家庭用ゲーム大手6社中5社が営業増益 コーエーテクモとカプコン、スクエニ最高益 新型コロナでビジネス様変わり 家庭用からスマホへ多層的な展開

家庭用ゲームソフト大手6社の2021年3月期の決算がついに出揃った。本業の儲けを示す営業利益が前の期に比べてプラスとなったのは、対象となった全6社5社だった。そのうち、コーエーテクモHD<3635>やスクエニHD<9684>、カプコン<9697>が過去最高益を達成するなど、非常に好調な内容だった。コナミHD<9766>や、バンナムHD<7832>についても、イベントやアミューズメント、スポーツクラブなどの事業が新型コロナの影響を大きく受けたものの、増益を確保することに成功した。

大手ゲーム各社が好調な中、セガサミーHD<6460>が唯一減益となった。これは主にパチンコ・パチスロを展開するサミーの不振が響いた。新型コロナの影響でパチンコ・パチスロホールが影響を受けたことによる。ただ、セガの展開するゲーム事業に限定すれば、大幅な増益を達成した。その意味で、新型コロナの感染拡大による"巣ごもり需要"を追い風に、大手ゲーム会社の業績は総じて良好だったといえよう。

 


2020年のゲーム市場で特に目立ったのは、家庭用ゲームの活況だ。特に任天堂<7974>の好決算にみられるように、Nintendo Switchの記録なヒットを記録した。そして、昨年発売された新型ハード「プレイステーション5」も品薄が続いている。ユーザーは、自宅にこもってゲームをするのであれば、グラフィックが高精細で、遊びごたえのある、より本格的でゲーム性の高い遊びを求めた。

需要側の変化に加えて、店舗に出かけることなく、自宅で手軽にゲームソフトが購入できるダウンロード販売の普及も追い風となった。追加コンテンツの配信やセールを効果的に活用することで、開発費をすでに計上した「過年度発売タイトル」を長期間にわたって売ることが可能になった。かつての発売時が最大の勝負だった時代とは全く違っている。

さらに家庭用ゲームで培ったブランドやシリーズ作品を「IP」として、スマホやPCのオンラインゲームとして展開するほか、中国を中心に海外の大手ゲーム会社にライセンス供与することで大きな収益獲得が可能になった。一部大手ゲーム会社は、自社の持つ資産をオンラインゲームとしてうまく活用できない時期もあったが、家庭用ゲームソフトを出発点として多層的に収益を生み出すサイクルを作り出した。ゲームソフトのビジネスが大きく変わったのだ。

世界を混乱に陥れた新型コロナウイルスは、ワクチン接種が始まり、これから徐々に収束に近づいていくとみられている。大手ゲーム会社の2022年3月期の業績見通しを見ると、多かれ少なかれ2020年の反動減を想定しているようだ。反動減は免れ得ないかもしれないが、ゲームの消費やビジネスのあり方が大きく変わった。新型コロナ収束後であっても不可逆な部分もある。これからのゲームビジネスがどう変わるか、注目される。

各社の状況を見ていこう。ゲーム事業のみを取り上げている。各社の状況は、個別記事を確認してほしい。


 
■コーエーテクモホールディングス<3632>

売上高、営業利益、経常利益、最終利益のすべての項目で過去最高の業績となり、11期連続での増益を達成した。

・売上高603億7000万円(前の期比41.6%増)
・営業利益243億9700万円(同73.0%増)
・経常利益392億9900万円(同108.3%増)
・最終利益295億5000万円(同93.1%増)

パッケージゲームでは、任天堂<7974>の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の世界観を継承した『ゼルダ無双 厄災の黙示録』が累計出荷本数370万本を超えるヒットとなった。

スマホゲームでは、『三國志 覇道』が中期経営計画で重点目標として掲げていた月商10億円を達成した。同社がIPを許諾し中国で配信中の『三国志・戦略版』は、App Store月間セールスランキングで18ヶ月連続で上位5位以内にランクインした。

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■セガサミーホールディングス<6460>

セガを中心とするゲーム事業が好調だったものの、もう一つの柱であるサミーの遊技機事業が113億円の経常損失を計上するなど苦戦し、大幅場な減益を余儀なくされた。

・売上高:2777億4800万円(前の期比24.2%減)
・営業利益:65億5300万円(同76.3%減)
・経常利益:17億1500万円(同93.2%減)
・最終利益:12億7400万円(同90.7%減)

『ペルソナ5スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(欧米版)』、『龍が如く7光と闇の行方(欧米版)』、『Football Manager2021』などの新作タイトルを発売したほか、リピート販売が好調に推移し、販売本数は4177万本(前期は2857万本の販売)となった。

また、F2Pについては、『Re:ゼロから始める異世界生活 Lost in Memories(リゼロス)』や『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(プロセカ)』などの新作タイトルに加え、既存タイトルも好調に推移した。

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■バンダイナムコホールディングス<7832>

増収増益だった。大人層に向けた玩具商品や新規IPを活用した商品等が人気となったほか、、ネットワークコンテンツの主力タイトルや家庭用ゲームのリピート販売が好調に推移した。音楽やアミューズメント施設のッ苦戦をカバーした。最終利益が減ったのは、AM施設の店舗臨時休業や減損損失を計上したため。

・売上高:7409億0300万円(前の期比2.3%増)
・営業利益:846億5400万円(同7.5%増)
・経常利益:876億1200万円(同9.8%増)
・最終利益:488億9400万円(同15.2%減)

