【フランス編・前編】最大を目指さないJapan Expo。初出展続出だった日本企業の欧州展開ブーム 中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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2026年7月9-12日にフランスで25周年となるJapan Expo(JX)が開催された。来場者数は22万人、昨年の23万人や2019、22-23年の25万にくらべると「落ち着いた数字」ではある。だがもはや欧州最大規模のJXにとっては「規模」を追うことはゴールになっていないような印象もある。チケットは高額化しており、マンガ・アニメ・ゲームのみならず、武道の稽古からインバウンド・食・果ては運動会まで日本にまつわるあらゆるものを祭り上げる「Japan」を楽しむイベントになっている。今回の前編ではそこに初出展した日本企業、PARCO、三井不動産、MIXI、THE COREといった各企業へのインタビューを通じて「日本にとっての欧州市場の今」をあぶりだしたい、というのが本記事の趣旨である。

 

■米国AXとは違う「ファンとの距離」を演出するJX、規模最大化は追わない

Japan Expo(JX)は1999年、パリのコンピュータサイエンスにおけるグランドゼコール(高等教育機関)EPITAコンピュータサイエンススクールのガレージや地下室を拠点として、始まったアニメイベントである。「ファーストインパクト」と呼ばれた初年度は、マンガを交換したり、VHSテープでアニメを見たりするために集まった好奇心旺盛な3,200人の集いに過ぎず、それは1975年というずいぶん前から日本で流行していた「コミケ(コミックマーケット)」と近い雰囲気をもつものであった 。

成長は実はアメリカ最大のアニメイベントAnime Expo(AX)に先駆けていた。1992年からはじまっていたAXのあとを追い、10年たった2008年には13万人とAX越え。2008~2014年の期間はリーマンショックで日本アニメブームが失墜した米国市場のAXよりも、堅調なフランスのJXのほうが10→20万人規模に成長する中で参加者は上回っていた。「10年前までは世界最大のアニメイベント」だったのだ。

AXは2010年代後半に20→35万人へと急増し、その後をおいかけるかたちで25万人にまで到達する。コロナ後も居高・増大化するAXとは違って、JXは20~23万人前後を2022~26年と繰り返してきており、「欧州最大のアニメイベントではあるが、米国イベントのようにサイズ最大化をねらわないファンと作り手をつなぐイベント」という趣で、異なる役割を果たすようになってきている、というのが現在地だろう。

 

フェスティバルは今や14万平方メートルもの広大な格納庫を会場とし、800社以上の出展者を擁する。これはフランス全体において3番目に来場者の多い見本市である。「ジャパンエキスポのようなコンベンションを企画するのは、以前よりも簡単になりました。というのも、私たちにはこれまでの実績があり、かつて日本人ゲストを迎えることが特別なことだった時代と比べて、はるかに多くのリソースを活用できるようになったからです」とトーマス・サーディは振り返る。「しかし、同時に、一大イベントとなり、大きな期待と注目を集めるようになったため、より複雑にもなりました。リスクも増えたのです。」

2008年ごろには前売券8万枚にも及び、長時間にわたる入場待ちの整理が問題化する。2014年の5日間開催では初日水曜の準備日にユーザーが殺到したり、2015年では猛暑×IT障害で地獄のような様相にもなり、2025年にも猛暑による会場気温に数えきれないクレームが殺到し、2026年は冷房機材が導入され会場内はずいぶんと過ごしやすい状態に変わっていた。鉄道の運行停止による帰宅難民など、周辺インフラもふくめた様々な問題をシューティングし続ける25年だったと振り返れる。

 

3つに翼をひろげたかのようなスペースは「マンガ・アニメ・伝統芸能・コスプレ・ファッション」などのHall5Aを中心としながら、「ゲーム」と「TCG」のHall4があり、AXと違っての特徴は入口の一番最初に目に飛び込んでくる「マンガ」のスペースだ。とにかく紙の出版物の存在感が著しく、書籍出版社・卸のGlenat(仏大手出版社)、Kana(Dargaud社)、KAZE(老舗、Vizmedia→Crunchyroll Manga→HarperCollins社)、Panini Manga、Mana Books(AC Media社)などのブースでは、売り子たちがこのマンガはどこが面白いだのこれを持っていけだの販促の熱量が強い。日本マンガのみならず、フランスの“バンドデシネ"とよばれる国産マンガも多く並んでいる。 

