株式会社ファリアー 代表取締役 社長の馬場保仁氏が、ゲーム業界の人材・採用に関して語っていく連載記事「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-」。同氏は、セガで家庭用ゲームの開発を、DeNAではスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任していた。ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に注力していく。開発現場・採用担当、双方の視点からゲーム業界における“人”に対してスポットをあてた連載記事。
■第58回「学生から学ぶこと」
企業の方や、学校の方とお話しする時に、
「馬場さん、お忙しいと思いますが、いつ勉強されてるんですか?」
と聞かれることがあります。
わたし、生来の面倒くさがり屋なので「勉強」と思ってやると、基本長続きしませんし、相当な必要にかられないとやりません。いや、やれませんw 高校受験までは、親が小学生時代に与えてくれていた教育の「貯金」を引き出しながらなんとか乗り切りましたが、大学受験ではもう残高がなくなり、自身で再度積み上げないといけなかったのですが、まあ、それほど面白くない・興味がわかず継続できませんでしたw(結果、二浪するわけですw)
なので、いま、学生さんたちと話していて、
・腹落ちしないこと
・興味がわかないこと
に関して、全然、学びが進まないこと、非常に理解しますし「わかっちゃいるけど…」の気持ちもよくわかります。
じゃあ、ゲームの専門学校にきてるなら、「興味があるから」きてるはずだから、勉強しろよ!と思う「おとなサイドの意見」もあると思いますが、この連載でも何度か書いてきていますが、専門学校にきた段階で、大半の学生は、
・ゲームって面白い(遊ぶのが)
・ゲームをつくってみたい(とりあえず…楽しそうだから)
・ゲームを仕事にできたら、楽しそうだな…
くらいの気持ちで入学してきていると思います。
それは、間違っていないと思いますし、大学にはいるときだって、大半の学生は、「○○学部に入って、勉強して、○○になるんだ!」とまでは思っていないと思います(医学部のように、そこを出ないとそもそもが試験を受けて、なることすらできない学部の場合は別だと思いますが)モラトリアムではないにしても、18歳の段階で未来の選択をすることができる環境で生きてきている人間なんてそれほど多くないでしょうし、もし、そこで選択をしたとしても、人生は長いので何度も迷うし、変更をしてもいいと思います。ただ、
・どこかのタイミングでは、いったん決めないといけない
だけのことです。
でも、学生の皆さんは、大学、専門学校、もしくは高専、早い子なら高校に行っている間には、結局いったん、決断するわけです。人生の決断を迫られる環境にいる人間は、
・きっかけ
・情報
・経験
を求めています。もちろん、ここでも、「待ち構えている人」と「とりにいく人」では、かなり差はでるのですが、就職活動が始まると大半の学生は、変化を始めます。一括採用制度のおかげで、この「新卒」のタイミングがもっとも、社会に出る=企業に就職するチャンスが多いために、ここを逃したくなく、否応にも自分を追い込んでいくわけです。追い込んだ結果、覚悟を定めてわずかなりとも目的を見出した子たちは、なにがしかの縁をもとに企業に入っていきます。もちろん、苦労するので、心折れる瞬間もあることでしょう。
学生であるうちは、見たくないことは見ない、嫌なことからは逃げることが可能ですから。わたしも、面倒くさがってある種逃げていたところはありますので、今の学生さん達に何も偉そうなことは言えませんw
でも、就職活動は、学際さんからすると、どんなこれまでの試験よりも、自分の価値が一瞬評価されたような気になってしまうくらいの関門に思えます。もちろん、「その時点での能力」や「ポテンシャル」が評価されることは間違いありません。
でも、技術も方向性も、10年もたてば変化するわけです。
どんな状況になっても、学ぶ姿勢をなくさず、好きなことに向かって自分に誠実にまい進できるか?が、問われているはずなのですが…
ただ、企業と学生も、しょせんは、人と人の相性なので、絶対的な能力が圧倒的に秀でているようなほんの一握りの学生(どの会社からも来てほしいと思われる学生。野球に例えるなら、エンゼルスの大谷翔平選手のような誰しもがほしい!と思うような人材ならば、皆が欲しがるわけです。でも、その大谷選手も、高校を卒業して日本のプロ野球のドラフト会議では指名球団は、北海道日本ハムファイターズ1球団だけでしたけどね!もちろん、いろんな理由があったからだと思います)でもない限りは、
学生も選ぶが、企業も選ぶ
わけで、お互いの相性や出会いで決まることも、多々あります。
わたしも、職業紹介事業をしていて、「なんで、この子がここを落ちるんだ?」と思うこともあれば、失礼ですが、「ほう、あの子はこの会社さんとご縁があったか…」と想像を超えてくることもあります。これは、単なる相性の問題もありますし、それ以上に、
「三日、会わざれば刮目して見よ」
ではないですが、非常に短期間でかわる、のびる、ことがあります。この「伸び」や「まさにナウ」を見誤ると、「ほう…」ということが発生するわけです。
そう、学生から、気づかせてもらえることはたくさんあるんです!
