株式会社ファリアー 代表取締役 社長の馬場保仁氏が、ゲーム業界の人材・採用に関して語っていく連載記事「ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN-」。同氏は、セガで家庭用ゲームの開発を、DeNAではスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任していた。ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に注力していく。開発現場・採用担当、双方の視点からゲーム業界における“人”に対してスポットをあてた連載記事。
■第59回「”敬意” と “覚悟” ~採用チームと選考項目~」
11月になり、20年卒業の学生に向けた採用活動をはじめられた企業さんもでてきています。
もちろん、それ以前に、夏にインターンを実施され、既に動き出している企業さんも学生さんもたくさんいると思いますが…実際、今年のインターン、何社か見学させていただきましたが、
■企業さん
考え方にだいぶ変化がでてきている
■学生さん
本当に、意識高い学生の動き出しが早くなっている
というのが見受けられました…
●企業の姿勢…
企業さんは、
など、自分たちのもっていた固定観念を打ち砕き、先達である自分たちが、業界を目指す「後輩」たちに対して、なにかできることはないか?
できれば、自分たちの会社に入ってくれると嬉しいけど…でも、ほかの業界いくくらいなら、ゲーム業界面白いよ!ぜひきて!!! のようなテンションで学生さんと接してくれる、人事・現場の方が増えてきたなという印象があります。
これまで採用現場で面接や作品選考していたものの、直で学生と触れる機会の少なかった方や、学校をまわって企業説明をしてきたような現場の方も、(「べき論」を展開していくだけの方が多かったですが、わたしも、セガ、DeNA時代、例にもれずこうだったとおもいます)
学生のポテンシャル
というものに、目を向けていただける方が増えてきたなと思います。つまりは…
「育てよう」
という意識の萌芽ではないかと思うわけです。ともすれば、即戦力かよ!そんな学生いないよ!!というような、無いものねだりの人材用件が新卒の募集要項や採用基準にあがってくる企業さんがありますが、それは、それだけ「現場は困っている」ということだと思いますw
その気持ちはわかりますが、その「いま」足りないピースは、中途採用や業務委託、もしくは、派遣社員のスペシャリストの方でまずは、賄う方がいいかなと思います。新卒はどんな能力高い人間でも、基本は即戦力ではなく、3年後、5年後を背負う人でしょうし、その会社の「理念」を1から浸透させることができる人たちで、「未来を担う」人たちであるということです。
そして、その範囲を、自社から業界に広げて考えてくださる方が増えてきたということですね(もちろん、最優先は、自社であるべきだと思いますよ!ww)
40、50歳代になることで、ゲーム作品以外に、残し、つなぐことができるのは、実は「人」であることにあらためて気づいて、行動にうつしてくださる方が出てきている、ということです。もちろん、これは、採用数をコミットしなくてはいけない「人事」の方は、なかなか難しいと思います(人事の方がだらしないという意味では決してありません。何に責任をもってやらないといけないか?というところを明確にしておきたいだけです。実際、人事の方で頑張っておられない方はほとんどいませんので)
ただ、ほとんどの人事の方は、実際にゲームを開発したことがない方が多いからです。
つくったことがないからわからない、だから、現場の開発の人に見極めてもらおう!となっている場合が多いと思います。わかったふりして、てきとーな判断をしないということは、良いことだと思いますし、餅は餅屋がやればいいと思いますしね…
だから、その分だけ、人事の方は、
・自社の認知をあげる
・選考へのエントリー数を増やす
・イベントなどにでていく
・作品を見る
→企画書やポートフォリオに対して、数多くのものを見た中からの観点で評価する
・面接する
→人間性や、会社とのカルチャーフィットなどを見る
など
ゲーム開発自体に関わる部分以外のところで、開発経験なくてもできることを、全力で実施されているのだと思います。もちろん、人事の方の中でも、前職でのわたしのパートナーのDeNAの中川泰斗氏などは、
「作り手の気持ちをわかるために、グローバルゲームJAMに参加してみよう!」
と、実際にGGJに参加して一緒にゲームをつくってみて、プレゼンもしてみた!というようなツワモノもいますw とはいえ、なかなか、中川氏以外で、JAMに参加を勧めても実際に行く方をあまり見たことがありませんが…(時期的に新卒採用動き出すので難しい時期でもありますしね)
ただ、実際彼は、参加した後も決して「ゲームの作り方がわかった!」とはいいませんでしたし、それどころか、
「ゲームって本当につくるの大変なんですね…クリエイターの皆さんや、クリエイター目指す学生さんに、よりリスペクトの気持ちが強くなりました」
と言っていました。DeNAさんを礼賛したわけでは決してないですが、そういった人事の人がいて、学生を集めて、話をしてくれ、且つ、現場の人に対しても、畏怖ではなく敬意をもって接し、依頼することができていれば、「採用チーム」(人事だけでなく、面接や選考にでる開発現場の人間も含めたもの)がうまくまわらないわけはないと思います!