▲今回の入場はテレビ朝日がプロモートしている『あかね噺』の巨大看板

 

▲『ニセモノの錬金術師』『令和のダラさん』『あくまでクジャクの話です。』などなかなか鋭い出版セレクション

 

▲1994年設立の日本マンガ流通草分け。2009年にVizmedia傘下、2019年にCrunchyroll傘下になったが2025年にハーパーコリンズに売却され「KAZE」ブランドが復活

 

▲Kanaが販売する「おやすみプンプン」の素敵な装丁

 

▲士貴智志氏(『罪と罰』や「月刊少年シリウス」『進撃の巨人 Before the fall』)など個人の漫画家・イラストレーターが参加していたりもする

 

 

「アニメ」や「ゲーム」がAXのように巨大なディスプレイでガンガンに宣伝してくる、という感じではなく、ここは比較的おとなしめ。「TCG」は思いのほかの活況で、「Magic the Gathering」「遊戯王」「ONE PIECE card game」「ヴァンガード!!」といった定番だけでなく、「NARUTO Mythos TCG Konoha Shidō」(伊Cicaboom社が26年6月より発売)、「My little Pony」(中KAYOU社が2026年2月より発売)、「Cyberpunk TCG」(ポーランドCD PROJEKT RedとWeirdCoが共同開発で2026年末に発売予定)「Gundam Card Game」(バンダイ社が2025年7月)など新作販売が目白押しで、さすがボードゲームのメッカである欧州、という印象だった。いま玩具業界の「台風の目」はまちがいなくこのカードゲーム市場だろう。

 

参加費は各日€30~40(6~8千円)、4日間通しで€100程度(2万円)、そこにZEN(0830入場)€169(3.5万円)、Zen+Fonfort(+ラウンジ・クローク)€399(8万円)、Ultimate(+最上位専用席、Opening Party)€999(20万円)と4段階のプレミアコースを提供する。このUltimate Passは数量限定で販売され、完売している。高額化しているとと問題視されているAX(1日券$66~96:1~1.5万円、4日通しで$170:2.5万円))からみると確かに3割ほど安いが、プレミアムもいれると決してJXも安いとはいえない。

 

■欧州のIPד公園(PARCO)"になれるか。初出展で確かな手ごたえ

今回初出展の日系企業にインタビューを行った。パルコ社はJapan Expoはおろか、海外での「カルチャーミックス型イベントへの出展」そのものが初めてという状況、「いったいなぜPARCOがフランスに?」ということで出展責任者の文化創造事業戦略室秀島麻友子マネジャーに話を伺う。

実はPARCOは社内でもゲーム事業(PARCO GAMES)、新マンガ雑誌創刊を第1弾とする講談社との共同プロジェクト「渋谷スペイン坂編集室」など続々とエンタテインメント業界での新施策を展開している。渋谷PARCOを代表に、日本全国で15ヵ所あるPARCOという商業施設の運営を主の事業とする会社だが、創業当初からエンタテインメント事業にも注力してきた。2024年に設立された「文化創造事業本部」という組織に、演劇・音楽・映画、前述のゲーム・出版などのエンタテインメント事業と渋谷PARCO、オンライン事業などが集い、それらの事業の連動を高め強化・クロス展開していこうという動きが始まった。今回はその事業の一環として、「パルコがプロデュースするカルチャーミックス感への反応・検証」と、すでにMD(マーチャンダイジング)で国内で販売している商材の海外需要を探るべく、その一発目としてJapan Expoが25周年ということもあり、その記念的なタイミングにあわせて出展した、という。

とはいえ、海外展開の専門事業部があったわけでもないのにどうやってフランスのイベントに施工・出展・商品の輸出入を担当したのだろうか。JXの公式代理店としても指名されている大日本印刷社が出展業務の一部を代行してくれる仕組みになっており、PARCOのみならず日系企業では丸善ジュンク堂など10ブース近くの出展はすべてとりまとめており、またパルコ内のコネクションも駆使して関係会社を見つけたことで、それほど大きな障害は感じなかった、という。ブースデザインはJ. フロントリテイリンググループとしてのノウハウがあったことが奏功。販売商品についても、すでに国内PARCO店舗で様々な企画展を行っているため、ライセンサーと海外販売できる形で再交渉して形を整えていった。国内で類似事業を展開していれば、多少窓口は異なったとしても現場の各事業部のネットワークで相談・交渉も行え、初出展とはいいながら海外出展のハードルを越えることができる。出展までは急ピッチだったが、なんとか間に合わせることができた、という。

