【連載】ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- 第三十七回「どんな経験が?」


 
株式会社ファリアー 代表取締役 社長の馬場保仁氏が、ゲーム業界の人材・採用に関して語っていく連載記事「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-」。同氏は、セガで家庭用ゲームの開発を、DeNAではスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任していた。ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に注力していく。開発現場・採用担当、双方の視点からゲーム業界における“人”に対してスポットをあてた連載記事。 
 
 

■第三十七回「どんな経験が?」




 
前回は、あらためて、学生さんたちに
 
「外にでよう!」
→身の回りだけでなく、業界、全国における自分の位置を確認
「客観的評価を受けよう!」
→自分だけの面白いではなく、他者からみても面白いものに
「コンテストにエントリーしよう!」
→締め切り、目標もって取り組もう!
 
と、いうことを発信しました。
それは、「なんとなく、ものをつくる」ことを避けていただきたかったのと、やる以上は、「目標をもち、それに向かって努力」してほしいからです。そして、自分でひねり出して、それを他者評価を受けることで「振り返り」の習慣をつけてほしい、という想いから書き記させていただきました。
 
成長するためには、
 
考える→実行する→振り返る→NEXT ACTIONをおこす(ただし、締め切り設けて)
 
を繰り返さないといけないです。単純に、PDCAまわす、ということではありません。制作も、研究も一番最初の「考える」=「仮説設定」「コンセプト設定」がろくになされていないことが多いです。これがないまま、必死に実行だけしても、必死にがんばったという事実しか残りません。振り返るためには、実行前の、仮説、コンセプト設定が必要なのです(それに照らしあわせて反省するので)。

また、振り返りも、感情的な振り返り、つまりは「いやー、だめだった」とかでは、何も残りません。と同時に、実行したことでおこった事象をまとめるだけでも何も残りません。(振り返りというと、アンケート結果や、定性的な、なんとなくの報告を見かけることが多いからです。これは、プロアマ問わず、見受けられます(苦笑))つまり、振り返りというのは、ちゃんと分析をしないといけないのです。
 
と、このままでは、前回の繰り返しになってしまいますね(笑)。
さて、今回ですが、最近よく受ける質問に答える形で書いていこうと思います。
 
今年も就職活動が始まりました。
もちろん、通年採用である会社さんも増えてきているので、あくまでもはじまったのは、一括採用が開始されたということですね。
 
ただ、この「通年採用」という言葉自体を学生さんは理解できてないことも多いです。
なので、いろんなところで、軽めのコンサルティングとして、
 
採用ページに、「通年採用」という言葉を使うのはやめましょう!
 
「いつでも採用受け付けてます!」とか「採用エントリーは、こちら!」とか、まさに「いま」やっていることを明確に伝えていくことが大切だということですね。そんなことくらい、就活の時なんだから学生が自分で勉強すべきだという意見を聞くこともあります。間違っているとは言いませんが、それで、学生をとり逃すリスクがあるならば、なにが、本来論かは、考えるまでもないと思います。
大切なのは、
 
企業は、優良な学生を確保したい
学生は、自分が成長できる企業に入社したい

 
ということだけです。この両者のシンプルな思いを如何に実現させるか?が大事なことかと思います。
 
さて、話少し変わりまして、エントリーシートの作成の段階で、
 
・趣味
・アルバイト
・サークル活動
など
 
について、書くことを求められることが多いと思います。
実際に、わたしにも相談として「バイトってやってたほうが有利なんですか?」という質問をされることもあります。有利か、不利かでいったら、解はそこにありません(笑)。

そもそも、大前提として、勉学を第一優先としてはげんでいただきたいです。でも、俗にいう「社会勉強の一環」として、アルバイトをすることは、良いことだと思います。

ただ、企業の方々がなぜ、アルバイト経験を聞きたいのでしょう?
1つには、
 
「プロとしてお金をもらって仕事をするという意識と体験」
 
を重視しているからだと思います。やはり、アルバイトといえどもプロ。お金をいただく以上は責任もってやり抜かねばなりません。ですが、週に3日くらい、学校の放課後疲れ切ってバイトにいくのは決して楽なことではないです。裏を返せば、
 
