
【連載】ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- 第六十五回「”スタイルな”●●(後編)」

株式会社ファリアー 代表取締役 社長の馬場保仁氏が、ゲーム業界の人材・採用に関して語っていく連載記事「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-」。同氏は、セガで家庭用ゲームの開発を、DeNAではスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任していた。ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に注力していく。開発現場・採用担当、双方の視点からゲーム業界における“人”に対してスポットをあてた連載記事。
■第六十五回「”スタイルな”●●(後編)」

前者は、「転職する本人」に対して警鐘を鳴らしたかったのと、「転職をうけいれる企業」さんにおいても、採用の面接時から、「Join初日から、活躍を期待している」ことを明確に伝えた方がいいことをお話ししました。
かくいうわたし自身も1度転職を経験しておりますし、中途採用の面接官や採用方針を決める仕事をしていたことがあります。今と違い、まだ働き方改革の波も来てなかったので(苦笑)
ちなみに、わたしは長時間労働は嫌いですし、徹夜とか会社に泊まるとかは、パフォーマンスを落とすだけで若いころからよくないと思っていました。せざるをえないときはありましたけどねww)定時をすぎても初日から、アサイン先のプロジェクトの現状の仕様や工程を確認しておりました。
たまたま当時のわたしは、自分で、「これをやることが今は最善」と考えたので実行したまで、です。違う経験のバックボーンを持った方の転職であれば、また違ったことをされていたかもしれません。
ですので、転職者は、「受け入れてくれた企業、チーム」が何を自分に求めているのか?を入社前にできれば察知して、それに向けた準備と勉強をしておくことと、入社後は、初日からそれを全力でリサーチして、その期待の101%以上のものを、姿勢を初日から出していけばいいだけのことです。
でも、これは、もう「言った言わない」の世界の話でいずれにしても美しい話ではありません。ですので、こういった話がでないように、採用時に、
さて、今回は、後編として「スタイルな」上司やマネジャーのことをお話ししたいと思います。
昨今、駿馬などを介して、ゲーム企業さんに多くの学生さんや、中途転職の方をご紹介させていただいております。もちろん、ゲーム以外はわたしは得意ではありませんし、また、休職者自身が長い目でみたら幸せにつながらないと思われる給与が著しくあがる(が、責任も重くなるもの)ものや、現職にいだいている偏見や絶望をお話しすることで、とりのぞき、現職で、あがいてみることをお薦めすることもあります。
また昨今は、副業を解禁する企業さんも増えてきました。無理に転職して、リスクを背負ってまで、本当にやりたいことがあるのか? 覚悟はあるのか? たりないのは、お金と自信であるならば、まずは、現職に残り、副業を薦めることもあります。(幸いなことに、今は、副業を斡旋してくれるようなサービスやアプリもありますからね!)
とにかく、大切なのは、働く人が
・ただ、能力ある人が能力に見合った給与や報酬を得てほしい
・そして、ひとたび縁があった以上は、長くこの仕事を続けていけるようにしたい
ですが、現在、新卒、中途とわず、「離職率」が各企業さんの課題になっております(もちろん、他にも問題は多々ありますが、採用はコストが時間、手間、金すべてかかりますので、早期離職はかなりのダメージとなるため、優先度が高い、ということですね)
で、離職する人たちの話をきいていくと(もちろん、企業側にのみ課題があるわけではありません!!!)