売れ行きのほうはどうだろうか。「日本発のコンテンツは予想以上に人気があり、紙ものを中心に、あっという間に売り切れてしまったものもあります」という盛況ぶり。予想外の活況で、2025年春から東京・大阪ときて8月には名古屋で展開した『士郎正宗の世界展〜「攻殻機動隊」と創造の軌跡〜』 関連書籍や攻殻機動隊の復刻版パンフレット、パリでも上映された映画『天使のたまご』のパンフレットやレターセット、パルコ出版の手がける寺田てらの作品集や『ちいかわ』ポストカードブック、ゲーム『DEATH STRANDING』のTシャツやマグカップなど、フランスでは手に入らないものから順に売れ行きがよかった。特に「出版物がよく売れる」というのはJXならではの特徴かもしれない。場所も功を奏した。隣はAnime Limited社(All the Animeとも呼ばれる2012年設立の英国配給会社、Kazé UKの代表だったアンドリュー・パートリッジ氏が設立し、最初の配給作品が「カウボーイビバップ」、2026年1月に東宝が100%買収)のブースで、『攻殻機動隊』で覆われ映像DVDが販売されているが、まるで誘導されるかのように隣のPARCOの攻殻グッズにも人の波が吸い込まれていく。

 

驚くほど渋谷PARCOが認知されていた、という発見もあった、という。「僕、昔、リブロで働いてたんですよ。懐かしいな~」というフランス人の来客があったり、私自身が見学をしていると「Parco, Parco」とフランス語で話している声も聞こえ、インバウンド需要ですでに日本渡航していたフランス人から十分な認知を得ていたのだろう。PARCOとはイタリア語の「公園」を意味しており、まさに“IPとカルチャーの公園"としてこれからポジションを築こうとしている。「渋谷を感じさせるカルチャーミックス感」がパリでも評判を呼んでおり、初出展にして十分な手ごたえを感じた、とのことだった。日本で様々なクリエイター企画展を展開するPARCO、今後はほかの海外イベントにおいても新しい存在感を発揮してくるようになるだろう。 

▲左からパルコ文化創造事業戦略室の秀島麻友子氏(マネジャー)、勝又詩織氏

  

■三井不動産×CCCで欧州アート商品物販。IPのGo Globalに火をつける

商業施設という枠でいえば、これまた新しい動きをみせていたのが「三井不動産×CCC」である。『キャプテン翼』高橋陽一氏のワールドカップ向けの新しい描きおろしが直筆サイン入りの「メタルキャンバスアート」として500万円価格帯で販売されている。ほかにも並んでいる商品は『マッハGoGoGo』、『グレンダイザー』や『かいじゅうたちの楽園 Paradise of Kaiju (円谷プロダクションの怪獣キャラクターの新コレクション)』、また『コブラ』の仏像化や『ゴジラ』『僕のヒーローアカデミア』の浮世絵化など「アート化」という意味ではJXらしい展示だ。アート原画展という趣で、来場している観客500人に直接アンケートをとり、購入意欲やJapan Expoへの来場動機、このブースの評価などをヒアリングしていた。

そもそもなぜ三井不動産×CCCという2社での出展となったのだろうか。きっかけの一つは2社で京都植物園に展開していたLight Cycles Kyotoであった 。そこで2社共同で関連グッズの企画・開発などを行っており、今後、海外におけるエンターテインメント×グッズ領域に共同で進出検討ができたらと話しをしていたときにタイミングよくJXの話が舞い込んだのだ。Japan Expoの創立者兼最高経営責任者のトマ・シルデ氏と三井不動産は旧知の仲で、SAKE PARKなど日本酒をキュレーションする事業の関連として、JXに協賛することはもともと決まっていた。その関係性の中で、トマ氏からぜひブース出展もしないかという直接のオファーもあり、協賛でのPR効果をねらうだけでなく、直にみずから海外でのイベントブース出展を通じて欧州の需要について学ぶこともよいのではと、今回の出展にいたった。