どこかの学習塾のCMではないですが、「やる気スイッチ」は、誰しも持っているとわたしも思います。これをいかにして、見つけ出して、押してあげることができるか?だと思います。本当に短期間で…まさに3日もあれば、大きく変わる学生がいるということです。
・この子の限界はこんなものだ
・この子のポテンシャルは…
・この子はできない
のように、一瞥して決めつけてしまうことは、非常に危険だということです。たしかに「素直でない」子を導くのは難しいところがあります。
多くの企業さんにお話をきいても、一番大事な能力を上げてほしいというと、いくつかあがってはきますが、各企業さんから最大公約数的に共通してでてくるものが「素直であること」です。やはり、聞く気がない人間は、かわれませんし、謙虚にもなれません。自分の定める価値観も非常にレンジの狭いものとなるでしょう。自分の良いと思うものが絶対で、それ以外は、聞く耳持たない、というのでは、社会人としてもですが、ゲームを作っていくうえでお客さんの気持ちを無視して開発することになりかねませんからね。
ただ、この「素直じゃないな」も、実は、こちらの「伝え方」のせいであることも、結構あるのではないか?と最近感じます。
そもそもゲーム開発者になりたいような人は、ある程度以上の承認欲求を持っています。なので、ダメだしばかりが続くと、そもそも、その人の話に耳を傾けるでしょうか? 自分を否定し続ける人は、つらい人、ですからねw
今思えば、わたしも、企業にいる時にいろんな学校を回り、作品を見てコメントをさせていただいた時、どこかこのダメ出しをメインにしていたのではないか?と思いました。もちろん、自己弁護するわけじゃないですが、わたしに限らず、プロが学校をまわりコメントする時は、否定したいのではなく、現状のいけてないものをなんとか気づかせ、導きたいと思っているはずなんです。
ただ、学生は、ふだん学校ではあまり「指摘」されたことはなく、そこにプロの言葉という「強い言葉」で言われると、プロにとっては些細なことでも、非常に大きい、重みのある言葉として響いてしまいます。刺さっているわけではなく、ですね。
その子のために良かれと思って…、業界に一歩でも近づけるといいと思って…話しているはずなのに、結果、その子の心を折っているだけかもしれないわけです。だから、手を抜いていうべきだとか、優しく話せとか言っているわけではありません。
厳しいことは、言っていいと思います(ただし、本気、そして誠心誠意で!) でも、その子に刺さることも必ず同時に言わないといけないだけのことです。
毎日、毎週、毎月のように何度も会うことができる人は、話す方も、聞く方も、誤解を解くチャンスがあります。また、何度も会ううちに信頼関係も構築されることでしょう。そうすれば、同じことを言っても、聞く耳を持ってくれるかもしれません。
初めてあった人に「お前はいけてない」と言われたら(言われたと思い込んだら)、傷つかない人はいないでしょう。ティーチングスキルというほどのことではなく、一個の人間として、付き合いがちゃんとできるか?ということだと思います。
ためになること(正論、本質)ではなく、その子のためになること(すぐに受け入れられる)を話さなくてはいけないということですね。いまの私にとっては、彼らが「わかっていない状況」に出会うことが非常に大きな学びとなっています。
経験が深い方は、当然のように知っていることが、浅い方からすると、当然ではなく、時代の違いもあるわけです。なので、学校で2,3度会う子達も、毎月のように開催している駿馬で同じワークを違う地方でやって見ると、いろんな、「行き詰まり」を目撃します。これを、
・くそっ、なんでできないんだよ!
と思うのではなく、
・なるほど…あれでは、わからんか…どうやったら理解してもらえるだろう?