人事の方が、中川氏のようでなくとも、認知向上や集客に尽力をされていることは間違いないわけです。では、逆に、採用チームの片翼、開発現場の皆さんはどういうことをされているでしょうか?
開発でないとできないこと…
・作品をみる
→企画書、ポートフォリオ、ソースコード、ゲーム作品 を見て、評価する
・開発者の観点にたった面接
など
をされているのではないかと思います。もちろん、企業さんによってここは異なっているので、これだけではないでしょうし、会社によっては、元開発の方が人事をやられている、もしくは、兼任されている時は、両方をやられている方もいるでしょう!
ここは、本当に企業によって異なります。ただ、この時に、開発現場の方が決してやってはいけないと思うことがいくつかあります。それは…
2,3を言うならば、選考から退いてほしいと思いますw
人事の方にとってもすごくストレスでしょうし、そもそも、そんなこと思っている人に、採用選考される学生が不憫です。他者の人生に関わっているのに、誠実ではないからです…
3などは、「あなたでなくても、それは見極められますので、あなたが出なくて結構です!」と人事が…言えたら…どれだけいいことでしょう?ww
2に関しては、1も込みで、「振り返り」を毎回もしくは、週、月とかの単位で「採用チーム」内ですれば、解決できることが多いでしょう。そのうえで、イメージがすりあってこないのであれば、そもそもチームとして破たんしていますので、別の解決方法を至急考えないといけないでしょう!
特に、1は、人事の方や開発でも比較的若手の方が一次面接を担当されることも多いと思いますが、その際に、「怖くて、次に、あげられなくなる」ことがおきえます。採用チームの目的から外れる、より高いレベルのところを求めているのだ!という偉い方もいらっしゃるかもしれません。でも、こんな誰も得しない状態で、健全な選考が行われるでしょうか?本来は、
・経験浅い人が判断を仕切るのではなく、迷ったらあげるを励行
→迷うということは、いいところがわずかでもある、という証拠ですから…
・あげた理由だけ、しっかり事前に確認できるフローをつくる
→自身の面接時の合否に関わらず、フィードバックを前の選考官に戻すことで、すり合わせがすすみ、選考官も成長することにつながるはずですので…
などをされていく方がいいでしょう…
それに加えて、人事の方の仕事に敬意をはらうことです。
時折、「採用は人事の仕事だ。自分たちはゲームをつくる本業の片手間でやっているんだから、採用がうまくいかないのは、人事がワークしてないからだ」という論調の方を見かけることがあります。まったくもって残念な意見です。なぜならば、
・選ばれている以上は自分も「採用チーム」の人間であること
・「採用チームの成果をあげること」も自身にとって大事なミッション(=本業)であること
・そもそも、開発がより楽になるために、採用をしているはずなので、最後は開発のためのはず…
ということです。
ゲームをもう1人で作れる時代ではなくなりました(一部のインディーを除いて)同様に、1つのビジョンや方向性にのっとらないといけないものの、採用も最初から最後まで(認知・集客~選考まで)を1人だけで、もしくは人事だけで成し遂げることは非常に困難な時代になりました。
だとしたら、この「チームで1つのことを成し遂げる」タスクフォースとして(まあ、臨時ではないですけどねw)結成されたもののはずなのです。そこを、人事のせいだけにするのは、本来の目的から目を背けていることになります。
自分の会社を強くする、良くするために、優秀な、自社の理念にあった学生を採用したい!と思うのは、経営者だけでなく、人事を中心とした、採用チームタスクフォースが担わねばならない重要ミッションだと思います。
人事、開発の間に、採用においては、上下もなければ、溝もあってはいけないということです…
学生は、理由はわからないまでも、その微妙な空気は、敏感に感じ取るものです。できるだけ、ほころびを学生にかぎとられないためにも腹の底から、互いにリスペクトして、歩み寄り、目的にむかって全力で突っ走れるようになるといいのだと思います!!!