ワールドワイド展開している「DRAGON BALL」シリーズや「ワンピース」、国内の「アイドルマスター」シリーズ等の主力タイトルがユーザーに向けた継続的な施策により好調に推移した。

家庭用ゲームにおいては、「リトルナイトメア2」等の新作タイトルに加え、「DRAGON BALL」シリーズ、「TEKKEN(鉄拳)7」、「DARK SOULS(ダークソウル)」シリーズ等の既存タイトルのリピート販売が海外を中心に好調だった。

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■スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>

主力のゲーム事業が好調に推移したことに加えて、出版事業、ライツ事業が成長し業績を押し上げた。売上、利益ともに最高となった。

・売上高:3325億3200万円(前の期比27.6%増)
・営業利益:472億2600万円(同44.2%増)
・経常利益:499億8300万円(同55.7%増)
・最終利益:269億4200万円(同26.2%増)

HD(ハイディフィニション)ゲームにおいては、「FINAL FANTASY VII REMAKE」「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」等の大型タイトルの発売があったことに加え、カタログタイトルの販売が好調に推移したこと、ライセンス収入等により、前期比で増収となった。

MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)においては、前期に「ファイナルファンタジーXIV」と「ドラゴンクエストX」の拡張パッケージの発売があったため減収となったものの、同タイトルの継続課金収入等は好調に推移した。

スマホゲームは「ドラゴンクエストウォーク」や「FFBE幻影戦争」等の既存タイトルが堅調であったことに加え、「ドラゴンクエストタクト」「オクトパストラベラー大陸の覇者」及び「NieR Re[in]carnation」が収益貢献した。

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■カプコン<9697>

デジタル販売を主軸とした事業戦略のもと、販売地域の拡大と長期販売の実現に伴い海外収益が伸長したことにより、8期連続営業増益を達成した。

・売上高953億800万円(前々期比16.8%増)
・営業利益345億9600万円(同51.6%増)
・経常利益348億4500万円(同51.8%増)
・最終利益249億2300万円(同56.3%増)

『モンスターハンターライズ』が3月の発売から早々に全世界で出荷本数400万本を突破するなど好調に推移したほか、『バイオハザード RE:3』(PS4、Xbox One、PC用)も390万本と順調に販売本数を伸ばした。

『モンスターハンターワールド:アイスボーン』や『バイオハザード RE:2』など採算性の高いリピートタイトルも根強い人気により利益を押し上げた。

モバイルコンテンツは、日本国内で『ロックマンX DiVE』のサービスを開始したほか、協業タイトル『街霸:対決(ストリートファイター:デュエル)』の中国でのサービス開始に伴うライセンス収益が利益に貢献した。

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■コナミホールディングス<9766>

新型コロナウイルス感染拡大による休業措置や国内外の経済活動の停滞などによる影響を受けた事業があったものの、モバイルゲーム、家庭用ゲーム、カードゲームそれぞれの分野において製品・サービスが堅調に推移し全体としては増収増益となった。

・売上高2726億円(前の期比3.7%増)
・営業利益365億円(同18.0%増)
・税引前利益355億円(同17.1%増)
・最終利益322億円(同62.2%増)

『eFootball ウイニングイレブン2021』(海外名『eFootball PES 2021』)と、『遊戯王 デュエルリンクス』が牽引した。また、Apple Arcadeにて配信中の『Frogger in Toy Town』(フロッガー イン トイタウン)で大型アップデートを実施した。

国内では、『プロ野球スピリッツA』が好調に推移したほか、『実況パワフルプロ野球』などのタイトルも引き続き好調だった。中でも、『実況パワフルプロ野球』は、「サクセス」モードのストーリーのWEBアニメとして配信を開始した。

カードゲームでは、「遊戯王トレーディングカードゲーム」のグローバル展開を継続して進め、コロナ禍でも国内外で厚い支持を得た。また、「遊戯王ラッシュデュエル」では、最新テレビCMの放映に合わせて各種キャンペーンを実施した。

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(編集部 木村英彦)
株式会社カプコン
http://www.capcom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社カプコン
設立
1983年6月
代表者
代表取締役社長 最高執行責任者 (COO) 辻本 春弘
決算期
3月
直近業績
売上高1259億3000万円、営業利益508億1200万円、経常利益513億6900万円、最終利益367億3700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9697
企業データを見る
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
https://www.hd.square-enix.com/jpn/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
設立
1975年9月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高3432億6700万円、営業利益443億3100万円、経常利益547億0900万円、最終利益492億6400万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9684
企業データを見る
コナミグループ株式会社
http://www.konami.com/

会社情報

会社名
コナミグループ株式会社
設立
1973年3月
代表者
代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
決算期
3月
直近業績
売上高3143億2100万円、営業利益461億8500万円、最終利益348億9500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
証券コード
9766
企業データを見る
コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高784億1700万円、・営業利益391億3300万円、経常利益398億9900万円、最終利益309億3500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 川口 勝
決算期
3月
直近業績
売上高9900億8900万円、営業利益1164億7200万円、経常利益1280億0600万円、最終利益903億4500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
企業データを見る
セガサミーホールディングス株式会社
http://www.segasammy.co.jp

会社情報

会社名
セガサミーホールディングス株式会社
設立
2004年10月
代表者
代表取締役会長 里見 治/代表取締役社長 グループCEO 里見 治紀
決算期
3月
直近業績
売上高3896億3500万円、営業利益467億8900万円、経常利益494億7300万円、最終利益459億3800万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
6460
企業データを見る