【インタビュー】世界観再現やモデル、カットシーン制作…Aiming「Team CARAVAN」アート部が語る『ダンクロ』制作の特徴やこだわり

スマートフォンで本格的なRPGが楽しめる『CARAVAN STORIES』や『剣と魔法のログレス いにしえの女神』等のタイトルを開発・運営する、Aiming<3911>の第二事業部。

通称「Team CARAVAN(チーム・キャラバン)」と呼ばれる同スタジオは2021年より事業部制を導入して以降、その組織の規模は拡大。熊本県熊本市にTeamCARAVAN熊本ベースを新設(関連記事)することを明らかにしたほか、先日、グッドスマイルカンパニーの石原章弘氏とのタッグで贈る完全オリジナル新作『ストリームヒーロー!』を発表(関連記事)するなど、常に話題を提供し続けている。

今回は、『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』(カゲマス)の運営チーム(関連記事)、ゲームの仕上げを行うゲーム評価改善課(関連記事)に続き、TeamCARAVANのアート部へのインタビューを実施。

アート部とはどのようなチームなのか、そして本日(8月24日)リリースの『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル』(ダンクロ)の制作におけるアートに対するこだわりについて伺った。

ゲーム開発に関わるグラフィック関連全般を担うアートのプロフェッショナル集団

TeamCARAVANアート部メンバー

Aiming 第二事業部/アート七課/セクションチーフ/デザイナー 藤井 拓也氏(写真右)
アニメーターを経てゲーム業界へ。TeamCARAVANではアート七課(2Dチーム)のセクションチーフを務める。

Aiming 第二事業部/アート六課/セクションチーフ/デザイナー 松田 哲郎氏(写真中央)
 『ダンクロ』プロジェクトではカットシーン周りを担当する。

Aiming 第二事業部/アート二課/デザイナー 管 信潤氏(写真左)
『ダンクロ』プロジェクトでキャラクターモデラーを担当。

――:『ダンクロ』の制作全般において、アート部がこだわっているポイントを教えてください。

藤井:『ダンクロ』は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(ダンまち)という原作を題材にした3DアクションRPGとなっており、簡単操作でPvEやPvP等がプレイできます。アートチームとして、モデルやモーション、カットシーンも含めて原作にどれだけ近づけられるかを常に考え、制作を進めています。

:キャラクターモデル担当としては、プレイヤーに違和感なく伝わるかどうかを常に意識して制作しています。通常はキャラのモデルは正面や斜めから見ることが多いですがカットシーン等派手なカメラ演出時に色々な角度から見られるので、どの角度から見てもかっこよくなるようにこだわっています。

松田:カットシーンでもキャラクターモデルと同様に、360度どのアングルからでも破綻なく見えるようにしたものを作ります。ただ、どうしてもアングルによっては見え方に違和感があるという事も起きるので、対策として変形するターゲットをモデルに仕込むなど工夫しています。その手法を使う事でアングルに合わせてパーツを変形させ、出来るだけ原作のキャラらしく見えるように細かく調整しています。

――:『ダンクロ』を遊ぶプレイヤーにアート部として注目してほしいところはありますか?

藤井:3月に実施したCBTではバトルのカメラがクォータービューで基本的に動かせない仕様だったんですが、カメラを動かしたいという意見が多く寄せられました。簡単に対応できる内容ではなかったのですが、カメラ仕様の変更や全方向見渡せるMAP等、是非注目していただきたいです。CBTでのユーザーから頂いたご意見を参考に、様々な改善を行うことができました。リリース後も、より良いゲームを目指していきたいので、是非プレイして頂き、ご意見ご要望を聞かせて頂きたいです。


▲バトルカメラ(旧)


:やはりキャラクターたちに注目してほしいですね。キャラのモデルが3Dなのでパーツを動かして表情を作っているんですが、アニメにしかないデフォルメ表現などもきちんと表現しています。例えば口が三角形になったりとか、そういったアニメで使われている特徴的な表情は出来る限り独自に仕込んでいます。アニメの表情をちゃんと踏襲できるように、ADVのフェイシャルの部分でかなりこだわっている部分なので注目してください。

松田:アートとして見てほしいなと思うのはホーム画面です。これはCBTで結構人気があった要素かな思うんですが、ヘスティアがホーム画面内で寝っ転がってくつろいでいるシーンなどもあり、ユーザーはそれをカメラを動かして眺めることができるんです。その機能がかなり好評なので色々なキャラクターをゲットして、様々なキャラの日常の姿を覗いていただきたいなと思っています。

藤井:ホーム画面の寝ているヘスティアのカットは元々開発初期にはなくて制作の中で偶然作られました。「寝ているところから起き上がる」というカメラワークが元々あったんですが、横になって寝っ転がっているだけのカメラワークというのは仕様段階では存在していなくて。ただカメラワークを検証している中で「寝ているヘスティア」が非常に可愛く表現できていて、これは寝ている時と起き上がっている時のヘスティアは別々でちゃんと実装したいよねという意見がチーム内で挙がり、実現したのが今のホーム画面になっています。

――:原作を題材としたゲームを制作する上で、意識する事や大切にしている事は何ですか?