三井不動産は近年では秋元康氏との男性アーティストプロデュース、27年春からはポケモン社とのイマーシブエンターテイメント事業を欧州で展開しようとしている。不動産会社でありながらこうしたIPやコンテンツに直接投資し、企画開発に関わる動きは24年秋以降に加速しており、田中氏もちょうど2025年4月に配属になったばかりという。

北米や欧州におけるIPグッズの需要が伸びているという背景から「アニメイトさんのように、弊社も海外におけるIPグッズ事業での進出機会を探りたい」という思いからPOC(Proof of Concept)で今回JXへの出展を決めたのはなんと2か月前の2026年5月。

三井不動産側はアニメイベントの出展経験者はいない。なおかつフランスでの出展、ということでこの短納期をなんとかしたのがパートナーであるCCCであった。出展交渉や場所どりなどは三井不動産側が主に担当し、逆に商品展開で足りない部分はTSUTAYAでさまざまなMDを展開しているCCC社が主に担当した。キャプションを用意したり、監修して販売できるようにライセンサーとの交渉も2か月に間に合わせたりと、自社ではできない部分も助けてもらい、まさに共創することでブース出展を実現することが出来た、と田中氏は言う。

以前マレーシアで三井不動産が運営するららぽーとブキッ・ビンタンシティセンター で日本IPフロアができて大活況を呈しているという取材を行った。まさにマレーシアは三井不動産にとっての一つの成功モデルになっており「場と機会を当社が提供することで、もともと人気があったIPに火をつけるということができる。あの“安田モデル"のようなことを、この欧州や北米地域でも展開したい」と田中氏はいう。実際にエンタメ領域のリテーラーや商業施設開拓などM&Aもふくめた積極的な展開を模索している、という。今回のJXはこれまでのアニメ・ゲーム・玩具のメーカーや現地ディストリビューターはもとより、不動産・商業施設・総合商社などのリテーラーサイドでも「日系IPを輝かせる場づくり」という形でGo globalの展開を模索する胎動を感じることができた。

 ▲左から三井不動産ベンチャー共創事業部の田中一弘氏と山下雄大氏、CCCのCMO植村智幸氏

  

■モンスト海外展開中のMIXI、任天堂の背中を追った初出展はひろゆき動画で万バズ

今回の日系企業のなかでひときわ目立っていたのはMIXI社である。なんと社長の木村弘毅氏自身がフランスに渡航し、近年ぐんぐん登録者を増やしている「MIXIのサブチャンネル」の動画撮影目的もあわせて会場を練り歩いていた。その後公開されているフランスでのひろゆき氏との会食・対談は「漫画版Netflixを作るべき」というひろゆき氏の漫画論の展開も話題になり、7.5万再生となっている。

木村社長、撮影チーム、広報部、渉外部、ゲーム・アニメなどの担当者も含めて、MIXI全体でJXには20名もの渡航者がおり、おそらく現地法人をもたない日本企業の展開としては最大規模の力の入れようだ。社長の木村氏自身がインタビュー対応を行い、本メディア以外も日本の地上波テレビなど4社のアポイントが入っているとのことだった。

  

コミュニケーションサービス会社MIXIとしては日本のトップゲームアプリ「モンスターストライク(モンスト)」で有名だが、今回は2026年4月からそのモンストをインドで展開しはじめた「STRIKE WORLD」のプロモーションが今回の主軸である。まだフランスではプレイできないが、今後の欧州展開も見据えてJapan Expoに出展、そのほかにも『リンカイ!』などのアニメ事業やすでにフランスでも数十万人単位のユーザーをもつ『家族アルバム みてね』などのライフスタイル事業も含めて16コマのブース展開を行った。

 

ゲーム産業スペースでも大きいMIXIブースだったが、隣り合わせるのはほぼスペース全体の半分は占めようかというほどの200コマちかい巨大な「任天堂」スペース。JXにおける最大スペースのとなりあわせでゲームユーザーが流れてくる先をねらった良いポジショニングだった。同社もフランス初出展ということでPARCO社同様にDNP社の仲介機能を使っての出展を行った。