●学生の意識…
学生は、いまやや焦り気味に、インターンにいかなきゃ!と思いすぎのきらいはたしかにあります。インターンに行くことが目的ではありません。インターンはあくまでも、
・完全アウェーな環境に身を置くことで、自身の今を知る
・企業にエントリーすることを本選考前に経験できる
・プロからでないと学べないことを教えてもらえる
など
あくまでも、「現在の自分の不足を知り、かつ、ふり返り、未来(本選考の時)に備える」ために実行するといいと思います。できれば、2社以上、参加できるとなおよいのではないでしょうか?(交通費を出してくれる企業さんは増えてきています)
ただ、そのためには、各企業に魅力を感じてもらえるだけの準備をしなくてはいけません。インターンは、序の口でしかなく、本選考のエントリーの時には、様々なことをハードルとして課されます。
・ゲーム業界の志望動機
・その会社を志望する動機
・自身のこれまでの実績
・自身の技術や作品
・ゲームのプレイ量
・趣味や、エンタメの引き出し
などなど
です。どれも「聞いておくにこしたことはない」ことばかりで、どれがなくてもかまわない、どれが絶対になくてはいけない!もありません。どの企業も採用を失敗しないために、できるだけ多くのことを聞きたいと思っていますし、多くの作品を見たいと思っています。が、
・多すぎても学生がエントリーを嫌がる
・多すぎても現場が見て、評価するのがたいへん
となるので、「優先度」をつけて、各企業で工夫されているのだと思います。
あ、1つだけ「必須」があると思います。それは、
「なぜ、あなたはゲームをつくりたいのか?」
「あなたがつくったゲームで、他者や世の中をどうしたいのか?」
といった、「ゲームをつくるということへの志望動機」だけは、MUSTではないでしょうか?
これは、たとえサラリーマンとはいえ、ゲームクリエイターになる以上は、「根っこ」となるところですし、その覚悟がない人は辛いことがあった時に継続できないのではないか?と思うからです…
専門学校生ならこの動機をもっていて当たり前!とおもう業界の方がいらっしゃるかもしれませんが、この連載でも書いてきていますが、決してそんなことはありません。ゲームの専門学校への志望動機は「ゲームが好きだから」「好きなことを仕事にできると楽しそうだから」がメインだからです。それは、あくまでも大半の経験は「遊ぶ経験」なので、ゲームを作る楽しさ、は知らないことが多いわけです。
また、大学生は、実際にゲームを作ることを教えている大学は非常に少なく、AIやVR、IoTなど、ゲームに関われそうな近い領域の学生が業界も選択肢の1つに考えてみるところから始まっているのが多いと思います。
となると、やはり、繰りかえしになりますが、
「なぜ、あなたはゲームをつくりたいのか?」
「あなたがつくったゲームで、他者や世の中をどうしたいのか?」
は、大事な覚悟であり、それを整理して、他者に伝わる言葉で定義しておくこと、これは必ず通っておいた方がいいことではないか?と思うのです。それ以外のものは、その会社の選考基準などの幅や特徴によって、違ってきていいと思いますので…
選考方法はこれしかない!というのは、決してないとおもいますし、ゲームに関する技術や知識が日進月歩かわっていくことを考えると、そこを固定化してやりつづけること、決めつけることこそ、思考の硬直で、ゲーム業界の選考にあまりふさわしくないことかもしれませんね…
ただ、幹・枝・葉ではなく、根である「覚悟」については、一度、整理してまとめておくこと=書き出しておくことは、それらとは、別の意味で大切なこと、本質であることをご理解いただけるのではないでしょうか?
・採用といいつつも、育成も視野にしれよう!
・「採用チーム」は、皆、リスペクトしあおう!
・学生は、覚悟を定めること、を必ずやろう!