藤井:まずは原作が持つ世界観やルールを把握する事です。例えば『ダンまち』では、ダンジョン内で特定の階層にしか出現しないモンスターがいるので『ダンクロ』でもその階層以外で出てこないように注意する必要がありますし、マップを作る上でも特徴的な階層が原作とゲームで極力ブレがないようにかなり気をつけています。

ダンジョンに基本入ってはいけないキャラがいたり、モンスターが倒された時にドロップするものは魔石だったりと『ダンまち』の厳密なルールがあるんです。モンスターが魔石を落とす演出を派手に見せるためのエフェクトを作りつつ、ゲーム的な要求として魔石以外のアイテムもドロップさせたいので人型は布袋で何か包まれたものをドロップさせる。そうやってルールに則って原作にない要素はできるだけ削除しつつ、原作ファンが違和感を覚えないように『ダンクロ』らしさも表現する作り方を心がけています。

これは原作をしっかりと理解していないと出来ないので、監修の際に学ばせていただいたり原作をきちんと読み解いて理解するという事をチーム全体で共有しながら進めています。世界観を作る上ではとても大事なポイントだと思っています。

:キャラクターモデル制作ではキャラの顔の表現を意識しています。『ダンまち』のキャラの顔は独特で、正面からは普通に見えても横から見ると出っ張っている部分があったするので、 3Dにするときにその特徴をどうやって再現するか工夫して、髪や目、口などの各パーツのパターンを複数作ったりします。


▲キャラクターモデル(ベル)


▲キャラクターモデル(ヘスティア)

松田:カットシーンについては、基本的に原作の演出がすごくよく出来ているのでそこは変に壊したくないと思っています。アレンジは抑えつつ、どこで原作とゲームの違いを出そうかを考えています。アニメは一連の映像で組み立てられているんですけど、ゲームではADVや戦闘の間にカットシーンが入るため、アニメのままだと流れがぶつ切りになってしまうんです。そうするとどうしてもカットシーンが終わってADVに切り替わる時などに気持ちよくない演出になってしまったり、説明不足になってしまう。そういう部分はアレンジして、切り替わりのシーンでプレイヤーがスムーズにプレイできるように意識して作っています。


▲必殺技カット(ベル)


▲必殺技カット(ヘスティア)

藤井:原作をリスペクトしつつ、ゲーム的には「こっちの表現がいい」「ここはもっと派手に見せたい」という要望や考えを全員で擦り合わせしていく。更に良くするためにアレンジできる部分は提案していく。その形が原作をゲーム化する時に大切にしている所です。

――:Team CARAVANのアート部のメンバーとして、制作で大切にしている事やポリシーがあればお聞かせください。

藤井:私は今回アートディレクターとしてプロジェクトに参加して、色々な人と情報をすり合わせてもの作っていただいたり、相談して方針を決める立場的にはあるんですけど、作り手としてもアートディレクターとしても、基本的に志はあまり変わっていないです。まず形にできるものは簡単に形にしていく。

例えば簡単なラフでも形にすればそれが方針になるので、出来る限り見える化して、すり合わせをする事が大切だと思っています。どういったものが欲しいのか、作りたいのか、みんなの頭の中にしかないものをきちんと吸い出して、こういう方針だよね。という「形」をまず作るというのは、作り手だった時もアートディレクターという立場になっても、基本的に変わらない部分ですね。

:誰が見てもそのキャラだとみんながわかるような「シルエット」を作る事を心掛けています。あと現実世界に存在しないものを形にする時は、実際にあるものならどういう風に動くのかという事を考えながら作ることも重要だと思います。その際に合理性だけを考えて作るとつまらなくなるので、そこにゲームとしての面白さも加えるように意識しています。合理性とゲーム性の両方のバランスをとることで、いいモデルだったり面白いものが生み出せると思います。

松田:カットシーンを演出する際、独りよがりにならないようにしようと心がけています。いいアイデアが思いついても、そもそもこのカットシーンが伝えたいことと合致するかを検討したり、一旦時間を置いてからそのアイデアと向き合って、その上で自分の作りたいものとのバランスをとりながら考えて出力していくというところを意識しています。

――:Team CARAVANのアート部とはどのような業務を行うチームなのでしょうか?

藤井:3D背景やキャラモデル、モーション、エフェクト、UI、2D、カットシーンといったゲーム開発に関わるグラフィック関連全般を制作できる体制をとっているチームです。『ダンクロ』や『カゲマス』など各プロジェクトを横断してデザイン業務を担っています。東京のオフィス以外にも台湾に同じ構成のアートチームがありまして、連携を取りながら開発をしています。

――:Team CARAVANのアート部の特徴を教えてください。

藤井:各デザイナーがアートリソースを作るだけではなく、ゲームを作る立場として面白さに対しての意見を言い合えたり、企画会議で活発に意見交換できます。情報が開かれている環境がアート部の特徴の1つかなと思っています。

それから、短い期間でクオリティを下げずにものを作れるというのが特徴として挙げられます。なぜこれができるかというと、情報が開かれているからこそ、プロジェクトごとで培ったノウハウを他プロジェクトと共有することができるんです。