と考えることが、自分自身の学びになるな…と、更にリバイズして、いろいろと試してみることをしています。そして、これは、必ずしも学生だけでなく、相手が企業の方や、学校の先生方でも近いところがあるな、と最近思います。同じ人間なので当たり前ですけどねw
ただ、逆に言うと、学生よりも、大人の方がよっぽど「素直でない」ことがありますw
それは、経験を積んできていますし、自分なりの「がんばり」がそこにあるからですね。その経緯を認めたうえでないと、相手は傾聴してくれません。どれだけ、本質的に良いことを言ったとしても、ですね…
人が人を導く
などというのは、幻想でしかなく、傲岸不遜になりかねないので、いかに謙虚で、お互いがハッピーになるために歩み寄っていると考えて、今後もやっていこうと思います。
これまでの中で学生から教えてもらったこととしては…
などがあります。もちろんこれ以外にも、
・いま、学生たちの間ではやっているゲーム
・学生たちの世代で、見ていて面白いと言われている映画・漫画
など
その世代のユーザからダイレクトマーケティングすることなども、ありますし、
・スマホ でしかゲームをしてきてない世代
などは、我々、コントローラあってゲームをしてきた世代とは異なることを考える場合もありますからね。経験が違えば、着眼点や発想も異なる可能性があるわけですから、そこに価値を見出して傾聴できるか?は今度は我々「おとな」側の課題なのだと思います。
学生も学べる、指導する側の大人も学べる、互いにとってWINWINの教育環境こそが、一番早く信頼関係も構築でき、最終的に結果がでやすい状況なのではないでしょうか?
今回は以上で!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第五十七回「なにごとにも、準備が大切」
■第五十六回「"When the student is ready, the teacher appears."」
■第五十五回「削りだし、肉付けする」
■第五十四回「最新を知らずして…」
■第五十三回「ヒトがひとを採る」
■第五十二回「誇り、やりがい、お金」
■第五十一回「キャップは、誰が決める?」
■第五十回「出口に対する意識〜後編〜」
■第四十九回「出口に対する意識〜前編〜」
■第四十八回「ゲーム業界に就職すること」
■第四十七回「お金の話」
■第四十六回「伝える姿勢」
■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
「馬場さん、お忙しいと思いますが、いつ勉強されてるんですか?」
と聞かれることがあります。
わたし、生来の面倒くさがり屋なので「勉強」と思ってやると、基本長続きしませんし、相当な必要にかられないとやりません。いや、やれませんw 高校受験までは、親が小学生時代に与えてくれていた教育の「貯金」を引き出しながらなんとか乗り切りましたが、大学受験ではもう残高がなくなり、自身で再度積み上げないといけなかったのですが、まあ、それほど面白くない・興味がわかず継続できませんでしたw(結果、二浪するわけですw)
なので、いま、学生さんたちと話していて、
・腹落ちしないこと
・興味がわかないこと
に関して、全然、学びが進まないこと、非常に理解しますし「わかっちゃいるけど…」の気持ちもよくわかります。
じゃあ、ゲームの専門学校にきてるなら、「興味があるから」きてるはずだから、勉強しろよ!と思う「おとなサイドの意見」もあると思いますが、この連載でも何度か書いてきていますが、専門学校にきた段階で、大半の学生は、
・ゲームって面白い(遊ぶのが)
・ゲームをつくってみたい(とりあえず…楽しそうだから)
・ゲームを仕事にできたら、楽しそうだな…
くらいの気持ちで入学してきていると思います。
それは、間違っていないと思いますし、大学にはいるときだって、大半の学生は、「○○学部に入って、勉強して、○○になるんだ!」とまでは思っていないと思います(医学部のように、そこを出ないとそもそもが試験を受けて、なることすらできない学部の場合は別だと思いますが)モラトリアムではないにしても、18歳の段階で未来の選択をすることができる環境で生きてきている人間なんてそれほど多くないでしょうし、もし、そこで選択をしたとしても、人生は長いので何度も迷うし、変更をしてもいいと思います。ただ、
・どこかのタイミングでは、いったん決めないといけない
だけのことです。
でも、学生の皆さんは、大学、専門学校、もしくは高専、早い子なら高校に行っている間には、結局いったん、決断するわけです。人生の決断を迫られる環境にいる人間は、
・きっかけ
・情報
・経験
を求めています。もちろん、ここでも、「待ち構えている人」と「とりにいく人」では、かなり差はでるのですが、就職活動が始まると大半の学生は、変化を始めます。一括採用制度のおかげで、この「新卒」のタイミングがもっとも、社会に出る=企業に就職するチャンスが多いために、ここを逃したくなく、否応にも自分を追い込んでいくわけです。追い込んだ結果、覚悟を定めてわずかなりとも目的を見出した子たちは、なにがしかの縁をもとに企業に入っていきます。もちろん、苦労するので、心折れる瞬間もあることでしょう。
学生であるうちは、見たくないことは見ない、嫌なことからは逃げることが可能ですから。わたしも、面倒くさがってある種逃げていたところはありますので、今の学生さん達に何も偉そうなことは言えませんw