ちなみに、わたしが相談をお聞きする皆さん、現職のことが「嫌い」とか「●●がいけてない、しんどい」というような話をされる方は、ほとんどいらっしゃいません(もちろん、人間なので、、愚痴っぽいことはお聞きしますが、それは、うまくいっていようが、いまいが、人間というものは、目指すところが100%他者とシンクロすることはないので、ある程度はでてくるものだと思っていますww)
もちろん、パワハラのようなものにあっている!とおっしゃる方もいらっしゃいます。その場合は、わたしでなく、別の方を訪ねていっていただくか、ご紹介をしております。
ですので、わたし自身が、アドバイス(「解決する!」とまでは、言い切れません。その企業さん、個人の方が望まれない限りは、一定以上、入り込めないからです)できる範囲は、②③④となるわけです。
まあ、自分たちのころにあったから、今、この手のことあってもしょうがない、は、ちょっとまた別の問題なので、ここでは、いったんおいておきます。
でも、たとえばゲーム業界であれば、いまの50代以上が業界で新人であった頃は産業自体がまだまだ黎明から発展期で、それほど、大勢が就職してくるわけでもなく、かつ、「野心に燃えた」人が多く、海のものとも山のものとも知れぬ環境に飛び込んできていたと思います。
いまでいうベンチャーに飛び込むみたいなものです(まあ、上場企業はあったので、ベンチャーってほどの規模ではないですがマインドはそれに近かったろうということですね)
自我が強く、前にでる、俺が、わたしが、やるんだ!という人たちがJoinしてきていた時…その時のやり方は、さすがにいまの「上場されて、大手になったゲーム産業」に入ってくる学生たちに、その覚悟を問いたいならば、「採用の時」にかなりしっかりした見極めをしないと難しいと思います…
まあまあ、それはまた別の機会にのべますw
でも、それですら、後出しじゃんけんだと思いますが…その指摘によりさがったテンションを回復するようなサポートやフォローワードをかけられるルーティンを自分の中にもっておられるなら、かまいません…
②<3>で、回答ならまだしも、ヒントの1つも与えない
答えをもってないから、アバウトにふって、まずアイデアを考えるところからやってもらおう!と思うのはNGではないと思います。で、あるならば、そう若手や新卒に言って、ふればいいと思うのです。
で、あがってきたら、そこから「一緒に考える」ことをすればいいのであり…種がほしかったのであるならば、あまりよい種がでてこなかったとしても、それを自分の部下や後輩に「自分で言われないでもやらないと」を強いるのはしんどいかと思います。
で、あるならば、ここで、たまたまそういう作業が苦手で、這い上がってこなかった人たちの「良さ」をどこにみて、「どんなやりがい」を提供するか?まで、表裏一体で考えて行動すること、これこそが、マネジメントに求められることではないでしょうか?
採用しているわけです。コストもかかってるわけです。研修もしたあとならなおさらです。それなのに、微妙なやりとりで若手や新卒を「使えない」ラベルを簡単に貼ってしまうのは、ある一面からしか人物をとらえていない非常にもったいないことではないかと思います。
もちろん、これを読まれた若手が、すぐにまた「ハラスメント」を叫びだすこと、それをわたしは望んでるわけではありません!!
逆に、それこそ、自身で考えて、こういう上司やマネジメントと出会った時に、どう乗り越えていくか?を考えてほしいのです。諦めてはいけません。相手のしいたルールやレールの中でうまく行動できなかったら、ルールを拡張するか、そこから飛び出ることをすればいいだけなのです。ゲームのルールもシリーズ化されたり、運用が継続されていくと、リバイズされていくことがあるでしょう?それと近しいと思います。
なので、わたしからのアドバイスとしては、こういう「依頼」がきたときは、
ゼロベースで「いつまでですか?」でも最低限はいいと思いますが、せっかくならば、自分の力も相手も理解させたうえで、納期を考えている、ということをちゃんと伝えた方がいいと思うからです。
正解を探りに行かない範囲でw、複数アイデアをもっていったなら、「どのベクトルが一番近いか?」とか「可能性順をつけてほしい」とか、あがいてみましょう。
もちろん、これでもその上司の時間次第では、「いいから、もう一回やってこい」となるかもしれません。そうなったら、二回目は、前回の倍くらいは出していく気概をみせたいです。
ただ、ここで、引き下がる前に「この仕事、アイデア出しの「目的」は何か?自分はこうじゃないかと思うがあっているか?」くらいを確認できると、そこにヒントある回答をえられる可能性が高まります。
なぜなら、方向性を知ることができるからです。また、人間、目的に向かって邁進している時は比較的おちついて考えられるからです!
