な発売タイトルとして、『真・三國無双ORIGINS』(全世界出荷100万本突破)、『無双アビス』、『NINJA GAIDEN 2 Black』、『Venus Vacation Prism』などが挙げられる。また、『ユミアのアトリエ』はシリーズ最速で世界累計30万本を突破するなど好調な出足を見せた。
https://gamebiz.jp/news/405021
■セガサミーHD
セガサミーホールディングス<6460>は、売上高4289億円(前の期比8.5%減)、営業利益481億円(同16.8%減)となり、減収減益となった。前期に大ヒットしたパチスロ機『スマスロ北斗の拳』の反動減が遊技機事業に大きく響き、遊技機事業の売上高は972億円(同27.1%減)、経常利益は209億円(同50.0%減)と大幅減少した。一方、エンタテインメントコンテンツ事業(家庭用ゲームや映像など)は、フルゲームのリピート販売や欧州スタジオ製タイトルのDLC、既存IP(『ソニック』や『龍が如く』シリーズ)の販売が順調で、売上高3221億円(前期比0.5%増)、経常利益418.9億円(同35.9%増)と前期比で増収増益を維持した。映像分野では『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』と劇場版『名探偵コナン』がともに過去最高の興行収入を記録し、コンテンツ収入を牽引した。
https://gamebiz.jp/news/405482
■ソニーグループ
ソニーグループ<6758>は、売上高(金融含む)12兆9570億円(前期比0.5%減)、営業利益1兆4071億円(同16.4%増)と増益だった。音楽・映画などエンターテインメント部門の好調に加え、ゲーム&ネットワークサービス(PlayStation事業)が業績拡大を牽引した。ゲーム&ネットワーク事業の売上高は4兆6700億円(同9.4%増)、営業利益は4148億円(同42.9%増)と大幅増益となった。PlayStation 5本体の販売は前期比11.0%減の1850万台に落ちたものの、ソフトウェア売上は12.9%増(2兆5080億円)に増加し、PSNなどネットワークサービス収入も22.7%増(6698億円)と好調に推移した。特に月間アクティブユーザー数は1億2400万アカウントに達し、サードパーティタイトルやPS Plus課金の増加で利益を大きく押し上げた。
https://gamebiz.jp/news/405645
■バンダイナムコHD
バンダイナムコホールディングス<7832>は、売上高1兆2415億円(前の期比18.2%増)、営業利益1802億円(同98.7%増)と大幅増収増益で、売上・利益とも過去最高を記録した。玩具・ホビー事業や映像IP事業でも好調を維持しつつ、特にゲーム事業(デジタルエンタテインメント)の増益が目立った。家庭用ゲームでは、『ELDEN RING』の大型DLC「Shadow of the Erdtree」と本編のリピート販売、新作『ドラゴンボール Sparking! ZERO』が世界的にヒットし、前年計画を大幅に超える売上増加を達成した。また、『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』のスマホゲームなどネットワークコンテンツも順調に推移した。前年度に計上した大型の損失計上の反動もあり、ゲーム事業のセグメント利益は995%増を達成した。
https://gamebiz.jp/news/405316
■任天堂
任天堂<7974>は、売上高1兆1649億円(前の期比30.3%減)、営業利益2825億円(同46.6%減)と大幅な減収減益となった。前期に発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』や『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』が業績を大きくけん引していた反動で販売数量が減少した。とはいえ、Nintendo Switch向け新作は健闘し、『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』(748万本)、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』(409万本)、『ペーパーマリオRPG』(210万本)、『マリオカート8 デラックス』(623万本)などがミリオンヒットとなった。ハード販売も端境期でもあり販売台数は1080万台(同31.2%減)と減少したが、任天堂は2026年3月期の発売を予定する新型機「Nintendo Switch 2」により、今期は売上高63%増見込みとしている。
https://gamebiz.jp/news/405344
■スクウェア・エニックスHD
スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>は、売上高3245億円(前の期比8.9%減)、営業利益405億円(同24.6%増)だった。売上高は家庭用ゲームの新作数が前年に比べ減少したことで減収となったものの、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』や『ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー』など主要タイトルの好調な販売と、前年の開発費・宣伝費・コンテンツ評価損の減少により営業利益は大幅増益となった。逆にスマートデバイス・PC向けコンテンツは既存タイトル減衰などで減益となっている。
https://gamebiz.jp/news/405661
■カプコン