でも、就職活動は、学際さんからすると、どんなこれまでの試験よりも、自分の価値が一瞬評価されたような気になってしまうくらいの関門に思えます。もちろん、「その時点での能力」や「ポテンシャル」が評価されることは間違いありません。
でも、技術も方向性も、10年もたてば変化するわけです。
どんな状況になっても、学ぶ姿勢をなくさず、好きなことに向かって自分に誠実にまい進できるか?が、問われているはずなのですが…
ただ、企業と学生も、しょせんは、人と人の相性なので、絶対的な能力が圧倒的に秀でているようなほんの一握りの学生(どの会社からも来てほしいと思われる学生。野球に例えるなら、エンゼルスの大谷翔平選手のような誰しもがほしい!と思うような人材ならば、皆が欲しがるわけです。でも、その大谷選手も、高校を卒業して日本のプロ野球のドラフト会議では指名球団は、北海道日本ハムファイターズ1球団だけでしたけどね!もちろん、いろんな理由があったからだと思います)でもない限りは、
学生も選ぶが、企業も選ぶ
わけで、お互いの相性や出会いで決まることも、多々あります。
わたしも、職業紹介事業をしていて、「なんで、この子がここを落ちるんだ?」と思うこともあれば、失礼ですが、「ほう、あの子はこの会社さんとご縁があったか…」と想像を超えてくることもあります。これは、単なる相性の問題もありますし、それ以上に、
「三日、会わざれば刮目して見よ」
ではないですが、非常に短期間でかわる、のびる、ことがあります。この「伸び」や「まさにナウ」を見誤ると、「ほう…」ということが発生するわけです。
そう、学生から、気づかせてもらえることはたくさんあるんです!
どこかの学習塾のCMではないですが、「やる気スイッチ」は、誰しも持っているとわたしも思います。これをいかにして、見つけ出して、押してあげることができるか?だと思います。本当に短期間で…まさに3日もあれば、大きく変わる学生がいるということです。
・この子の限界はこんなものだ
・この子のポテンシャルは…
・この子はできない
のように、一瞥して決めつけてしまうことは、非常に危険だということです。たしかに「素直でない」子を導くのは難しいところがあります。
多くの企業さんにお話をきいても、一番大事な能力を上げてほしいというと、いくつかあがってはきますが、各企業さんから最大公約数的に共通してでてくるものが「素直であること」です。やはり、聞く気がない人間は、かわれませんし、謙虚にもなれません。自分の定める価値観も非常にレンジの狭いものとなるでしょう。自分の良いと思うものが絶対で、それ以外は、聞く耳持たない、というのでは、社会人としてもですが、ゲームを作っていくうえでお客さんの気持ちを無視して開発することになりかねませんからね。
ただ、この「素直じゃないな」も、実は、こちらの「伝え方」のせいであることも、結構あるのではないか?と最近感じます。
そもそもゲーム開発者になりたいような人は、ある程度以上の承認欲求を持っています。なので、ダメだしばかりが続くと、そもそも、その人の話に耳を傾けるでしょうか? 自分を否定し続ける人は、つらい人、ですからねw
今思えば、わたしも、企業にいる時にいろんな学校を回り、作品を見てコメントをさせていただいた時、どこかこのダメ出しをメインにしていたのではないか?と思いました。もちろん、自己弁護するわけじゃないですが、わたしに限らず、プロが学校をまわりコメントする時は、否定したいのではなく、現状のいけてないものをなんとか気づかせ、導きたいと思っているはずなんです。
ただ、学生は、ふだん学校ではあまり「指摘」されたことはなく、そこにプロの言葉という「強い言葉」で言われると、プロにとっては些細なことでも、非常に大きい、重みのある言葉として響いてしまいます。刺さっているわけではなく、ですね。
その子のために良かれと思って…、業界に一歩でも近づけるといいと思って…話しているはずなのに、結果、その子の心を折っているだけかもしれないわけです。だから、手を抜いていうべきだとか、優しく話せとか言っているわけではありません。
厳しいことは、言っていいと思います(ただし、本気、そして誠心誠意で!) でも、その子に刺さることも必ず同時に言わないといけないだけのことです。
毎日、毎週、毎月のように何度も会うことができる人は、話す方も、聞く方も、誤解を解くチャンスがあります。また、何度も会ううちに信頼関係も構築されることでしょう。そうすれば、同じことを言っても、聞く耳を持ってくれるかもしれません。
初めてあった人に「お前はいけてない」と言われたら(言われたと思い込んだら)、傷つかない人はいないでしょう。ティーチングスキルというほどのことではなく、一個の人間として、付き合いがちゃんとできるか?ということだと思います。
ためになること(正論、本質)ではなく、その子のためになること(すぐに受け入れられる)を話さなくてはいけないということですね。いまの私にとっては、彼らが「わかっていない状況」に出会うことが非常に大きな学びとなっています。
経験が深い方は、当然のように知っていることが、浅い方からすると、当然ではなく、時代の違いもあるわけです。なので、学校で2,3度会う子達も、毎月のように開催している駿馬で同じワークを違う地方でやって見ると、いろんな、「行き詰まり」を目撃します。これを、
・くそっ、なんでできないんだよ!