私と松田はセクションチーフも兼任しているので自分たちのプロジェクト以外だったり、メンバーが携わっているプロジェクトが今どういう状況なのかは現場を見たり話を聞いたりしてきちんと把握はしていますし、全体としてそういう環境が整っていると思います。

:ものを作る際に表現的な問題があったり何か困ったことがあった時も、アート部はまとまっているのでみんなで話し合ったり相談できる事が特徴だと思いますし、すごくリラックスして働ける場所だと感じています。

松田:メンバー同士、プロジェクト間で情報を共有したり助け合えるという繋がりが特徴ですね。カットシーンの場合、基本的に一つのプロジェクトにかかりきりという事があまりありません。ある程度アセットが揃ってこないと着手できないので、プロジェクト立ち上げ時点ではやれる事もそこまでなかったりします。その時に他のプロジェクトと兼任したり、途中から参加するケースが多いので、必然的に色々なプロジェクトに関わるスタッフが増えるんです。

そういう中で、各プロジェクトでやっていることや問題点を把握して、次のプロジェクトで活かすという事がすごく柔軟にできるので仕事をする上でやりやすい環境ですし、情報はかなり透明化されていると思います。

――:Team CARAVANのアート部としてどのような人材を求めていますか?

藤井:今活躍しているメンバーの特徴としては、プロジェクトに対して積極的に発言、提案をしてくれている方が活躍している印象を受けます。Team CARAVANの開発は企画、アート問わず、ゲームを良くするための発言、提案が活発に行われる空気感があります。その中で一緒にプロジェクトを良くしていこうという意志を持った人はリーダー的な立場で活躍しているかなと思うので、そういう方と働きたいですね。

:Team CARAVANは外国籍のメンバーも多く、実力があれば国籍も問わない環境です。台湾のスタジオもあって、海外とのコミュニケーションも日常的に交わされているので、外国籍のスタッフも馴染みやすいと思います。

松田:やる気と実力があれば、柔軟にリーダーポジションへの登用を行っています。私自身、以前はパチンコの映像会社というゲームとは違う業界で働いていましたが、今はセクションチーフを任されています。また、今はプロジェクトが増えてきて、人も増えている状況なんですが、その中で新しい人であっても重要なポジションに就く事もあるので、そういう意味でもフットワークの軽いチームだなという風に感じています。どんどん上に上がれるような土台があるので、熱量のある方をお待ちしております。

――:アート部として今後チャレンジしてみたいことは?

藤井:私は今は『ダンクロ』メインで色々と考えています。『ダンまち』の世界をさらに深掘りしたり、拡張していきたいです。メインシナリオを追いつつ、イベント等で『ダンクロ』でしか味わえない『ダンまち』の世界を表現できるようチャレンジしたいと思っています。あとは『ダンまち』を知っているユーザーも知らないユーザーも、双方が楽しめるようなゲームを作っていきたいですね。

:『ダンまち』に登場するたくさんのキャラをどんどん作っていって、キャラごとの特徴的なところを上手く表現してユーザーに魅力を広めていきたいと思います。

キャラのモデルチームは『カゲマス』と『ダンクロ』とほぼ同時期にモデルを作ったので、比較的古い技術なんですが、今は次の新しいプロジェクトで色々なチャレンジをしています。例えばスマホもどんどんスペックが上がってきて、ダイナミクスだったりポリゴンの割り、モデルの間接表現みたいな所を更に改善して次のプロジェクトでは進めているので、そのフィードバックを『ダンクロ』にも持ち込んでいきたいと思っていますし、新旧織り交ぜて色々なプロジェクトの新しい技術を取り入れて、どんどん『ダンクロ』を運営していく中でも画質やキャラクターモデルのクオリティを上げていくということが必要になってくるので、そういう面でのチャレンジもしていきたいです。

松田:カットシーンに関しては、ローンチに向けてはアニメの再現的なものが多かったのですが、今後はイベントシナリオのカットシーンをどんどん作っていきます。アニメを再現するのと違い、より自分で演出を考えなければいけない事が増えていくのでそこは大きな挑戦です。『ダンまち』らしさはありつつも、アニメでは見たことのないものを『ダンクロ』で表現してユーザーに満足していただけるようなものを作っていきます。そのためにも、キャラクターへの理解を更に掘り下げていかなければと思っています。

――:最後にメッセージをお願いします。

藤井:Team CARAVANではたくさんのプロジェクトが立ち上がっています。その中で色々な事にチャレンジしてみたいと思っている方は、ぜひ入っていただきたいなと思っています。経験者、未経験者を問わず、新しいタイトルに積極的に挑戦したい方、リーダーシップをとってプロジェクトを進めたい方にとって、そういった機会には恵まれてる事業部だと思っているので、熱量を持って一緒に仕事をしましょう。それから本日リリースされた『ダンクロ』もぜひ遊んでみてください。

次回予告

次回は、TeamCARAVANのエンジニアの特徴と10月から二期放送が始まる『カゲマス』でどのような取り組みが用意されているのかをお届けする予定なので、お楽しみに!