今回はこれまで!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第五十八回「学生から学ぶこと」
■第五十七回「なにごとにも、準備が大切」
■第五十六回「"When the student is ready, the teacher appears."」
■第五十五回「削りだし、肉付けする」
■第五十四回「最新を知らずして…」
■第五十三回「ヒトがひとを採る」
■第五十二回「誇り、やりがい、お金」
■第五十一回「キャップは、誰が決める?」
■第五十回「出口に対する意識〜後編〜」
■第四十九回「出口に対する意識〜前編〜」
■第四十八回「ゲーム業界に就職すること」
■第四十七回「お金の話」
■第四十六回「伝える姿勢」
■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
もちろん、それ以前に、夏にインターンを実施され、既に動き出している企業さんも学生さんもたくさんいると思いますが…実際、今年のインターン、何社か見学させていただきましたが、
■企業さん
考え方にだいぶ変化がでてきている
■学生さん
本当に、意識高い学生の動き出しが早くなっている
というのが見受けられました…
●企業の姿勢…
企業さんは、
・いい意味で「変わらないといけない」という意識がでてきている
・採ってやる、見てやる、ではなく「業界のために導こう」という姿勢が見える
→決して、上からではない
・「今の学生、すごいな!! 面接だけじゃ気づけなかった…」
・採ってやる、見てやる、ではなく「業界のために導こう」という姿勢が見える
→決して、上からではない
・「今の学生、すごいな!! 面接だけじゃ気づけなかった…」
など、自分たちのもっていた固定観念を打ち砕き、先達である自分たちが、業界を目指す「後輩」たちに対して、なにかできることはないか?
できれば、自分たちの会社に入ってくれると嬉しいけど…でも、ほかの業界いくくらいなら、ゲーム業界面白いよ!ぜひきて!!! のようなテンションで学生さんと接してくれる、人事・現場の方が増えてきたなという印象があります。
これまで採用現場で面接や作品選考していたものの、直で学生と触れる機会の少なかった方や、学校をまわって企業説明をしてきたような現場の方も、(「べき論」を展開していくだけの方が多かったですが、わたしも、セガ、DeNA時代、例にもれずこうだったとおもいます)
学生のポテンシャル
というものに、目を向けていただける方が増えてきたなと思います。つまりは…
「育てよう」
という意識の萌芽ではないかと思うわけです。ともすれば、即戦力かよ!そんな学生いないよ!!というような、無いものねだりの人材用件が新卒の募集要項や採用基準にあがってくる企業さんがありますが、それは、それだけ「現場は困っている」ということだと思いますw
その気持ちはわかりますが、その「いま」足りないピースは、中途採用や業務委託、もしくは、派遣社員のスペシャリストの方でまずは、賄う方がいいかなと思います。新卒はどんな能力高い人間でも、基本は即戦力ではなく、3年後、5年後を背負う人でしょうし、その会社の「理念」を1から浸透させることができる人たちで、「未来を担う」人たちであるということです。
そして、その範囲を、自社から業界に広げて考えてくださる方が増えてきたということですね(もちろん、最優先は、自社であるべきだと思いますよ!ww)
40、50歳代になることで、ゲーム作品以外に、残し、つなぐことができるのは、実は「人」であることにあらためて気づいて、行動にうつしてくださる方が出てきている、ということです。もちろん、これは、採用数をコミットしなくてはいけない「人事」の方は、なかなか難しいと思います(人事の方がだらしないという意味では決してありません。何に責任をもってやらないといけないか?というところを明確にしておきたいだけです。実際、人事の方で頑張っておられない方はほとんどいませんので)
ただ、ほとんどの人事の方は、実際にゲームを開発したことがない方が多いからです。
つくったことがないからわからない、だから、現場の開発の人に見極めてもらおう!となっている場合が多いと思います。わかったふりして、てきとーな判断をしないということは、良いことだと思いますし、餅は餅屋がやればいいと思いますしね…
だから、その分だけ、人事の方は、
・自社の認知をあげる
・選考へのエントリー数を増やす
・イベントなどにでていく
・作品を見る
→企画書やポートフォリオに対して、数多くのものを見た中からの観点で評価する
・面接する
→人間性や、会社とのカルチャーフィットなどを見る
など
ゲーム開発自体に関わる部分以外のところで、開発経験なくてもできることを、全力で実施されているのだと思います。もちろん、人事の方の中でも、前職でのわたしのパートナーのDeNAの中川泰斗氏などは、
「作り手の気持ちをわかるために、グローバルゲームJAMに参加してみよう!」
と、実際にGGJに参加して一緒にゲームをつくってみて、プレゼンもしてみた!というようなツワモノもいますw とはいえ、なかなか、中川氏以外で、JAMに参加を勧めても実際に行く方をあまり見たことがありませんが…(時期的に新卒採用動き出すので難しい時期でもありますしね)
ただ、実際彼は、参加した後も決して「ゲームの作り方がわかった!」とはいいませんでしたし、それどころか、
「ゲームって本当につくるの大変なんですね…クリエイターの皆さんや、クリエイター目指す学生さんに、よりリスペクトの気持ちが強くなりました」
と言っていました。DeNAさんを礼賛したわけでは決してないですが、そういった人事の人がいて、学生を集めて、話をしてくれ、且つ、現場の人に対しても、畏怖ではなく敬意をもって接し、依頼することができていれば、「採用チーム」(人事だけでなく、面接や選考にでる開発現場の人間も含めたもの)がうまくまわらないわけはないと思います!