と思うのではなく、
・なるほど…あれでは、わからんか…どうやったら理解してもらえるだろう?
と考えることが、自分自身の学びになるな…と、更にリバイズして、いろいろと試してみることをしています。そして、これは、必ずしも学生だけでなく、相手が企業の方や、学校の先生方でも近いところがあるな、と最近思います。同じ人間なので当たり前ですけどねw
ただ、逆に言うと、学生よりも、大人の方がよっぽど「素直でない」ことがありますw
それは、経験を積んできていますし、自分なりの「がんばり」がそこにあるからですね。その経緯を認めたうえでないと、相手は傾聴してくれません。どれだけ、本質的に良いことを言ったとしても、ですね…
人が人を導く
などというのは、幻想でしかなく、傲岸不遜になりかねないので、いかに謙虚で、お互いがハッピーになるために歩み寄っていると考えて、今後もやっていこうと思います。
これまでの中で学生から教えてもらったこととしては…
①教わってないことは、基本、できなくて当たり前
→もちろん、自分で課題感もってやる人はいます!
②わかっていないこと を、わかっていない
→授業や指導で言われた瞬間は、わかった気になっているものの…
→だから、質問ができない(なぜなら、わかった気になっているので)
③反復しない限り、たいていの場合、身につかない
→理想は、学校で一度教えたら、それを自分の時間で反復することだが、
それができたら苦労はしない…
→でも、学校の講義で同じことを2周するようなカリキュラムは見たことがない…
④指摘・ダメ出し、したければ、まず先に「承認」すること!
→信頼関係を構築する前は、ですね
→承認する は、必ずしも、褒める、ではない
→もちろん、自分で課題感もってやる人はいます!
②わかっていないこと を、わかっていない
→授業や指導で言われた瞬間は、わかった気になっているものの…
→だから、質問ができない(なぜなら、わかった気になっているので)
③反復しない限り、たいていの場合、身につかない
→理想は、学校で一度教えたら、それを自分の時間で反復することだが、
それができたら苦労はしない…
→でも、学校の講義で同じことを2周するようなカリキュラムは見たことがない…
④指摘・ダメ出し、したければ、まず先に「承認」すること!
→信頼関係を構築する前は、ですね
→承認する は、必ずしも、褒める、ではない
などがあります。もちろんこれ以外にも、
・いま、学生たちの間ではやっているゲーム
・学生たちの世代で、見ていて面白いと言われている映画・漫画
など
その世代のユーザからダイレクトマーケティングすることなども、ありますし、
・スマホ でしかゲームをしてきてない世代
などは、我々、コントローラあってゲームをしてきた世代とは異なることを考える場合もありますからね。経験が違えば、着眼点や発想も異なる可能性があるわけですから、そこに価値を見出して傾聴できるか?は今度は我々「おとな」側の課題なのだと思います。
学生も学べる、指導する側の大人も学べる、互いにとってWINWINの教育環境こそが、一番早く信頼関係も構築でき、最終的に結果がでやすい状況なのではないでしょうか?
今回は以上で!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第五十七回「なにごとにも、準備が大切」
■第五十六回「"When the student is ready, the teacher appears."」
■第五十五回「削りだし、肉付けする」
■第五十四回「最新を知らずして…」
■第五十三回「ヒトがひとを採る」
■第五十二回「誇り、やりがい、お金」
■第五十一回「キャップは、誰が決める?」
■第五十回「出口に対する意識〜後編〜」
■第四十九回「出口に対する意識〜前編〜」
■第四十八回「ゲーム業界に就職すること」
■第四十七回「お金の話」
■第四十六回「伝える姿勢」
■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
会社情報
- 会社名
- 株式会社ファリアー
- 設立
- 2016年7月
- 代表者
- 代表取締役社長 馬場 保仁