■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
18年新卒にむけて、夏になり、また各社採用を活発化されています。と同時に、この夏に19年新卒以降の学生さんと出会うべく、夏のインターンシップを精力的に実施されている企業さんが多くあります。
特に、この夏のインターンシップに関しては、この何年かで本当に多く開催されるようになりましたし、夏に限らず、1日だけ限定のものや、逆に学生さんの長期休暇にあわせて、1カ月以上かかるものを実施されるところもでてきています
ちなみに、インターンシップというのは、そもそもは、
「企業や組織において、実際の労働に従事すること、職業体験」
のようなもので定義されていました。
ただ、企業の思惑や、学生の都合、そして、実施される時期に応じて、いろいろなものをインターンシップと呼んでいるように思います。わたしが、知っているだけでも、下記くらいに大別されるかと思います(ゲーム業界以外だと、もっとあるかもしれません)
特に、この夏のインターンシップに関しては、この何年かで本当に多く開催されるようになりましたし、夏に限らず、1日だけ限定のものや、逆に学生さんの長期休暇にあわせて、1カ月以上かかるものを実施されるところもでてきています
ちなみに、インターンシップというのは、そもそもは、
「企業や組織において、実際の労働に従事すること、職業体験」
のようなもので定義されていました。
ただ、企業の思惑や、学生の都合、そして、実施される時期に応じて、いろいろなものをインターンシップと呼んでいるように思います。わたしが、知っているだけでも、下記くらいに大別されるかと思います(ゲーム業界以外だと、もっとあるかもしれません)
夏休みや冬休みに、再来年以降の年次の学生に対しておこなわれるのが③で、実際に選考中の学生に対しては②が多くあります。特に専門学校から学生をうけいれて、インターン実施している企業さんもあることでしょう。
◆ほんとに、採る気あるよね??
ただ、②は、大前提として「育てて、採る」ことを視野にいれて、企業さんは実施されています。なので、残念な場合は、1週間とかで「お帰りください」となることもあると思います。これは決してひどいことではないと思います。
チャンスを与えていただけているだけでも、素晴らしいですし、且つ、NGとなった時にしっかりと理由を本人に伝えてあげること、できれば、課題を設定してあげるところまで寄り添ってあげられたら、それは、学生にとって大きな勉強になった、というだけのことです。
ここで、一番まずいのは、②を3カ月以上も実施する場合です。
これは、まず、学校さんが、企業さんに「期間の上限をきって」お願いすべきかと思います。企業側も、「育成」は長期にかけてすればいいと思いますが、「選考」に関しては、長くても1カ月くらいで結論を出していただきたいと思います。
「うちは不合格だけど、このままバイトではいてくれるとありがたい」
とせめて言ってあげて、学生側に選択の余地を残す必要は最低でもあると思います。
なぜ、3カ月以上になると厳しいのか?
それは、その期間、その企業に拘束されることで、就職活動の時間を奪われるからです。
3カ月、4カ月拘束しておいて「うちでは採用できません」ですと、学生さんに残された就活の時間がかなり少なくなってしまうからです。
ですが、もちろん、「迷う。NGにしてしまうほどではない、でも、採用!というには弱い」ということもあるでしょう。で、あるならば、それを正直に学生さんと学校さんに話をされることだと思います。それを好意的に、甘い認識でうけとめてしまうかどうか?は、学校と学生によるわけですから…(変に期待を抱かせすぎる言い回しは、マナー違反だと思いますけどね)
ですので、学校も、「企業がインターンを受け入れてくれている!」ということで、ただ喜んでいるのではなく、「採用につながるかどうか?」を見極めて企業と密にコミュニケーションをとらなくてはいけないですし、学生さんも親御さんと話すなどして、実際にどうしていくのか?を考える必要があります。
◆育てる企業というものの…
最近学生さんと話していると、
・育成制度があるか?
・育ててくれる土壌はあるか?
などをきかれます。企業の皆さんにきいて、「いや、うちは育成なんかないよ!」と答える方はいらっしゃらないでしょう(笑)。 でも、「育成」ってなんでしょう?ビジネスマナーの研修は、まあするとしても、その先の育成は、
大目標:「プロとしてお客さんを常に意識して仕事できるかどうか?」
に、たどりつけるかどうか?です。
ただ、それは、急速に体得することは難しいので、なにか刺激的なことをしないと難しいわけです。たとえば、新人たちだけでゲームを3カ月つくろう!というのをやっている企業があるとします。これ自体は、専門学校生と違い、大学生は制作経験少ない人もいるので、実際につくる経験をさせることは悪くないと思います。
でも、理想的には、実際に、リリースするところまでやれるといいと思います。つまり、ユーザにさわってもらい、その反応(誉め言葉、お叱りいろいろ含めて)を見ることで成長できるからです。
そう、つまり上記した大目標につながる成長をさせているか?に尽きると思います。そう考えると、育てる土壌がない、という企業は基本的には、ないわけです。仕事を与えてくれない企業はないですからね(笑)。
ただ、初月から、責任もたせ、ノルマなどもハードに積みすぎると、つぶしかねません。そう、各自には、プレッシャー少なく、どんどん前に出る、提案できるような空気、ルールをつくり、且つ、ユーザの目にはふれて反応あることをどれだけさせてあげられるか?