人事の方が、中川氏のようでなくとも、認知向上や集客に尽力をされていることは間違いないわけです。では、逆に、採用チームの片翼、開発現場の皆さんはどういうことをされているでしょうか?
開発でないとできないこと…
・作品をみる
→企画書、ポートフォリオ、ソースコード、ゲーム作品 を見て、評価する
・開発者の観点にたった面接
など
をされているのではないかと思います。もちろん、企業さんによってここは異なっているので、これだけではないでしょうし、会社によっては、元開発の方が人事をやられている、もしくは、兼任されている時は、両方をやられている方もいるでしょう!
ここは、本当に企業によって異なります。ただ、この時に、開発現場の方が決してやってはいけないと思うことがいくつかあります。それは…
1、面接をした後「なんでこの子をここまであげてきたんだ?」と、 前選考の担当をつめる
2、とにかく、面接の回数を減らしてほしいと人事にいう
3、いい子しか見たくないという
2、とにかく、面接の回数を減らしてほしいと人事にいう
3、いい子しか見たくないという
2,3を言うならば、選考から退いてほしいと思いますw
人事の方にとってもすごくストレスでしょうし、そもそも、そんなこと思っている人に、採用選考される学生が不憫です。他者の人生に関わっているのに、誠実ではないからです…
3などは、「あなたでなくても、それは見極められますので、あなたが出なくて結構です!」と人事が…言えたら…どれだけいいことでしょう?ww
2に関しては、1も込みで、「振り返り」を毎回もしくは、週、月とかの単位で「採用チーム」内ですれば、解決できることが多いでしょう。そのうえで、イメージがすりあってこないのであれば、そもそもチームとして破たんしていますので、別の解決方法を至急考えないといけないでしょう!
特に、1は、人事の方や開発でも比較的若手の方が一次面接を担当されることも多いと思いますが、その際に、「怖くて、次に、あげられなくなる」ことがおきえます。採用チームの目的から外れる、より高いレベルのところを求めているのだ!という偉い方もいらっしゃるかもしれません。でも、こんな誰も得しない状態で、健全な選考が行われるでしょうか?本来は、
・経験浅い人が判断を仕切るのではなく、迷ったらあげるを励行
→迷うということは、いいところがわずかでもある、という証拠ですから…
・あげた理由だけ、しっかり事前に確認できるフローをつくる
→自身の面接時の合否に関わらず、フィードバックを前の選考官に戻すことで、すり合わせがすすみ、選考官も成長することにつながるはずですので…
などをされていく方がいいでしょう…
それに加えて、人事の方の仕事に敬意をはらうことです。
時折、「採用は人事の仕事だ。自分たちはゲームをつくる本業の片手間でやっているんだから、採用がうまくいかないのは、人事がワークしてないからだ」という論調の方を見かけることがあります。まったくもって残念な意見です。なぜならば、
・選ばれている以上は自分も「採用チーム」の人間であること
・「採用チームの成果をあげること」も自身にとって大事なミッション(=本業)であること
・そもそも、開発がより楽になるために、採用をしているはずなので、最後は開発のためのはず…
ということです。
ゲームをもう1人で作れる時代ではなくなりました(一部のインディーを除いて)同様に、1つのビジョンや方向性にのっとらないといけないものの、採用も最初から最後まで(認知・集客~選考まで)を1人だけで、もしくは人事だけで成し遂げることは非常に困難な時代になりました。
だとしたら、この「チームで1つのことを成し遂げる」タスクフォースとして(まあ、臨時ではないですけどねw)結成されたもののはずなのです。そこを、人事のせいだけにするのは、本来の目的から目を背けていることになります。
自分の会社を強くする、良くするために、優秀な、自社の理念にあった学生を採用したい!と思うのは、経営者だけでなく、人事を中心とした、採用チームタスクフォースが担わねばならない重要ミッションだと思います。
人事、開発の間に、採用においては、上下もなければ、溝もあってはいけないということです…
学生は、理由はわからないまでも、その微妙な空気は、敏感に感じ取るものです。できるだけ、ほころびを学生にかぎとられないためにも腹の底から、互いにリスペクトして、歩み寄り、目的にむかって全力で突っ走れるようになるといいのだと思います!!!