リリース3か月が経過したインド市場との違いを訪ねると、「フランス人のゲームリテラシーの高さに驚いた」という感想だった。もともとわかりやすいUIのゲームアプリではあるが、パチンコのようにスリングショットを放つモンスト形式は海外では珍しく、放ったキャラクターをガードレールで囲い、より反射のギミックをわかりやすく、かなり初心者にあわせたローカライズまで行っている。同時にインド市場は携帯端末が低スペックであることもあって、ダウンロードだけで起動するまでいかないユーザーも多い。「アセットが重いとまずプレイされない」という課題を抱え、「最初、DLしてもゲームを立ち上げるのが1/3しかいない」という状況で、この数値はいま3か月かけて少しずつ改善している、という。

だがフランス人はチュートリアルなしにすぐにプレイにキャッチアップしており、スリングショットもやすやすとこなす。ゲームのリテラシーが高いうえに、子供っぽいキャラクターからややセクシャルに見えるキャラクターまで海外では嗜好が分かれる日本アートも好評。日本版モンストに近い状態でもすぐに展開できる市場という実感を覚えた、これならコンテンツとして尖った状態で勝負できる、という。「簡単にしないと!と、ただそればかり考えてきましたが、さすがはゲームに慣れた欧州市場。もっとユーザーを信じてやりこみ要素の強いゲームをもってきたほうが欧州向けにはいいのかもしれない」という木村氏のコメント。

またSTRIKE WORLDは『転生したらスライムだった件』『東京卍リベンジャーズ』などトップ人気のマンガ・アニメIPとのコラボをインドで行っている。フランス人のマンガ原作へのリスペクトの高さも実感するので、来年は原作者との対談コンテンツをもってきてもよいかも、国内では展開しているアイドルなどのコンサートをもってくることなども考えうる、と木村社長は答える。モンストは10年前に海外展開をしており、北米こそ撤退はしたものの台湾・香港・マカオなどは現在も運営を続けており黒字で続けられている。そうした台湾市場での成功例と同じものをフランス市場にも期待している、という。

 ▲STRIKE WORLDというインフラにのせて「コラボIP」として海外展開される数々。2026年は講談社IPの『シャングリラフロンティア』『転生したらスライムだった件』『東京リベンジャーズ』などが展開されている

  

■SBIグループ入りのTHE CORE社。JXで聞いたSBIエンタメ進出の本当の魅力

THE COREは音響製作のWHISTLER、ゲーム開発会社のAREA35、そして映像会社のSAFEHOUSEの3社からなる音響・アニメ・ゲームの会社で、海外拠点含めたグループ全体で社員100名規模のエンタメグループである。以前Netflixシリーズ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』で映像・アニメ会社としてのSAFEHOUSEに取材を行ったが、今回は2027年春に発売予定のターンベース戦略シミュレーションゲーム『TINY METAL 2』を開発するゲーム会社AREA35の代表取締役としての由良浩明氏に取材を行った。

同タイトルは豪州育ちのバイオリニストであった由良氏がBlizzardと長い仕事のなかで情熱をもって戦略シミュレーションのゲームをプロデュースしようと、2019年に発売され、16本に及ぶヒット作となった『タイニーメタル 虚構の帝国』の続編だ。約35人で開発している2は前作の20倍規模の開発費をかけている、という。

今回はアニメ化も実現しており、新作短編アニメーション映画『タイニーメタル:零戦線(TINY METAL: ZERO LINE)』をプレミアム上映、プロデューサーの由良氏とともに監督にはエヴァンゲリオンのCG監督、STAR WARS VISIONSの監督を歴任した小林浩康氏(スタジオカラー)や『ポケットモンスター』『ファイアーエムブレム』『NO MORE HEROES』などのキャラクターを手掛けてきたコザキユースケ氏、元バンダイナムコスタジオで「テイルズ」「アイドルマスター」「鉄拳」や「鬼滅の刃」まで多くのゲーム・アニメ作品作曲を作ってきた椎名豪氏が登壇した。ブースではコザキ氏のライブドローイングが列をなし、盛況を博していた。

これからの時代はゲーム一本だけでは難しい。ショート動画など様々な露出を試さないといけないので、ゲームもアニメも色々やらないといけない。こういったものをワンユニバースで作ろうと思ったら、いつのまにか音楽→映像→ゲーム会社とグループが増えていた、という。