であれば、この二回目あたりで、だいたいGOALに近づきたいです。その時にどれだけ、一回目でえたヒントから、上司と「一緒に」GOALにむかえるか?がポイントになります。なので、時間もとり、かつ、時間をいただく以上は、まな板に載せるものの数は多くしないといけません!
ただ、たいていの上司やマネジメントの方は、①②③を自分が必死に繰り返していれば、気づいてくれることもありますし、その他の方に相談するとかして、どんどん洗練されていくと思います。つまり、若手、新卒側もすぐにあきらめてはいけないですし、言われるままに、毎回、アイデア出す、没くらう、アイデア出す、没くらうを繰り返してはいけないということです。
もちろん、直属でなくてもサポート、フォローしたり、直属の先輩に影からアドバイスして、うまく2人がまわるようにしてくれるような気づかいできる方もいらっしゃいます。
そういう潤滑油みたいな方の力、企業は見落としてはいけないんですけどね…案外、評価が定量化できないのと、目標設定などで、明示できない「ミエナイチカラ」なので、あっさりこういう方に辞められてしまい、理由はわからないが、組織ががたがたになってしまう…というのも、たまに見かけます。
で、次に、逆に、新たな言葉ですが、
この2つが伴う「大丈夫か?」は、何ら問題ないですし、ぜひぜひ、実行していただきたいくらいです!もちろん、その場合は「大丈夫?」の後に、上記のような質問が続きますからねw
上司やマネジメントの方は、この「寄り添い方」を間違えずに、1人の人間をつぶさないように、サポートしていただけると、のちのち、会社のために大いなる力を発揮してくれる可能性があります!
結局、ひきだしたいのは「具体的なこと」であり「行動にうつせること」なのです!
ただ、ゼロベースで、すべて「正解をきく」のは、NGです。なぜなら、自己の成長をとめてしまうからです。なので、「ヒント」をうまくもらわないといけないので、「ヒントのもらい方」をうまくならないといけないのですw
2回にわたり、「スタイルな○○」で書いてきました。
「スタイルな人」が増えれば増えるだけ、非生産的になり、傷つく人が増えます。まずは、ヒエラルキー高いところにいる方々から襟を正して、仲間にやりがいを提供していける言葉と気遣いを励行されていかれることを希望してやみません。
わたしも、学生と話している時に、厳しさと、折らないための優しさ・寄り添いの併存をどうしたらよいのか?を常にかんがえております。なかなか、これ!といったシンプルな構造はいえません。なぜなら1人1人人間は異なるからですね。
なので、「わかった気にならなず、相手に共感をうみ、かつ、少しずつキャパが広がっていくようなコミュニケーション」を常に意識して「まずは、良いところを見て、認める」を意識して日々を送っております!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第六十四回「”スタイルな”●●(前編)」
■第六十三回「志望動機とは何か?」
■第六十二回「行動・体験に勝る師なし」
■第六十一回「人をみきわめる…」
■第六十回「按図索駿(あんずさくしゅん)」
■第五十九回「”敬意” と “覚悟” ~採用チームと選考項目~」
■第五十八回「学生から学ぶこと」
■第五十七回「なにごとにも、準備が大切」
■第五十六回「"When the student is ready, the teacher appears."」
■第五十五回「削りだし、肉付けする」
■第五十四回「最新を知らずして…」
■第五十三回「ヒトがひとを採る」
■第五十二回「誇り、やりがい、お金」
■第五十一回「キャップは、誰が決める?」
■第五十回「出口に対する意識〜後編〜」
■第四十九回「出口に対する意識〜前編〜」
■第四十八回「ゲーム業界に就職すること」
■第四十七回「お金の話」
■第四十六回「伝える姿勢」
■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
あわせて読みたい( ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-・ファリアー )
企業情報(株式会社ファリアー)
会社名 | 株式会社ファリアー |
---|---|
URL | http://farrier.jp/ |
設立 | |
代表者 | 馬場保仁 |
決算期 | |
直近業績 | |
上場区分 | |
証券コード |

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