●学生の意識…
学生は、いまやや焦り気味に、インターンにいかなきゃ!と思いすぎのきらいはたしかにあります。インターンに行くことが目的ではありません。インターンはあくまでも、
・完全アウェーな環境に身を置くことで、自身の今を知る
・企業にエントリーすることを本選考前に経験できる
・プロからでないと学べないことを教えてもらえる
など
あくまでも、「現在の自分の不足を知り、かつ、ふり返り、未来(本選考の時)に備える」ために実行するといいと思います。できれば、2社以上、参加できるとなおよいのではないでしょうか?(交通費を出してくれる企業さんは増えてきています)
ただ、そのためには、各企業に魅力を感じてもらえるだけの準備をしなくてはいけません。インターンは、序の口でしかなく、本選考のエントリーの時には、様々なことをハードルとして課されます。
・ゲーム業界の志望動機
・その会社を志望する動機
・自身のこれまでの実績
・自身の技術や作品
・ゲームのプレイ量
・趣味や、エンタメの引き出し
などなど
です。どれも「聞いておくにこしたことはない」ことばかりで、どれがなくてもかまわない、どれが絶対になくてはいけない!もありません。どの企業も採用を失敗しないために、できるだけ多くのことを聞きたいと思っていますし、多くの作品を見たいと思っています。が、
・多すぎても学生がエントリーを嫌がる
・多すぎても現場が見て、評価するのがたいへん
となるので、「優先度」をつけて、各企業で工夫されているのだと思います。
あ、1つだけ「必須」があると思います。それは、
「なぜ、あなたはゲームをつくりたいのか?」
「あなたがつくったゲームで、他者や世の中をどうしたいのか?」
といった、「ゲームをつくるということへの志望動機」だけは、MUSTではないでしょうか?
これは、たとえサラリーマンとはいえ、ゲームクリエイターになる以上は、「根っこ」となるところですし、その覚悟がない人は辛いことがあった時に継続できないのではないか?と思うからです…
専門学校生ならこの動機をもっていて当たり前!とおもう業界の方がいらっしゃるかもしれませんが、この連載でも書いてきていますが、決してそんなことはありません。ゲームの専門学校への志望動機は「ゲームが好きだから」「好きなことを仕事にできると楽しそうだから」がメインだからです。それは、あくまでも大半の経験は「遊ぶ経験」なので、ゲームを作る楽しさ、は知らないことが多いわけです。
また、大学生は、実際にゲームを作ることを教えている大学は非常に少なく、AIやVR、IoTなど、ゲームに関われそうな近い領域の学生が業界も選択肢の1つに考えてみるところから始まっているのが多いと思います。
となると、やはり、繰りかえしになりますが、
「なぜ、あなたはゲームをつくりたいのか?」
「あなたがつくったゲームで、他者や世の中をどうしたいのか?」
は、大事な覚悟であり、それを整理して、他者に伝わる言葉で定義しておくこと、これは必ず通っておいた方がいいことではないか?と思うのです。それ以外のものは、その会社の選考基準などの幅や特徴によって、違ってきていいと思いますので…
選考方法はこれしかない!というのは、決してないとおもいますし、ゲームに関する技術や知識が日進月歩かわっていくことを考えると、そこを固定化してやりつづけること、決めつけることこそ、思考の硬直で、ゲーム業界の選考にあまりふさわしくないことかもしれませんね…
ただ、幹・枝・葉ではなく、根である「覚悟」については、一度、整理してまとめておくこと=書き出しておくことは、それらとは、別の意味で大切なこと、本質であることをご理解いただけるのではないでしょうか?