なぜアメリカのAXではなく、フランスのJXで展開したのかと聞くと「本来は16万人いるTINY METALのユーザーのうち、6割を占めるアメリカに展開するほうが正しかったのかもしれません。しかし、AXは成功している大企業のマーチのようになっていて、なかなか中小企業からは目立ちにくくなっている。むしろJXのほうが作り手企業とユーザーの距離が近いのではないか、と思って出展しました」とのことだった。初めてのJXの感想は「総論としてはめちゃくちゃよかった。ただ逆にリーチがまだ広がってないということも痛感した」という。アニメは現在OTT会社と交渉もしており、来年にむけて加速していく構えである。

一方で、THE COREといえば、2025年9月にSBIネオメディアホールディングスにはじめてアニメ業界から参入した企業でもある。由良氏にそのグループ入りの理由を尋ねると、SBIグループ入りは「北尾さんが一番の理由です。まるで自分の祖父を思い出しました」と化学メーカーの財閥一家出身の由良氏ならではのコメントを残した。豪快かつ壮大なビジョンで金融業界からメディア・コンテンツ業界に参入しメディアとしてはライブドア、モイ(ツイキャス)、CoinPost、IP・エンタメではツインプラネット、カルチュア・エンタテイメントにツインエンジン、ゲーム・AIではThe COREやVTuberのBraveグループと20数社をグループ傘下に入れている。現在フジテレビとも接近しており、まるで「台風の目」のようだ。

最初の会食で濃密な話し合いがあり、北尾氏の貪欲な知識欲と教養の広さに舌を巻いた、という。自身がアーティストでもある由良氏としてもクリエイター・アーティストを尊重する北尾氏のスタンスに強く共感、北尾氏からも「由良さんは本物だ」と高い評価を得たことにより、2025年夏に初めてあったがトントン拍子に出資する話に発展した。由良氏自身も、ゲームや映像文脈でSBIネオメディアの新規案件へのアドバイスをするポジションでもある。大量の案件がネオメディアには持ち込まれており、貪欲に資本参画しているとみられがちだが、見送っている案件も多いという。

グループ入りして何が変わったか。財務的なバックアップも大きいが、SBIネオメディアのネットワーク力とマーケティングには強い期待がある、という。タレント・IPマーケティングで定評のある芸能事務所のツインプラネット社もグループ入りしており、プロモーションの仕方から経営アドバイスまで色々とサポートをしてもらっている、とのことだった。 

▲SBIネオメディアホールディングス記者会見、左奥に由良氏が並みいるグループ会社社長の1人として参列していた

 

   

■めくるめく「Japan」の祭典。そのバラエティのすそ野の豊かなこと。

もちろん“Japan" Expoというくらいなので、日本文化にまつわるすそ野が本当に幅広い。日本インバウンドに引き込むJNTOでは東北、鳥取などエリア・地方自治体ごとにブースが立ち並び、剣道・柔道・書道・なぎなたの演習場がある。果ては「綱引き」や「玉入れ」など日本の運動会をもしたイベントを開催しているスペースもあり、聞いてみると「日本にある“運動会"というのは、いかに協調性をもって人々を鍛え上げるかに特化した素晴らしい仕組みだ。我々は“運動会"のすばらしさを布教するために、毎年こうしてブースを開いている」という運動会普及連盟という謎な組織もフランスに発足していた。

こうした「遊び」の余地が大きいのは、スペースが限られたAXにはないJXなりの魅力だろう。「体験型」への嗜好の強さもうかがえた。なぎなた教室はつねに人だかりができて、別に有名なアーティストの歌唱や声優の登壇がなくても一定のフランスの日本ファンはあつめられるのだ。AXの数倍はある広いスペースだからこそ、これだけの余裕のある展示スペースの拡張が可能なのだ。

4日間まわってもまだまだ「発見」の多かったJapan Expoの(一部)写真をこちらに掲載していく。後編については各Artistたちのインタビューやパリの市街における日本エンタメについて取材を深めていく。 

▲イカゲームは「体験化」という

 

▲Anime ExpoでもJapan Expoでもリリース1周年の欧米地域では『ウマ娘』ブースが大熱狂

 

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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