「長期間、アルバイトを継続できているか?」
 
も見ておきたい項目でもあります。何事も、飽きっぽいのではないか? 一定期間以上やってないのはなぜなのか?責任感が希薄なのか?なども見られる可能性があるでしょう。
あとは、やはり、その人ならではのオリジナルのエピソードがないか?をきいて、そこからさらに掘って、
 
「いざ、というときにこの人はどう考え、どう行動するのか?」
 
を知りたいからです。ですので、単なるアルバイトをしていた事実が大事なのではなく、そこでどう考えハプニングなどをどう乗り切ってきたのか?を知りたいのです。
そういう意味では、接客業のアルバイトは非常にいいと思います。なぜなら、
 
・お金を稼ぐ(これは、ほかのバイトも同じ)
・お金を払ってくださるお客さんの顔が見える
・人対人なので、面接などにむけても緊張が減るようになる
→毎回、基本、はじめての顔合わせであることが接客業は多そうだから
・そして、トラブルも多く発生しそうだから
・チームでやることになるから
 
などなど・・・大変ではあるものの、つめる経験は非常に大きなものがあります。
そして、これだけの組み合わせがあれば、どんなエピソードも、「当事者」だけのものであることが多く面接にむけて、準備もしてこられなければ、その場で考えて行動してきているでしょうから。
 
アドリブ力のみを至上とするわけではありませんが、アドリブで物事をこなせる人は、どこか自分の軸を持っていることが多いからです。もちろん、「のり」だけで解決していくアドリブは感心しません。
その場をしのぐことが目的ではないからです。何が起きても、冷静に、かつ、自身の考えを述べることができるアドリブを求めているということですね。世の中、ゲームの開発でなくても、不測の事態はたくさんおきるものです。ましてや、
 
・架空のものをつくっている
・チームでものをつくっている
 
ゲーム開発というものは、この不測の事態が起きやすく、かつ、解決しない限りは前に進めないものです。就職活動の面接も同じことです。
 
業界の志望動機
その会社の志望動機
趣味
など
 
も、結局は、受験サイドが、事前に「こんなこときかれるんじゃないか?」と想定してっているもの以外を聞き出したいわけです。なので、面接では、企業側の出す質問の数は実は少なく、受験者側が回答したものから、更にほられて質問されることが多いと思うのです。

それは、その場で考えないと答えられませんし、それ以前に、わたしも経験から思いますが、意地悪でもなんでもなく、ただただ、その人の説明がわかりづらかった時に質問をしています。それはどういう意味か?もう少し具体的なことが聞きたい!いろんなケースがありますが、基本は、
 
よりその人を知りたい!
 
の一点に尽きると思いますけどね。
つまり、アルバイトすること自体が目的ではなく、お金を稼ぐこと以外にも得られる経験が非常に多く、且つそれを実行しておくことで、語れるエピソードが増えるだけでなく、プロとしての責任感がうまれるとか、大人と混じることで、良き影響を与えてくれる人との出会いもあるかもしれません。
 
サークル活動も同様です。専門学校の場合は、制作活動でもいいです。つまりは、学生時代に一番力を注いでいたことはなんなのか?ということですね。単に、楽しかったから、でなく、「相手がなんでそんな質問するのかな?」を創造力をはたらかせましょう。
 
創造力は、想像力を働かせないとうまれません。
また、考えるだけでなく、体験することで、新たな発想の翼は広がります。
そういう意味でも、刺激の多いアルバイトをすることは自身の経験をより深めることになるでしょうし、サークル活動など、大勢の人間が介在するところに参画することは、学びも多いでしょうし、体験できることが多く、且つ、役職などもあるでしょうから、マネジメントや会計などの経験をすることも可能かもしれません。

何事も、未来に向けて活動しよう!とまではいいませんが、1つのことを意識して、行動するだけでも、大きな成長をすることができるでしょうし、就職活動を乗り切るための「行動力」を養うことができるでしょう!
 
今回は、以上です。
 
 
 
 


■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
 



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第三十三回「小さな成功、大きな成功」

「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)

「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)

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第三回「若手のチャンスとキャリアパス」

第二回「企業×学校×学生」

第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」