カプコン<9697>は、売上高1696億円(前の期比11.3%増)、営業利益657億円(同15.2%増)と増収増益となった。第4四半期に投入した大型新作『モンスターハンターワイルズ』が全世界で販売本数1000万本を突破するなど好調で、業績を大きく押し上げた。既存の『モンスターハンターワールド:アイスボーン』『モンスターハンターライズ』や『バイオハザード RE:4』『ストリートファイター6』なども継続的に販売を伸ばし、シリーズ全体のブランド価値向上に寄与した。アミューズメント事業(ゲームセンター事業)もインバウンド需要の回復などで来店客数が増加し、売上高227億円(同17.6%増)、営業利益24億円(同30.2%増)と回復傾向にある。
https://gamebiz.jp/news/405591
■コナミグループ
コナミグループ<9766>は、売上高4216億円(前の期比17.0%増)、営業利益1019億円(同27.0%増)と、売上・利益ともに過去最高を更新した。デジタルエンタテインメント事業が22.5%の大幅増収で特に牽引し、主力の家庭用ゲーム新作が好調だった。『パワフルプロ野球2024-2025』『プロ野球スピリッツ2024-2025』がシリーズ記念作として堅調に推移し、モバイルでは『eFootball』が累計8億ダウンロードを突破するなど安定した収益を保った。サイコロジカルホラーゲーム「SILENT HILL 2」のリメイク版は世界累計出荷本数は200万本を突破した。遊戯王カードゲーム新作やeスポーツ(『eFootball Championship』、『Yu-Gi-Oh! World Championship』)の開催も活発で、IPの価値向上が業績に貢献した。
会社情報
- 会社名
- 株式会社カプコン
- 設立
- 1983年6月
- 代表者
- 代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1696億400万円、営業利益657億7700万円、経常利益656億3500万円、最終利益484億5300万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9697
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
- 設立
- 1975年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高3245億0600万円、営業利益405億8000万円、経常利益409億3900万円、最終利益244億1400万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9684
会社情報
- 会社名
- 任天堂株式会社
- 設立
- 1947年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 古川 俊太郎/代表取締役 フェロー 宮本 茂
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1兆1649億2200万円、営業利益2825億5300万円、経常利益3723億1600万円、最終利益2788億600万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7974
会社情報
- 会社名
- コナミグループ株式会社
- 設立
- 1973年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高4216億200万円、営業利益1019億4400万円、最終利益746億9200万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
- 証券コード
- 9766
会社情報
- 会社名
- コーエーテクモホールディングス株式会社
- 設立
- 2009年4月
- 代表者
- 代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高831億5000万円、営業利益321億1900万円、経常利益499億8800万円、最終利益376億2800万円(202年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3635
会社情報
- 会社名
- 株式会社バンダイナムコホールディングス
- 設立
- 2005年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 浅古 有寿
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1兆2415億1300万円、営業利益1802億2900万円、経常利益1864億7000万円、最終利益1293億100万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7832
会社情報
- 会社名
- ソニーグループ株式会社
- 設立
- 1946年5月
- 代表者
- 代表執行役会長 吉田 憲一郎/代表執行役社長CEO 十時 裕樹
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高及び金融ビジネス収入12兆9570億6400万円、営業利益1兆4071億6300万円、税引前利益1兆4737億2600万円、最終利益1兆1416億円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 6758
会社情報
- 会社名
- セガサミーホールディングス株式会社
- 設立
- 2004年10月
- 代表者
- 代表取締役会長 里見 治/代表取締役社長 グループCEO 里見 治紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高4289億4800万円、営業利益481億2400万円、経常利益531億1400万円、最終利益450億5100万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 6460