このあたりが、本当の「育成土壌があるか?」につながるのではないかと思います。多少、余裕を与えたうえで、チャレンジさせてあげたい、ということですね。そうでないと、いきなり、「ミスしない」「失敗しない」ための行動が一番大切になってしまいます。たしかに、ミスはしてほしくないですが、失敗は避けられないこともあります。
でも、チャレンジしての失敗ならば、得られるものもあると思います。
若いうちの苦労は、買ってでもしろ
と昔は言ったものですが、いまは、1つのプロジェクトが大きく、長期間になってきていることもあり、1つの失敗が大きな影響を与えかねないことがあります。なので、先輩たちも慎重になっていますので、より新人は慎重にならざるを得ません。
でもだからこそ、若いうちに失敗上等で挑戦する!ことは大事なのですが、それを正面からやれる人間は、そんなに多くない、難しいことだと思います。
であれば、それができる土壌をつくってあげることは、企業がかけるとよいコストではないでしょうか?新人は、一定期間や一定の成果を出すまでは、「やってくれただけ加点」と考えるとか…
もちろん半年もすれば、この一定の成果を出す人もいれば、1年以上かかる人もいることでしょう。何事も、大器晩成の人もいれば、早熟の人もいますので採用時に、すべてのタイプを把握することは難しいので、やらせてみて…というのはあると思います。であれば、実は、
内定後、入社前の就業(インターン)や研修
が大事になるかもしれません。なんせ、社員ではないので、重すぎる仕事はそもそも与えられない。でも、会社の空気は吸いますし、仕事のフローやルーティンを知ることもできます。つまり、4月に入社後、急速発進することが可能になるかもしれないわけです。もちろん、学業や卒論・卒業制作が優先ですので、そこに負荷の無い範囲で、ですね。
なので、学生さんたちで、「育成する企業かどうか?」を気にする人がいるならば、
・内定後、入社前にどれだけ手をかけてくれる、働かせてくれるか?
・入社後、責任のかけ方をいつまで猶予されるか?
・先輩たちは、勇気もってチャレンジできているか?
などを面接時に確認されるといいかもしれません。もちろん、これだけが正解ではありません。各企業さんは、皆さん、各々の事情と、考えに基づいて動かれているからです。
そして、学生さんたちが思っている以上に、試行錯誤して、毎年いろいろ考えて採用や育成をされています。(学生は、ほとんど新卒時の就活は1年しかやらないので来年のことは、わかりませんからね)その努力にみあう、素晴らしい仲間となってくれうる学生さんに出会いたい!と素直に思っておられると思うので、まずは、1dayでも長期期間のものでもいいので、夏のインターンシップに1つでも参加してみることが、学生にとっては学びの場になるかと思います。
◆今必要なのか?未来にむけて必要なのか?
企業側の皆さんにとって、少し耳が痛いことを話すかもしれません。
それは、採用時に、どこをみて採用基準としているか?です。
特に1次面接などにでてこられる若手のクリエイターの方ですと、現場でバリバリやられていることもあり、即戦力の計算できる人を欲することが多く見受けられます。
気持ちはわかります。だって、良い後輩はいってくれて、自分たち苦労しているところを手伝ってくれたらどれだけいいことだろう?と思うのは、普通のことだと思いますので。ただ、その時に、
自分が把握できる能力の学生
だけを評価していないか?ということです。
わたしは、前職時代に「自分を超える能力の学生を見つけて、採用していきましょう!」という話をきいたときに、なんて素晴らしいんだ!と思いました。人間、自分に近い、特に自分の下の近い世代に対しては、厳しくなりがちです。ですが、自分が100%理解できる、掌握できる後輩のみを採用していったら、だんだん、組織がシュリンクしていくとおもうのです。どこかだけでも、「超えていく能力」を持った人を採用していかなくてはいけない。
でも、これが本当に難しいのです!
近い後輩は、将来ライバルになるかもしれませんしね。でも、会社の全体最適を考えたら、「いま」のみを見るのではなく「未来」のポテンシャルを見る必要があると思います。そこを意識して、字面だけでなく本当に実行していけたら…
そして、「未来」に向けて「育成」を実施していけたなら…
企業の力は、あがることでしょう!
わたしが行っていた大学では、入学したときに、
「キミたちは、未来からの留学生なんだ」
と言われました。当時のわたしは、何言ってるんだ?よくわからないな…と思っていました。すみません(笑)。
でも、今となっては、非常に響く言葉となっています。確かに採用の際に、「いま」は、見なくてはいけないとは思います。
ですが、その人の「可能性=未来」を見据えて、探すことこそ凄く大事だと思います。仏師が、石や木を見るとその中に仏を見出すといいます。これと同じように、その学生の中に、何が眠っていてどこにむかえるポテンシャルを持っているのか?を必死に探すことこそが企業の採用としては大事なのではないかと思います。
そして、学生はそれに応えられるべく、好きなことしかやらないではなく、いろいろなことに興味関心をもち、自身の引き出しを増やす、でも、軸足となるべきところは持ち、深く掘るということを「カタチにしていく」努力を継続していけば、おのずとどこかの企業さんにはご縁がでてくると思います
あとは、必ず、企業さんにエントリーをたくさんしましょうね!エントリーしないと、出会いを求めないと、何も生まれませんので!!
それでは今回は以上で!
ご相談、お問い合わせは…
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
会社情報
- 会社名
- 株式会社ファリアー
- 設立
- 2016年7月
- 代表者
- 代表取締役社長 馬場 保仁