・採用といいつつも、育成も視野にしれよう!
・「採用チーム」は、皆、リスペクトしあおう!
・学生は、覚悟を定めること、を必ずやろう!
今回はこれまで!
■著者 : 馬場保仁
株式会社ファリアー 代表取締役社長。過去、セガ(当時 セガ・エンタープライゼス)で『プロ野球チームをつくろう!』『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』など多数のゲーム開発に従事。その後DeNAにてスマホアプリ開発のプロデューサーを担うほか、人事・採用担当も兼任。現在は、ファリアー社を創業し、“人は人に活かされる”をモットーにゲーム開発、人材発掘・育成にこれまで以上に尽力している。著書に「ゲームの教科書」(ちくまプリマー新書)がある。
■ゲーム業界 -活人研 KATSUNINKEN- バックナンバー
■第五十八回「学生から学ぶこと」
■第五十七回「なにごとにも、準備が大切」
■第五十六回「"When the student is ready, the teacher appears."」
■第五十五回「削りだし、肉付けする」
■第五十四回「最新を知らずして…」
■第五十三回「ヒトがひとを採る」
■第五十二回「誇り、やりがい、お金」
■第五十一回「キャップは、誰が決める?」
■第五十回「出口に対する意識〜後編〜」
■第四十九回「出口に対する意識〜前編〜」
■第四十八回「ゲーム業界に就職すること」
■第四十七回「お金の話」
■第四十六回「伝える姿勢」
■第四十五回「どこをみるか?いつをみるか?」
■第四十四回「体験する重要性」
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十三回)
■「ゲーム教育トーク」【前編】(第四十二回)
■第四十一回「"いま"やるべきこと〜その②〜」
■第四十回「"いま"やるべきこと」
■第三十九回「ゲームをつくるのは楽しい!」
■第三十八回「軸足をもつ」
■第三十七回「どんな経験が?」
■第三十六回「自分だけの面白いから脱却」
■第三十五回「幸せのカタチ、面白さのカタチ」
■第三十四回「プロの言葉・責任」
■第三十三回「小さな成功、大きな成功」
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【後編】(第三十二回)
■「ゲーム業界クリエイター教育トーク」【前編】(第三十一回)
■第三十回「指導者に問われるもの」
■第二十九回「そもそも、企画の仕事って…」
■第二十八回「転職〜中級編・自分の価値を知る〜」
■第二十七回「転職〜入門編〜」
■第二十六回「リーダーシップとは」
■第二十五回「思考のスタミナ」
■第二十四回「出て行く勇気」
■第二十三回「個人でつくる・集団でつくる」
■第二十二回「指摘される勇気、指摘する気遣い」
■第二十一回「どこを見るか? どう採るか?」
■第二十回「100%の力を発揮するために……」
■第十九回「まずは、”伝える”ことから始めよう!」
■第十八回「カード少なく勝負に挑まない」
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【後編】(第十七回)
■第二回「学校トーク!!」…三者鼎談【前編】(第十七回)
■第十六回「新人事始」
■第十五回「就職活動にみられる地方格差」
■第十四回「【思いやり】の向こう側」
■第十三回「仕事選び 〜成長・夢・時間〜」
■第十二回「本当にそれは、ゲームに必要か?」
■第十一回「ハッカソンの功罪」
■第十回「会社選びと成長(プロ、アマ問わず)」
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【後編】(第九回)
■「学校トーク!」 東京工芸大学 『パックマン』生みの親 岩谷徹氏に訊く【前編】(第八回)
■第七回「学生さんにやっていただきたいこと~後編~」
■第六回「学生さんにやっていただきたいこと~前編~」
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【後編】(第五回)
■「社長トーク!」第1弾 コロプラ 馬場功淳 社長【前編】(第四回)
■第三回「若手のチャンスとキャリアパス」
■第二回「企業×学校×学生」
■第一回「ゲーム業界って本当に人手不足なの?」
会社情報
- 会社名
- 株式会社ファリアー
- 設立
- 2016年7月
- 代表者
- 代表取締役社長 馬場 保仁